たんどうがん
胆道がん
胆道に発生する悪性腫瘍(胆管がん、胆のうがん、乳頭部がん)の総称
6人の医師がチェック 167回の改訂 最終更新: 2022.10.17

胆道がんとは?胆管がんと胆のうがんの違いや症状・診断・治療の解説

胆道がんは胆管がん胆のうがん、十二指腸乳頭部がんの総称です。胆道がんは早期の発見が難しく治療は大がかりになりやすい病気です。できた場所による治療法の違いなどについて解説します。

1. 胆道とは?それぞれの場所の名前と役割について

胆道の正常解剖のイラスト

胆道は胆汁(たんじゅう)の流れる道のことを指します。胆汁は肝臓で作られ胆道を通って十二指腸に流れ込みます。

  • 肝内胆管
  • 肝外胆管
    • 肝門部領域
      • 肝門部胆管
      • 上部胆管
    • 遠位胆管
      • 中部胆管
      • 下部胆管
    • 十二指腸乳頭部
  • 胆のう

少し詳しく解説します。

胆道は胆汁が流れる川に例えられることがあります。肝内胆管は川を作る小さな流れです。小さな流れがいくつか合わさって川をつくります。川は肝門部と呼ばれる場所から始まります。肝門部は胆管が出る以外にも肝臓へ血管が流れ込む重要な場所です。肝門部領域は川の上流です。肝門部領域は肝門部胆管と上部胆管とに分けて呼ばれることもあります。上部胆管は肝門部から胆のう管が合流するまでの部分を指します。

胆のうは胆汁を溜める場所です。胆のうは袋状の臓器で梨のような形をしています。胆のうには胆汁を濃縮する働きもあります。胆のうには胆石ができることでも知られています。

胆のう管が合流してから十二指腸の出口までの部分を遠位胆管といいます。遠位胆管はさらに細かく中部胆管と下部胆管に分けることがあります。中部胆管は胆のう管の合流した場所から膵臓の上縁までを指します。下部胆管は膵臓の上縁から十二指腸の出口の手前までを指します。

そして、胆汁が十二指腸に流れ込む出口の部分を十二指腸乳頭部と呼びます。

胆道は上流では肝臓の中につながっており下流では膵臓の中を通って十二指腸につながっています。手術で切り取る範囲(切除範囲)を決めるにあたってはこの位置関係が非常に重要です。

胆管にできる悪性腫瘍を「胆管がん(肝門部胆管がん、遠位胆管がん)」、胆のうにできる悪性腫瘍を「胆のうがん」、十二指腸乳頭部にできる悪性腫瘍を「十二指腸乳頭部がん」と呼び、これらをまとめて「胆道がん」と総称します。

2. 胆道がんは減っている?増えている?

胆道がんと診断された人の数は「がんの統計」で知ることができます。

病気にかかることを罹患(りかん)と呼び、胆道がん全体の罹患数(胆道がんと診断された人の数)は年々上昇しています。胆道がんは高齢者に見られやすいため、これは日本の高齢化を背景としたものと考えられます。高齢化の影響を調整した「年齢調整罹患率」は1990年代から徐々に減少しており、このデータからは胆道がんの発生は徐々に減っていることが示されています。

注意する点として、「がんの統計」ではがんができた臓器ごとに集計しているため、胆道がんにちょうど当てはまる数字がありません。ここでは「胆のう・胆管がん」の数字を提示していますが、胆道がんの一種である肝内胆管がんや十二指腸乳頭部がんはこのデータには含まれていません。

参考文献:国立がん研究センターがん情報サービス「がんの統計2022」

胆道がんはどれくらいの人がなっているのか?

国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」では、2019年に胆道がんと診断された人の数を人口10万人あたりの数字で記載しています。病気にかかることを罹患(りかん)といいます。2019年の胆道がんの罹患率は、男性10万人あたりで19.5人、女性で10万人あたりで15.7人となっています。他のがんの罹患数と比較してみます。胆道がんに罹患する人を胃がんと比較すると男性では約7分の1、女性では約4分の1です。胆道がんが発生する人は他のがんに比べると決して多い訳ではありません。

3. 胆道がんは治療が難しいのか?

胆道がんは治療が難しいがんの1つです。「がんの統計2022」によると胆道がんと診断された人の5年生存率は28.7%です。対して、すべてのがんを合計すると5年生存率は68.9%です。胆道がんはがん全体との比較で生存率が低く、がんの中でも厳しい経過をたどりやすいと言えます。しかし、5年を超えて生存する人もまれではありません。

胆道がんの特徴として、進行するまで症状が出にくく、また進行が比較的早いといわれています。「がんの統計2020」には、胆道がんが診断された時点でかなり進行していた人が多かったことが記載されています。

胆道がんの進行度はステージという言葉を使って分類します。ステージIが最も進行していない段階でステージIVがもっとも進行している段階です(ただし、IからIVまでの分類は大まかな分け方なので、ステージIVだからといって「末期がん」とは限りません)。「がんの統計2022」によると、胆道がんが診断された時点でのステージは以下の割合でした。

  • ステージI:25.9%
  • ステージII:21.7%
  • ステージIII:12.6% 
  • ステージIV:33.8%
  • 不明:5.9%

ほかのがんと単純に比較することはできないのですが、参考までに胃がんを例にとると診断時には63%の人がステージIです。

胆道がんは胃がんなどと比較すると進行した段階でみつかることが多いです。がんは進行すると治療が難しくなると考えられています。

4. 胆道がんの原因は?

