たんどうがん
胆道がん
胆道に発生する悪性腫瘍(胆管がん、胆のうがん、乳頭部がん)の総称
6人の医師がチェック 167回の改訂 最終更新: 2022.10.17

胆道がんの原因は?胆石症は胆道がんの原因?

胆道がんは胆道に炎症がおきることなどが原因と考えられています。胆道がんの発生と関係のあるものはいくつか知られています。胆道がんの発生に影響のあるものや胆道がんの発生を抑制する可能性があるものなどを解説します。

1. 胆道がんは男性に多い?

がんの統計2022」での粗罹患率に注目してみます。粗罹患率は男性で10万人あたり19.4人、女性で10万人あたり15.8人です。胆道がんはやや男性に多いものの、おおむね男女で同程度に発生していることがわかります。

参考:国立がん研究センターがん情報サービス

2. 胆道がんは高齢者に多い?

「がんの統計2022」では年齢階級ごとの罹患率(りかんりつ)が公表されています。罹患率は1年間で10万人あたりに胆道がんが新しく診断された人数として計算されています。

男女ともに胆道がんは年齢を重ねるとともに罹患率が上昇しています。年齢を重ねることで胆道がんが発生する危険性が上昇すると考えることができます。

3. 膵・胆管合流異常は胆道がんの原因?

膵・胆管合流異常は、膵管(すいかん)と胆管が合流する場所が本来の場所とはことなる先天異常です。膵・胆管合流異常がある人では、ない人に比べて胆道がんが発生する確率が高くなります。

以下の統計値などは「胆道癌診療ガイドライン改訂第2版(日本肝胆膵外科学会/編, 2013年発行)」を参照しています。

膵・胆管合流異常はどんな病気?

膵管と胆管は十二指腸乳頭部という場所で合流しています。膵管には膵液が流れ、胆管には胆汁が流れます。正常な場合は膵管と胆管が十二指腸乳頭部で合流します。十二指腸乳頭部ではOddi括約筋(オッディかつやくきん)という筋肉の働きにより胆汁や膵液が逆流したり違う管に流れ込まないようになっています。胆管と膵管が十二指腸乳頭部より手前で合流すると胆汁や膵液の逆流が起きてしまいます。これが膵・胆管合流異常です。

膵・胆管合流異常は胆道が拡張しているかどうかで拡張型と非拡張型の2つに分類されます。

膵・胆管合流異常はよくないのか?

膵・胆管合流異常では膵液が逆流して胆管の中に入り込むことがあります。膵液が胆管に入ると胆管に強い炎症を起こします。慢性的な炎症によりがんが発生する原因になると考えられています。

膵・胆管合流異常があるとどのくらいがんが発生するのか?

日本で膵・胆管合流異常の人を調査した結果では膵・胆管合流異常の人には拡張型で21.6%、非拡張型で42.2%の人に胆道がんが見られたと報告されています。

膵・胆管合流異常はどんな症状があるのか?

膵・胆管合流異常の症状はその程度によります。逆流などの程度がひどい場合には以下の症状を表すことがあります。

  • 腹痛
  • 黄疸(おうだん)
  • 腫瘤(しゅりゅう)に触れる
  • 発熱
  • 悪心

一方で膵・胆管合流異常の程度がひどくない場合は症状が目立たないこともあります。胆道がんが見つかり検査を進めていく過程で膵・胆管合流異常が指摘されることもあります。

膵・胆管合流異常は治療が必要か?

「胆道癌診療ガイドライン改訂第2版」では膵・胆管合流異常の人に対しては予防的に胆のうを摘出したり胆管の切除をしたりすることが勧められています。

4. 原発性硬化性胆管炎は胆道がんの原因?

