2018.07.02 | ニュース

免疫チェックポイント阻害薬の併用ほか、効能など追加の5製品はどんな薬?

添付文書ほかに記載の臨床試験を中心に
免疫チェックポイント阻害薬の併用ほか、効能など追加の5製品はどんな薬?の写真
(c) Jay_Zynism - iStock

5月25日に、厚生労働省が医療用医薬品5製品について効能や用法を追加することを承認しました。オプジーボ、ヤーボイ、ゼルヤンツ、ボトックス、ヌーカラの新しい効能などを紹介します。

オプジーボ・ヤーボイとは?

ニボルマブ(商品名オプジーボ®)とイピリムマブ(商品名ヤーボイ®)は、がん治療薬です。どちらも「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれますが、違ったしくみで作用します。ニボルマブはPD-1とPD-L1、イピリムマブはCTLA-4という物質に関連した作用を持っています。

従来、ニボルマブとイピリムマブはそれぞれ単独で「根治切除不能な悪性黒色腫」の効能・効果を認められていましたが、新たに2剤を一緒に使う併用療法としての用法・用量が追加されました。根治切除不能な悪性黒色腫に対して、化学療法未治療の人(ほかの抗がん剤を使ったことがない人)でニボルマブとイピリムマブの併用が可能となります

臨床試験では、対象となった患者のうち、イピリムマブ単独で治療したグループに比べて、ニボルマブとイピリムマブを併用したグループのほうが生存期間が長くなりました。また、ニボルマブ単独の治療とイピリムマブ単独の治療を比較しても、ニボルマブ単独のほうが生存期間が長くなりました。ニボルマブ単独とニボルマブ・イピリムマブ併用の比較で生存期間に差があると言えるかどうかは、ニボルマブ・イピリムマブの添付文書に記載されていません。

ニボルマブの効果は、がん組織が持つPD-L1の状態によって変わることが考えられます。検証のため、対象者のがん組織を検査し、その結果によってさらにデータを分けて解析が行われました。すると、がん組織のPD-L1発現率が1%未満の対象者に比べて、PD-L1発現率が1%以上の対象者ではイピリムマブの上乗せ効果が低い傾向が示唆されました。そのため、厚生労働省はニボルマブの使用について推奨を記載している「最適使用推進ガイドライン」を改訂し、「化学療法未治療の根治切除不能な悪性黒色腫患者において、本剤とイピリムマブとの併用投与の可否を判断する場合、PD-L1発現率を確認することが望ましい。PD-L1発現率が1%以上であることが確認された患者においては、原則、本剤単独投与を優先する。」と記載しました(強調は編集部)。

副作用について、臨床試験でニボルマブとイピリムマブを併用した人の95.8%から100%に何らかの副作用が現れました。その中でも「重大な副作用」として添付文書に記載されたものは、大腸炎、消化管穿孔、重度の下痢、肝不全、肝機能障害、重度の皮膚障害、末梢神経障害、腎障害、間質性肺疾患、筋炎、インフュージョンリアクションでした。

 

関連記事:悪性黒色腫をオプジーボとヤーボイで治療、3年生存率は?

 

ゼルヤンツとは?

トファシチニブ(商品名ゼルヤンツ®)は、JAK阻害薬に分類され、従来関節リウマチの治療に使われています。トファシチニブに新しく「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能・効果が追加されました

潰瘍性大腸炎は下痢や血便などの症状が長年続く病気です。治療として5-ASA製剤、ステロイド薬、免疫抑制薬、生物学的製剤といった薬が使われますが、薬を使っても効果不十分となる人もいます。トファシチニブは、ほかの薬による適切な治療を行ったにもかかわらず、潰瘍性大腸炎による明らかな症状が残っている場合に使用を検討できます。

臨床試験では、中等症から重症の症状が続いている人を対象に、トファシチニブと偽薬が比較されました。治療開始から8週後に寛解(症状が抑えられている状態)となった人の割合が、偽薬を使ったグループでは8.2%でしたが、トファシチニブでは18.5%となり、トファシチニブを使ったほうが大きい割合で寛解を得られました

さらに、臨床試験での治療により改善があった人を対象に、トファシチニブと偽薬を比較して、寛解を維持する効果を調べる試験が行われました。52週時点で寛解状態だった人は、偽薬のグループでは11.1%でしたが、トファシチニブ10mg1日2回を使用したグループでは40.6%で、トファシチニブを使用したほうが52週時点での寛解が多くなりました

副作用について、これらの試験などを合わせたデータで、トファシチニブを使用した人のうち52.2%に何らかの副作用が現れていました。主な副作用は鼻咽頭炎などでした。

 

ボトックスとは?