胆道がんの原因はわかっていません。ただし、胆道がんの発生に関係しているものはいくつか知られています。

それぞれのより詳しい解説は「胆道がんの原因は?」をご覧ください。

膵・胆管合流異常症(すいたんかんごうりゅういじょうしょう)

膵・胆管合流異常症は、膵管と胆管が合流する場所が本来の場所とはことなる先天異常です。異常がない場合、膵管と胆管は十二指腸乳頭部という場所で合流します。膵管には膵液が流れ、胆管には胆汁が流れます。胆汁や膵液が逆流したり違う管に流れ込まないようになっています。膵・胆管合流異常症では胆汁や膵液の逆流が起きることがあります。膵液が胆管に入ると胆管に強い炎症を起こします。胆管に慢性的に炎症が起きることは胆道がんが発生する原因になると考えられています。

原発性硬化性胆管炎(げんぱつせいこうかせいたんかんえん)

原発性硬化性胆管炎は胆管(肝内胆管と肝外胆管)が線維化を起こします。胆管が狭くなり胆汁の流れが悪くなることで肝硬変、さらに肝不全にいたる病気です。肝不全は肝硬変などにより肝臓が十分に機能しなくなった状態です。胆管の上皮細胞が傷害を受けることや濃縮した胆汁の影響などで胆道がんが発生しやすくなると考えられています。

肝内結石症(かんないけっせきしょう)

肝内結石症は肝臓の中の胆管に結石が発生して症状が現れる病気です。結石はビリルビンや(ビリルビン結石)、コレステロール(コレステロール結石)が原因となることが多いとされています。肝内結石症は無症状のこともありますが、結石が肝内胆管を閉塞して胆汁の流れが悪くなると感染症(胆管炎、肝膿瘍(かんのうよう))が発生して発熱や右の脇腹が痛んだり(右季肋部痛)する症状が見られます。肝内結石によって慢性的な炎症の原因になります。慢性的な炎症は胆道がんの原因になります。

ジクロロメタン、1,2-ジクロロプロパン

ジクロロメタンや1.2-ジクロロプロパンは工場で使われる印刷機の洗浄液などに含まれている物質です。発がん性がある物質で、長期間に渡り高濃度ばく露すると胆管がんが発生することが知られています。現在ではこれらの使用に規制が設けられて健康に影響が出ないような措置がとられています。

5. 胆道がんの症状は?腹痛や背部痛は黄疸の症状?

胆道がんは肝臓で作られた胆汁を十二指腸まで運ぶ管です。胆道がんができると胆汁の流れを妨げることで症状がでることがあります。黄疸などがその代表的な症状になります。その他できた場所によっては神経などに影響して腹痛や背部痛がおきることがあります。

  • 黄疸
  • 腹痛
  • 全身倦怠感
  • 食欲不振
  • 暗赤色尿
  • 発熱
  • かゆみ(掻痒感)
  • 腰背部痛
  • 体重減少
  • 下痢

胆道がんの症状は他のがんでも見られることもあればがん以外の病気でも現れることがあります。この症状があれば必ず胆道がんということは難しいです。胆道がんかどうかによらず気になる症状があれば医療機関を受診して原因を調べることが大事です。

胆道がんの初期症状はある?

胆道がんの初期に症状はないこともあります。症状がでるとすると胆汁の流れが悪くなることを原因とした症状が多いです。皮膚が黄色くなる黄疸はその代表的な症状です。その他にも症状がいくつかあります。

腹痛は胆道がんの症状?

胆道がんで腹痛がおきる原因にはいくつか考えられます。

  • 胆管炎、胆のう炎 
  • 神経への影響
  • 胆道がんが大きくなり消化管(胃・小腸)を閉塞する

胆道がんは胆道の中で大きくなることがあります。胆道がんが大きくなると胆汁が流れるのを妨げます。胆汁の流れが悪くなると胆管や胆のうの圧が上昇して胆管炎や胆のう炎が起きて腹痛が現れることがあります。

胆道がんは周りに浸潤しやすいがんです。浸潤はがんが広がって周りの臓器などに入り込んでいくことです。胆道の壁は薄いのでその分がんが進行すると周りの神経に浸潤するのも早いです。神経に浸潤すると腹痛の原因になる可能性があります。

胆道がんができた場所によっては消化管の流れが妨げられてしまうことがあります。消化管は食べ物が流れる臓器で胃や小腸などがあります。

胆道がん以外の腹痛の原因は?

腹痛から胆道がんが発見されることはあります。しかし、腹痛やみぞおちの痛みは胆道がんだけが原因で起きるわけではありません。腹痛の原因はほかにもあります。

上記のように腹痛にはさまざまな原因が考えられます。胆道がんが腹痛の原因であることは少ないです。腹痛があるといろいろな病気を思い浮かべて不安な気持ちになるかもしれません。その不安は医師の診察を受けて原因について調べることでしか解決できません。速やかに医療機関を受診してしっかりと調べることが大事です。

背部痛は胆道がんの症状?

