2016.12.07 | ニュース

妊婦と赤ちゃんはDHAやEPAを摂るべき?143件の論文を読んだ結果

米政府機関のレポート
from AHRQ Evidence Report/Technology Assessment
妊婦と赤ちゃんはDHAやEPAを摂るべき?143件の論文を読んだ結果の写真
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魚などに多く含まれるDHAやEPAなどの脂肪酸は健康に良い作用があるとされます。ただし、基本的な栄養素の代わりになるものではありません。妊婦や新生児が摂取したときの効果について、これまでに報告されている研究結果がまとめられました。

ここで紹介する研究は、アメリカの政府機関である医療品質研究調査機構(AHRQ)が、過去に報告されている研究結果を集めることで、オメガ3脂肪酸が妊婦と新生児に及ぼす効果(授乳中に母親が摂取した場合を含む)について調べたものです。

オメガ3脂肪酸(ω3脂肪酸)は脂肪酸の一種です。ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、α-リノレン酸(ALA)などがオメガ3脂肪酸に分類されます。

 

関係する研究報告で、採用基準を満たすものが143件見つかりました。報告されている内容をまとめると、次の結果が得られました。

  • 妊娠をわずかに長引かせる効果があるが、早産予防効果は確かめられず
  • 出生時体重をわずかに増やす効果があるが、低出生体重の予防効果なし
  • 周産期うつの予防効果なし
  • 妊娠高血圧症候群または子癇前症予防効果なし
  • 新生児の成長に影響なし
  • 視力に影響なし
  • 神経発達に影響なし
  • 認知機能発達に影響なし
  • アトピー性皮膚炎アレルギー喘息、その他の呼吸器疾患に対する予防効果なし

安全性については、軽度の胃腸症状を除いて副作用が疑われる症状などはありませんでした。

なお、以上の結果はそれぞれ特定の物質や摂取方法(DHAを強化したフィッシュオイルなど)について報告されたもので、必ずしもすべてのオメガ3脂肪酸に当てはまるとは限りません。

研究班は結論として「[...]オメガ3脂肪酸のサプリメントや強化食品について、周産期の母親または乳児の健康に対する効果を示す一貫した証拠はない」とまとめています。

 

妊娠中は栄養バランスが崩れやすく注意が必要です。特に鉄分や葉酸は不足しやすく、積極的に摂ることが勧められています。

オメガ3脂肪酸については、これまでに試された結果からは効果があるとは言えませんでした。

不足しやすい栄養素を知っておくことは大切ですが、バランスの良い食事をする以上に「体に良いものを食べなければ」と思う必要はありません。

サプリメントを賢く使うためには「何に」「どの程度」効くかを知ることが大切です。こうした研究を参考にすることで、全体として栄養バランスをうまく保つ役に立ちます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Omega-3 Fatty Acids and Maternal and Child Health: An Updated Systematic Review.

AHRQ Evidence Report/Technology Assessment. 2016 Oct.

 

http://www.ahrq.gov/research/findings/evidence-based-reports/er224-abstract.html

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。