A型ボツリヌス毒素(商品名ボトックス®)は、食中毒の原因菌としても知られるボツリヌス菌の毒素を薬としたもので、筋肉を緩ませる作用があります。眼瞼痙攣などに対してA型ボツリヌス毒素が使われていますが、新たに「痙攣性発声障害」の効能・効果が追加されました

痙攣性発声障害は、声を出すために働く筋肉のけいれんによって、うまく声を出せない状態です。A型ボツリヌス毒素による治療では、原因と思われる筋肉の違いによって、内転型痙攣性発声障害と外転型痙攣性発声障害を区別します。内転型痙攣性発声障害では甲状披裂筋に、外転型痙攣性発声障害では後輪状披裂筋に、A型ボツリヌス毒素を筋肉内注射します。

内転型痙攣性発声障害に対する臨床試験では、A型ボツリヌス毒素と偽薬を比較しました。効果判定のため、対象者に例文「むかしあるところに、ジャックという男の子がいました」を読み上げてもらい、声の異常が現れた文字数を記録しました。

注射から4週後の変化で判定したところ、内転型痙攣性発声障害に対してはA型ボツリヌス毒素で平均7.0文字分の改善がありましたが、偽薬では平均0.2文字分の改善でした

外転型痙攣性発声障害に対しては、2人が対象となり、2人ともA型ボツリヌス毒素を注射されました。例文「本屋と花屋は通りを隔てて反対側にあります」を読み上げて声の異常が現れた文字数を調べると、1人では2文字分の改善があり、1人では1文字分悪化しました。承認のための審査では、この結果から治療の効果が明確に示されているとは言えないものの、海外からも一定の改善が報告されていること、外転型痙攣性発声障害に対してはほかに有効性を示された治療がないことなどから、外転型痙攣性発声障害の患者にも「治療選択肢として提供することは可能」と判断されました

副作用として、発声障害、嚥下障害などがありました。

 

ヌーカラとは?

メポリズマブ(商品名ヌーカラ®)は、抗IL-5抗体に分類され、従来気管支喘息に使われています。メポリズマブに新しく「既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」の効能・効果が追加されました

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症チャーグ・ストラウス症候群)は、気管支喘息アレルギー性鼻炎の症状に加えて、手足のしびれや麻痺、皮膚のあざのような出血など多様な臓器の障害を引き起こす病気です。治療としてステロイド薬などが使われますが、一度症状が治まった寛解状態になっても、再び悪化することがあります。ステロイド薬で効果不十分だった場合にメポリズマブを上乗せして使うことが検討できます。

臨床試験では、メポリズマブと偽薬の注射を比較しました。治療開始から36週と48週の時点で寛解状態かどうかを調べ、どちらも寛解状態だった人の割合で効果を判定しました。その結果、偽薬のグループで36週・48週ともに寛解状態だった人は3%でしたが、メポリズマブのグループでは32%の人が36週・48週とも寛解状態でした。寛解状態にあった期間の長さで比較しても、メポリズマブのグループのほうが長く寛解が続いた人が多い結果となりました。

メポリズマブを注射した人の51%に何らかの副作用が現れました。主な副作用は注射部位反応などでした。

 

まとめ

薬に新しい効能・効果などが加わることにより、保険診療として使える新しい選択肢となります。臨床試験から報告されているデータを参考に、従来の治療法と比べて有効性や副作用を考えることで、一人ひとりに合わせた治療の可能性を広げることができます。

執筆者

MEDLEY編集部

参考文献

オプジーボ点滴静注20mg/オプジーボ点滴静注100mg 添付文書、ヤーボイ点滴静注液50mg 添付文書、ニボルマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(悪性黒色腫)の一部改正について(平成30年5月25日薬生薬審発0525第7号)、ゼルヤンツ錠5mg 添付文書、ボトックス注用50単位/ボトックス注用100単位 添付文書、ボトックス注用50単位/ボトックス注用100単位 審査報告書、ヌーカラ皮下注用100mg 添付文書

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。