たんどうがん
胆道がん
胆道に発生する悪性腫瘍(胆管がん、胆のうがん、乳頭部がん)の総称
6人の医師がチェック 167回の改訂 最終更新: 2022.10.17

胆道がんの手術:手術の方法や合併症の解説

胆道がんの手術は難しい手術の一つです。胆道は薄いのでがんができると胆道から周りの臓器に広がりやすい性質があります。このため胆道がんは周りの臓器とともに切除する必要があります。いくつかある手術の方法を解説します。

1. 胆道がんの治療は手術?

胆道がんの根治的治療は手術です。根治とはがんを全て体から取り除くことです。厳密な意味で根治できたことを確かめる方法はありませんが、手術で目に見えるがんを全て取り除くことができ長期に渡って再発がなければ完治した可能性が大きいと見て治療終了とすることもあります。

抗がん剤や放射線もがん治療で使われる治療法です。他のがんでは根治が可能な場合がありますが胆道がんでは手術が唯一の根治的治療と考えられています。抗がん剤治療放射線治療は余命を延長したり症状を緩和することが主な目的になります。

胆道がんの治療の選びかた

2. 胆道がんの手術ができる条件は?

胆道がんの根治的治療は手術です。根治とはがんを全て体から取り除くことです。全ての人に対して手術が適しているとは限りません。医師は胆道がんの状態と体の問題をしっかり評価した上で手術という選択肢を提示します。

胆道がんの広がり

胆道がんが肝臓や周りの臓器に大きく広がっている場合は手術ができない場合があります。肝臓はいくらかは切り取っても機能を維持できる臓器ですがそれにも限りがあります。一般的には肝臓を3/4以上の切除が必要な場合には手術ができないと判断されることがあります。

胆道がんは遠隔転移していないか?

まず条件として胆道がんに遠隔転移がないことです。遠隔転移とは領域リンパ節以外に転移があることです。がんはできた場所から離れてリンパ節や他の臓器に転移をする特徴があります。領域リンパ節は胆道から近い位置のリンパ節です。領域リンパ節にのみ転移がある場合は手術によって根治が可能と考えられています。

領域リンパ節以外のリンパ節や、胆道から離れた臓器に転移があれば遠隔転移と呼びます。遠隔転移がある場合は全身にがん細胞が広がっていると考えられます。そのため手術でがんを摘出しても治療効果が少ないと考えられます。胆道がんで遠隔転移がある場合は全身をカバーするべく抗がん剤による治療を選びます。抗がん剤による治療で薬が全身に行き渡ることによって広がったがん細胞に対して効果が期待できます。

手術に体は耐えられるか?

胆道がんの手術は多くの臓器を摘出しなければならないので体への負担も大きくなります。このために手術の前に手術に体が耐えられるのかを評価しておく必要があります。

胆道がんの手術は胆道だけではなく肝臓や膵臓の一部を同時に摘出することがあります。手術に耐えられる能力を耐術能力ということがあります。いくつかの検査で体の状態を把握します。以下で検査とその意味の例を挙げます。

  • 血液検査
    • 貧血などの異常がないか確認したり肝臓、腎臓の機能を調べます。
  • 呼吸機能検査
    • 肺活量や1秒率などを測定し肺の機能を調べます。
  • 心電図
    • 心臓に栄養を送る血管に問題がないかや不整脈がないかを確認します。
  • 心エコー
    • 心臓の動きを超音波でみて状態を確認します。
  • PS(パフォーマンスステータス)
    • 日常の活動状態を調べます。

どの程度であれば手術に耐えられるとみなすかは主治医や麻酔科医での協議できまることもあります。また肝臓の一部を摘出する(肝切除)場合は手術後に残る肝臓の機能を推定することが非常に重要です。手術によって肝臓の機能が命に影響を及ぼすくらいに低下する肝不全は避けなければならないからです。

3. 胆道がんの手術の前にするべきことは?

胆道がんと診断されいくつかの検査をへて手術が提案されました。胆道がんの手術前にやるべきことについて考えてみます。

胆道がんの手術は合併症が多い?合併症とは?

胆道がんの手術は胆道以外の臓器の摘出も必要なことが多い大きな手術です。

大きな手術になればなるほど合併症(がっぺいしょう)が多くなります。合併症とは、手術にともなって起こる問題などです。合併症は治療ミスのことではありません。手術がうまくいっていてもある程度の確率で現れてしまう合併症もあります。

合併症を減らすためにできることは?

全ての合併症が患者さんや医師の努力で解消できるわけではありませんが、合併症の発生する可能性を減らせるものもあります。手術の前にやるべきことがあります。

  • 禁煙
  • 適度な運動

禁煙はやるべきことの一つです。手術後におきる合併症の中には肺や気管支などの呼吸に関連したものがあります。このためできるだけ早く禁煙したほうが手術のあとは楽になりやすいです。

胆道がんの手術の体への負担はかなり大きいです。糖尿病などの病気をもっている場合はいつもより気をつけて食事や治療をしてください。仮に2ヶ月後にマラソンを走らないといけないと想像してください。今まで通りの生活でいいでしょうか。改められる点はすぐに改めて手術に備えてください。それほどに手術は大変なものです。一人の手術を行うのに医療スタッフは長い時間をかけて準備をしています、後悔のないようにできることはやっておくことをお勧めします。

もし可能であれば手術までの短い期間でもいいので運動などを生活習慣に取り入れてください。手術後はびっくりするほど身体が動きません。少しでも筋力を補強しておくと術後の回復の助けになります。

手術するのが怖くなったらどうする?