背部痛は胆道がんが進行して背中側の神経に浸潤(しんじゅん)することで現れることがあります。浸潤とはがんが大きくなって周りの組織に入り込んでいくことです。

背部痛は胆道がん以外の原因でもみられる症状です。

背部痛の原因となる病気の例を挙げます。

背部痛があるから「胆道がんかもしれない」と考えることは必ずしも正しくありません。胆道がん以外の病気が原因としても考えられます。

胆道がんを心配する気持ちが強いと、背部痛が出ただけで怖くなってしまうかもしれません。しかし痛みが出たときに心配するべき病気はほかにもたくさんあります。

胆道がんだけを心配するのではなく、診察を受けて原因を調べることで、意外にすっきりと解決する場合もあります。

6. 身体が黄色くなる黄疸(おうだん)とは?

黄疸(おうだん)は皮膚や眼球結膜(しろ眼の部分)が黄色く染まる状態のことです。黄疸は、ビリルビンという物質の血液中の濃度が高くなることが原因です。黄疸による症状の例を挙げます。

  • 皮膚や眼球結膜が黄色くなる
  • 体がだるく感じる(全身倦怠感、疲労感)
  • 体がかゆくなる
  • 風邪のような症状
  • 微熱
  • 尿の色が濃くなる

体が黄色くなって黄疸と診断されるのはある程度血液中のビリルビン濃度が上昇してからになります。初期の黄疸は、尿の色が濃く見えたりすることがあります。他にも体がかゆくなったりだるさが続くことなどがあります。

黄疸の原因は?

黄疸についてやや専門的な内容を説明します。症状への対応などには黄疸の詳しい理解が必要ではないので、ここを読み飛ばしても問題はありません。

黄疸が出る病気はたくさんあります。黄疸の原因は大きく次のように分類できます。

  • 胆汁の流れが悪いもの:閉塞性黄疸
  • 肝臓の細胞の働きが低下したことによるもの:肝細胞性黄疸
  • 赤血球の破壊の異常によるもの:溶血性黄疸

黄疸の原因は複数あります。原因によって治療が異なります。原因は血液検査などで推定することができます。黄疸を起こす病気には急いで治療しないといけないものもあり、急に黄疸が現れたときには原因を調べることが大切です。

閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)

黄疸は血液中のビリルビンの濃度が高くなることでおこります。ビリルビンは赤血球が壊れることでできる物質です。赤血球が古くなり役目を終えて破壊されるときにビリルビンが発生します。

ビリルビンは胆汁の中に入って胆管内を流れていきます。胆汁は胆管を経て十二指腸に流れこんで行きます。胆汁の流れが滞ることでも黄疸があらわれます。胆道がんによって胆管が狭くなり胆汁の流れが滞ることがあり、そのために黄疸を生じます。

肝細胞性黄疸(かんさいぼうせいおうだん)

肝臓の機能が低下することは黄疸の原因のひとつです。

ビリルビンは肝臓で処理されます。肝臓の機能が低下している場合にはビリルビンの処理が追い付かず血液中にビリルビンがたまってしまうことがあります。

溶血性黄疸

ビリルビンの発生量が増えたときにも黄疸になることがあります。

ある種の病気では、古くなっていない赤血球も破壊される(溶血する)異常な状態が発生します。大量の溶血があると、ビリルビンの量が肝臓で処理できる範囲を超えてしまい、血中のビリルビンの濃度が上昇します。このように、溶血をともなう病気の症状として黄疸が現れることがあります。

7. 黄疸の治療、減黄術(げんおうじゅうつ)とは?

胆道がんを原因とする黄疸は胆汁が流れなくなる閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)です。閉塞性黄疸は、胆汁の流れが滞ることが原因でおきます。

胆汁は肝臓で作られ肝臓の中の胆管(肝内胆管)を流れていきます。いくつかの肝内胆管が合流して肝管(かんかん)となり肝臓の外へ出ていきます。肝管は、胆のうにつながる胆のう管と合流して総胆管(そうたんかん)になります。総胆管は膵臓と十二指腸がつながるファーター乳頭(Vater乳頭)で膵管と合流します。胆道がんが発生すると胆汁の流れが悪くなります。胆汁の流れが悪くなると起きるのが閉塞性黄疸です。

滞っている胆汁を体の外に出すことで黄疸は改善します。黄疸を改善させる治療はいくつかあり、まとめて減黄術(げんおうじゅつ)ということもあります。減黄術により皮膚の掻痒感(そうようかん;かゆみ)、倦怠感(けんたいかん)、食思不振などの黄疸が原因と考えられる症状の改善が期待されます。

閉塞性黄疸に対する減黄術とは?

閉塞性黄疸に対する減黄術は大きく分けて2種類があります。

  • 内視鏡を利用する方法
    • ENBD(Endoscopic nasobiliary drainage:内視鏡的経鼻胆道ドレナージ)
    • ステント療法(Endoscopic biliary stenting:EBS)
  • 皮膚を刺して管を入れる方法
    • PTBD(percutaneous transhepatic biliary drainage:経皮経肝胆道ドレナージ)

ENBD(Endoscopic nasobiliary drainage:内視鏡的経鼻胆道ドレナージ)

ENBDの説明イラスト。胆道にチューブを通して胆汁を鼻から出す

ENBDは内視鏡で胆汁を体の外に出すことにより黄疸を改善する方法です。胆汁は鼻の穴を通したチューブから体の外に出ることになります。鼻から入れるチューブの太さは5-7Fr(フレンチ)です。言い換えると1.7-2.3mmという太さです。

ENBDの良い点は、胆汁が排液できているかを確認できる点です。

悪い点として、鼻から管が入っているので不快感がどうしてもあります。退院してもしばらく鼻に管を入れたままにしておく場合があります。この場合は自分で管を管理しないといけません。とはいえ、チューブの管理はお腹から管が出るPTBDよりはやりやすいと考えられます。

ENBDで注意が必要なことは?

