感染症治療薬ガイドの編集方針について

感染症治療薬ガイドの執筆・編集にあたり、MEDLEYの考え方をご紹介します

感染症治療の実際

細菌感染症の治療に抗菌薬(抗生物質)がしばしば用いられます。感染症の原因となっている細菌(起炎菌)に有効な抗菌薬を用いると非常に治りが早くなります。しかし、感染症治療を開始するときから起炎菌が分かっていることはそんなに多くありません。まず起炎菌を探す検査(塗抹検査や培養検査)を行いながら、その結果が出る前に抗菌薬を用いた初期治療を開始します。初期治療で用いる抗菌薬は確実な根拠がないため、過去の細菌感染治療のデータや身体の状況を踏まえて選ばれます。

感染症治療薬ガイドの狙い

様々な成書や論文において、感染症ごとに初期治療として用いられるべき抗菌薬が挙げられています。そのいずれも絶対的なものではないのですが、治療成績の良いものが候補に並んでいるため参考になります。また、抗菌薬治療を行う上で、抗菌薬投与量や治療期間も重要です。腎機能によって投与量や投与間隔が異なってくる抗菌薬も多いため、医者は多くのことを考えながら感染症治療を行っています。

今回リリースします感染症治療薬ガイドは、初期治療で使う抗菌薬をより適切にすることを目標に作りました。
「抗菌薬・投与量・治療期間」この3点を極力具体的に示すことで、抗菌薬を適切に用いて耐性菌の少ない未来を目指すことが狙いです。また、抗菌薬を使用する必要がないものには「必要ない」と明記しています。編集方針としては、難問に答えることよりも、日常によく出会う場面での対応をできるだけ簡便にすることを主な目的と想定しています。特に感染症が専門ではない医師や研修医の忙しい日常診療の中で、治療方法を手軽に調べることができるようにと考えております。

感染症治療薬ガイドの使用方法

細菌感染症を治療する場合に用いる抗菌薬はある程度絞られますが、時には状況を鑑みて推奨治療薬以外のものを用いて治療しなければならないことがあります。ガイドは一般的な場面に用いる抗菌薬を提示することはできますが、判断の難しい場面での抗菌薬の使い方全てを網羅しておりません。
また、治療開始前に行った細菌学的検査の結果が出たらば、結果を踏まえて治療方法を最適化するのが一般的な流れになります。そのため、検査結果が出た場面では一度治療方法の是非について検討して下さい。

また、使用薬剤や投与量等に関して様々なご意見があると思います。絶対解のない領域であるからこそ、皆さんの考えを反映させながらより良いものにしてきたいと考えております。

参考文献

海外

「SANFORD GUIDE(熱病)2016」「Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition」

国内

「レジデントのための感染症診療マニュアル第3版」「がん患者の感染症診療マニュアル改訂2版」「感染症診療の手引き第3版」「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014」

論文

Macrolides for diffuse panbronchiolitis.(Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jan 25;1:CD007716. DOI: 10.1002/14651858.CD007716.pub4.) Doxycycline versus azithromycin for treatment of leptospirosis and scrub typhus.
(Antimicrob Agents Chemother. 2007 Sep;51(9):3259-63. Epub 2007 Jul 16. DOI:10.1128/AAC.00508-07)
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