きょうはくせいしょうがい

強迫性障害

重要ではないことと自分でも分かっているにも関わらず、そのことをしないではいられない状態になってしまう病気

病気に関連する診療科の病院を探す
10人の医師がチェック 100回の改訂 最終更新: 2017.06.15

強迫性障害のQ&A (18件)

    強迫性障害の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    発症には、性格、生育歴、ストレスや感染症など、多様な要因が関係していると考えられていますが、なぜ強迫性障害になるのか、原因ははっきりとはわかっていません。
    特別なきっかけなく徐々に発症してくる場合が多く、セロトニンやドーパミンといった脳内の神経伝達物質の機能異常と推定されていますが、まだ解明されていません。一方で几帳面、完璧主義、頑固などの強迫性格と呼ばれる人に多く発症がみられることから、遺伝的、性格的な要因も存在すると考えられています。

    強迫性障害は、どんな症状で発症するのですか?

    「ドアに鍵をかけたかな?」「鍋を火にかけたままかも」と、不安になって家に戻る、ラッキーナンバーなどの縁起にこだわることは多くの人で経験があることですが、その不安やこだわりが度を超してしまい、戸締まりや火の元を何度も何度もしつこく確認しても安心できなかったり、特定の数字にこだわるあまり生活が不便になったりします。
    病的になると、たとえば「手が細菌で汚染された」という強い不安にかきたてられて何時間も手を洗い続けたり、肌荒れするほどアルコール消毒をくりかえすなど、明らかに「やりすぎ」な行為をともないます。
     

    強迫性障害は、どのように診断するのですか?

    強迫性障害では、現在血液検査や画像検査などで診断をすることができない疾患です。
    診断は主に診断基準に沿った医師による問診で行われます。

    強迫性障害の治療法について教えて下さい。

    強迫性障害の治療は認知行動療法と薬による治療を組みわせるのが効果的とされています。

    強迫性障害は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    国内では、どのくらいの割合で強迫性障害の患者さんがいるのかはまだ完全には明らかになっていません。
    障害を性格の問題だととらえて受診せずにいる人や、精神科を受診することにためらいがあって、日常の不便を我慢している人が相当数いるであろうということが背景だと考えられます。
    一方、病院を受診した人の統計では生涯有病率(一生のうち一度はかかる確率)は2.5%であり、性別差はないといわれています。35歳以降で発症することは比較的少なく、患者の半数は20歳以下で発症しています。
    欧米では、全人口のうち強迫性障害にかかっている人は1.2%、50-100人に一人の割合といわれており、日本でも同じくらいの割合になるという意見もあります。

    強迫性障害の、主な症状について教えて下さい。

    主な症状は「強迫観念」と「強迫行為」です。
    どちらも強迫的なものであるのですが、頭のなかに考えが浮かんでくることと、実際に行動してしまうことの違いがあります
    強迫観念とは、頭から離れない考えのことで、その内容が「不合理」だとわかっていても、頭から追い払うことができません。
    強迫行為とは、強迫観念から生まれた不安にかきたてられて行う行為のこと。自分で「やりすぎ」「無意味」とわかっていてもやめられません。
    以下に典型的な強迫観念と強迫行為の例を挙げます

    • 不潔恐怖と洗浄

    汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い、入浴、洗濯をくりかえすドアノブや手すりなど不潔だと感じるものを恐れて、さわれない。

    • 加害恐怖

    誰かに危害を加えたかもしれないという不安がこころを離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認する。

    • 確認行為

    戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを過剰に確認する(何度も確認する、じっと見張る、指差し確認する、手でさわって確認するなど)。

    • 儀式行為

    自分の決めた手順でものごとを行なわないと、恐ろしいことが起きるという不安から、どんなときも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない。

    • 数字へのこだわり

    不吉な数字・幸運な数字に、縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる。
    物の配置、対称性などへのこだわり
    物の配置に一定のこだわりがあり、必ずそうなっていないと不安になる。

    強迫性障害の診断基準を教えて下さい。

    強迫性障害の診断基準は世界保健機関(WHO)が定めたICD-10というものと、アメリカ精神医学会(APA)が定めたDSM-5
    というものがあり、日本の医療現場では両者が併用されています。
    ここではDSM-5の診断基準を紹介します。

    A.強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在。
    強迫観念は以下の1と2によって定義される。

    1. 繰り返される持続的な思考、衝動、またはイメージで、それは障害中の一時期には侵入的で不適切なものとして体験されており、たいていの人においてそれは強い不安や苦痛の原因となる。
    2. その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、または何か他の思考や行動(例:脅迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる。

    強迫行為は以下の1と2によって定義される。

    1. 繰り返しの行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する)または心の中の行為(例:祈る、数を数える、声を出さずに言葉を繰り返す)であり、その人は強迫観念に対応して、または厳密に適用しなくてはならない規則に従って、それらの行為を行うよう駆り立てられていると感じている。
    2. その行動または心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としている。しかしその行動または心の中の行為は、それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりを持たず、または明らかに過剰である。

