かぜ(きゅうせいじょうきどうえん)
かぜ(急性上気道炎)
鼻やのど(上気道)が炎症を起こしている状態の総称。原因はほとんどがウイルス感染であるため、抗菌薬を使用するメリットに乏しい
26人の医師がチェック 328回の改訂 最終更新: 2026.01.06

風邪(急性上気道炎)の症状について:咳、鼻水、喉の痛みなど

風邪とは、基本的に自然治癒するウイルス感染症であり、咳・鼻水・喉の痛み・熱・頭痛・怠さなど多彩な症状が出ます。ここでは風邪の典型的な症状と、それに隠れた注意すべき症状、例えば肺炎と見分けるポイントなどについて解説します。

1. 風邪でよくある症状

風邪(急性上気道炎)は以下のような特徴を持つ病気です。

  • 基本的に自然治癒するウイルス感染症である。
  • 鼻や喉など上気道にウイルス感染が起きている。(これに対して、肺の中の空気の通り道である気管支や、肺そのものは下気道と呼びます。)
  • 咳、鼻水、喉の痛み、熱、頭痛、怠さ、など多彩な症状が出る。

このように多彩な症状が出るのが特徴ですが、ここでは風邪の症状に関して、よくある症状と、その症状に関する注意点について説明します。

咳(咳嗽)

風邪ではしばしば咳がでます。風邪の咳では多少の痰が絡むこともありますし、ほとんど出ないケースもあります。風邪による咳であれば風邪の治癒とともに、数日から1週間くらいの単位で治ることが一般的です。ただし、感染後咳嗽(かんせんごがいそう)といって、風邪で空気の通り道(気道)が傷ついてしまうことによって長期的に咳が出やすくなることもあります。長い方では月単位で感染後咳嗽が続くケースもあります。

咳は風邪でよく見られる症状ですが、以下のような病気が隠れていることもあります。

風邪をひいただけで、上に挙げたような病気を疑う必要は全くありませんが、風邪としては咳が長過ぎる(目安として2-3週間以上続く咳)、咳が強すぎる、症状の出方がおかしい、咳に加えて38℃以上の発熱が4-5日以上続いている、息苦しさがひどい、など違和感があれば医療機関を受診しておく、というスタンスをお奨めしたいと思います。

鼻水(鼻汁)、くしゃみ

風邪ではしばしば鼻水が出ます。風邪ではウイルスが空気の通り道(気道)に広範囲な炎症を起こすため、鼻関連では鼻水(鼻汁)、鼻づまり(鼻閉)、くしゃみ(噴嚔:ふんてい)などの症状が出ます。

風邪の代表的な症状である喉の痛みや咳に関しては、放置しておくと命の危険もあるような大変な病気が隠れていることもたまにありますが、鼻水やくしゃみに関しては幸い命に関わるほどの重病が隠れているケースは稀です。

風邪ではない鼻水やくしゃみの原因としては以下のようなものが挙げられます。

花粉症アレルギー性鼻炎に関してはご自身で自覚されているケースも多いので、風邪をひいた際に区別が主に問題となるのは急性副鼻腔炎(ふくびくうえん)です。

副鼻腔とは顔面の骨の中にある空洞のことであり、鼻の保湿、声の共鳴効果、顔面骨の軽量化効果、などの役割があります。

急性副鼻腔炎は主に感染によって、この副鼻腔が炎症を起こした状態です。副鼻腔炎では鼻水や鼻づまりが目立ち、額や頬が痛かったり重い感じがするなどの症状がでます。風邪に伴う副鼻腔炎としては98%以上がライノウイルスやパラインフルエンザウイルスと呼ばれるウイルスによるものであり、ウイルスには抗菌薬は効かず、基本的に自然治癒するため、風邪の治療以外に特段なにかを行う必要はありません。ただし稀に細菌急性副鼻腔炎の原因となることもあり、その場合には抗菌薬での治療も検討されるので、下記のような症状があれば、耳鼻科や内科を受診することをお勧めします。

