2016.04.08 | コラム

関節リウマチの治療法について

リハビリの意義とあわせて
関節リウマチの治療法についての写真
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この記事のポイント

1. 関節リウマチとは
2. 関節リウマチの薬物療法とは
3. 関節リウマチの手術とは
4. 関節リウマチのリハビリとは

関節リウマチは、関節の炎症や破壊が起こり、腫れや痛みが現れる病気です。どのような治療法があるのでしょうか。関節リウマチに対して行われる治療とリハビリについて解説します。

◆関節リウマチとは

関節リウマチは関節に炎症が起こって腫れや痛みが持続する病気です。症状の特徴として、左右対称に複数の関節が痛む、手の指の先の関節(第一関節)には症状がないなどの場合が多いとされます。関節リウマチは30代から50代の女性に多く、患者数は日本で70万人から100万人ほどです。

関節リウマチと似た症状のある病気のひとつが変形性関節症です。変形性関節症は、加齢などによって関節の軟骨がすり減る変化により、膝や股関節などの関節に痛みが現れている状態です。変形性関節症を持つ人の数はとても多く、全国で数千万人とも言われます。関節が痛いので「リウマチだ」と思って病院に行き、「変形性関節症です」と言われる人も大勢います。

 

関節リウマチの根本的な原因は不明ですが、何らかの原因で免疫に異常が起こり、本来は外敵や異物を排除するはずの免疫のしくみが自分自身の体を攻撃し、関節に炎症を起こすことで症状が現れます。関節の炎症は長年にわたって続き、治療しなければしだいに関節が破壊され、手足の変形などにもつながります。治療として、異常な免疫をコントロールする薬などがあり、症状を軽くするなどの効果があります。

さらに、関節の変形が進んで周りの神経に影響が出そうな(あるいは、すでに出ている)場合や、日常生活の動作がしにくくなっている場合などには、手術で改善をはかることもできます。

関節リウマチに対するリハビリは、症状により損なわれる機能を維持・改善し、できる限り自分の力で生活を営むことを目的とします。

 

◆関節リウマチの薬物療法とは

関節リウマチの治療では、メトトレキサート(MTX)などの薬に大きな役割があります。関節リウマチでは免疫の異常により関節の炎症が起こります。そのため、異常に働いている免疫をコントロールするための薬が使われます。ただし感染症などの副作用にも注意が必要です。

 

関節リウマチに使われる治療薬の種類は多岐にわたります。

中心的な役割を持つメトトレキサートなどの薬はまとめてDMARDs(疾患修飾抗リウマチ薬)と呼ばれます。JAK阻害薬のトファシチニブや、生物学的製剤と総称されるTNF阻害薬やIL-6阻害薬なども選択肢となっています。

関節リウマチによる痛みなどの症状に対して、「痛み止めの薬」として広く使われている非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が使われることもあります。

炎症や痛みを抑える作用のあるステロイド薬が使われる場合もあります。

 

関節リウマチの治療薬は種類が多く、また長年にわたって使用する場合があることからも、主治医とよく相談しながら使う必要があります。

 

◆関節リウマチの手術とは

関節リウマチが悪化すると、骨の変形が進むことがあります。骨が変形して周りの神経に影響を与えそうな場合、あるいはすでに神経の影響が出ている場合には、手術が考慮されます。

首の骨の変形(環軸椎亜脱臼)は、神経への影響を考えて手術が検討される代表的な状況です。また手首や肘には狭い空間を神経が通り抜けているところがあり、その近くの骨が変形することで、手根管症候群肘部管症候群と呼ばれる神経の症状が引き起こされる場合があります。手根管症候群肘部管症候群に対して手術が選択されることもあります。

関節の変形により動作がしにくくなり、日常生活の支障になる場合には、人工関節置換術や関節固定術といった手術が検討されます。

滑膜切除術は、関節の中にある滑膜という組織を取り除く手術です。関節リウマチによる炎症は滑膜に起こり、滑膜の炎症によって関節の痛みや腫れの症状が出ているとされます。薬の治療に加えて滑膜切除術が選択される場合もあります。

関節の炎症が周りに及んで、関節につながっている腱が断裂する(切れる)こともあります。すると関節の曲げ伸ばしができなくなってしまうので、切れた腱をつなぎ合わせる、腱筋修復術や腱筋再建術と呼ばれる手術が検討されます。

 

◆関節リウマチのリハビリとは?

