2016.06.25 | ニュース

ピロリ除菌で胃がんは防げる

24の研究、48,064人のデータを解析

from Gastroenterology

ピロリ除菌で胃がんは防げるの写真

日本人に多い胃がんの一番の原因はピロリ菌です。そして日本人の50%以上はピロリ菌感染を経験すると言われています。過去の研究を解析し、ピロリ菌の除菌で胃がんの発症率が減るとした研究が報告されました。

◆ヘリコバクター・ピロリ菌と胃がんの関係は?

ヘリコバクター・ピロリ菌が胃に感染すると、胃の粘膜に炎症が起こることで、やがて胃がんが発生すると考えられています。

そしてピロリ菌に感染している人は、感染していない人に比べて6倍も胃がんになりやすいという研究結果もあります。そのためピロリ菌を除菌することで胃がんになるリスクを減らすことができると考えられ、様々な研究が積み重ねられてきました。

またピロリ菌の除菌と胃がんの予防に関連して、「ピロリ菌に感染していれば症状がなくても除菌するべきなのか、それとも胃炎などの症状がある人に対してのみ除菌するべきなのか」、「ピロリ菌の感染が原因で早期胃がんになった人に除菌して効果があるのか」といったことが論点になっています。

 

◆ピロリ菌の除菌によって、胃がんの発症率は減るのか?

そのような背景の下、研究班は文献データベースからこれまでの研究結果を検索し、ピロリ菌の除菌によって胃がんの発症率がどれくらい減るかを調べた研究を集めました。

関係する研究報告24件が集められ、対象者合計48,064人のデータをもとに、研究結果が統合されました。またピロリ菌に感染しているけれども無症状なのか、早期胃癌に対して内視鏡手術後なのかということや、年齢や性別、除菌しなかった場合の胃がんの発症率などによって、分類して除菌の効果を調べました。

 

◆ピロリ菌の除菌を行った人たちは、行っていない人たちに比べて胃がんになりにくかった

次の結果が得られました。

ベースラインの胃がん発症率で調整すると、除菌を行った参加者は、行っていない参加者に比べて、胃がんの発症率が低かった。(プールした発症率比0.53、95%信頼区間0.44から0.64)

「全体として、ピロリ菌の除菌を行うことで胃がんの発症率は下がった」という結果でした。

 

◆ピロリ菌に感染している人の中でも、どういった人たちに除菌することで効果的に胃がんを予防できるのか?

また、どんな人に除菌の効果があるかを分けて調べると、次のような結果が得られました。

除菌によって有意に胃がんの発症率が下がったのは、ピロリ菌に感染しているけれども症状がない参加者(プールした発症率比0.62、95%信頼区間0.49から0.79)と胃がんに対して内視鏡手術後の参加者(プールした発症率比0.46、95%信頼区間0.35から0.60)であった。

「ピロリ菌に感染しているけれども症状がない人」の場合も、「胃がんになり、内視鏡手術を行った人」の場合も、ピロリ菌を除菌することで胃がんを予防する効果があったことが分かりました。

 

この研究からはピロリ菌に感染している場合、症状がなくても、進んで早期胃がんになっていても、ピロリ菌の除菌をすることで胃がんを予防する効果があると考えられます。ピロリ菌除去によって胃がんの予防を進めるには、人々全員に対してピロリ菌の検査を行って除菌をするために、たくさんのお金が必要となることも課題です。さらに研究が進み、効果的に胃がんを予防できる方法が確立することが望まれます。

執筆者

二宮 英樹

参考文献

Association Between Helicobacter pylori Eradication and Gastric Cancer Incidence: A Systematic Review and Meta-analysis.

Gastroenterology. 2016 May.

[PMID: 26836587]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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