  • 片側の頬がとても痛い、腫れている
  • 鼻炎症状が1週間以上続いている
  • 発熱が4-5日以上続いている、または一度解熱したのに再度38℃以上に発熱した

参考文献
J M Gwaltney Jr. Acute community-acquired sinusitis. Clin Infect Dis 23(6): 1209-1223; quiz 1224-1225, 1996.
・J W Williams Jr. Does This Patient Have Sinusitis? Diagnosing Acute Sinusitis by History and Physical Examination. JAMA 270(10): 1242-1246, 1993.

喉の痛みや違和感

みなさんご存知の通り、風邪でも喉の痛み(咽頭痛)はしばしば出ます。しかし、その喉の痛みばかりが目立つ場合には、ただの風邪ではないケースがよくあります。「風邪もどき」の病気で、喉の痛みが強いものとしては、A群溶連菌と呼ばれる細菌が喉に感染しているものがよく見られ、この病気では基本的に抗菌薬による治療が行われます。

また、危険な病気として、細菌の感染で空気の通り道が塞がって窒息の恐れがある病気(急性喉頭蓋炎など)、で空気の通り道が塞がって窒息の恐れがある病気(扁桃周囲膿瘍咽後膿瘍、Ludwigアンギナ、など)、感染に伴って喉に血栓のできる病気(レミエール症候群)などがあり、これらは命に関わることもあります。感染症以外では、心筋梗塞動脈解離など血管の病気で喉が痛くなることもあります。

このように、激しい喉の痛みには怖い病気が隠れていることもあります。鼻水や咳はあまり出ないのに喉がとても痛い、つばも飲み込めない、息苦しさが酷い、などの、風邪としてはちょっとおかしい症状があれば医療機関の受診をお勧めします。

発熱

大人の風邪ではそもそも38℃以上の発熱が出ないこともよくありますが、仮に38℃以上の発熱があっても、風邪は基本的に自然に治癒するウイルス感染症なので、特に治療しなくても数日以内には解熱するはずです。子供の場合にはただの風邪でも39℃以上の発熱になったり、数日続いたりすることはあります。しかし、年齢によらず、4-5日以上38℃以上の発熱が続くというのは、自然に治癒しているとは言いがたく、風邪以外の病気が隠れている可能性が高くなってきます。ただの風邪だと思っても、38℃以上の発熱が丸3日経っても治らないようなケースでは医療機関を受診したほうが良いでしょう。

寒気(悪寒)

熱が出ると寒気がする、ということを経験された方は多いでしょう。それ自体は風邪であっても見られることなのですが、寒気で震えるくらいまでになってくると注意が必要です。医学的には、毛布をかぶるなど温かくして、頑張って震えを止めようとしても止まらないほどであることを悪寒戦慄(おかんせんりつ)と言います。止めようと思っても止まらないほど体が震えるような寒気があるということは尋常なことではありません。熱に伴ってこの症状がある場合には非常に高い確率で、血液にのって菌が全身をめぐっていると言われており、非常に危険な症状です。菌が全身をめぐっているとすれば一刻も早く、原因の診断と抗菌薬による治療を開始する必要があります。「患者さんが悪寒戦慄していたら、担当医が震え上がれ」と、研修医はよく教えられるものです。このような症状が出たら緊急で医療機関を受診したほうがよいでしょう。

参考文献:Am J Med 118(12); 1417, 2005.