手術は怖いものです。特に胆道がんの手術のように大掛かりで術後も生活が大きく変わってしまう手術は不安も大きく逃げ出したくなる気持ちも理解できます。

しかし、誰でも手術を受ける機会が得られるわけではありません。手術ができる状態で発見できたことは幸運と言えるかもしれません。医師の立場から見ると、根治の可能性を見送ることはもったいないことに感じます。怖いのは不安やわからないことが原因かもしれません。手術までに不安やわからないことは医師に聞いてみてください。

4. 胆道がんはできた場所によって手術の方法が変わる?

胆道は肝臓で作られた胆汁(たんじゅう)を十二指腸まで運ぶ管です。胆道は場所によって周りの臓器が違うので手術の方法もいくつかあります。時に肝臓の切除が必要になったり胃や十二指腸を同時に切除することもあります。

胆道とはどこからどこまで?

胆道の正常解剖のイラスト

胆道は胆管、胆のう(胆嚢)、十二指腸乳頭部の総称です。

胆道の役割は肝臓で作られた胆汁を十二指腸まで運ぶことです。胆道の周りには肝臓、膵臓、胃、十二指腸があります。

  • 肝内胆管
  • 肝外胆管
    • 肝門部領域胆管
      • 肝門部胆管
      • 上部胆管
    • 遠位胆管
      • 中部胆管
      • 下部胆管
    • 十二指腸乳頭部
  • 胆のう

少し詳しく解説します。胆道は胆汁が流れる川に例えられることがあります。肝内胆管は川を作る前の小さな流れです。小さな流れがいくつか合わさって川をつくります。川は肝門部と呼ばれる場所から肝臓の外に出ます。肝門部は胆管が出る以外にも肝臓への血管が流れ込む重要な場所です。

肝門部領域は川の上流です。肝門部領域の胆管は肝門部胆管と上部胆管とに分けて言われることもあります。上部胆管は肝門部から胆のう管が合流するまでの部分を指します。胆のうは胆汁が溜められ濃縮される場所です。

胆のう管が合流してから十二指腸の出口までの部分を遠位胆管といいます。遠位胆管はさらに細かく中部胆管と下部胆管に分けることがあります。中部胆管は胆のう管の合流した場所から膵臓の上縁までを指します。下部胆管は膵臓の上縁か十二指腸乳頭部の手前までを指します。

胆道がんの分類と手術の種類は?

胆道がんはできた場所によって肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん胆のうがん、遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がんの5種類に分けられます。それぞれ手術の方法が異なります。

  • 肝内胆管がん
    • 肝切除術
    • 拡大肝切除術+肝外胆管切除術
  • 肝門部領域胆管がん
    • 拡大肝切除術+肝外胆管切除術
    • 拡大肝切除術+膵頭十二指腸切除術
  • 胆のうがん
    • 胆のう摘出
    • 胆のう摘出+肝切除術
    • 拡大肝切除術+肝外胆管切除術
    • 拡大肝切除術+膵頭十二指腸切除
  • 遠位胆管がん
    • 膵頭十二指腸切除術
  • 十二指腸乳頭部がん
    • 膵頭十二指腸切除術

胆道がんでは肝臓や膵臓をがんとともに摘出するような大きな手術が多いです。またここに記した以外でもがんの広がりが著しいときには肝臓と膵臓を同時に摘出したりすることがあります。

5. 肝切除術とは?

肝切除術は肝内胆管がんや肝門部胆管がんなどに対して用いる手術の方法です。肝切除術にはいくつか方法があります。肝内胆管がんができた場所や大きさで手術の方法が決まります。

肝切除の種類は?

肝切除にはいくつか種類があります。手術の方法は肝臓を切り取る範囲で決まります。

  • 部分切除 
  • 亜区域切除 
  • 区域切除 
  • 葉切除
  • 拡大肝葉切除術

肝内胆管がんや肝門部胆管がんでは広範囲にがんが広がっている場合もあるので葉切除(ようせつじょ)もしくは拡大肝葉切除が選ばれることが多いです。葉切除は肝臓の半分を切除します。

拡大肝葉切除術

肝臓のクイノー分類。肝臓は4区域に分けられる

拡大肝切除術は、肝臓の半分を切除する葉切除からさらに範囲を広げて肝臓を切除します。範囲はがんの広がりを評価して決めます。さらに大きく肝臓の3分の4を切除する3区域切除も選ばれることがあります。

拡大肝切除は肝臓を切除する範囲が広くなるので手術の後に肝臓が機能するかどうかが問題になります。肝臓の機能は大きさによってきまるところがあるので、手術の前に切除した後に残る肝臓の体積などをシュミレーションして手術に望みます。残る肝臓の大きさが小さく肝臓の機能が十分ではないと判断された場合は、PTPEという方法で残る肝臓を大きくして手術に臨むこともあります。

経皮経肝門脈塞栓療法(PTPE:Percutaneus transhepatic portal emboaization)

PTPEは、肝臓を大きくして肝切除の安全性を高める目的があります。

胆道がんの手術ではがんが発生した場所によってはかなり大きく肝臓を切除しなければならないこともあります。がんの手術は切り取る範囲が大きいほどその効果は高いと考えられます。しかし肝臓を切除しすぎると肝臓の機能が保てなくなることもありえます。肝臓の機能が保てない状態を肝不全といいます。肝不全は命に危険が及ぶこともあります。

PTPEはどのようなことをするのか?

