うつびょう
うつ病
抑うつ気分、意欲低下、希死念慮などが持続する状態。ストレスだけでなく喜ばしいことがきっかけになることもある。治療は薬や認知行動療法など。併せて再発防止も行う
22人の医師がチェック 174回の改訂 最終更新: 2018.05.08

うつ病の基礎知識

POINT うつ病とは

悲しみ・虚無・怒りといった気分の変化が持続することによって引き起こされる気分障害の中でも最も代表的な病気がうつ病です。 特徴は気分の落ち込みまたは興味・喜びの消失(例:大好きな趣味もやりたくない)のいずれかが2週間以上継続して1日中存在することです。不眠や食欲の低下もうつ病の初期から起こる主な症状です。 うつ病が発症または再発するときは、生活の中でストレスの多い出来事がきっかけになることが多いです。症状は多様であり他の病気でも似た症状が現れることもあるので専門的な診断を受けることが重要です。うつ病が心配な人は精神科を受診して調べてもらってください。

うつ病について

  • 抑うつ気分、意欲低下、希死念慮などの状態が一定期間持続するもの
    • 気分をコントロールする物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン)のバランスが崩れることが原因に関わっていると言われている
    • コルチゾール(副腎皮質ホルモンの一種)の関与も指摘されている
  • 「うつ」と「うつ病」は違う
    • 「うつ」とは、気分が落ち込んで元気が出ない状態(医学的には「抑うつ」という)
    • 「うつ病」と診断するには、抑うつの他にも、様々な症状が一定期間出ることで初めて診断される
    • 英語のmajor depressive disorder(大うつ病性障害)が「うつ病」に相当する
    • 「うつ」はdepression
  • うつ病になりやすいタイプの人の特徴
    • 真面目
    • 責任感が強い
    • 家族にうつ病を経験した人がいる
  • うつ病が起こりやすい状況
    • つらい出来事やストレス
    • 昇進など通常喜ばしいはずの時
    • 引越し
    • 負担からの突然の開放
    • 体の病気は抑うつを引き起こすことがある
    • 必ずしもつらいことが引き金になるわけではない
    • つらい出来事に対する正常範囲の悲しみは抑うつとは言わない
  • 20代ではじめて発症する人が最も多い
    • ほかの年齢でも起こる
  • 高齢者がうつ病(老人性うつ病)になった場合
    • 高齢者のうつ病は身体機能の低下や社会的な交流がなくなることなどが発症要因として関係していることが多い
    • 環境背景が改善されないと、病状が回復せずに長引きやすい
    • 高齢者のうつ病に特徴的な仮性認知症(一見、認知症があるように見えるが、記憶障害がないか軽度な場合)の場合があるので注意が必要
    • 仮性認知症に隠れて認知症が進行したり、抑うつ症状が改善した後に認知機能障害が再発したりする場合があるので注意が必要
    • 環境背景を調えることは大切であり、長期にわたるケアや介護が必要になると家族の負担が大きくなることがある
      ・家族の負担を軽くするために、社会資源を用いることも大切である
  • うつ状態を乗り越えた後の復職に関して
    • 休養や薬物治療により症状の改善が見られた段階で、主治医と相談して復職したいかどうかを考えてみる
    • 復職する気持ちが湧いてきた場合は、主治医と復職までの計画を立てる
      ・主治医に業務内容や通勤時間などの仕事に関する情報を提供する
    • 復職の準備として生活リズムの改善や体力の改善を図る
      ・通勤時間に合わせた生活をする
      ・家事を行う
      ・散歩や軽い運動を取り入れる
      ・その他
    • 地域障害支援センターや病院・クリニックなどの医療機関が復職支援プログラムを行っている場合がある
    • 復職の準備が進んだ段階で、主治医の診察を受けて復職が可能かどうかの判断を受ける
    • 復職が可能と判断されれば、診断書を職場に提出して管理者や産業医と働き方に関して話し合いを行う
    • 休職期間が長くなったり症状が回復したりしても復職を焦らないことが大事で、家族をはじめとした周りの方のサポートは大きな助力となる
  • 厚生労働省の手引きに、職場復帰ができるかどうかの判断基準の例がある
    => http://kokoro.mhlw.go.jp/brochure/supporter/files/H25_Return.pdf