原発性硬化性胆管炎(PSC)は胆管が障害されることで胆汁の流れが悪くなり、肝臓にも影響が及ぶ原因不明の病気です。原発性硬化性胆管炎は20代と60代に見つかることが多く、数年のうちに肝臓の機能が低下していきます。肝臓の機能がかなり低下した段階では肝臓移植が必要になることがあります。

原発性硬化性胆管炎がある人では胆管がんの発生する危険性が高くなることが知られています。

参考文献
胆道癌診療ガイドライン改訂第2版.
Liver Int.2008;28:983-989.
・難病指定センターホームページ「原発性硬化性胆管炎(指定難病94)」(2022.3.16閲覧)

原発性硬化性胆管炎はどんな病気?

原発性硬化性胆管炎は男性に多く発生します。肝内胆管または肝外胆管に線維化という変化が起こります。線維化した胆管は狭くなり胆汁の流れが悪くなります。進行すると肝硬変や肝不全に至ります。肝硬変や肝不全も重い病気ですが、原発性硬化性胆管炎がある人では胆道がんのうち胆管がんの発生の危険性が高くなることが知られています。

原発性硬化性胆管炎はよくないのか?

原発性硬化性胆管炎は進行すると肝硬変、肝不全を引き起こします。肝硬変が進行すると肝不全にいたります。肝不全は肝臓が機能しなくなった状態です。肝不全は命に危険に及ぼすことがあります。

治療としては、内服薬などでできるだけ肝臓の機能が悪くなるのを抑えたり、胆管の流れを改善するための手術などが検討されます。肝不全が深刻な場合は肝臓の移植(肝移植)も検討されます。

原発性硬化性胆管炎があるとどのくらいがんが発生するのか?

日本での報告によると原発性硬化性胆管炎の人のうち3.6%に胆管がんが発生したとされています。胆管がんが発生するしくみについては明らかにはなっていない部分もありますが、胆管の上皮細胞が傷害を受けることや濃縮された胆汁の悪影響などが考えられています。

原発性硬化性胆管炎はどんな症状があるのか?

肝不全や胆汁うっ滞を原因とした症状が現れます。肝不全は肝臓の機能がかなり低下した状態、胆汁うっ滞は胆汁の流れが悪い状態です。

  • 全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん):からだのだるさ 
  • 掻痒感:かゆみ 
  • 黄疸(おうだん):皮膚や眼球結膜(白目の部分)が黄色くなる 
  • 発熱

胆汁が流れなくなるとビリルビンという物質を体の外に出せなくなります。ビリルビンが体の中に蓄積すると皮膚や眼球結膜が黄色くなります。黄疸といいます。黄疸には体がかゆくなったり熱が出たりする症状が伴います。

5. 肝内結石症は胆道がんの原因?

肝内結石症があると胆道がんができる確率が上がることが知られています。肝内結石症は肝臓の中の胆管に結石ができる病気です。

参考文献
胆道癌診療ガイドライン改訂第2版.
胆石症診療ガイドライン2016(改訂第2版).
胆道 2009;23:80-87

肝内結石性はどんな病気?

肝内結石症は肝臓の中の胆管に結石が発生して症状が現れる病気です。結石はビリルビンが濃縮されたもの(ビリルビン結石)、コレステロールを原因とするもの(コレステロール結石)が多いとされています。

肝内結石症はよくないのか?

肝内結石は無症状のこともありますが、結石が肝内胆管を閉塞して胆汁の流れが悪くなると感染症(胆管炎、肝膿瘍(かんのうよう))が発生して発熱や右の脇腹の痛み(右季肋部痛)といった症状を引き起こします。

治療は内視鏡を使ったり肝内結石がある肝臓を切除したりしますが、再発が多いことも問題とされています。

肝内結石症があるとどのくらい胆道がんが発生するのか?

肝内結石がある人の追跡調査で5.4%に胆道がんが発生したという報告があります。

肝内結石があることで胆管に慢性的な炎症が起きて胆道がんが起きると推測されています。肝内結石が見つかった場合は胆道がんの合併がないかも調べられます。

肝内結石症の症状は?

肝内結石症の症状は、結石が胆管を塞いで胆管炎などの感染症がおきることを中心としています。症状は発熱や右脇腹の痛み(右季肋部痛)などです。

6. 化学物質は胆道がんの原因? 