怠い感じ(倦怠感)

風邪をひくとなんとなく怠い感じがするのは皆さんそうでしょう。原因が本当に風邪であれば数日から1週間以内くらいには治るでしょうから、しっかりと休息や水分をとる他に強くお勧めできることはありません。

しかし、咳、喉の痛み、鼻水などの風邪症状もあまり目立たないのに、しつこく怠さが続くようなケースではよくある例として以下のような病気も考える必要があります。

怠い、という症状だけで病気を言い当てることは不可能ですが、詳しいエピソードや、必要な検査データがあれば、治療を要するような病気を見つけることができる場合もあります。熱も大して出ないし怠いだけだから、と言わずに、普段経験がないほどの怠さが続く場合には医療機関を受診しましょう。

頭痛

風邪をひいて熱がでたら頭が痛くなってきた、という経験はみなさん多少なりともあるかと思います。咳や喉の痛み、鼻水なんかも出ていて、熱に伴って頭が多少痛くなるだけであれば、風邪の発熱によって頭が痛いだけ、という可能性が高いでしょう。

しかし、他の風邪症状が無いのに、発熱と強い頭痛だけがある場合には注意が必要です。発熱と強い頭痛が出る病気の代表格として、脳や脊髄を覆っている膜の炎症である髄膜炎(ずいまくえん)があります。外来を歩いて受診できるくらいの元気さがある髄膜炎であれば、ほとんどがエンテロウイルス属などウイルスによるウイルス性髄膜炎です。夏季に流行することがあります。ウイルス性髄膜炎は基本的には自然治癒しますが、ウイルスによる髄膜炎かどうかというのはすぐには分からないので、髄膜炎と診断された場合は多くのケースで入院が必要になるでしょう。もしも菌による髄膜炎細菌性髄膜炎)であれば、一刻もはやく治療しないと重い後遺症や死亡につながりかねませんので、熱と激しい頭痛のみが続く、という症状の場合には医療機関を受診しましょう。

腹痛

風邪は鼻や喉など、空気の通り道である上気道にウイルスが感染を起こしたものです。したがって、お腹にまで目立った症状が出てくることはあまりありません。咳、鼻水、喉の痛みなどがあまり目立たず、発熱と腹痛が見られる場合には例えば以下のような病気を考える必要があります。

発熱と腹痛が見られた場合には頻度的には急性胃腸炎が最も多いですが、放置してはいけない病気が隠れていることも多く注意が必要です。急性胃腸炎や関連した病気に関しては別のページで詳しく解説しています。

急性胃腸炎は胃腸にウイルスが感染して起こることが多いので「お腹の風邪」と呼ぶこともありますし決して間違ってはいないのですが、単に風邪と言った場合には急性上気道炎を指し、急性胃腸炎は含めないことが一般的です。ウイルス性感染症を全て風邪と呼ぶのは正確な言い方とは言えません。例えば脳や脊髄の周りにウイルスが感染して起こった髄膜炎を「頭の風邪」と呼ぶことは一般的ではありません。お腹の症状や頭の症状など、上気道以外の原因も考えるべき症状を安易に風邪(急性上気道炎)の症状と考えるのではなく、重大な病気を見落とさない注意は必要です。

なお、以上に解説した通り、風邪(急性上気道炎)では腹痛は原則的に見られませんが、例外的にインフルエンザウイルスの感染による場合には、腹痛や下痢などの症状が見られる場合もあります。

下痢

風邪は鼻や喉など、空気の通り道である上気道にウイルスが感染を起こしたものです。したがって、お腹にまで目立った症状が出てくることはあまりありません。咳、鼻水、喉の痛みなどがあまり目立たず、発熱と下痢が見られる場合には例えば以下のような病気を考える必要があります。

発熱と下痢が見られた場合には頻度的には急性胃腸炎が最も多いですが、放置してはいけない病気が隠れていることも多く注意が必要です。急性胃腸炎や関連した病気に関しては別のページで詳しく解説しています。

急性胃腸炎は胃腸にウイルスが感染した状態なので「お腹の風邪」と呼ぶこともありますが、単に風邪と言った場合には急性上気道炎を指すのが一般的です。

なお、以上に解説した通り、風邪(急性上気道炎)では下痢は原則的に見られませんが、インフルエンザウイルスの感染による場合には、腹痛や下痢などの症状が見られる場合もあります。