うつ病の症状

  • 以下のすべてを満たす(診断基準)
    • 以下の症状のうち5つ以上が2週間以内に現れる
      抑うつ気分(気分が落ち込んで元気が出ない状態)
      ・興味・喜びの喪失
      ・食欲がない、食べ過ぎてしまう、体重が減る、または増える
      ・睡眠の異常(目がすぐに覚めてしまう、熟睡できない、眠りが浅い、寝すぎるなど)
      ・動きが鈍い、落ち着きがない
      ・疲れやすい、やる気が出ない(気力の減退)
      ・自分なんて価値がない人間だと思ってしまう、自分のせいで人に迷惑がかかっていると感じてしまう
      ・集中力がない、ものごとをじっくり考えられない、決断できない
      ・死んでしまいたいと思う(希死念慮)、自殺について考える、身辺整理など自殺の準備をする
    • うつ病の影響により以前できていたことができなくなる
    • 症状のうち抑うつ気分か興味・喜びの喪失のどちらかが必ずある
    • 症状による苦痛、社会的・職業的・その他の重要な機能障害がある
    • 他の病気や薬による症状ではない
    • 統合失調症妄想性障害などほかの精神病性障害群によって説明できない
    • 躁病・軽躁病の症状が現れたことがない
  • 症状はほとんど毎日現れている
  • 思考力の低下により高齢者では認知症に似て見えることがある
  • 他に典型的でない症状も出ることがある
    • 涙もろい
    • 考え込む
    • 同じ考えを繰り返すことを止められない
    • 不安
    • 恐怖
    • 健康に対する心配
    • 頭痛、関節痛、腹痛などの痛み
  • 非定型うつ病とは以下の特徴がある場合を指す
    • 過眠
    • 過食
    • 手足が鉛のように重い
    • 対人関係で拒絶されることに敏感
    • 楽しい出来事で気分が明るくなる(気分反応性)
  • 精神病性うつ病とは妄想や幻覚を伴う場合を指す

うつ病の検査・診断

  • うつ病の診断基準に照らし合わせて、症状がいくつ当てはまるか調べる
  • 必要に応じて行う検査
    • 画像検査:うつ病と似たような症状を引き起こす可能性がある他の病気(認知症脳卒中など)がないかを調べる
      頭部CT検査
      頭部MRI検査
    • 血液検査:ホルモンバランスに異常がないかなどを調べる
      ・ホルモンバランスが崩れるとうつ病と似た症状が出ることがある

うつ病の治療法

  • 主な治療
    • 重要なことは、まずは十分な休養
    • うつ病の治療に専念できる環境を、周囲のサポートも得ながら作る
  • よく使われる抗うつ薬は以下3つのタイプ
    • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
    • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
    • NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
    • ほかに三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬も使われる
  • SSRIの例
    • フルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックス)
      社会不安障害強迫性障害などにも使われる薬
    • エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)
      ・継続性と有効性が高いとされる
    • セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)
      ・口の中で溶けるOD錠がある
    • パロキセチン(商品名:パキシル)
      ・ゆるやかに吸収されるCR錠がある
    • 副作用に胃腸症状、眠気、めまい、性機能障害など
  • SNRIの例
    • ミルナシプラン(商品名:トレドミン)
      ・空腹時に飲むと吐き気などが強く出る場合があるので、食後が望ましい
      前立腺肥大などで尿が出ない症状のある人は使えない
    • デュロキセチン(商品名:サインバルタ)
      糖尿病などの神経障害に伴う痛みにも使われる薬
    • 副作用に眠気、めまい、胃腸症状、排尿障害など
  • NaSSAの例
    • ミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)
      ・不眠などの症状を改善する
    • 副作用に体重増加(太る)、だるさなど
  • 上記の抗うつ薬に他の薬剤を追加する「増強療法」がある
    • 非定型抗精神病薬:アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)
    • その他保険適用外ではあるが、甲状腺ホルモンやリチウムを使用することもある
  • その他の薬
    • ベンゾジアゼピン系抗不安薬:ジアゼパム(商品名:セルシン、ホリゾン)、ロフラゼプ酸エチル(商品名:メイラックス)、エチゾラム(商品名:デパス)など
    • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ゾピクロン(商品名:アモバン)、エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)など
  • 非薬物療法として認知行動療法も行われる
  • 難治例には、三環系抗うつ薬、電気けいれん療法が使われることもある
  • 症状がなくなってからも再発予防のために治療を続ける場合がある

うつ病に関連する治療薬

四環系抗うつ薬

  • 脳内の神経伝達を改善し、憂うつな気分を和らげて不安、いらいら、意欲低下、不眠などの症状を改善する薬
    • うつ病では脳内のノルアドレナリンなどの量が少なくなっている
    • 本剤は主に脳内のノルアドレナリンの量を増やして抗うつ効果をあらわす
  • 一般的には、本剤は三環系抗うつ薬より消化器や心臓などへの副作用を軽減した薬とされる
四環系抗うつ薬についてもっと詳しく