PTPEは手術の前に肝臓を大きくする治療です。肝臓を大きくするには、門脈という血管に塞栓物質を注入して血流をとめます。肝臓の一部への血流をなくすと、残る肝臓が大きくなります。

例えば手術で右側の肝臓を切除する肝臓右葉切除(かんぞううようせつじょ)を予定したとします。右側の肝臓は手術で切除してしまうので必要がありません。そこで右側の肝臓に栄養を届ける右の門脈(門脈右枝)の血流を止めてしまいます。血流がなくなった右葉は小さくなります。その分を補うように左葉(さよう)が大きくなります。左葉が大きくなる分、手術後の肝臓の機能も増加し、手術後の肝不全が起きる危険性が減少し、手術による安全性が向上するとも考えられています。PTPEの効果は1ヵ月程度ででてくると考えられています。

参考文献:幕内雅敏, 他, 胆管癌に対する肝切除前肝内門脈枝塞栓術, 日本臨床外科医学会雑誌 1984;45:1558-1564

6. 肝外胆管切除術とは?

肝外胆管は肝臓の中の胆管(肝内胆管)が集まり肝臓から外に出た後の胆管です。

手術の方法はがんの広がりを画像診断などで判断して決められます。肝外胆管にがん細胞が入り込んでいる可能性があると思われた場合、肝外胆管切除術が考慮されます。

肝外胆管には胆汁を十二指腸に運ぶ通り道の役割があります。そのため、肝外胆管を切除するときには胆汁の流れを作りかえる必要があります。具体的には胆のうを同時に切除して、肝外胆管を切除したあとの断端(切り口)を小腸(空腸)とつなぎ直します。

7. 膵頭十二指腸切除とは?

膵頭十二指腸切除術の説明イラスト

膵頭十二指腸切除(すいとうじゅうにしちょうせつじょ)は、遠位胆管がん(中部胆管がん、下部胆管がん)や十二指腸乳頭部がんに対して検討されます。膵臓十二指腸切除術は、英語のpancreaticoduodenectomyを略してPDとも呼ばれています。

膵頭十二指腸切除で切除する臓器は?

がんの手術は取り残しがないように行わなければなりません。がんの周りをできるだけ広く切除することで取り残さない確実性が向上します。

遠位胆管がんや十二指腸乳頭部がんを広く切除するには隣接する胃の一部、十二指腸、胆管、胆のう、空腸の一部を同時に切除する必要があります。

膵頭十二指腸切除術で切除する臓器は以下のものです。

  • 膵頭部(十二指腸に接する膵臓の右側)
  • 胃の下半分(幽門側)
  • 十二指腸
  • 空腸の一部
  • 胆管
  • 胆のう

さらに、胆道の周囲のリンパ節を切除するリンパ節郭清(かくせい)も同時に行います。リンパ節は血管の近くにあります。リンパ節郭清は血管の近くにあるリンパ節を全部まとめて切除することです。

膵頭十二指腸後の再建は?

膵頭十二指腸切除術の後には、再建という作業が必要となります。再建とは、臓器が再び機能するように作り直すことです。ここでは膵液の流れ、胆汁の流れ、消化された食べ物の流れの3つを作り直す必要があります。

再建の方法はいくつかありますが、目的は同じです。

最も重要な縫合部位は小腸(空腸)と膵臓(膵管)を繋いだ部分(膵管-空腸吻合)です。膵管-空腸吻合が上手くいかないと膵液(すいえきろう)という合併症を起こします。膵液瘻は腹腔内出血を起こす膵仮性動脈瘤の原因になることもある危険な合併症です。

また膵管が狭くなり過ぎてしまうことも問題になります。膵管には手術の後も管を入れておくことがあります。管は体の外から出す場合(外瘻化)と短い管を入れておく場合(内瘻)があります。

手術の後に栄養価の高い液体を直接腸に流し込めるように経腸栄養チューブという細い管を体の外に出しておくこともあります。

8. 胆のう摘出とは?

胆のうは胆のうがんや胆管外胆管を切除する必要がある場合に摘出されます。

胆のうがんの場合

胆のうがんの場合は、胆のうだけを切除するわけではなく、肝臓を胆のうに付着させて摘出します。胆のうは自然なとき(生理的)には肝臓に付着した状態で固定されています。胆のうにがんがない場合は肝臓と胆のうを剥がして摘出します。胆のうにがんがある場合は胆のうと肝臓をはがさずに肝臓の一部を胆のうに付着させます。肝臓も切り取ることで胆のうがんを露出させずに胆のうを摘出することができます。

胆のう摘出で治療ができるのは固有筋層にがんが留まる場合です。それより深くがんが進行している場合は肝臓を大きく切除する必要があります。

肝外胆管を切除するときには胆のうも摘出する

肝外胆管を切除する場合は胆のうを摘出する必要があります。肝外胆管を切除するときに胆のうをそのまま残すと胆汁の流れが悪くなることがあります。胆汁の流れが悪くなると胆管炎などが起きる可能性があります。胆管炎などを予防するために胆のうを摘出します。

9. リンパ節郭清って何?その意味や効果は?

がんが転移しやすいリンパ節をまとめて摘出することをリンパ節郭清といいます。隠れたリンパ節転移を逃さず取り除くことを目的としています。

リンパ節転移とは?