黄疸が強い場合には黄疸を軽減させなければなりません。ENBDによって黄疸は軽くなることなどが期待できます。手技自体は上手くいったとしてもENBDによって引き起こされる問題(合併症)や注意点もあります。

■膵炎

ENBDチューブを留置するときの操作で膵炎が起きることがあります。原因としては胆管の流れを確認するときに造影検査などで膵管の圧力が上昇することや膵液の流れが悪くなることが原因と考えられます。膵炎が重症化した場合の死亡率は約6%と言われており注意が必要です。

一旦膵炎が発生すると、重症化させないように慎重に経過を見る必要があります。膵臓に刺激を与えないためにしばらく食事を控えたりもします。

■発熱

ENBDのチューブに菌が定着して、胆管炎を起こすことがあります。ENBDによる胆管炎は重症化しやすいため、ENBDチューブが留置されている状況での発熱には注意が必要です。ENBDチューブを挿入したまま退院する場合は、どの程度の発熱で受診すべきかを質問してよく聞いておくことが重要です。

■ドレナージ不良

胆汁は粘り気が強いのでENBDチューブが詰まることがあります。ENBDチューブが詰まった場合には、交換が必要になります。胆汁が出てこないことをドレナージ不良といいます。ドレナージが不良な場合、胆汁にうっ滞が起きて胆管炎などの原因になります。チューブから出てくる胆汁の量などを把握しておくことも重要です。

ステント療法(Endoscopic biliary stenting:EBS)

胆道のステント療法のイラスト。狭くなった部分にステントを通して広げる

閉塞性黄疸は、胆汁の通り道が一部で狭くなったり閉塞することによって起こります。

胆汁の流れを正常化する方法の一つに、狭くなっている部分に管を通して、胆汁の流れを確保する方法があります。管を体の外まで出して来る方法をENBDといいますが、短い管(ステント)を体の中に残してくる方法もあります。胆汁は正常な流れのとおり体の中に排出されるようになります。内(ないろう)化という場合があります。内視鏡を用いて行います。

ステントを置く方法は、ENBDやPTBDと違って体の外に管を出すことがなく、社会復帰が早い点や生活のしやすさが利点です。

反面、胆汁を体の外に取り出さないので、胆汁の色や量を観察できません。ステントが閉塞するなどの状態に気付くのが遅くなることがあります。

ステント療法で注意が必要なことは?

ステント留置によって引き起こされる合併症や、経過中の注意点があります。

■膵炎

ステントを留置するときの操作で膵炎が発生することがあります。総胆管の流れを確認するための造影検査で膵管の圧力が上昇することなどが原因とされます。

■発熱(胆管炎:たんかんえん)

ステントががんの増殖により閉塞したり、ステントの位置が変わってしまうことによって胆汁の流れが悪くなることがあります。胆汁の流れが悪くなると再び黄疸や発熱が引き起こされます。ENBDと違いすぐにはステントの閉塞に気づかない場合があります。

■ドレナージ不良

がんが増殖してステントが詰まることがあります。胆汁をうまく流せなくなった状態をドレナージ不良と言います。ステントが詰まった場合には、他の場所にステントを入れたり他の減黄術を行うことがあります。

PTBD(percutaneous transhepatic biliary drainage:経皮経肝胆道ドレナージ)

PTBDのイラスト

胆道がんが胆管の中で大きくなり、胆汁の流れが悪くなることにより、黄疸が発生します。

胆汁の流れを改善させるために、閉塞している部分より上流(主に肝内胆管)に皮膚から針を刺して胆汁を出すための管(チューブ)を挿入する方法があります。肝内胆管にチューブを留置し体の外に胆汁を出すことで胆汁のうっ滞が改善し、黄疸も回復に向かいます。

この一連の手技をPTBDといいます。

PTBDで注意が必要なことは?

PTBDによって引き起こされる合併症や注意点があります。

迷走神経反射

針を刺すときやガイドワイヤーを挿入して操作するときに、迷走神経反射が起きることがあります。血圧が下がる、脈が遅くなる、意識消失するなどが症状です。ほとんどは横になって休めば数分ほどで治ります。

手技の前に予防薬を使用する場合があります。手技中は血圧や脈拍などを定期的に測定します。

気胸

肺は胸腔(きょうくう)というスペースの中に納まっています。肝臓に向かって針を刺したとき、胸腔に穴が開いてしまうことがあります。胸腔に外から空気が入ってくると肺がしぼみ、呼吸がしにくくなります。これを気胸といいます。気胸は自然と治ることもあります。気胸の程度が重症と判断された場合は、胸から空気を抜いて気胸を改善させるための管を挿入することがあります。

■出血

肝臓は血流が多い臓器です。また肝臓の周囲には大きな血管があります。肝臓に針を刺すときに血管を同時に刺してしまうことがあります。手技中には気づかないこともあり、しばらくは出血がないかを確認する必要があります。出血はそのまま様子を見ていると止血される場合もありますが、出血量が多いときには、カテーテル治療などで止血しなければならないことがあります。