関節リウマチに対しては、炎症を抑える薬に加えて、失った機能を維持・改善させ、できる限り自分の力で生活を営むためのリハビリが行われます。

関節リウマチのリハビリには理学療法と作業療法などがあります。理学療法は、痛みの軽減、関節が動く範囲の改善、筋力の維持、運動機能の改善などを目的とします。作業療法は手や指の細かい動きの改善を目的とします。

 

◎理学療法

関節リウマチに対する理学療法として運動療法や装具療法があります。

  • 運動療法

    • 関節リウマチによって、痛みから体を動かさずにいると、関節の周りの組織がかたまって動かしにくくなることや、関節の周囲の筋力が低下することによって、結果として日常生活への障害をきたすことが考えられます。そのため、運動療法では負荷がかかりすぎないようにしながら関節を動かし、関節可動域を維持・改善させ、徐々に力を入れて動かすことができるよう訓練を行います。さらに、立つ、歩く、階段を上り下りするといった生活の動作に結びつけていきます。

  • 装具療法

    • 関節の力を補うような補助具によって、関節の安定性を増し、動作を助けることを狙います。装具の種類や形はどの関節に生じたか、どのような動きを補助するためのものかによって異なります。

 

◎作業療法

作業療法は、出来るだけ痛みが生じないで身の回りのことが行えるよう、上肢(腕や手)の運動機能改善に加えて、自助具の提案や家の環境設定などを行います。

 

・上肢の運動機能改善

肩や肘、手などの症状により、腕や手をうまく動かせなくなってしまうことがあります。それを予防・改善するために、ボタンのつけはずしや料理など指先の細かい動きを伴う訓練を行います。

 

・自助具の提案

自助具とは、困難な動作をより簡単に行うことが出来るよう補助する道具です。関節リウマチの方がよく用いる自助具についてご紹介します。自助具は、自分の目的や用途に合わせて選定することが大切です。

 

  • ボタンエイド

    • 関節リウマチになると、細かい動きをすることが難しくなるため、服を着る際にボタンを留めることが難しくなることがあります。そのような場合は、ボタンをつまむことなくボタンを留めることのできるボタンエイドという道具が用いられます。針の糸通しのようなものをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

  • リーチャー・マジックハンド

    • 関節リウマチになると、高いところに手を伸ばすなどの大きな動きを行うことが難しくなったり、一日の時間の中で特に関節が痛むときがあることから、遠くのものをとりに行くことが困難になることがあります。そのような場合には、リーチャーと呼ばれる棒の先にものを引っ掛ける機能がついたものやマジックハンドを用いて、大きな動きを補うこともあります。

  • オープナー

    • ペットボトルや缶の蓋を開けるのは、指の関節に負担がかかる動作の一つです。蓋を開ける動作がしにくくなった場合には、てこの原理を利用したオープナーを用います。

 

・家の環境設定

これまでご紹介したような生活を支援するための道具だけでなく、自宅の環境を変えることも、自宅での生活をより楽にする方法の一つです。その一部を以下にご紹介します。

 

  • 段差の解消(お風呂の出入り口や玄関の上がり框など)

  • 水道の蛇口(ひねって操作するものから、上下に操作するものへの変更)

  • 電気のスイッチ(大きさの小さいものから大きいものへの変更)

  • 寝床の工夫(床で寝ている場合、ベッドへの変更)

 

このように、関節がうまく動かなくてもこれまで通り日常生活を送ることの出来るような工夫を提案します。

 

注:この記事は2016年4月8日に公開されましたが、2018年2月13日に編集部(大脇)が更新しました。

執筆者

NK

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。