がんのリンパ節転移は、がん細胞がリンパ液に乗って流れていくことで始まります。リンパ液はリンパ管という管を通ってリンパ節に到達します。がんが広がっていくときにリンパ管を破壊してリンパ管の中にがん細胞が入ります。がんがリンパ管に入り込むことをリンパ管侵襲と言います。リンパ管の中に入ったがん細胞はリンパ液と一緒に流れていきます。リンパ節はいわばリンパ液の関所の役目を担っています。がん細胞がリンパ液に乗って流れてくると、リンパ節で食い止められます。がん細胞がリンパ節に定着して増殖している状態がリンパ節転移です。

リンパ節郭清はどうするのか?

リンパ節郭清はむやみにリンパ節を取るのではなく、取るべき場所を決めて行っています。

多くの臓器には領域リンパ節と言うものがあります。臓器から流れ出したリンパ液が最初にたどり着くリンパ節が領域リンパ節です。

10. 胆道がんの手術による合併症は?

胆道がんは胆道を含めた周りの臓器を摘出する手術です。多くの臓器を摘出するために注意しなければいけない合併症も多くなります。合併症とは治療に伴って現れる症状や病気のことです。

腹腔内膿瘍(ふくくうないのうよう)

お腹のなかに感染がおきてうみ)の溜まりができることを腹腔内膿瘍といいます。腹腔はお腹の中にあるスペースのことです。

腹腔内膿瘍が起きた場合には膿瘍に針を刺して膿を体の外にだす治療が大事です。ドレナージといいます。ドレナージとともに抗菌薬(抗生剤)を使って治療します。

膵液瘻(すいえきろう)

胆道がんの手術では胆管とともに膵臓(すいぞう)を切除することがあります。

膵臓は膵液という消化液を作り分泌します。膵液は食べ物の消化吸収を助ける役割を果たします。膵臓を取り除いた後には、膵液がちゃんと食べ物に混ざるように、膵管と小腸(空腸)をつなぎ合わせる必要があります。このため膵管と小腸を糸で縫い合わせます。

手術の後で、膵管と小腸を縫い合わせた部分のくっつきが悪く膵液が漏れ出ることがあります。これを膵液瘻(すいえきろう)と言います。膵液は体を溶かすことがあります。血管の壁を溶かして出血の原因にもなります。膵液瘻が発生した場合は、膵液を体に溜まり続けたままにしておくことは危険です。このために膵液を体の外に抜くための管を挿入することもあります。

膵液瘻は程度によりますが、治るまでに時間がかかることがあります。十分に治るまで管は体の中に入れておき徐々に短くするなどの方法をとります。

術後腹腔内出血(じゅつごふくくうないしゅっけつ)

膵液瘻(すいえきろう)や腹腔内に感染を起こした後に炎症の影響で血管が破れて出血することがあります。手術の後に数本管が入っているのはこのような出血を見逃さないためです。出血が激しい場合は緊急でカテーテル治療による止血術を行ったり、場合によっては開腹手術を行う必要があります。

創部感染(そうぶかんせん)

創部(そうぶ)とは手術で切った傷のことです。手術ではお腹を切開します。手術中から抗生物質を使用して感染の予防に努めていますが、創部についた細菌が増殖して感染を起こすことがあります。

創部感染が起こると、傷を開放したりして膿を体の外に出す必要があるので、早めに抜糸をすることがあります。創部感染があっても、手術後の経過で体調が回復して栄養状態が改善されれば傷口に肉芽が盛り上がってきて傷が閉じます。創部感染は、患者さんから見やすい場所で起きる合併症なので心配になることもあると思いますが、一日一日、少しずつよくなっていきます。

胆管炎(たんかんえん)

胆道がんの手術では胆管を切除するので、がんを切除した後に小腸(空腸)と胆管を繋ぎ合わせる必要があります。細菌が多く存在する腸液が胆管に逆流して胆管に炎症が発生することがあります。

胆汁漏(たんじゅうろう)

胆道がんの手術ではがんとともに胆管を切除します。がんを切除した後には胆管と空腸をつなぎ合わせることを行います。胆管と空腸は糸で縫い合わされます。まれに胆管と空腸がしっかりとくっつかずに、胆汁がお腹の中に漏れ出ることがあります。これを胆汁漏といいます。胆汁は刺激性の強い物質なので強い腹痛の原因になります。胆汁漏が原因でおきる腹膜炎を胆汁性腹膜炎といいます。胆汁漏がわかったときにはまず胆汁を体の外に出す管を挿入し胆汁性腹膜炎を改善するようにします。

胃排泄遅延(いはいせつちえん)

胆道がんでは膵頭十二指腸切除術という方法でがんを切除することがあります。膵頭十二指腸切除では胃の一部を同時に切除します。手術の後には、胃の動きが悪くなり、胃液や食物が胃の中に長く留まってしまうことがあります。胃の内容物が留まり続けると気分が悪くなったり嘔吐の原因になります。

胃排泄遅延のはっきりとした原因はまだ不明な部分がありますが、下記のようなものが原因として考えられています。

  • 十二指腸切除に伴い胃の運動を促す消化管ホルモンが減少する 
  • 手術中にいくつか血管を切離しなければならないので、胃の血流が悪くなる
  • 胃を切除する際に同時に迷走神経を切離する
  • 胃の形が変わる

胃排泄遅延の程度がひどい場合は一度食事を止めて胃を休めることが必要になります。程度によっては入院が必要になることもあります。

縫合不全(胃-空腸吻合)