■感染

チューブという異物が挿入されていることで細菌が胆管内に入り込み感染を起こすことがあります。チューブからしっかり胆汁が出ているかなどに注意することが重要です。

■胆汁性腹膜炎

挿入した管が十分に胆管に入りきっていなかったり、管が閉塞していたりすると胆汁がお腹の中に漏れることがあります。漏れた胆汁は腹膜炎(ふくまくえん)を起こします。腹膜炎は強い腹痛や発熱を症状とします。胆汁性の腹膜炎が疑われる場合は、胆汁を体の外に出すための管を挿入しなければならない場合や手術が必要な場合もあります。

■チューブの逸脱

呼吸によってチューブが動いたりすることで自然とチューブが抜けてしまうことがあります。またチューブを引っ掛けたりしてしまうことも原因となります。

黄疸による症状を和らげる工夫

黄疸による症状はかゆみが主体になります。黄疸が出ているときには肝臓の機能も低下していることが多いので、体がむくみやすくなっています。むくみ(浮腫)があると皮膚は薄く乾燥しやすくなり、かゆみをさらに助長します。

皮膚に傷がつくとかゆみは増強するのでとにかく引っかかないことが大事です。ほかに皮膚の水分を保つこと(保湿)もかゆみを和らげます。

  • ローションなどを使用する 
  • 部屋の温度と湿度を保つ

以上のような工夫が有効と考えられます。個人個人でかゆみに対して有効な方法も異なるので、自分にあった方法を探してみてください。

8. 胆道がんはどうやって診断する?

胆道がんは黄疸や腹痛をきっかけに発見されることが多いです。症状だけで胆道がんとほかの病気を見分けることはできないので、自己診断しようとしないでまず診察を受けてください。

胆道がんが疑われる場合には超音波検査CT検査で胆道のどこにがんができているかを判断します。その後、必要に応じて検査を追加します。

胆道がんのステージを決めるための検査の順序

胆道がんと診断された後にはステージを決めます。ステージとはがんの進行度を分類したものです。

ステージを決めることは適切な治療を選択したりするのに役立ちます。ステージを決めるにはCT以外の検査が必要になる場合があります。

9. 胆道がんのステージとは?

胆道がんのステージはステージIからステージIVまでに大きく分けます。ステージ0もありますがここでは省略します。胆道がんができた部位によってステージを決める方法がことなります。

ステージの決め方は?

ステージは3つの要素を組み合わせて決めます。3つの要素とはT因子、N因子、M因子の3つです。

T因子は胆道でのがんの状態を示しています。胆道でのがんの状態はがんの深さや周囲の臓器との関係性に注目して評価します。

N因子はリンパ節転移の有無です。胆道の周りには領域リンパ節という組織があります。領域リンパ節は胆道がんが転移しやすい場所です。領域リンパ節のみに転移がある場合は手術で領域リンパ節を切除することで根治の可能性があります。根治とはすべてのがんを体から取り除くことです。

M因子は遠隔転移があるかどうかです。遠隔転移は領域リンパ節以外の離れた臓器に転移があることです。

それぞれの因子の評価方法は胆道がんのルールブックである「胆道癌取扱規約」を用います。

ステージの細かな内容は「胆道がんの生存率」で解説します。

10. 胆道がんの生存率は?

生存率は、診断が開始されてから5年後にどれほどの人が生存しているかという指標が使われます。5年生存率といいます。胆道がんは発生した場所によって肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん(中部・下部胆管がん)、十二指腸乳頭部がん、胆のうがんに分かれます。胆道がんはできる場所で少し生存率が異なります。

肝内胆管がんの生存率

肝内胆管がんは肝臓の中を走る胆管にできるがんです。このために肝内胆管がんの生存率は肝臓のがんとして調査されています。肝臓にできるがんで一番多いのは肝内胆管がんではなく、肝細胞がんというものです。「肝臓がん」と言えばたいていは肝細胞がんのことですが、統計では「肝臓」のがんとして肝細胞がん肝内胆管がんを一緒にしている場合があります。

肝内胆管がんに限ったステージごとの生存率の統計はありません。手術の有無でグループに分けて生存率を計算した報告があります。

  手術あり 手術なし
5年累積生存率 41.9% 37.1%

参考文献:日本肝癌研究会追跡調査委員会, 第20回 全国原発性肝癌追調査報告. 肝臓, 60巻 8号 258-293(2019)

肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん(中部・下部胆管がん)、十二指腸乳頭部がん、胆のうがんの生存率

胆道がんはできる場所によって同じステージでも少しずつ生存率が異なります。

  肝門部領域胆管がん 遠位胆管がん 十二指腸乳頭部がん 胆のうがん
ステージ I 69.8% 59.3% 82.9% 87.5%
ステージ II 43.3% 39.3% 66.8% 68.7%
ステージ III 30.5% 32.6% 49.9% 41.8%
ステージ IVa 22.3% 29.6% 33.9% 22.3%
ステージ IVb 7.2% 9.7% 0% 6.3%

参考文献:J Hepatobiliary Pancreat Surg.2009:16;1-7

十二指腸乳頭部がんのステージIVbの人の5年生存率は0%となっています。かなり厳しい数字だと思います。

この統計は手術をした人に限って集められたものです。ステージIVbとわかっている人には通常は手術をせずに抗がん剤治療などが選ばれます。ただし、手術前には予想できなかった転移が手術中に見つかったり手術後の検査で他の臓器に転移をしていたりしたことが指摘された人たちでは、手術後にステージIVbと判定されることになります。

またこの統計でステージIVbの人は54人と、生存率を推定するには少ない人数でした。そのために0%といっても偶然の要素が含まれている可能性もあります。現実の一人一人の経過を統計から正確に予想するのは困難です。

11. 胆道がんの検査で何がわかる?

