ピロリ菌を除菌すると本当に胃がんを予防できるのか?

「ピロリ菌陽性ですね。除菌しましょう」
健康診断や人間ドックで「ピロリ菌」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。ピロリ菌は胃に感染する細菌で、慢性胃炎や胃がんの原因になると考えられています。年齢別に見てみると、日本では70歳以上の40%、50歳代の20%、40歳代の12%の人がピロリ菌に感染していると言われ、多くの人が胃がんのリスクを抱えている可能性があります。
このコラムでは、ピロリ菌の除菌治療がなぜ重要なのか詳しく説明します。
1. ピロリ菌は胃がんを引き起こす
「最新がん統計」によると、新たに
胃がんの
ピロリ菌とはどのような菌か
ピロリ菌はらせん形をした大きさ3.5μm(マイクロメートル、1mmの1000分の1)の
動物の胃に生息する菌ですが、強酸である胃酸の中で生きていくために「ウレアーゼ」と呼ばれる
ピロリ菌が胃粘膜に感染すると「ピロリ菌感染胃炎」を引き起こします。ピロリ菌は除菌されない限り生涯にわたって感染をつづけ、進行すると胃粘膜は「萎縮性胃炎」と呼ばれる慢性胃炎の状態になります。萎縮性胃炎の状態になると、胃がんが発生しやすくなると考えられています。
ピロリ菌がいるからと言って必ず胃がんになるわけではありませんが、胃がんを予防するためには次のことが重要です。
- ピロリ菌を除菌すること
- 萎縮性胃炎を改善すること
ピロリ菌を除菌する前には、まずピロリ菌に感染しているかどうかを検査で確認する必要があります。感染しているとわかれば、胃酸分泌抑制薬と2種類の抗菌薬を内服して除菌治療を受けることになります。(検査と治療ついては次回以降のコラムで詳しく説明します。)
では、除菌によって胃がんがどのくらい予防できるのでしょうか。
2. ピロリ菌を除菌するとどのくらい胃がんを予防できるのか
ピロリ菌を除菌するとすぐに正常状態に戻るわけではなく、胃粘膜の
3. ピロリ菌除菌後も胃がんの検査は必要か
上で述べたように、ピロリ菌を除菌すると胃がんリスクは低下します。しかし、ピロリ菌未感染の人に比べると胃がんが発生する頻度は高い状態です。特に萎縮性胃炎が進行している人にはピロリ菌除菌後も胃がんのリスクが高いまま残ります。
胃がんは早期発見すれば
内視鏡検査を受ける間隔は特に決まっていませんが、1年から2年ごとの検査が推奨されます。一人ひとりの病状によっても異なりますので主治医とよく相談してください。
4. ピロリ菌除菌はいつ行うのが良いか
胃がん予防のためには、人生のなるべく早い時期にピロリ菌感染の有無を調べて除菌を行うことが有効と考えられます。また、ピロリ菌は両親から子ども、祖父母から孫へと家族内でうつると言われており、親になる前に検査を受けることで次世代への感染対策にもつながります。
中学生以上の年齢になると新たにピロリ菌に感染する可能性が低くなることと、ピロリ菌感染の検査が成人と同等の精度で行えることから、
一部の自治体では、中学生を対象に希望者に対してピロリ菌検査および除菌治療を行っていますので、お住いの自治体のホームページなどで調べてみてください。(費用は自治体負担または自己負担です。また、2019年現在、子どもの除菌治療は
5. まとめ
ピロリ菌感染は胃がんの重大な危険因子であり、除菌治療を受けることで胃がんのリスクを低下させることができます。自身の健康のため、また次世代の胃がん予防のためにも、本コラムを参考にピロリ菌検査・除菌治療を検討してみてください。
執筆者
・「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン」(日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会)、先端医学社、2016
・国立がんセンター:最新がん統計
・Up To Date: Indications and diagnostic tests for Helicobacter pylori infection
・日本消化器病学会ホームページ:Q.学校でのピロリ菌検査はどうなっていますか?
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。