縫合不全(ほうごうふぜん)とは、手術で縫い合わせたところが十分くっつかず、隙間ができてしまうことです。胆道がんの手術で胃の一部や十二指腸を切除する場合は胃と空腸の間の縫合不全が問題になります。

胆道がんを十二指腸や膵臓の一部とともに切除した後は小腸(空腸)と胆管、膵臓、残った胃をつなぎあわせることが必要になります。胃と空腸の縫合がうまくいかないと、食べたものや胃液などの消化液が繋ぎ合わせた場所からお腹の中に漏れ出ることがあります。

消化液などが漏れることで、腹膜炎という危険な状態に陥ることがあります。縫合不全が見つかった場合は消化液を体の外に出す(ドレナージする)ための管を挿入して自然に閉じるのを待ちます。

腸閉塞(ちょうへいそく)

腹部の手術を行うと一定の確率で腸が動かなくなる腸閉塞という合併症が発生します。腸閉塞にはいくつかの分類があります。

手術の後に起こるのは麻痺性腸閉塞が多いです。手術による影響が腸管に及び、腸が動きを止めてしまうことが原因になります。一番気を付けるべき腸閉塞は絞扼性腸閉塞です。絞扼性腸閉塞とは腸が捻れて腸管への血流がなくなり腸が壊死する危険性のある腸閉塞です。この2つの腸閉塞を手術後に見分けることが重要です。このために医師は術後に腹部の診察を繰り返し行い適宜レントゲン撮影などを行うのです。

肝不全(かんふぜん)

肝不全は肝臓の働きが足りなくなることです。胆道がんの中でも肝門部胆管がん肝内胆管がんでは時として広範囲の肝臓を切除しなければならないこともあるため、肝不全に注意が必要です。

手術の前には手術後の肝臓の機能を推定して臨みますが手術後に思ったより肝臓の機能が落ち込んでしまうことがあります。肝動脈に血の塊(血栓)ができてしまったりすることが原因のこともあります。肝臓の機能の落ち込みが大きい場合には黄疸、脳症(意識障害)、腹水などの症状が現れることがあります。このような状態を肝不全といいます。

肝不全が実際に起こることはまれと考えられていますが、もし肝不全になってしまうと命に影響を及ぼすことがあります。

門脈閉塞・門脈圧亢進とは?

門脈は腸で吸収した栄養を肝臓に運ぶための血管です。胆道がんを取り除くために門脈をがんと共に切除することがあります。門脈の一部を切除した場合は切除した部分と部分を繋ぎ合わせて門脈に再び流れがあるようにしなければなりません。

門脈をつなぎ合わせた後に門脈が細くなることがあり、門脈の圧力が上昇したり、血の塊ができて門脈が詰まることがあります。

門脈が閉塞したり門脈圧が高い状態が続くと肝臓の機能が低下したり、食道に静脈瘤(じょうみゃくりゅう)ができるなどの症状がでたりします。門脈閉塞・門脈圧亢進症経過観察することでよくなることもありますが、よくならない場合には血液を固まりにくくする薬を飲んだり再手術が必要になる場合があります。

胸水

胸水胸腔(きょうくう)に水がたまることです。胸腔は肺を囲むスペースのことです。胸水は肝臓を切除した際に現れることがあります。

胆道がんで肝切除が必要になるのは肝内胆管がん、肝門部胆管がんなどです。肝臓は右上腹部にある臓器です。腹部の臓器の中では胸に近い位置にあります。肝臓の手術では肝臓の右側を手術のために剥がしてくる操作などが胸水の発生に影響していると考えられています。手術後の胸水は時間とともに少なくなっていきます。胸水が多い場合には呼吸に影響する可能性があるので胸に針を刺して胸水を抜く場合があります。

参考文献:永野浩昭, 他, 肝細胞癌切除後胸水貯留症例の検討. 日本消化器外科学会誌 1993;26:51-55

腹水

手術後にお腹に水が溜まることがあります。お腹に溜まる水を腹水といいます。手術後の腹水は肝臓の機能が低下していることなどを原因として起こります。腹水がたまるとお腹が張って苦しく感じるかもしれません。

腹水は手術後に体の状態がよくなるにしたがって減っていきます。溜まっている腹水を尿として出すために利尿剤を使用することもあります。腹水の量があまりにも多いときにはお腹に針を刺して腹水を直接抜いたりもします。

深部静脈血栓症、肺梗塞

深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)とは、足などの静脈の中に血栓ができることです。血栓は血の塊のことです。

同じ姿勢で長時間過ごすと足などの血液の流れが滞り、血栓ができやすくなることが知られています。手術中や手術後は患者さんの姿勢が変わらないことが多いので血栓ができやすいです。飛行機などで同じ姿勢を継続することで血栓ができるエコノミークラス症候群も同じ現象です。

血栓ができるだけでは大きな問題にならないこともあります。しかし血液の塊が体を流れていくと、肺の血管に詰まる肺塞栓症(はいそくせんしょう)や肺梗塞(はいこうそく)を起こし、致死的な状態に陥ることがあります。深部静脈血栓症を予防するために施設によっては血液を固まりにくくする薬を使用したり、機械を使い足を持続的にマッサージすることもあります。手術後には許可の出ている範囲内で体を動かすことが大事です。

