まんせいいえん
慢性胃炎
胃粘膜が慢性的に炎症を起こしている状態。ヘリコバクター・ピロリ感染が主な原因である
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最終更新: 2017.12.06
慢性胃炎の基礎知識
POINT 慢性胃炎とは
慢性胃炎は何らかの影響で胃壁に持続的な炎症が起こっている病気です。ヘリコバクター・ピロリ菌感染やストレス、薬剤などが主な原因になります。胃もたれ・吐き気・腹痛・膨満感などが症状になります。 症状や身体診察に加えて、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を用いて診断します。また、同時にヘリコバクター・ピロリ菌感染がないかどうかやがん細胞が潜んでいないかを調べます。治療には胃酸を抑える薬や胃粘膜を保護する薬を用いますが、ヘリコバクター・ピロリ菌感染がある場合は抗菌薬治療が必要になりますし、がん細胞が見られた場合は胃がんの治療が必要になります。慢性胃炎が心配な人や治療したい人は、消化器内科・消化器外科・内視鏡科などを受診して下さい。
慢性胃炎について
- 何らかの原因で胃粘膜が
慢性的 に炎症 を起こしている状態- ヘリコバクター・ピロリ感染が主な原因
- そのほかにもストレスや薬の影響でも起こることがある
- 歳を取るに従って起こりやすくなる
- 大きく3つに分類される
- 表層性胃炎:胃の表面部分(粘膜部分)に炎症が現れる
- 萎縮性胃炎:粘膜や組織が
萎縮 し胃液の分泌が少なくなる - 肥厚性胃炎:胃粘膜が異常に分厚くなる
- 感染が長く続くと胃がんに進展することがある
慢性胃炎の症状
- 胃のもたれ・不快感
- 食前や食後に腹痛
- 膨満感や胸焼け
- 吐き気
慢性胃炎の検査・診断
胃カメラ (上部消化管内視鏡検査 ):胃の粘膜の状態を調べる組織診 :胃カメラの際に胃の粘膜の一部をを切り取り、がん 細胞やピロリ菌 がいるかを調べる
慢性胃炎の治療法
- 胃炎に対する治療
- プロトンポンプ阻害薬、H2遮断薬
- 胃酸の分泌を抑え胃のダメージを減らす
ピロリ菌 に感染していればその除菌(「ヘリコバクター・ピロリ感染」を参照)- プロトンポンプ阻害薬、ペニシリン系
抗菌薬 とマクロライド系抗菌薬またはメトロニダゾールの3剤を同時に使う
- プロトンポンプ阻害薬、ペニシリン系
- プロトンポンプ阻害薬、H2遮断薬
- 予防、再発予防方法
- 暴飲暴食を控えて胃に負担のかからない生活をする
- 長期的な経過
- 胃がんに進展していないか、定期的に
内視鏡 検査を受けることが重要
- 胃がんに進展していないか、定期的に
- 慢性胃炎自体は心配する必要のない病気
慢性胃炎に関連する治療薬
抗ドパミン薬(消化管運動改善薬)
- 消化管運動を亢進させ、消化管運動の低下などによる吐き気、胸やけ、食欲不振などを改善する薬
- 消化管運動が低下することによって吐き気、胸やけ、食欲不振などがあらわれる場合がある
- アセチルコリンの作用が増強されると消化管運動が亢進するが、アセチルコリンはドパミンによってその作用を抑えられる
- 本剤は抗ドパミン作用をあらわし消化管運動を亢進させる作用をあらわす
- 本剤の中には嘔吐中枢を抑制することで吐き気・嘔吐を抑える薬剤もある
酸中和薬(制酸薬)
- 消化管の攻撃因子である胃酸を中和し、消化性潰瘍や胃炎などの治療に用いる薬
- 消化管に対し胃酸などの攻撃因子が胃粘膜などの防御因子を上回っている状態では消化性潰瘍や胃炎などがおこりやすい
- 金属を含む薬剤の一部は酸(胃酸)を中和する作用をあらわす
- 本剤はアルミニウム、カルシウム、マグネシウムなどの金属を含み、酸を中和する薬剤となる
- 本剤の中には、粘膜保護作用や緩下(お腹を緩くする)作用をあらわす薬剤もある
副交感神経刺激薬(消化管運動亢進薬)
- 副交感神経の働きを活発にし消化管運動を亢進させることで、胃もたれなどの消化器症状を改善する薬
- 消化管運動が低下することなどによって胃もたれ、胸やけ、胃の痛みなどがおこることがある
- 消化管運動は副交感神経が関与し、神経伝達物質のアセチルコリンの作用により副交感神経が活発になる
- 本剤はアセチルコリンの増強作用などにより副交感神経を活発にする作用をあらわす
- 薬剤によってアセチルコリンへの作用の仕組みが異なる場合がある
慢性胃炎の経過と病院探しのポイント
慢性胃炎が心配な方
慢性胃炎では、胃もたれや吐き気、胸焼けといったような症状がみられます。このような症状に該当してご心配な方は胃カメラ(上部消化管内視鏡)の検査が行える消化器クリニックでの受診をお勧めします。
胃炎は胃の内側の粘膜の異常ですので、レントゲンやCTといったような画像検査や、血液検査で診断することはできません。
慢性胃炎でお困りの方
慢性胃炎の治療としては、胃薬の内服とともにピロリ菌の除菌治療が重要です。一定期間抗生物質を内服することで、胃にピロリ菌がいる方は、菌を退治することができます。ピロリ菌を除菌することによって胃がんの発生リスクを低下させることが治療の目的です。
ピロリ菌の除菌は、消化器内科のクリニックや、内科のある病院であればほとんどの医療機関で受けることができます。また、そのまま放置することで、まれに胃がんを発症する方がいますので、除菌を受けた上で、1年に1回など定期的な胃透視(バリウムによる検査)や胃カメラで経過を見ていくのが良いでしょう。