いがん
胃がん
胃の壁の粘膜にできたがんのこと。ピロリ菌への感染や喫煙、塩分の多い食事などでリスクが上がる
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最終更新: 2024.11.08
胃がんの基礎知識
POINT 胃がんとは
胃壁の粘膜にできたがんを指します。主な原因にはピロリ菌感染・喫煙・高塩分食などがあります。初期には症状を自覚することは少ないですが、進行すると腹痛・みぞおち周囲の不快感・食欲低下・倦怠感(だるさ)・体重減少などが現れます。診断のために上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)・血液検査・画像検査が行われます。主な治療として手術・内視鏡治療・抗がん剤治療(化学療法)・緩和治療があり、全身状態やがんの進行度を鑑みて選択されます。胃がんが心配な人や治療したい人は、消化器内科・消化器外科・内視鏡科を受診してください。
胃がんについて
- 胃の壁の粘膜にできた
がん - 胃の壁は層構造になっていて、一番内側の層(食道を通過する食べ物に接する部分)は粘膜で構成されている
- 胃がんが起こりやすくなる原因や要因については以下のものが関係していると考えられている
- ヘリコバクター・ピロリの感染
- 喫煙
- 塩分の多い食事
- がんが胃の壁の中でどのくらい広がっているかによって早期がんか進行がんかを判断する
- 早期がん:表面(粘膜下層まで)に留まっているもの
- 進行がん:表面よりも深いところ(筋肉の層など)までがんが広がっているもの
- 頻度
- 胃がんはがんの中で多い部類に入り、年間10万人以上が胃がんと診断されている
- 死因になることも多く、毎年5万人近い人が胃がんが原因で死亡している
- 近年では、がん検診や
ピロリ菌 の除菌などが普及しつつあるので、胃がんによる死亡率が改善にあると考えられている
- 胃にできる他の
悪性腫瘍
胃がんの症状
- 主な
症状 - 早期胃がんでは症状が出にくい
- 健診の
胃カメラ などで偶然見つかる場合が多い - 胃がんによって
潰瘍 ができていると胃の痛み(特に空腹時の腹痛)などが起こることもある
- 健診の
- 進行
がん になると以下のような症状が出る- 体重減少
- 貧血
- 食欲が落ちる
- 胃の入り口にがんができた場合の症状
- 飲み込みにくさ
- 嘔吐
- 胃の出口にがんができた場合の症状
- 食後の
腹部膨満 感 - 吐き気
- 食後の
- 下痢の原因が胃がんであることはまれ
- 早期胃がんでは症状が出にくい
胃がんの検査・診断
上部消化管造影検査 造影 剤(バリウム)を使って、胃の形や胃の動きなどを調べる
上部消化管内視鏡検査 (胃カメラ )- 食道や胃、十二指腸を観察する
がん が疑わしい部分を取り出して顕微鏡を使った検査(病理検査)を行う
超音波内視鏡検査 内視鏡 を用いた超音波検査 のことを指し、がんの深さを調べるのに適している
- 血液検査:貧血の有無、
腫瘍マーカー などを調べる - 画像検査:がんの大きさや広がり(
転移 など)を調べる腹部超音波検査 CT 検査(胸部・腹部)
- 次の3因子からがんの進行度(
病期 、ステージ )を推定する- がんの深さ(深達度)
リンパ節転移 の有無、広がり遠隔転移 の有無(他の臓器への転移)
胃がんの治療法
- 主な治療
- 早期
がん の治療内視鏡 治療(内視鏡を使いがんの部分を切り取る治療)で行うことができる- 手術に比べて内視鏡治療は身体への負担が少ないが、初期のがんに限られる
- 内視鏡による治療でがんが取りきれないことがあり、その場合には手術が行われる
- 進行がんで
遠隔転移 がない場合の治療- 手術が行われる
- 胃がんのある場所や大きさ、進行具合によって手術の方法が変わってくる
- 幽門側胃切除、噴門側胃切除:胃の一部を切り取る
- 胃全摘術:胃を全て取り除く
- 手術の効果を高めるために、手術の前後で
抗がん剤治療 が行われる
- 胃がんのある場所や大きさ、進行具合によって手術の方法が変わってくる
- 手術が行われる
- 進行がんで遠隔転移がある場合の治療
- 抗がん剤治療
- 抗がん剤治療でがんを完全に治すことは難しい
- あくまでがんの進行を遅らせたり、一時的に
腫瘍 を小さくしたりする効果を期待して行われる
- 抗がん剤治療
- 胃がんに
放射線療法 は基本的に効果がないと考えられている
- 早期
- あらゆる場面で苦痛を和らげるための治療(緩和治療)を行うことができる
- 緩和治療は決して諦めた人の治療ではないので、全ての人が受けることができる
- 想定される経過
5年生存率 は、早期がんに対して治療すれば95%以上と言われている- がんが進行すると進行度に従って生存率は下がってくる
胃がんに関連する治療薬
白金製剤(プラチナ製剤)
- 細胞増殖に必要なDNAに結合することでDNA複製阻害やがん細胞の自滅を誘導し抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞の増殖には遺伝情報をもつDNAの複製が必要となる
- 本剤はがん細胞のDNAと結合し、DNAの複製とがん細胞の自滅を誘導することで抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤は薬剤の構造中に白金(プラチナ:Pt)を含むため白金製剤と呼ばれる
微小管阻害薬(タキサン系)
- 細胞分裂で重要な役割を果たす微小管に作用し細胞分裂を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序に増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞増殖は細胞が分裂することでおこるが、細胞分裂に重要な役割を果たす微小管という物質がある
- 細胞分裂の後半では、束になっている微小管がばらばらになる(脱重合する)必要がある
- 本剤は微小管の脱重合を阻害し細胞分裂を阻害する作用をあらわす
代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)
- DNAの構成成分に類似した化学構造をもち、細胞増殖に必要なDNA合成を阻害して抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序に増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞増殖に必要なDNAの成分にピリミジン塩基と呼ばれる物質がある
- 本剤はピリミジン塩基と同じ様な構造をもち、DNA合成の過程でピリミジン塩基の代わりに取り込まれることなどにより抗腫瘍効果をあらわす
- フルオロウラシルやシタラビンを元にして造られ体内で代謝を受けてこれらの薬剤へ変換される製剤(プロドラッグ製剤)がある