せん妄

せん妄譫妄、せんもう)とは、軽度から中等度の意識混濁に幻覚、妄想、興奮などの様々な精神症状を伴うものとされています。たとえば以下のような症状が出ます。

  • 話しかけても反応が通常より悪い
  • 見えないものが見えるとの発言がある
  • 妄想をしていると思われる発言が繰り返される
  • 異常に興奮している

せん妄は高齢者に起こりやすく、手術などで身体にストレスが加わることや入院で環境が大きく変わることなどが原因です。血液中の電解質のバランスが崩れることなども原因になることがあります。

せん妄には薬物療法に効果があります。あまりにもせん妄の状態が重度で患者さんや身の回りの人の身体に危険が及ぶと判断されたときには、やむをえず身動きができないようにすることがあります。これは手術後でドレーンなどの管が身体に入っているのを抜いたりすることを予防するためです。

せん妄は一時的なことが多く、身体の回復に伴い改善することが多いですが、頻繁にせん妄状態に陥るときには精神科の医師によって専門的な治療を開始されることがあります。

11. 胆道がんの手術日に気をつけることは?

胆道がんの手術はがんの手術の中でも大きな手術です。手術に臨むときには患者さんもしっかりと準備をしておくことが大事です。

手術日に気を付けることは?

朝から手術が始まったとします。胆道がんの手術では次に目覚めるともうとっくに夕方かもしれません。手術室に入り麻酔が始まり、意識が遠のいたと思ったら次の瞬間には「手術が終わりましたよ」という声で目覚めることになると思います。

手術の後は集中治療室に移動して過ごしますが、夜はなかなか眠れないと思います。時計を何度も見て、なかなか時間が過ぎていかないことに驚く人もいます。手術当日はとにかくじっとして体を休めることに専念することをお勧めします。痛みの感じ方は人それぞれなので手術当日には痛みを自覚しない人もいますが、痛みは我慢する必要はありません。痛みは鎮痛剤などで抑えることができます。

集中治療室では医師や看護師が何度も見に来ると思います。手術がうまくいかなかったわけではありませんので安心してください。胆道がんの手術は大きな手術です。医師は少しの変化も見逃さないように観察をしているのです。

手術後に気を付けることは?

手術後、1日目には検査結果などから問題ないと判断され、立位(立ち上がる)など最低限の動きを許可されることもあります。無理せずに少しずつ体を動かすことが重要です。いきなりは体が言うことを聞いてくれないものです。また胆道がんの手術後は体に多くの管が挿入されています。誤って引っ掛けて抜けてしまってはおおごとです。体はまだ言うことを聞いてはくれません。何をするにも周りの人に一声かけてからするようにすることが大事です。遠慮はいりません、そのほうが周りも安心すると思います。病院によってはICU(集中治療室)で数日過ごしたあとに一般病棟に帰ることもあります。

一般病棟では少しずつできる範囲で身の回りのことをやっていくことが体を回復させる近道です。まだドレーンなどの管がつながったままなので、無理は禁物です。その後順調であれば、少しずつ体の調子が上向いてきて管も一つ一つ外れていきます。

管の多くが抜けて点滴もなくなるところまでくれば少しずつ回復が実感できます。自信も出てくるかもしれません。無理は禁物ですが、少し負荷がかかる程度には病棟の中を歩いたりしてみてもいいでしょう。食事が始まっていれば、ゆっくりと食べるようにしてください。食事をたくさんとったからといっていきなり体力が回復するわけではありません。食欲がないのに無理に食べる必要はありません。むしろ食欲がないことは体の異変を知らせるサインかも知れません。体調が少し変だなと思ったりした場合には、担当医に積極的に聞いて不安を解消してください。

退院が近づいてきたら、退院後に注意するべきことをしっかりと質問して確認しておくことが大事です。

12. 胆道がんの手術から退院して気をつけることは?

胆道がんの手術をした後の体には変化が起こることがあります。特に身体に変化が大きいのは遠位(中部・下部)胆管がんや乳頭部がんに対して行う膵臓十二指腸切除後です。ここでは膵頭十二指腸切除後の食事や血糖値などを中心に解説します。

下痢

胆道がんは周囲に浸潤(広がっていくこと)しやすい特徴があります。胆道がんが上腸間膜動脈神経叢と腹腔神経叢に浸潤することがあります。神経叢(しんけいそう)というのは神経の束です。上腸間膜動脈神経叢と腹腔神経叢は腸の運動をコントロールし、食べ物を正常に消化させる役割があります。胆道がんを手術で取り除くとき、これらの神経ごと切除せざるをえないことがあります。その結果、腸の運動がうまく調整できなくなり下痢を起こすことがあります。

下痢に対して通常は下痢止めで対応できることが多いですが、時間をおいても治らなかったりよくなる気配がみえない場合は医師に相談することをお勧めします。自分でできる下痢対策としては、刺激物の摂取をできるだけ避ける、脂肪の多い食事をできるだけ避けるなどがあります。

糖尿病

膵臓はインスリンという物質を分泌する臓器でもあります。インスリンは血糖値を下げる役割を果たしています。インスリンの量が減ると血糖値が上昇し糖尿病になることもあります。胆道がんに対して膵頭十二指腸切除術で治療した場合は、血糖値に十分注意を行うことが大事です。

胃のむかつき

膵頭十二指腸切除術後は、胃に流れこんだ食べ物や胃液が長く胃に留まることがあります。胃排泄遅延(いはいせつちえん)と言います。胃排泄遅延が起きると強い酸性物質である胃酸が長く胃に留まるために胃に負担がかかります。これが長時間続くと胃が荒れたりすることがあります(胃炎)。胃炎の対処法としては、胃薬を内服することで症状が軽減したりすることが期待できます。

