2018.11.29 | コラム

指の痛みで病院を受診したら「へバーデン」「リウマチ」と言われた。それぞれどういう意味?

症状は似ていますが治療法が異なるので見極めが重要です

指の痛みで病院を受診したら「へバーデン」「リウマチ」と言われた。それぞれどういう意味?の写真

「この指が腫れているのはへバーデンです」
「関節の痛みはリウマチによるものです」
指の痛みが続くと思って病院を受診したら医師から「へバーデン」「リウマチ」と言われた経験がある人もいるかもしれません。このコラムでは「へバーデン」「リウマチ」の意味や、それぞれの病気が疑われると医療機関でどういう対応がされるかを説明していきます。

1. 「へバーデン」は変形性関節症で見られる指の変形

「へバーデン」の正式名称は「へバーデン結節」で、変形性関節症のうち指の第1関節(指の最も先端にある関節)の変形があるものをいいます。変形性関節症は関節の中の軟骨がすり減ることで、関節の痛みが起こる病気の総称をいいます。

 

 

軟骨は関節を曲げた時に骨同士がぶつかるのを防ぐためクッションの役割を果たしていますが、年齢を重ね軟骨がすり減って変形すると関節を曲げた時に骨同士がぶつかるようになります。この骨同士のぶつかりが関節の痛みや腫れの原因となります。

へバーデン結節では骨同士がぶつかることで関節周囲の骨が太くなるので、触った感じとても硬いのが特徴です。

 

2. 「リウマチ」は関節の痛みや腫れを起こす関節リウマチという病気

それに対して、医療者が「リウマチ」と言う時は「関節リウマチ」という病気のことを指して使われることが多いです。関節リウマチは免疫システムがおかしくなり関節が攻撃されることで関節の痛みや腫れが起こる病気です。通常、免疫システムはウイルスや細菌などの外敵が身体の中に入ると駆除するために働いていますが、関節リウマチの人では免疫が自分の関節を攻撃してしまうことが原因になります。(関節リウマチに関して詳しく知りたい人はこちらのページを参考にしてください。)

関節リウマチはさまざまな関節で問題になりますが、手や指で症状が出る場合には第2関節や指の根元、手首などに症状が出ることが多いです。また、関節リウマチで見られる関節の腫れは突き指や捻挫をした時のような腫れ方で、ヘバーデン結節と比べると柔らかいのが特徴です。

 

【関節リウマチとヘバーデン結節の特徴まとめ】

  関節リウマチ ヘバーデン結節
症状が出やすい部位
  • 指の第2関節
  • 指の根元の関節
  • 手首の関節
  • 足の指の関節
  • 首  など
  • 指の第1関節
関節の腫れ方の特徴
  • 柔らかい
  • 硬い

 

関節リウマチは、関節の腫れた状態が続くと変形につながり、その変形は発症して数ヶ月に特に進行するので、早く見つけて治療しなければなりません。治療についてはあとで詳しく説明します。

 

3. 変形性関節症と関節リウマチはどれくらいいるか

変形性関節症は関節の中でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減ることで起こります。軟骨のすり減りは関節の曲げ伸ばしを繰り返せば繰り返すほど進んでいくので、変形性関節症はお年寄りに多いです。変形性関節症は、いわば長年生きてきた証とも言えます。

変形性関節症は手の指、足、膝など起きている関節に応じて「変形性手指関節症」「変形性足関節症」「変形性膝関節症」と呼ばれますが、変形性膝関節症だけでも日本には2500万人程度いると言われており、非常にたくさんの方が変形性関節症を患っています。

それに対して関節リウマチは30-50代の女性に多い病気で、日本には70-100万人程度いると考えられています。数字だけ比較すると、変形性関節症よりも患者数は少ないですが、関節リウマチも決して珍しい病気ではありません。

 

