2017.12.22 | ニュース

首の筋肉の緊張異常、痙性斜頚にA型ボツリヌス毒素は有効か?

文献の調査から
from The Cochrane database of systematic reviews
首の筋肉の緊張異常、痙性斜頚にA型ボツリヌス毒素は有効か?の写真
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痙性斜頚(けいせいしゃけい)は、首の筋肉の緊張異常により、頭の向きが傾くなどの症状が現れている状態です。A型ボツリヌス毒素は治療法のひとつとして使われています。過去の研究の調査により効果の検証が行われました。

痙性斜頚に対するA型ボツリヌス毒素治療

ポルトガルの研究班が、痙性斜頚に対するA型ボツリヌス毒素の効果について、過去の研究データの調査を行い、結果を『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。

この調査は、文献の検索によって以前に報告されている研究データを集め、内容を吟味してまとめたものです。2005年にも同様の調査が行われていましたが、より新しいデータも調査範囲に含めて更新しました。

痙性斜頚のある成人に対して、A型ボツリヌス毒素を偽薬と比較した研究を集めました。

 

症状改善あり、嚥下障害など増

調査によって、解析に適した8件の研究が見つかりました。

A型ボツリヌス毒素1回の注射によって、偽薬と比べて治療前から注射の4週間後には、重症度のスコア(TWSTRS総合スコア)が平均で18.7%改善していました。

A型ボツリヌス毒素による副作用の可能性があることとして、嚥下障害(飲み込みの障害)が9%、広範囲の筋力低下・疲労感が10%の人に現れました。

研究から離脱した人の割合は、A型ボツリヌス毒素を使ったグループのほうが少なくなりました。

 

痙性斜頚にA型ボツリヌス毒素は有効?

痙性斜頚に対するA型ボツリヌス毒素の効果についての調査を紹介しました。副作用と疑われる症状が一部の人に現れていたものの、痙性斜頚の症状の改善が確かめられました。

A型ボツリヌス毒素は日本でも痙性斜頚に対する治療法のひとつとして使用可能になっています。治療法を考えるうえで、実際に試したデータを参考とすることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Botulinum toxin type A therapy for cervical dystonia.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Dec 12. [Epub ahead of print]

[PMID: 29230798]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。