13. 膵頭十二指腸切除術後の生活の注意点

胆道がんを膵頭十二指腸切除で治療した後にはある程度の量の膵臓が失われています。同時に胃の一部や胆嚢(たんのう)、胆管が切除されています。手術後は身体に変化がありこれにともなって生活上の注意が必要になります。胆道がん手術後の体の変化に注目して解説します。

食事

膵頭十二指腸切除術後は、膵臓の消化酵素を出す機能が低下したり胃の一部がなくなったりしているために手術前と同じ様に食事を行えないことがあります。食事には以下のようなことに注意してみるとよいと思います。

  • 消化のよい食事を選ぶ 
  • 食事の量は少なめで、回数を多くする
  • 脂肪分はできるだけ控える 
  • コーヒー、紅茶などのカフェインは控えめにする 
  • 唐辛子などの刺激物(香辛料など)もなるべく避ける
  • アルコールはできるだけ控えてどうしても飲みたいときには医師に相談を
  • タンパク質を多く摂取する

胆道がんの手術後は一度に多くの量を食べることはいい考えではありません。栄養は必要ですが、食事の量が多すぎて腸閉塞の原因になったりすることもあるので、量よりは回数を増やすことをお勧めします。カフェインや香辛料も極力避けておいたほうが無難とも言えます。また膵臓からは脂肪を吸収しやすくするための消化酵素も分泌されます。膵臓が失われることで脂肪を吸収する力が低下します。吸収されない脂肪は下痢の原因にもなります。

食事で最も大事な栄養素としてタンパク質があります。タンパク質は人間の筋肉などを作るのに重要です。手術の後には筋力が低下していることがほとんどです。良質なタンパク質の摂取は手術前の体の動きをとりもどすことにも有利に働きます。

体の動き

手術後には体力が落ちていることを実感されると思います。胆道がんの手術は大掛かりな手術になるので、入院期間も長期に及ぶことがあります。入院期間はどうしても体を動かす機会が少なくなります。退院後は身の周りのことをするのも大変だと思います。焦らずに地道に少しずつ体の動きを取り戻していくことが重要です。

血糖値

膵臓からはインスリンというホルモンが分泌されています。インスリンは血糖値を下げる働きを持ちます。胆道がんで膵臓を切除すると膵臓の機能が低下することは避けられません。手術前にはインスリンが正常に分泌されている人でも、手術後にインスリンを注射で補う治療が必要になる場合があります。

14. 胆道がんの手術時間・費用は?

胆道がんの手術は大掛かりな手術です。その術式にはいくつか方法があり手術時間や費用などが異なります。

胆道がんの手術時間は?

胆道がんの手術時間は手術の方法によって変わってくるので一概にはいえません。平均的には8-12時間と考えられます。手術時間については主治医に確認しておくことをお勧めします。胆道がんの手術では膵臓の一部分を切除したり、肝臓を切除する場合があります。どの手術法を選んだかで手術時間は大きく変わります。

手術終了を待つ家族の方へ

手術時間は手術がうまく行ったかどうかの基準にはなりません。体型などによって手術が速く進む患者さんも時間がかかる患者さんもいます。手術時間が長引くと上手くいかなかった訳ではなく、逆に手術時間が短かったから上手くいったとも言えません。

また手術時間で医師と患者さんの家族に認識の違いがあることがあります。医師が手術時間として目安になる時間を伝える時、手術の前後に麻酔をかける時間などを含んで説明している場合と含んでいない場合があります。

手術室に滞在する時間=手術時間+麻酔のための時間+体位変換などの時間

例えば手術に8時間かかると言われたら8時間は「手術時間」なのか「手術室に滞在する時間」のどちらなのかを聞いておくとよいと思います。

もし手術中に大きな変更があるときには手術中にも執刀医もしくは主治医から説明があることが多いです。それがなければ手術が終わるのを待つことに徹することをお勧めします。待ち時間は心配でいてもたってもいられないと思います。患者さんも同じです。手術後には労いの言葉をかけてあげてください。

胆道がんの手術の費用

胆道がんの手術の費用は約100万円から140万円になります。この1-3割が自己負担になります。費用に幅があるのは胆道がんの手術の方法はいくつもあることや入院期間が異なるためです。手術の方法や入院期間で金額が前後します。

入院費用は治療の前に気にかかるものの一つだと思います。高額療養費制度や限度額適用認定証などを使うことで負担金額が減ることがあります。がん相談支援センターをはじめ、病院には医療費などの相談に乗ってくれる窓口があることが多いので相談してみることをお勧めします。

高額療養費制度とは?

高額療養費制度とは、家計に応じて医療費の自己負担額に上限を決めている制度です。

医療機関の窓口において医療費の自己負担額を一度支払ったあとに、月ごとの支払いが自己負担限度額を超えた部分について、払い戻しがあります。払い戻しを受け取るまでに数か月かかることがあります。

たとえば70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円の人では、1か月の自己負担限度額が80,100円+(総医療費-267,000円)×1%と定められています。それを超える医療費は払い戻しの対象になります。

この人で医療費が1,000,000円かかったとします。窓口で払う自己負担額は300,000円になります。この場合の自己負担限度額は80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円となります。

払い戻される金額は300,000-87,430=212,570円となります。所得によって自己負担最高額は35,400円から252,600円+(総医療費-842,000円)×1%まで幅があります。

高額療養費制度について詳しくは厚生労働省のウェブサイトやこちらの「コラム」による説明を参考にしてください。

限度額適用認定証(げんどがくてきようにんていしょう)とは?

