ヘリコバクター・ピロリ除菌製剤
2種類の抗菌薬と胃酸分泌抑制薬のPPI(プロトンポンプ阻害薬)を1シート(1日分)まとめたヘリコバクター・ピロリ除菌の専用製剤
同義語:
ヘリコバクター・ピロリ除菌治療剤 ピロリ菌除菌薬

ヘリコバクター・ピロリ除菌製剤の解説

ヘリコバクター・ピロリ除菌製剤の効果と作用機序

  • 2種類の抗菌薬と胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)を1シート(1日分)にまとめたヘリコバクター・ピロリ除菌の専用製剤
    • ヘリコバクター・ピロリピロリ菌)は胃の粘膜に感染し慢性胃炎胃潰瘍十二指腸潰瘍などを引き起こす主な原因の一つ
    • ピロリ菌はウレアーゼという酵素を作り出すことで、強い酸である胃酸から身を守っている
    • ピロリ菌の除菌は一般的に2種類の抗菌薬と胃酸分泌抑制薬(PPI)を併用する治療法が行われている
  • 慢性胃炎、消化性潰瘍などの消化器疾患以外にもピロリ菌の関連性が考えられる疾患の改善目的で使われる場合もある

ヘリコバクター・ピロリ除菌製剤の薬理作用

ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:ピロリ菌)は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍を引き起こす主な原因とされる。ピロリ菌は胃の粘膜に感染し炎症などを引き起こし、感染が長期に渡って続くとやがて胃粘膜全体に広がり慢性的な胃炎、消化性潰瘍などを引き起こす。

胃内には強い酸である塩酸を含む胃酸があり、食物などの消化や細菌の殺菌などを行っているが、ピロリ菌自体がウレアーゼという酵素を作り出し、胃の中の尿素を分解することでアンモニアを作り出す。このアンモニアはアルカリ性を示し、ピロリ菌の周囲の胃酸が中和されることで、本来は生息できない強酸がある状況下でも生息を可能としている。

ピロリ除菌療法では、複数の薬剤を用いて行い、一般的にはアモキシシリン(ペニシリン系抗菌薬)、クラリスロマイシン(マクロライド系抗菌薬)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの薬剤を併用する治療法が行われている。

本剤はピロリ除菌に対する専用の製剤で、1シート(1日分)に1日服用分の薬剤がまとまっている。これにより除菌療法を行う上で重要な服薬アドヒアランスを確保し、服薬アドヒアランスの低下による除菌率低下や耐性菌の出現などのリスクを少なくするメリットが考えられる。

本剤の薬剤構成は大きく2つに分かれ、

[1]アモキシシリン+クラリスロマイシン+PPI

[2]アモキシシリン+メトロニダゾール+PPI

に分かれる。

[1]として、ラベキュア®(PPIがラベプラゾール)、ボノサップ®(PPIがボノプラザン)がある。

[2]として、ラベファイン®(PPIがラベプラゾール)、ボノピオン®(PPIがボノプラザン)がある。

薬剤の選択には個々の薬剤に対する過敏症なども考慮されるが、一般的には[1]の製剤は1次除菌に使われ、[2]の製剤は2次除菌に使われる。

なお、ピロリ菌は消化性潰瘍などの消化器疾患だけでなく、特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血などとの関連性が考えられていて、これらの疾患の改善目的で本剤が使われる場合も考えられる。

ヘリコバクター・ピロリ除菌製剤の主な副作用や注意点

  • 消化器症状
    • 下痢、吐き気、食欲不振などがあらわれる場合があり、味覚の変化を感じるなどの症状があらわれる可能性もある
  • 皮膚症状
    • 発疹、痒みなどがあらわれる場合がある
  • 肝機能障害
    • 頻度は非常に稀とされるが、AST、ALT、γ-GTPなどの上昇などを伴う肝機能障害があらわれる場合がある
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸発疹、吐き気、痒みなどがみられ、症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 他の薬剤との飲み合わせに関して
    • 本剤に使われるPPIやクラリスロマイシンなどは他の薬剤との相互作用に特に注意が必要
    • PPIとの相互作用に特に注意が必要な薬剤例
      ・アタザナビル、リルピビリン、ジゴキシン、イトラコナゾールなど
    • クラリスロマイシンとの相互作用に特に注意が必要な薬剤例
      ・アスナプレビル、バニプレビル、タダラフィル、スボレキサント、エルゴタミン製剤など
    • 上記以外にも注意すべき薬剤があり事前に確認するなど適切に対処する
  • メトロニダゾールを含む製剤(ラベファイン、ボノピオン)と妊婦や授乳婦等に関して
    • メトロニダゾールの胎児に対する安全性は確立していない
    • 治療上必要と判断される場合を除き、特に妊娠3ヶ月以内は投与を避ける(経口投与により胎盤関門を通過し、胎児へ移行することが報告されている)
    • 授乳中の婦人が使用する場合は、授乳を中止する(母乳中へ移行する場合がある)

ヘリコバクター・ピロリ除菌製剤の一般的な商品とその特徴

ラベキュア

  • アモキシシリン(抗菌薬)、クラリスロマイシン(抗菌薬)、ラベプラゾール(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
  • ラベキュアパック400と800の違いに関して
    • 規格の違いはクラリスロマイシンの1日服用量の違い
      ・400:クラリスロマイシンが400mg/日
      ・800:クラリスロマイシンが800mg/日

ラベファイン

  • アモキシシリン(抗菌薬)、メトロニダゾール(抗菌薬)、ラベプラゾール(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
  • 主にピロリ菌の2次除菌療法で使われる

ボノサップ

  • アモキシシリン(抗菌薬)、クラリスロマイシン(抗菌薬)、ボノプラザン(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
  • ボノサップパック400と800の違いに関して
    • 規格の違いはクラリスロマイシンの1日服用量の違い
      ・400:クラリスロマイシンが400mg/日
      ・800:クラリスロマイシンが800mg/日

ボノピオン

  • アモキシシリン(抗菌薬)、メトロニダゾール(抗菌薬)、ボノプラザン(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
    • 主にピロリ菌の2次除菌療法で使われる