4. 変形性関節症と関節リウマチのそれぞれの治療とは

変形性関節症は「どの関節におきているか」「どの程度生活に影響しているか」「年齢」「もともと持っている病気」などの状況を踏まえての治療方法が決定されます。症状が軽い場合には、保存療法と呼ばれるリハビリや装具療法(膝のサポーターを用いるなど)、痛み止めで治療されることが多いです。もし、保存療法に効果がない場合は手術療法が行われます。

指の変形であるヘバーデン結節の治療も同様で、テーピングや痛み止めなどの保存療法から開始し、もし保存療法で十分に良くならない場合に手術療法が候補に挙がります。非常に多くの人を困らせている病気ですが、残念ながら2018年現在では変形性関節症を完治させるような治療薬は開発されていません。

関節リウマチは免疫細胞や症状の原因に作用する薬を中心に治療を行います。関節の変形が進んだ人では手術療法を勧められることもありますが、関節リウマチの薬物療法はここ十数年で大きく進歩し、多くの方が薬物療法のみで関節の痛みや腫れなく生活できるような時代になっています。

このように変形性関節症と関節リウマチは治療法が異なります。そのため、関節痛に困っている人の原因が変形性関節症なのか関節リウマチなのかについてしっかり見極めることが重要になってきます。しかし、変形性関節症でもヘバーデン結節のように指の腫れを起こすことがありますし、関節リウマチでも指の腫れを起すため、簡単には原因がわからないことも少なくありません。

 

両者を見極めるポイントについて考えてみます。

 

5. 変形性関節症と関節リウマチをどのように見極めているか

変形性関節症と関節リウマチの見極める時には「指の腫れは硬いか、熱をもっているか」「指のどこが腫れているか」「関節リウマチに関連する血液検査の結果はどうか」といったことを参考にします。以下でそれぞれのポイントについて説明します。

 

指の腫れは硬いか、熱をもっているか

変形性関節症は関節の中でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減ることで、骨どうしがぶつかるようになり、骨が出っ張ることで起こります。そのため、変形性関節症による指の腫れはゴツゴツして硬い感じになります。

それに対し関節リウマチによる関節の腫れは免疫細胞が関節に集まることで起こります。この免疫細胞が集まった時にできる関節の腫れは、少し柔らかく、触ると熱感を持っているのも特徴です。イメージとしては突き指や捻挫をした時の関節の腫れに近いです(突き指や捻挫をした時にも痛めた関節を修復しようと免疫細胞が集まります)。

そのため、硬いゴツゴツした感じではなく、突き指をした時のようなぷくっとした腫れがあったり、それにより指の曲げずらさを自覚したりする場合には、関節リウマチが疑われます。

 

指のどこが腫れているか

指のどの部分が腫れているのかということも重要な情報です。変形性関節症は指の腫れは第1関節にできることが多く、この第1関節にできた腫れをヘバーデン結節と呼びます(なお、第2関節にできることがありますが、第2関節にできたものはブシャール結節と呼ばれます)。それに対し、関節リウマチでは第1関節の腫れは起こりません。そのため、第1関節の腫れがあるかどうかということは変形性関節症と関節リウマチの見極めるポイントの一つになります。

 

関節リウマチに関連する血液検査の結果はどうか

血液検査も変形性関節症と関節リウマチを見極めるのに役立ちます。血液検査の中には「リウマチ因子」「抗CCP抗体」「CRP」「ESR」などの検査項目は変形性関節症では上昇しませんが、関節リウマチでは上昇することが多いです。そのため、指の腫れの感じから変形性関節症と関節リウマチの見極めが難しい場合には、血液検査の結果も踏まえてどちらが疑わしいか判断されます。

 

「ヘバーデン」「リウマチ」が変形性関節症と関節リウマチを意味していることや変形性関節症と関節リウマチがそれぞれどういう病気なのかについて説明しました。変形性関節症と関節リウマチは患者数の多い病気で関節の痛みや腫れなど共通する点も多いですが、治療法は大きく異なるので両者の見極めは非常に重要です。

関節の痛みや腫れが気になるなと思ったら、お近くの整形外科や内科に相談してみてください。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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