JAK阻害薬(関節リウマチなどの治療薬)
JAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素を阻害し免疫反応に関わるサイトカインの働きを抑えることで関節リウマチなどの症状を改善する薬
同義語:
ヤヌスキナーゼ阻害薬

JAK阻害薬(関節リウマチなどの治療薬)の解説

JAK阻害薬(関節リウマチなどの治療薬)の効果と作用機序

  • JAKという酵素を阻害し免疫反応に関わるサイトカインの働きを抑えることで関節リウマチなどの症状を改善する薬
    • 関節リウマチでは免疫の異常によって炎症がおこり関節の腫れや痛みなどがあらわれる
    • 体内で免疫異常による炎症反応には炎症性サイトカインという物質などが関わる
    • 本剤は炎症性サイトカインの伝達に必要なJAKという酵素を阻害する作用をあらわす
  • 関節リウマチの治療においては、通常、他の抗リウマチ薬などで効果不十分な病態に使用される
  • 本剤の中には潰瘍性大腸炎などの治療に使われる薬もある

JAK阻害薬(関節リウマチなどの治療薬)の薬理作用

関節リウマチは免疫の異常によって炎症反応がおこる自己免疫疾患の一つで、関節の腫れや痛みなどがあらわれる。

体内で炎症反応などに深く関わるサイトカインという物質があり、炎症性サイトカインの中にインターロイキン(IL)という物質がある。ILの伝達に必要な酵素にヤヌスキナーゼ(JAK)がある。

本剤は炎症性サイトカインであるILの伝達に必要なJAKを阻害し、炎症などを引き起こす伝達を阻害することで関節リウマチの症状を改善する作用をあらわす。また本剤にはインターフェロン(IFN)などIL以外の炎症性サイトカインの伝達を阻害する作用も考えられている。本剤は関節リウマチの治療においては、通常、他の抗リウマチ薬などで効果不十分な病態に使用される。

なお、ILなどの炎症性サイトカインは関節リウマチ以外にも様々な疾患に関わるとされ、例えば、トファシチニブが潰瘍性大腸炎の治療の選択肢となっているように、本剤(JAK阻害薬)は関節リウマチ以外の治療に使われることもある。

JAK阻害薬(関節リウマチなどの治療薬)の主な副作用や注意点

  • 感染症結核肺炎敗血症などの重篤な感染症を含む)
    • ウイルス細菌真菌などによる感染症が発症しやすくなる可能性があるので十分に注意する
    • 体のだるさ、口内炎、咳などの症状がある場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 血液症状
    • リンパ球減少、好中球減少、ヘモグロビン減少などがあらわれる場合がある
  • 間質性肺炎
    • 頻度は稀とされるが注意は必要
    • 少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空咳、発熱などがみられ、これらの症状が急にあらわれたり続く場合は医師や薬剤師に連絡する。
  • 肝機能障害
    • 倦怠感、食欲不振、黄疸などの症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する

JAK阻害薬(関節リウマチなどの治療薬)の一般的な商品とその特徴

ゼルヤンツ

  • トファシチニブ製剤
  • グレープフルーツジュースの摂取に関して
    • 本剤の作用が強くなる場合があるので一緒に飲まないように注意する
  • 主に肝臓で代謝される特徴がある
  • 潰瘍性大腸炎などに使われる場合もある

オルミエント

  • バリシチニブ製剤
  • JAKのタイプのうち、JAK1とJAK2に対して高い選択性をあらわす
  • 主に腎臓で排泄される特徴がある
  • 新型コロナウイルスSARS-CoV-2)による肺炎に使われる場合もある
  • アトピー性皮膚炎若年性特発性関節炎などに使われる場合もある

スマイラフ

  • ペフィシチニブ製剤
  • JAKのタイプ(JAKファミリー)のうち、JAK1、JAK2、JAK3及びチロシンキナーゼ2(TYK2)を阻害する

リンヴォック

ジセレカ

  • フィルゴチニブ製剤
  • JAKのタイプのうち、(ほかのタイプへの作用に比べて)JAK1に対してより選択的に作用する