1,2-ジクロロプロパンという物質が胆道がんの一部である胆管がんの発生に強く関係しているとされています。

1.2-ジクロロプロパンは印刷機の洗浄液などに含まれていることがある物質です。2012年に大阪府で印刷業に従事していた25-45歳の男性16名が胆管がんを診断され、調査が行われた段階で7名が死亡していることがわかりました。

厚生労働省による調査の結果、印刷機の洗浄液には1,2-ジクロロプロパンが大量に含まれていました。1,2-ジクロロプロパンと胆管がんの関係が疑われました。ほかの化学物質などについても検討した結果、大量の1,2-ジクロロプロパンに長期間にわたって触れることが胆管がんの発生に強く関係していることが推定されました。

どのくらいの期間で発がんするのか?

厚生労働省が作成した報告書によると、1,2-ジクロロプロパンにどの程度の期間触れると胆管がんが発生するかは不明とされています。同じ報告書では胆管がんが発生した人のうち最も短い人で3年8カ月にわたって1,2-ジクロロプロパンに接していました。

参考文献
IARC(国際がん研究機関), IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans Volume 110.
・厚生労働省:「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」報告書(2013年3月14日)

7. 飲酒は胆道がんの原因?

飲酒は胆道がんの発生する確率を上昇させる可能性があると考えられています。

胆道がんは胆道に慢性的な炎症がおきることで発生すると考えられています。飲酒量が多くアルコール性肝炎などでの状態が続いていれば胆道がんが増えるかもしれないとして説明がつきます。

本当に飲酒で胆道がんになった人はいるのか?

過去には飲酒量に注目して調査が行われています。1日のアルコールの量が80g以上の人に胆管がんが発生しやすいかの調査がいくつか行われました。アルコール80gは日本酒では3.5合、ビール3.5本、ウイスキー3.5杯におおむね相当します。調査では1日アルコール摂取量80g以上の飲酒により胆管がんのリスクが上昇するという結果が多くでています。

今までの調査結果から、飲酒は胆道がんが発生する危険性を上昇させる可能性があると考えられています。

参考文献:Hepatology.2011;54:173-184

飲酒はどうすればいいのか?

飲酒を1日の楽しみにしている人は多くいると思います。飲酒はいくつかの病気との関係が明らかになっています。多くの病気は飲酒量と関連があるとされています。一滴も飲んではいけないと言われる状況は限られています。

過度な飲酒は胆道がんだけでなく肝炎や膵炎などの原因にもなり、ときに重い症状を現すことがあります。飲酒は適量を守って楽しみたいものです。

8. 喫煙は胆道がんの原因?

喫煙は胆道がんと弱く関連している可能性があります。

胆管がんと喫煙の関係

喫煙者に胆管がんが多いという報告もありますが、1日の喫煙量や喫煙の期間などが詳細には調べられていないためにその関係性ははっきりしません。また喫煙とは関係がないとする報告もあります。今後喫煙と胆管がんの関係性が詳細に検討され、よりはっきりとした結論が出る可能性もあります。

参考文献:Hepatology.2011;54:173-184

胆のうがんと喫煙の関係

日本での検討では胆のうがんと喫煙に関係があるとの報告があります。

調査は1988年から1990年の期間に113,496人を対象にして行われました。調査対象のうち約0.15%にあたる165名が胆のうがんによって亡くなっていました。喫煙中の人は喫煙経験がない人に比べて胆のうがんによって死亡する危険性が2.27倍という結果でした。

喫煙の本数とともに胆のうがんが発生する危険性が上昇する傾向にありました。

胆のうがんは珍しいがんの一つですが、喫煙はその発生に関係している可能性があるとの結論が得られました。

この一件だけでは確実な結論とは言えません。今後の研究によって結論が変わることもありえます。とはいえ、喫煙は他にも多くの病気の原因になります。胆のうがんより他の病気が問題になる人が大多数です。喫煙が与える影響については、胆のうがんと関係があってもなくても、禁煙したほうがいいことには間違いないでしょう。

参考文献:Int J Cancer.2008;122:924-9

9. 食べ物は胆道がんの原因になる?

