2017.07.20 | ニュース

関節リウマチの飲み薬など、新薬12製品はどんな薬?

添付文書の記載から

関節リウマチの飲み薬など、新薬12製品はどんな薬?の写真

2017年7月3日に、新薬12製品が厚生労働省により承認されました。オルミエント、アメナリーフ、パルモディア、ジフォルタ、イストダックス、スピンラザほかの効能・効果などを紹介します。

バリシチニブ(商品名オルミエント®)は、関節リウマチを治療する飲み薬です。ほかの治療で効果が不十分だった場合に使用可能となります。

臨床試験では、関節リウマチの患者で、標準的な薬のメトトレキサートで効果が不十分だった人が対象とされました。対象者1,305人は3グループに分けられました。

  • 偽薬の(有効成分を含まない)錠剤と注射を使用するグループ
  • バリシチニブの錠剤と偽薬の注射を使用するグループ
  • 偽薬の錠剤とアダリムマブ(既存の治療薬)の注射を使用するグループ

12週間の治療後、一定基準以上の改善(ACR20)が得られた人の割合は次のようになりました。

  • 偽薬:40.2%
  • アダリムマブ:61.2%
  • バリシチニブ:69.6%

バリシチニブは偽薬と比べても、アダリムマブと比べても改善が多いと見られました。

主な副作用は上気道感染、帯状疱疹、LDLコレステロール値上昇などでした。また、複数の臨床試験の結果を解析したところ、100人が1年間使用するごとに0.73件の率で悪性腫瘍(がん)が発生し、ほかの関節リウマチ治療薬を使用中の場合と同程度と見られました。


参照:オルミエント錠4mg/オルミエント錠2mg 添付文書

 

アメナメビル(商品名アメナリーフ®)は、帯状疱疹の治療薬です。

臨床試験では、帯状疱疹で皮疹(水ぶくれなど)が現れはじめて72時間以内の人を対象に、既存の薬であるバラシクロビルと比較されました。

薬を飲み始めて4日目までに皮疹が増えるのが止まった人の割合は、バラシクロビルを飲んだグループで75.1%、アメナメビルを飲んだグループで81.1%であり、アメナメビルがバラシクロビルより劣ることはないと見られました。

主な副作用は検査値の異常などでした。

 

参照:アメナリーフ錠200mg 添付文書

 

ペマフィブラート(商品名パルモディア®)は、血液の中性脂肪を減らす薬です。フィブラート系薬剤に分類されます。

臨床試験では、中性脂肪値が高い人189人がペマフィブラート0.2mg/日(効果不十分ならば12週以降に0.4mg/日に増量可)を52週間飲み、効果を検証しました。

治療開始後24週と52週での中性脂肪値の変化は次のようになり、効果が確認されました。

  • 24週:48.77%低下
  • 52週:45.93%低下

承認時までの臨床試験でペマフィブラートを飲んだ1,418人のうち14.5%に何らかの副作用が発生しました。主な副作用は胆石症、糖尿病などでした。


参照:パルモディア錠0.1mg 添付文書

 

プララトレキサート(商品名ジフォルタ®)は、抗がん剤です。「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」を効能・効果として承認されました。

末梢性T細胞リンパ腫は、血液の細胞ががん化したものです。

臨床試験では、対象者25人がプララトレキサートを使用しました。うち20人の結果をもとに効果が評価されました。

がんが減少する変化(奏功)は20人中9人に現れました

25人全員に何らかの副作用が現れました。主な副作用は、口内炎、血小板減少症、肝障害の検査値異常、貧血などでした。

 

参照:ジフォルタ注射液20mg 添付文書

 

ロミデプシン(商品名イストダックス®)は、抗がん剤です。「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」を効能・効果として承認されました。

臨床試験では、対象者46人がロミデプシンを使用しました。40人の結果から効果が評価されました。奏功は42.5%で得られました

全員に何らかの副作用が現れました。主な副作用は、血小板減少、白血球減少、貧血などでした。

 

参照:イストダックス点滴静注用10mg 添付文書

 

ヌシネルセン(商品名スピンラザ®)は、乳児型脊髄性筋委縮症の治療薬です。遺伝子検査などで使用条件に合うことが確認された子供に使用可能となります。

脊髄性筋委縮症は、筋委縮・筋無力などを現す、まれな病気です。

臨床試験では、対象者を2グループに分け、ヌシネルセンを使用するグループ、偽処置(有効成分を使用しない処置)を行うグループで比較しました。一定基準以上の運動の改善が、偽処置のグループでは得られませんでしたが、ヌシネルセンのグループでは41.2%で得られました。

