むつうせいこうじょうせんえん
無痛性甲状腺炎
甲状腺ホルモン分泌の異常があるが、甲状腺に痛みはない状態
9人の医師がチェック 89回の改訂 最終更新: 2021.03.11

無痛性甲状腺炎の基礎知識

POINT 無痛性甲状腺炎とは

甲状腺ホルモンが過剰に放出された後、甲状腺ホルモンが枯渇して甲状腺機能低下となり、その後自然に改善する病気です。痛みがないため無痛性甲状腺炎と呼ばれます。原因は不明ですが、慢性甲状腺炎(橋本病)の患者さんに起こることが多く、免疫の異常により自分自身の甲状腺を攻撃してしまう物質の関与が考えられています。産後の発症が5-10%にあり、産後12-16週に起こります。症状は、動悸や手の震え、発汗などの甲状腺機能亢進症の症状がみられたあと、だるさや体温低下などの甲状腺機能低下症の症状がでます。通常3か月以内に自然に改善するため治療は行いません。甲状腺機能が改善しない場合は甲状腺ホルモンの内服を行います。診断のためには血液検査や超音波検査を行い、ほかの病気を除外する必要があります。甲状腺の機能に異常がでる病気はさまざまですので、まずは内科に受診してみましょう。

無痛性甲状腺炎について

  • 甲状腺ホルモン分泌の異常があるが、甲状腺に痛みはない状態
    • 甲状腺ホルモンが過剰に放出されたのち、甲状腺ホルモンの枯渇により甲状腺機能低下症の症状をきたし、その後自然治癒する
  • 自己免疫の関与が原因として疑われている
  • 女性に多い
  • 出産後の女性の5-10%に発症する
  • 慢性甲状腺炎橋本病)の患者さんに起こる場合がほとんど

無痛性甲状腺炎の症状

  • 主な症状
    • 甲状腺機能亢進の症状
      • 動悸
      • 手の震え
      • 発汗
      • 発熱
    • 甲状腺機能低下の症状
      • 倦怠感
      • だるさ
      • 体温低下
  • 甲状腺機能低下の症状が現れてからは次第に正常な状態へと戻ることが多い
    • 通常3か月以内に自然によくなる
  • 慢性甲状腺炎橋本病)の患者さんに起こる場合が多い
    • 甲状腺機能低下は自然に回復しないこともある
  • 出産に関連して起こる場合、産後12-16週以内に発症することが多い

無痛性甲状腺炎の検査・診断

  • 血液検査:血中の甲状腺ホルモンや、それに関連した自己抗体免疫物質)を調べる
    • 症状が出る時期に一致して、甲状腺機能上昇・低下のどちらかの検査所見が現れる
    • 白血球数、赤沈CRPは正常
  • エコー検査:甲状腺の血流を調べる
  • シンチグラフィ:微弱な放射線を発する特殊な種類のヨウ素を用いて甲状腺の機能を確認する
  • その他の甲状腺疾患との区別
    • 眼球突出や、すねの粘液水腫は無痛性甲状腺炎では見られないことが多い

無痛性甲状腺炎の治療法

  • 症状に対する治療が主となる(確定診断を待たずに始められることも多い)
    • 甲状腺機能亢進の症状に対して:β遮断薬の内服
    • 甲状腺機能低下の症状に対して:甲状腺ホルモンの内服
  • 抗甲状腺薬、甲状腺切除手術、放射性ヨウ素療法は行わない
  • 甲状腺機能が回復しない場合、甲状腺ホルモンの使用を開始し、9-12か月後に5週間服薬を中止して再検査を行う
  • 出産後の発症の場合は、一度発症すると、次回出産するときもほぼ必ず再発する

無痛性甲状腺炎のタグ

無痛性甲状腺炎に関わるからだの部位