胆道がんの検査はいくつかあります。検査をする目的は2つあります。1つは胆道がんの診断をするためでもう1つは胆道がんと診断した後に胆道がんのステージを決めるためです。同じ検査が違う目的で使われることもあります。

胆道がんの診断をするための検査

胆道がんは黄疸や右わき腹の痛みなどの症状をきっかけにして発見されることがあります。黄疸などの症状だけで胆道がんと診断することはできません。いくつかの検査をへて胆道がんと診断されます。

  • 超音波検査
  • 血液検査(腫瘍マーカー
  • CT検査
  • MRI検査
  • 上部消化管検査
  • ERC(内視鏡的逆行性胆管造影)
  • EUS(超音波内視鏡)
  • IDUS(管腔内超音波検査)
  • PTC(経皮経肝胆道造影)
  • POCS(経口胆道鏡)

ここであげた検査をすべて使う必要はありません。例えばCT検査で明らかに胆道がんと診断できる場合にはいくつかの検査を省略することがあります。

胆道がんのステージを決めるための検査

胆道がんと診断がされました。次にすることは胆道がんのステージを決めることです。ステージは適切な治療法を選択する上で大事です。

  • CT検査
  • MRI検査
  • EUS(超音波内視鏡)
  • IDUS(管腔内超音波検査)
  • PET/CT検査
  • 審査腹腔鏡

ステージはがんの広がりや転移の有無を基準に決めます。ステージを決めるためにはいくつかの検査を用います。

12. 胆道がんの治療は?

胆道がんは可能な場合は手術でがんをとりのぞきます。胆道がんができた場所で手術の方法が異なります。手術は胆道がんを根治に導く可能性がある唯一の方法と考えられています。

胆道がんの治療の選びかた

胆道がんは黄疸などの症状をきっかけにして発見されることが多いです。特に黄疸が起きている場合は黄疸の治療をまず行う必要があります。黄疸の治療を減黄術(げんおうじゅつ)といいます。

その後手術が可能であれば手術によって治療します。遠隔転移があったりがんの広がりが大きくて手術ができない場合は抗がん剤による治療が選ばれます。転移やがんが広がったことによって痛みなどの症状がある場合は放射線による治療が行われます。

緩和治療はどの場面にも登場します。減黄術などの症状を改善する治療も広い意味では緩和治療に含まれます。

13. 胆道がんの手術はどんな方法?種類は?

胆道がんはできた場所によって手術の方法が違ってきます。

  • 肝内胆管がん
    • 肝切除術
    • 拡大肝切除術+肝外胆管切除術
  • 肝門部領域胆管がん
    • 拡大肝切除術+肝外胆管切除術
    • 拡大肝切除術+膵頭十二指腸切除術
  • 胆のうがん
    • 胆のう摘出
    • 拡大肝切除術+肝外胆管切除術
    • 胆のう摘出+肝切除術
    • 拡大肝切除術+膵頭十二指腸切除術
  • 遠位胆管がん
    • 膵頭十二指腸切除術
  • 十二指腸乳頭部がん
    • 膵頭十二指腸切除術

胆道がんはできた場所だけを切除するのではなく肝臓や膵臓の一部も一緒に切除することが多いです。

14. 胆道がんの抗がん剤治療とは?

胆道がんで抗がん剤治療を使うのは遠隔転移がない場合やがんの広がりが大きくて切除ができないときです。遠隔転移は領域リンパ節以外のリンパ節や他の臓器に転移がある場合のことです。胆道がんで効果のある抗がん剤治療はGC療法、S-1療法、GS療法の3つが知られています。最初に用いられる治療はGC療法です。

抗がん治療の詳細は「胆道がんの抗がん剤治療」で解説しています。

15. GC療法とは?

GC療法はゲムシタビン(Gemcitabine)とシスプラチン(Cisplatin)の2種類の抗がん剤を組み合わせた治療です。ゲムシタビンとシスプラチンの頭文字をとってGC療法と呼ばれることがあります。

GC療法は、ゲムシタビン単独療法と比較して生存期間の延長などが確認されています。

GC療法の方法は?

GC療法のスケジュールの例を表に示します。

 

1 8 21
ゲムシタビン  1000mg/m2      
シスプラチン 25mg/m2      

投与量は体表面積を基準にして決められます。体表面積は身長と体重から計算されます。上記のスケジュールを3週間(21日)を1サイクルとして繰り返していきます。投薬をするのは1日目と8日目になります。

この他に副作用対策として一般的に5-HT3受容体拮抗薬(吐き気止め)副腎皮質ホルモンなどが併用されます。また治療中は抗がん剤の効果、副作用、腎臓などの機能や骨髄機能などを確認します。

16. S-1単独療法とは?

S-1単独療法はS-1という薬の一剤による抗がん剤治療です。肝門部胆管がんに効果がある治療法の一つです。

S-1は内服薬(飲み薬)です。成分名で言うとテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤です。S-1は胆道がん(肝門部胆管がん)のほかにも膵臓がん大腸がんなどの治療で用いられることがあります。

S-1単独療法の方法は?