あらかじめ医療費が高額になることが見込まれる場合は「限度額適用認定証」を申請し、認定証を医療機関の窓口で提示することで、自己負担分の支払い額が一定額まで軽減されます。高額療養費制度で支払われる還付金の前払いといった位置づけになります。保険外の費用(入院中の差額ベッド代や食事代など)は対象外となります。

15. 胆道がんの手術後の再発を予防する方法はある?

胆道がんは手術が唯一根治が期待できる治療法です。根治とはがん細胞を身体からすべて取り除くことです。手術を受けた後にどうしても気になるのが再発です。

再発はなぜ起きるのか?

がんを身体から取り去り「がんが治った」と思っていた所に再発が起きるのは理解しにくいと思います。再発は手術前にあった転移が大きくなって確認された状態という見方もできます。手術の前に遠隔転移があると手術より抗がん剤治療の方が適した治療なので、画像診断で遠隔転移がないことを確認したうえで手術をします。遠隔転移とは他の臓器への転移や領域リンパ節以外のリンパ節転移のことです。しかし、遠隔転移は画像診断では捉えられる限界があります。このために非常に小さな転移が後に大きくなって転移として確認されることはありうる話です。

再発が起きても何かが悪かった訳ではありません。大事なことは自分の病気の状態をしっかり把握して治療などに目をむけることです。

胆道がんの再発予防はあるのか?

いくつかのがんでは再発予防の治療が確立しています。胃がん膵臓がんなどでは手術後に抗がん剤治療をすることで再発率が減らせることがわかっています。胆道がんではまだ再発率を減らせる治療は確立していません。

胆道がんの再発予防の治療を提案されることがあるかもしれません。再発予防の治療はまだ決まったものはないので、どのような根拠でその治療が勧められるかなどの確認が大事です。

手術後は合併症などの管理の意味でも手術した医療機関に通う場合が多いでしょう。通院の都合などでほかの医療機関に変えたい時は紹介の手続きを取ってもらうことが大切です。

きちんと経過の情報が引き継がれていなければ、何かあった時の対応が遅れることにもなりかねません。さらに極端な場合としては、決まった治療がないことを逆手にとり根拠のない治療を勧めてくる施設もあります。不安なときに手を差し伸べてくる人は必ずしもその人を思って行動しているとはかぎりません。

16. 姑息手術とは? 

姑息手術(こそくしゅじゅつ)とは、がんをすべて取り切る目的ではなく、がんが周りの臓器に影響することを避ける目的で行う手術のことです。姑息手術に対する言葉としては根治手術があります。根治とは体からがんを取り去ることです。

胆道がんは十二指腸の近くにできると十二指腸に浸潤して十二指腸から先に食べ物が流れなくなったり(十二指腸狭窄)、がんが大きくなって胆道を塞いで(胆道狭窄)胆汁が流れなくなることもあります。

十二指腸狭窄や胆道狭窄に対しては手術で別の迂回路をつくるなどの方法で対応が可能です。手術以外には内視鏡による治療も可能です。

胆道バイパス術(胆管空腸吻合)

図:胆道バイパス+消化管バイパスのイラスト。胆管を空腸をつなぎ合わせて胆汁が流れるようにする。

バイパスとは本来の道とは別の迂回路を形成することです。胆道がんが大きくなり胆道を塞いでしまい胆汁が流れなくなります。胆道の閉塞に対しては、通常は内視鏡で閉塞した管を内側から広げるようなステントを挿入する方法もあります。内視鏡を利用した治療の方が体への負担も少ないのでまず検討されます。

胆道バイパス術は胆道がんの根治手術を行おうと手術を始めたものの手術の途中で根治を期待できない状態であることが判明した場合に行われることがあります。

胆道バイパス術の一つの例としては胆嚢(たんのう)を摘出して、総肝管と十二指腸の先である空腸とつなぎ合わせます。胆道バイパスの目的は胆汁の流れを確保して、胆汁の流れがうっ滞することにより起こる黄疸を回避することです。

消化管バイパス術(胃空腸吻合術)

図:胆道バイパス+消化管バイパスのイラスト。食べ物は胃から空腸に流れる。

バイパスとは本来の道とは別の迂回路を形成することです。消化管バイパス術は、固形物や液体の流れを正常に維持するための方法です。消化管とは口から胃・腸を通って肛門まで食べ物が通過していく通り道のことです。

胆道がんが進行すると十二指腸に影響して十二指腸から先に食べ物が流れないようになることがあります。このために胆道がんがかなり進行した場合には胃と空腸(小腸の一部)をつなぎ合わせるバイパス術を行うことがあります。

胆道がんの根治手術ができない場合は、十二指腸の閉塞がなくてもその後の閉塞を予防するために胃と空腸を繋ぎ合わせる消化管バイパス術を行うことがあります。胃空腸吻合術(いくうちょうふんごうじゅつ)と言うこともあります。消化管バイパス術を行っておけば、十二指腸が閉塞したとしても、食事が小腸に流れ込むことができる可能性が高くなります。

十二指腸の閉塞に対しては、内視鏡による治療も可能です。内視鏡で、狭くなった十二指腸を広げるステントを留置する治療も可能です。