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

  • 脳内の神経伝達を改善し、憂うつな気分を和らげ、意欲などを改善する薬
    • うつ病では脳内のセロトニンなどの量が少なくなっている
    • 本剤は一度放出されたセロトニンの細胞内への回収(再取り込み)を阻害することで脳内のセロトニン量を増やし抗うつ作用をあらわす
  • 強迫性障害やパニック障害などに使用する場合もある
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)についてもっと詳しく

三環系抗うつ薬(第二世代)

  • 脳内の神経伝達を改善し、意欲を高め、憂うつな気分などを改善する薬
    • うつ病では脳内のノルアドレナリンやセロトニンの量が少なくなっている
    • 本剤は脳内のノルアドレナリンやセロトニンの量を増やし抗うつ作用をあらわす
  • 抗うつ効果の発現まで比較的時間を要する場合が多い(一般的に2〜4週間とされる)
  • 一般的に、第一世代の三環系抗うつ薬より抗コリン作用(アセチルコリンを阻害する作用)などが弱いとされる
三環系抗うつ薬(第二世代)についてもっと詳しく

うつ病の経過と病院探しのポイント

うつ病が心配な方

うつ病に関連する専門科は精神科および神経科(精神神経科)、メンタルヘルス科、一部の心療内科です。神経科と神経内科は異なりますが、うつ病を診療するのは神経科の方になります。うつ病を主に診療する専門医は精神科専門医です。精神科には精神保健指定医という国家資格と精神科専門医という学会認定資格があり、そのどちらかを持っている医師であれば診療できます。
うつ病は精神疾患の中でも頻度が高く、内科などで診断や初期治療を受けることがありますが、その中でも双極性障害躁うつ病)と区別がつきにくい場合などがあり、その場合は専門家による診断が有効です。

うつ病の治療は重症度により、入院治療を行う場合と外来治療を行う場合があります。入院治療は、自殺のおそれがある場合や、食事、身の回りのことなどを自分で行うことが難しく、自宅療養が困難な場合に勧められることが多いです。

そういった症状がある場合は精神科病棟のある総合病院や、精神科病院を受診することが一般的です。自身や家族で判断することが難しい場合は、近くの精神科クリニックを受診して、入院するべきかどうか判断してもらって入院施設を紹介してもらうことも可能です。

うつ病は主に問診により診断される病気ですが、身体の病気に伴ってうつ症状が出現する場合がありますので、うつ病と診断する前にうつ症状を引き起こす身体の病気の有無を血液検査や頭部MRIなどで調べることが一般的です。

精神科クリニックはMRI検査ができる施設が少なく、提携している脳神経外科や総合病院に検査をうけにいくこともあります。総合病院の精神科や精神科病院ではMRI検査を受けることができる場合が多いです。

光トポグラフィ検査と呼ばれる検査もあります。これは一部の大学病院など専門性の高い病院でしか行っていない検査で、診断の上でも必須の検査ではありません。治療がうまくいかず、診断を見直す必要がある場合などに、光トポグラフィを受けることができる病院を改めて受診することも手段のひとつです。

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うつ病でお困りの方

治療は主に抗うつ薬を中心とした薬物療法と認知行動療法などの心理療法を行います。難治性の場合は電気けいれん療法(ECT)を行う場合などもありますが、実施している病院は限られています。

うつ病治療に限らず精神科医療は個々の医師により治療方針や薬剤の選択、心理療法の導入のタイミングなどが違う場合があります。古くからある薬を使う医師もいれば、最新の心理療法に取り組む医師もいて、どの治療が効果的かが一概に言えません。それぞれの患者さんに最善と思われる治療をしています。ですので、医療機関を変わると同じうつ病の診断でも薬や治療が変わる場合もあります。

入院治療の場合、まず入院が必要となる症状の解消を目指します。自殺の危険が低くなることや、自宅での生活が可能になり外来通院できる病状になることが目標になります。

治療に加えて退院後の生活を見据えたSST(生活技能訓練)、作業療法などをうけます。退院後は生活支援のためのデイケア通所、復職のためのリワーク通所など、患者さんの状況に応じてサポートを受ける場合もあります。そういった相談は主治医か、精神保健福祉士(PSW;ケースワーカー)にするといいでしょう。入院施設のある病院には精神保健福祉士がいることが多いですので、しっかり相談できる体制のある病院を選ぶことも大切です。

外来治療の場合、病院と診療所で薬の種類や治療方針が変わることはほとんどありません。心理療法やデイケア、リワークなどの利用状況、主治医との相性、病院の通いやすさなどを考慮して医療機関を選ぶことが大切です。

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