通常「28日連日服用後、14日間休薬」を1サイクルとし、1サイクルを繰り返して使います。

1-28 29-42
S-1 80mg/m2 ◯(連日服用) 休薬

用量は通常、体表面積によって変更されます。体表面積1.25m2未満の人であれば80mg/日、1.25-1.5m2であれば100mg/日、1.5m2以上であれば120mg/日となります。全身の状態などによっても増減が考慮されます。副作用にはやや注意が必要で、下痢が多い人には特に注意するべきと考えられます。

17. GS療法とは?

GS療法はゲムシタビン(Gemcitabine)とS-1の2種類の抗がん剤を使う治療です。ゲムシタビンとS-1の頭文字をとってGS療法と言われることがあります。

GS療法の方法は?

ゲムシタビンは1日目と8日目に点滴で投与します。21日を1サイクルとして繰り返して行います。

S-1は内服薬(飲み薬)です。

通常「14日連日服用後、7日間休薬」を1サイクルとし、1サイクルを繰り返して使います。

1 8 15 21
ゲムシタビン  1000mg/m2          
S-1       60mg/m2    

投与量は体表面積を基準にして決められます。体表面積は身長と体重から計算されます。体表面積1.25m2未満の人であれば60mg/日、1.25〜1.5m2であれば80mg/日、1.5m2以上であれば100mg/日となります。

18. 胆道がんの放射線療法とは?

胆道がんで放射線療法を使う場面はいくつかあります。放射線治療の効果や副作用などを理解して選ぶことが大事です。

転移した場所に対する放射線治療

胆道がんが進行すると転移をすることがあります。胆道がんが転移しやすい場所は肺、肝臓、骨、リンパ節などです。転移をした場所で痛みなどの症状が現れる場合があります。痛みの症状がでやすいのが骨への転移です。骨転移による症状を緩和するには放射線治療が効果的です。

骨転移は背骨に起きることがあります。背骨の真ん中には神経が通っています。背骨の転移が大きくなると神経に影響することもあります。神経に影響すると麻痺などの症状がでることがあります。麻痺症状を防いだり緩和する目的でも放射線治療を使うことがあります。

手術ができない場合の一つの手段

胆道がんを根治に導くには手術が唯一の方法だと考えられています。遠隔転移がない場合はまず手術ができるかを考えていくつかの検査を使って評価します。遠隔転移は領域リンパ節以外のリンパ節や他の臓器に転移があることです。遠隔転移がなくてもがんの広がりが大きな場合は手術ができないこともあります。

手術ができないと判断されてそのままにしておくとがんが大きくなり黄疸などの様々な症状がでることがあります。がんが周囲に与える影響を予防する目的で放射線を胆道がんに照射して症状が出たりするのを予防します。他にも抗がん剤治療なども選択肢にあります。その時の状況で最も適した治療法を選択することが大事です。放射線治療によって期待できる効果や副作用、他の選択肢である抗がん剤治療などについてしっかりと説明を効いた上で治療を選ぶことが大事です。

19. 胆道がんの名医はどこにいる?

胆道がんの治療では手術は重要な治療法です。がんの手術は一生一代の大勝負です。誰だって名医に手術をしてもらいたい気持ちになるのは理解できます。

ひとつの考えとして胆道がんの名医は手術について精通していることが条件になるかもしれません。ここでは名医の名前をあげることはしませんが、名医に巡り会える方法を考えていきたいと思います。

名医はどんな医師だろう?

名医の定義はありません。それには理由があります。

医師と患者の関係も人間同士の関わりです。出会った医師を名医と呼べるかどうかはそれぞえれの患者さんの考え方が影響します。つまり名医の定義はその人によって異なると考えられます。

どんな病院を選べばいい?

胆道がんを根治するには、手術が有力な方法です。根治とはすべてのがんを体から取り除くことです。胆道がんの手術は難しく、手術後の合併症の中には深刻なものがあります。手術がうまくいったとしても合併症はおきることがありますが、できるだけその確率は低いほうがいいです。外科医の腕や手術をする施設がどれだけ胆道がんの手術に慣れているかは重要です。それぞれの施設で経験した手術件数は公表されています。手術の数が多いほど熟練しているとは必ずしも言い切れませんが、目安にはなります。

もし、手術をする場所などで悩んでいる場合は、日本肝胆膵外科の定める高度技能専門医という制度を参考にしてみるのは価値ある方法かもしれません。高度技能専門医は学会が定める肝臓・胆道・膵臓に関する難易度の高い手術に精通している医師に対して認定されたものです。高度技能専門医は、日本肝胆膵外科学会のウェブサイトで施設と医師の名前が公表されています。

20. 胆道がんのガイドラインはある?

