強迫性障害の基礎知識
POINT 強迫性障害とは
強迫性障害は「重要ではないことと自分ではわかっているにも関わらず、そのことをしないではいられない状態」のことです。具体例では、過剰な手洗いや施錠の確認などがあります。原因は不明ですが、セロトニンの関与が疑われており、50人から100人に1人は強迫性障害になっているという意見もあります。患者さん自身は「自分の考えや行動の異常を感じている」のが特徴です。症状から診断されることが多く、認知行動療法を行い、「やらずにはいられないことの我慢」することによって、不安が徐々に弱まっていきます。薬による治療も行われ、抗うつ薬を使用することもあります。強迫性障害が心配な人は精神科や心療内科を受診してください。
強迫性障害について
- 「考えずにはいられない、やらずにはいられない」病気
- 自分でも変だと分かっているのが特徴
- 重要ではない、できるなら考えたくないと思っている
- 几帳面だったり、自信が持てないなどの性格の範囲を超えて繰り返す思考や行動がある
- 原因は不明
セロトニン (感情に関わる物質)の関与が考えられる- 環境による影響の関与が考えられる
- 50-100人に1人が強迫性障害になっていると推定される
強迫性障害の症状
- 患者が「自分の考えや行動はおかしい」と感じているのが特徴
- 自分の考えや行動に悩み、治したいと強く思っている
症状 の例- 手を何度も何度も洗ってしまう(本人は手が汚れていないことを理解している)
- 家を出るときに戸締りを何度も確認してしまう(本人は戸締りをしたと分かっている)
- 人に危害を加えてしまう、加えてしまったのではないかという恐怖を覚える
- 何度も同じことをやってしまうため、次の行動に移れない
強迫性障害の検査・診断
症状 が特徴的であるため、医師が症状から診断する
強迫性障害の治療法
- 治療は
認知行動療法 と薬による治療を組み合わせる - 認知行動療法
- やらずにはいられないことを我慢するトレーニング
- 徐々に不安に慣れ、不安が弱まっていく
- 薬による治療
- 抗うつ薬を使用することが多い
- SSRI(商品名パキシル、ジェイゾロフト、デプロメール、ルボックス、レクサプロなど)
- ベンゾジアゼピン系
抗不安薬 - 非ベンゾジアゼピン系抗不安薬
- 抗うつ薬を使用することが多い
強迫性障害に関連する治療薬
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- 脳内の神経伝達を改善し、意欲を高めたり、憂鬱な気分などを改善する薬
- うつ病では脳内のセロトニンなどの神経伝達物質の働きが不調となり、意欲の低下、不安などの症状があらわれる
- シナプス前終末から遊離(放出)された神経伝達物質は、自身の受容体へ作用(結合)することで情報が伝達されるが、遊離された神経伝達物質の一部はシナプス前終末へ回収(再取り込み)される
- 本剤は脳内でセロトニンの再取り込みを阻害しセロトニンの働きを増強することで抗うつ作用などをあらわす
- 本剤はセロトニンの働きが深く関わるとされる強迫性障害やパニック障害などに使用する場合もある
強迫性障害の経過と病院探しのポイント
強迫性障害が心配な方
強迫性障害に関連する専門科は精神科および神経科、メンタルヘルス科、一部の心療内科です。強迫性障害を主に診療する専門医は精神科専門医です。精神科の専門家としての資格には、精神保健指定医という国家資格と、精神科専門医という学会認定資格があります。
強迫性障害は精神疾患の中で治療を受けていない患者さんの割合の高い病気です。内科などでは治療が難しく、統合失調症と区別がつきにくい場合などもあり、専門医による診断が有効です。
強迫性障害の治療のほとんどは外来通院で受けることができます。近くの精神科クリニック、精神科病院、総合病院の精神科を受診してください。治療内容はクリニックと病院で差があるわけではなく、病院が高度な治療を施すことができるということはありません。
入院治療は確認行為や強迫観念が重度で外出はおろか、食事や身の回りのことにも支障をきたすようなケースなどに限られます。強迫性障害の入院治療を専門で行っている病院は限られているため、入院する場合は外来主治医とよく相談して方針を決めるようにしましょう。
強迫性障害は主に問診と日常生活の状況聴取により診断される病気です。診断のために血液検査や頭部MRI画像などは必ずしも必要ではありませんが、薬物療法を行う前に身体的な問題の有無を確認するために血液検査などを行う場合があります。
精神科クリニックでは血液検査はできることが多いですが、頭部MRI検査を行うことができるところは少ないため、頭部MRIを行う場合は、提携している脳神経外科や総合病院に検査を受けに行ってもらうこともあります。
強迫性障害でお困りの方
治療は抗うつ薬を中心とした薬物療法と曝露反応妨害法などの心理療法(カウンセリング)を併用して行うことが最も治療効果が高いと言われています。どちらかだけでも治療効果が認められると言われていますが、改善が不十分となるケースも多く、治療期間も長くなる可能性があります。
薬物療法はほとんどの病院で同等のものが受けられますが、曝露反応妨害法については行っていない医療機関もありますので、治療を受ける際には医師に確認したほうが良いでしょう。