2016.05.21 | ニュース

肩の痛みはボツリヌス毒素の注射で本当に軽くなるのか?

33人で注射から6週間の効果を検証

from Journal of the Medical Association of Thailand = Chotmaihet thangphaet

肩の痛みはボツリヌス毒素の注射で本当に軽くなるのか?の写真

肩の痛みの治療には、姿勢を改めるなどのほか、薬もあります。筋肉を緩ませるボツリヌス毒素の注射は、痙性斜頚などの治療に使われていますが、肩の痛みにも効果があるか、食塩水の注射と比べる研究が行われました。

◆A型ボツリヌス毒素と食塩水に違いはあるか?

この研究では、上部僧帽筋(首の後ろの筋肉)に痛みの症状があり、特に押すと痛むトリガーポイントがある人33人が対象になりました。

ひとりの対象者に2か所のトリガーポイントがあったときはトリガーポイントを別々に数え、48か所のトリガーポイントにA型ボツリヌス毒素または食塩水の注射を打ちました。どちらの注射を使うかはランダムに振り分けました。

対象者全員が注射のほかにストレッチなどのアドバイスを受けました。注射を打ってから3週間後と6週間後に症状が調べられました。

痛みの強さ自体がどの程度なのかと、トリガーポイントを押したときの痛みの感じやすさの2点が評価されました。痛みの感じやすさは、どれぐらいの強さで押すと痛みが出るか(圧痛閾値)で調べました。圧痛閾値が低いほうが、弱い力で押しただけで痛みが出る、すなわち痛みを感じやすい状態です。

 

◆痛みの強さはどちらでも同じ

注射を打ってから3週間後と6週間後に、どちらの注射を打った場合も痛みの強さが軽くなっていました。A型ボツリヌス毒素と食塩水の違いについては次の結果でした。

治療後3週および6週において、2群の間でベースラインからのVASの減少量に統計的に有意な差はなかった。

A型ボツリヌス毒素を注射したときと、食塩水を注射したときとで、痛みの強さ自体に違いが見られませんでした。圧痛閾値はA型ボツリヌス毒素を注射したときのほうが高くなっていました。つまり、A型ボツリヌス毒素を注射したときのほうが、強い力で押さなければ痛まないようになっていました。

副作用については次の結果でした。

どちらの群でも軽度の副作用があり、1週間以内に自然に解消し、割合に有意な差はなかった。研究中に深刻な有害事象は報告されなかった。

どちらの注射でも軽い副作用がありましたが、すべて自然に治り、深刻なものはありませんでした。

 

圧痛閾値には薬の効果が現れましたが、痛みの強さ自体が食塩水と変わらないとすれば、A型ボツリヌス毒素が肩の痛みに対してどのような目的で使えるかは限られてくるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Efficacy and Safety of Single Botulinum Toxin Type A (Botox®) Injection for Relief of Upper Trapezius Myofascial Trigger Point: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study.

J Med Assoc Thai. 2015 Dec.

[PMID: 27004309]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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