    注:幼い子供はこれらの行動や心のなかの行為の目的をはっきり述べることができないかもしれない。
    B:強迫観念または強迫行為は時間を浪費させる(1日1時間以上かかる)、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
    C:その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。
    D:その障害は他の精神疾患の症状ではうまく説明できない(例:全般性不安症における過剰な心配、醜形恐怖症における要望へのこだわり、ためこみ症における所有物を捨てたり手放したりすることの困難さ、抜毛症における抜毛、皮膚むしり症における皮膚むしり、常同運動症における常同症、摂食障害における習慣的な食行動、物質関連障害及び嗜癖性障害群における物質やギャンブルへの没頭、病気不安症における疾病を持つことへのこだわり、パラフィリア障害群における性的衝動や性的空想、秩序破壊的・衝動制御・素行症群における運動、うつ病における罪悪感の半数、統合失調症スペクトラム障害及び他の精神病性障害軍における思考吹入や妄想的なこだわり、自閉スペクトラム症における反復的な行動様式)

    強迫性障害の認知行動療法について教えて下さい。

    曝露反応妨害法(エクスポージャー法)が代表的な治療法で再発予防効果が高いとされています。
    患者さんが強迫観念による不安に立ち向かい、やらずにはいられなかった強迫行為をしないで我慢するという行動療法です。
    たとえば、汚いと思うものをさわって手を洗わないで我慢する、留守宅が心配でも鍵をかけて外出し、施錠を確認するために戻らないで我慢する、などです。こうした課題を続けていくと、強い不安が弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくても大丈夫になっていきます。

    強迫性障害が発症しやすくなる、または他に注意すべき病気はありますか?

    強迫性障害の患者さんは約30%の頻度でうつ病を合併しており、
    社交不安障害・全般性不安障害・パニック障害などの不安障害を10%程度の頻度で合併していると言われています。
    これらの病気があると強迫性障害を発症しやすくなるということではないですが、合併していると治療期間が長くなることなどが予想されるので、注意が必要です。

    強迫性障害が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    • 日常生活、社会生活に影響が出る

    手洗いや戸締まり確認に時間をとられる、火の元を確認しに何度も家に戻る結果常に約束に遅れるといった弊害や、日々の強い不安や強迫行為にかけるエネルギーで心身が疲労して健全な日常生活が送りにくくなってきます。
    さらに悪化すると治療のために病院を訪れることすら難しくなってきます。

    • 家族や周囲の人が困る

    火や戸締まりの確認を家族にも何度も繰り返したりアルコール消毒を強要するなど、周囲の人を強迫観念に巻き込むことも多くなります。その結果人間関係がうまくいかなくなっていきます。
    自分では病気というほどひどくないと感じていても、家族や友人など周囲の人が困っている場合は何らかの治療や対処が必要な可能性が高いと考えられます。

    強迫性障害の治療薬について教えて下さい。

    患者さんの多くは強迫症状や抑うつ、強い不安感があるので、まず抗うつ薬のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)で状態を安定させてから、認知行動療法に入るのが一般的です。三環系抗うつ薬のクロミプラミン(アナフラニール)を使用する場合もあります。
    薬の使用量や使用期間はうつ病で抗うつ薬を使う場合よりも高用量で、服薬期間も長くなる傾向にあります。最初は少量から始めて、薬との相性を見ながら服薬量を増やしていきます。

    強迫性障害は、遺伝する病気ですか?

    第1度親族(親、子、きょうだい)に強迫性障害の患者さんがいる場合、生涯有病率が10-20%に上昇するという研究、一卵性双生児での一致率(一人が発症した時にもう一人が発症する確率)が60-90%と言われており、遺伝性は存在すると考えられています。

    強迫性障害の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?

    強迫性障害の薬は服用期間が長くなることが多いですが、治ることも多い病気ですので、必ず生涯飲み続けるというわけではありません。症状が改善した後に、治療効果をより強固にする期間として3-6カ月、その後維持療法として1-2年間安定していれば薬を減らすことを検討します。 

    強迫性障害では入院が必要ですか?

    ほとんどの強迫性障害は外来通院での治療を行います。しかし、手洗いなどの強迫行為がエスカレートして日常生活を送ることができなくなっている場合などに、厳格な暴露反応妨害法を行う時などに入院治療になる場合があります。

    強迫性障害では通院はどの程度必要ですか?

    通院期間は症状の改善程度により個人差が大きいですが、薬を飲む期間が2年以上続く場合も多いので、2年からそれ以上の通院期間が見込まれます。

    強迫性障害は、再発を予防できる病気ですか?

    薬での治療のみでの改善率が約50%、薬での治療と認知行動療法の併用での改善率は60-90%と言われています。強迫性障害は症状がある程度改善しても強迫行為の習慣が残っていると症状が再発しやすく、認知行動療法を終了した人の再発率は概ね低いと言われています。

    強迫性障害に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    強迫症状は仕事や家庭での大きな問題など強いストレスやプレッシャーにさらされた場合に再発しやすくなります。不安や精神的な疲労にも影響されます。
    病気の仕組みを知り、完璧な考え方を持ちすぎないこと、少し症状があっても再発だとすぐに悲観せず落ち着いて暮らすことが日常生活を安定して送るコツと言えるでしょう。

    強迫性障害は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    なぜ症状が続くのか、なにが影響して症状が悪化するか、などは解明が進んでいる部分も多く、有効な治療法も確立されつつあり積極的に治療に取り組めば高い確率で治せる病気です。薬での治療のみでの改善率が約50%、薬での治療と認知行動療法の併用での改善率は60-90%と言われています。