胆道がんと食事の関係については、今も様々な研究が行われています。その中では緑茶などが胆道がんの発生を減らす方向に働く可能性も報告されています。以下でいくつか例を挙げます。

食事を考える上で、前提として食事は日々の栄養バランスを保つことが第一です。食事と関係する病気は胆道がんだけではありません。胆道がんへの影響を気にするあまり栄養バラン

スに偏りが生じてはかえって不健康な食事になってしまいます。

胆道がんのリスクを下げる食事を長年続けることで胆道がんになる確率は下がるかもしれませんが、確率が下がったとしてもゼロにはなりません。どんなに気を付けても胆道がんになるときはなります。

このページの情報を実際の食生活に応用しようと思うときは、栄養、胆道がんとの関係の弱さ、好きなものを食べられる楽しい生活とのバランスを考えて、個人や家族の価値観に基づいて判断してください。

緑茶は胆道がんを抑える?

緑茶は胆道がんの発生を抑える可能性があるとした報告があります。

日本でおよそ9万人を1995年-1999年の間に登録し、2010年まで追跡した調査があります。緑茶1杯を120mlとして集計されました。

1日720mlを超えて緑茶を飲む人々は、1日120ml以下の人に比べて胆道がんの発生する人数が少ない結果でした。120ml以下の人では1年で10万人あたり25.5人、720mlを超える人では1年で10万人あたり24.3人の胆道がんが発生しました。年齢・性別など関連する要因を計算上調整したところ、統計的に差があると見られました。

参考文献:Cancer Sci.2016;107:77-83

コーヒーは胆道がんを抑える?

コーヒーが胆道がんの発生を抑えるかどうかは不明です。

日本でおよそ9万人に対して行われた調査では、コーヒーを1日に飲む量に注目して対象者を4つのグループに分けました。グループは「飲まない」、「3/4杯以下」、「3/4杯より多くて2杯以下」、「2杯より多い」の4つです。

結果として、胆道がんの発生に差は見られませんでした。

参考文献:Cancer Sci.2016;107:77-83

野菜は胆道がんを抑える?

野菜と果物の摂取は胆道がんの発生を抑える可能性があります。

日本において野菜と果物の摂取量と胆道がんの発生に関係があるのかを調べた報告があります。調査の対象となったのは約8万人の人です。対象者は1995年から1999年の間に登録され、2012年まで追跡されました。その間に胆のうがんが133人、肝外胆管がんが161人、肝内胆管がんが99人に発生しました。胆のうがん肝内胆管がん肝外胆管がんはいずれも胆道がんに分類されます。

野菜の摂取量は4段階に分けられました。結果としては野菜の摂取量が増えるほど肝外胆管がんの発生が少ない傾向がありました。

紹介した研究では野菜や果物によって胆道がんのうち肝外胆管がんの発生が抑制される可能性が示されましたが、もともと胆道がんになる人が少なく、さらに肝外胆管がんはその一部だけなので差があったとしてもわずかと考えられます。

参考文献:Int J Cancer.2017;140:1009-1019

10. 胆道がんは予防できるか?

胆道がんを減らす可能性があるものとして緑茶や野菜の摂取などを紹介しました。どの病気にも言えることですが、予防は完全ではありません。胆道がんについては予防と言えるかどうかも確実ではありません。

胆道がんの予防をしているからといって胆道がんにならないわけではありません。まったく予防を考えない人でも胆道がんにならない場合のほうが多数です。

胆道がんを診断された人は、「何か間違っていたのだろうか」と思えてくるかもしれませんが、予防が足りなかったせいではありません。

病気の予防について考えることは大事ですが、がんの予防は簡単にはできません。それとともに、もし胆道がんになったときにどう治療するかを考えることも大切です。