診療ガイドラインは、治療にあたり妥当な選択肢を示すことや、治療成績と安全性の向上などを目的に作成されています。胆道がんにも診療ガイドラインがあります。胆道がんでは、日本肝胆膵外科学会が作成した「胆道癌診療ガイドライン」があります。

外国にもいくつかのガイドラインがあります。ガイドラインがいくつも存在するのは理由があります。国ごとに病院に行くときの環境などが違うことや使うことのできる薬剤の違いなどを考慮しています。

医学は日々進歩を遂げているので、ガイドラインは数年に1回のペースで中身が更新されています。ガイドラインにはまだ反映されていない情報がすでに一般的な治療として認知され実践されていることも珍しくはありません。ガイドラインは医師が治療を進めていく上で役立ちますが、ガイドライン通りの治療がいつも正しいわけではありません。ガイドラインには反映されていない知見が役に立つ場合もあります。さらに実際にはその時々、患者さんの状態はひとりひとり異なることを考えに入れて治療します。

21. セカンドオピニオンって何?どうやって受ければいいの?

セカンドオピニオンという言葉は耳にしたことがあるのではないでしょうか。セカンドオピニオンは適切な診療を受けるために有効な手段です。セカンドオピニオンについて解説します。

セカンドオピニオンとは?

セカンドオピニオンとは主治医以外の医師に現在受けているもしくはこれから受ける治療の方針などについての意見を聞くことです。多くの場合は主治医から紹介状診療情報提供書)を作成してもらい、それを持って他の医療機関を受診し自分の病状や治療についての意見を聞きます。医療機関によっては「セカンドオピニオン外来」など専用の窓口を設けているところもあります。セカンドオピニオンは治療を選択するためにより広い視野を持つことができるための有効な方法です。

セカンドオピニオンを受けるには?

セカンドオピニオンは主治医との関係が悪くなるような気がするかもしれません。そのためになかなか切り出しにくいと思うとよく耳にします。セカンドオピニオンを受けたいと切り出すことが今の治療方針に疑問があると相手に受け取られてしまうと思うかもしれません。医師の立場からみると、セカンドオピニオンを求められたからといって患者さんのことを悪く思うようなことはありません。セカンドオピニオンは患者さんがもつ権利です。セカンドオピニオンを受けることで適した治療が選択されたり、今の治療に納得してくれるならば主治医の立場からみてもありがたいことだと思います。もし他の医師の意見を聞いてみたいと思ったならば、遠慮なく主治医にセカンドオピニオンを求めることをお薦めします。

セカンドオピニオンでは何に気をつければいい?

セカンドオピニオンを聞く時にもっとも注意してほしいのは、受診する目的をはっきりとさせることです。

セカンドオピニオンを担当する医師は主治医とは異なり、初対面になります。今までの治療経過については診療情報提供書で把握していても、患者さんの性格や価値観などは把握できていません。診療情報提供書には書ききれない患者さん自身の考えを短い時間で明確に伝えなければ、本当に聞きたかったことをうまく聞けないかもしれません。短時間で自分の意思を知ってもらうためにあらかじめ聞きたい点を紙に書き出すなどして整理しておいてください。

一人でセカンドオピニオンを受診したら自分の話を聞いてもらうことに一生懸命になってしまうことはよくあります。伝えることも大事ですが、セカンドオピニオンの目的はあくまで違う医師の話を聞くことです。意見を聞き漏らすことを少なくするには、可能ならば家族など信頼できる人と一緒に話を聞くことも良い方法だと思います。

またセカンドオピニオンを求めると治療や検査が先延ばしになっていることも忘れてはいけないことです。時間は刻々と経過していきます。貴重な時間を使ってセカンドオピニオンを受けているのだということを自覚することは大事です。

またセカンドオピニオンで質問したいことや、どんな答えのときにどんな行動をとるかについては、ある程度決めておく必要があります。例えば主治医と同じ意見であればどちらで治療をうけるかなどです。具体的にイメージを膨らませておくほど次の行動へ円滑に動けます。

セカンドオピニオンを受ける前にすることは?

セカンドオピニオンを受けるには、診療情報提供書を主治医に書いてもらうことと、セカンドオピニオンに対応してくれる医療機関を探すことが必要です。診療情報提供書を持たずにいきなりセカンドオピニオンを目的として受診したり、診療情報提供書を持っていても予約がなければセカンドオピニオンには対応してくれないことがあります。あらかじめ医療機関に問い合わせてセカンドオピニオンの受診枠を確保しておいてください。

受診したい医療機関が思い浮かばない場合は主治医に意見を求めてもいいと思います。医師でしか把握できない情報もあるかもしれませんし、主治医の施設と提携している紹介先であれば、施設間の連絡で受診枠の確保をしてくれることもあります。自分で何を連絡しないといけないかの確認は重要です。セカンドオピニオンを受けることが決まったらまずやるべきことを整理することが大事です。

セカンドオピニオンを受けたあとはどうする?

セカンドオピニオンを受けたあとには、治療や検査についての決断をしないといけません。つまりどの医療機関でどんな治療や検査を受けるかを決めます。

主治医の提示した治療や検査を選ばなかった時は気まずいと思うかもしれません。しかし主治医は患者さんの決断を受けて、希望を叶える方法を考える立場にあります。

結果として主治医の提案を受け入れるという判断になったとしても、セカンドオピニオンを受けた意味はあります。別の医師の意見により頭の中が整理されて治療に前向きになれることもあります。

セカンドオピニオンを受けた医療機関での治療を希望した場合には、もとの主治医に経緯を報告し、必要ならば改めて紹介の手続きを取ってもらってください。少し負担かもしれませんが追加した情報が提供されたりしてその後の治療にもいい影響が期待できます。主治医もきっとその選択を後押ししてくれると思います。