臨床試験でヌシネルセンを使用した80人中9人に何らかの副作用が現れました。主な副作用は発熱などでした。

 

参照:スピンラザ髄注12mg 添付文書

 

ビプレッソ®(一般名クエチアピン)は、「双極性障害におけるうつ症状の改善」を効能・効果として承認されました。

双極性障害はうつ症状と躁症状を繰り返す病気です。

クエチアピンを有効成分とする薬剤としてはすでにセロクエル®などが統合失調症の治療に使用されていますが、双極性障害におけるうつ症状に対しては用法・用量を変え、別の商品名とされました。
臨床試験では、クエチアピン1日1回300mgと偽薬を比較したところ、8週間の治療後に症状のスコア(MADRS、0点から60点)が2.4点の差でクエチアピンのグループのほうが大きく改善していました。

承認時までの日本で行われた臨床試験では、84.2%に何らかの副作用が現れました。主な副作用は傾眠、口渇、倦怠感、体重増加などでした。また副作用かどうかは不明ですが、原因不明の突然死の例がありました。

 

参照:ビプレッソ徐放錠50mg/ビプレッソ徐放錠150mg 添付文書

 

デプロメール®、ルボックス®(いずれも一般名フルボキサミン)は、抗うつ薬の一種であるSSRIに分類される薬剤です。すでにうつ病などの治療に使われていますが、新たに「強迫性障害(小児)」を効能・効果として、そのための用量が承認されました。

臨床試験では、フルボキサミンと偽薬で治療前後の症状の変化を比較したところ、症状のスコア(JCY-BOCS、0点から40点)が4.3点の差でフルボキサミンのグループのほうが大きく改善していました。

強迫性障害のある子供の臨床試験では、19人中6人に何らかの副作用が現れました。主な副作用は吐き気、眠気、食欲不振でした。

 

参照:デプロメール錠25/デプロメール錠50/デプロメール錠75 添付文書、ルボックス錠25/ルボックス錠50/ルボックス錠75 添付文書

 

ランレオチド(商品名ソマチュリン®)は、成長ホルモンの分泌を減らす薬です。従来先端巨大症などの治療に使われていましたが、新たに「膵・消化管神経内分泌腫瘍」が効能・効果に追加されました(120mgの製剤のみ)。

臨床試験では、ランレオチドを使用する48週間の治療の結果、腫瘍の状態が同程度または改善傾向だった人が64.3%でした。

臨床試験で安全性評価の対象となった32人のうち84.4%に何らかの副作用が現れました。主な副作用は注射した場所の硬結(硬くなる)、白色便、鼓腸(腸にガスが溜まる)などでした。

 

参照:ソマチュリン皮下注60mg/ソマチュリン皮下注90mg/ソマチュリン皮下注120mg 添付文書

 

プラリア®(一般名デノスマブ)は、骨の吸収を抑えるなどの作用がある薬です。従来骨粗鬆症の治療に使われていますが、新たに「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」が効能・効果に追加されました。

デノスマブを有効成分とする薬剤はほかにランマーク®もありますが、用量などが違います。

関節リウマチに対する臨床試験で、デノスマブと偽薬を比較し、2年間の治療による骨折発生率で効果を判定したところ、椎体骨折はデノスマブのグループで3.6%、偽薬のグループで10.3%に発生し、デノスマブが有効と見られました。

主な副作用は慢性胃炎、低カルシウム血症などでした。

 

参照:プラリア皮下注60mgシリンジ 添付文書

 

カナリア®配合錠(一般名テネリグリプチンとカナグリフロジンの合剤)は糖尿病治療薬です。従来使われている糖尿病治療薬のうち、カナグリフロジン(商品名カナグル®)とテネリグリプチン(商品名テネリア®)の2種類の有効成分を含みます。

臨床試験としては、カナグリフロジン単独と比較する試験、テネリグリプチン単独と比較する試験が行われました。いずれも有効成分を増やした治療により血糖値を下げるなどの効果が増すと見られました。

主な副作用は頻尿、血中ケトン体増加、外陰部膣カンジダ症、便秘、口渇などでした。

 

参照:カナリア配合錠 添付文書

 

新薬が加わることにより、保険診療として新しい治療法が使えるようになります。効能・効果や副作用に対応して報告されているデータを参考に、従来の治療法と比較することで、ひとりひとりに合わせた治療選択の幅を広げることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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