2. 風邪でこんな症状が続いたら要注意

風邪は基本的に自然治癒するウイルス感染症なので、風邪だけで以下に挙げていくような危険な症状は出ないはずです。それぞれの症状にどのような危険な病気が隠れていることがあるのか、紹介していきましょう。

なお、以下にあるような症状があれば医療機関を受診すべきであることは間違いありませんが、以下に当てはまらなくても必ずしもただの風邪とは限りません。ただの風邪として違和感がある点があれば、医療機関を受診するようにしてください。特に、もともと気管支喘息COPDなど肺の病気がある方、抗がん剤ステロイドなどの治療を受けていて感染に弱くなっている方、高齢者などでは受診の敷居を下げたほうが良いでしょう。

意識朦朧(もうろう)

風邪でも熱が出て辛ければ、多少ぼーっとすることはあるでしょう。しかし、受け答えが明らかにおかしい、今日の日付が言えない、今いる場所が正確に言えない、自分の氏名や生年月日を言えない、などの症状がある場合には医学的には意識障害と呼ぶべき状況です。意識障害がでる病気には様々な危険なものがあるので、詳しい検査が必要です。

持続する高熱

大人の風邪ではそもそも38℃以上の発熱が出ないこともよくありますが、仮に38℃以上の発熱があっても、風邪は基本的に自然に治癒するウイルス感染症なので、特に治療しなくても数日以内には解熱するはずです。子供の場合にはただの風邪でも39℃以上の発熱になったり、数日続いたりすることはあります。しかし、年齢によらず、4-5日以上38℃以上の発熱が続くというのは、自然に治癒しているとは言いがたく、風邪以外の病気が隠れている可能性が高くなってきます。様々な病気の可能性がありますが、風邪のような症状であれば、隠れている病気としては肺炎が最も高頻度と考えられます。ただの風邪だと思っても、38℃以上の発熱が丸3日経っても治らないようなケースでは医療機関を受診したほうが良いでしょう。

ひどい頭痛

風邪をひいて熱がでたら頭が痛くなってきた、という経験はみなさん多少なりともあるかと思います。咳や喉の痛み、鼻水なんかも出ていて、熱に伴って頭が多少痛くなるだけであれば、風邪の発熱によって頭が痛いだけ、という可能性が高いでしょう。

しかし、他の風邪症状が無いのに、発熱と強い頭痛だけがある場合には注意が必要です。発熱と強い頭痛が出る病気の代表格として、脳や脊髄を覆っている膜の炎症である髄膜炎(ずいまくえん)があります。外来を歩いて受診できるくらいの元気さがある髄膜炎であれば、ほとんどがエンテロウイルス属などウイルスによるウイルス性髄膜炎です。夏季に流行することがあります。ウイルス性髄膜炎は基本的には自然治癒しますが、ウイルスによる髄膜炎かどうかというのはすぐには分からないので、髄膜炎と診断された場合は多くのケースで入院が必要になるでしょう。もしも菌による髄膜炎細菌性髄膜炎)であれば、一刻もはやく治療しないと重い後遺症や死亡につながりかねませんので、熱と激しい頭痛のみが続く、という症状の場合には医療機関を受診しましょう。

また、発熱など風邪症状とはあまり関係ありませんが、今まで人生にないようなひどい頭痛であれば、脳出血くも膜下出血脳腫瘍なども考える必要があります。人生最大と言えるくらいの頭痛ならば医療機関を受診してください。

多くの血が混じる痰(血痰)

鼻血が垂れ込んできて痰に血が混じったり、咳のしすぎで喉が傷ついて僅かに出血したり、歯茎から出血することはありますが、上記のようなことがなく痰にしっかり血が混じっている場合には、重大な病気の可能性も考えられます。代表的なものとしては、肺結核肺がん気管支拡張症などがあり、いずれにしても早期に治療が必要です。痰に血が混じる、という症状は重大な症状なので、血痰がはじめて見られた場合には医療機関を受診したほうがよいでしょう。