はいそくせんしょう(えこのみーくらすしょうこうぐん)

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)

手足の静脈に血栓ができ、血管の中を流れて肺の血管に詰まってしまう病気。呼吸が苦しくなったり、場合によっては命に関わる

病気に関連する診療科の病院を探す
21人の医師がチェック 211回の改訂 最終更新: 2017.10.03

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の基礎知識

POINT肺塞栓症(エコノミークラス症候群)とは

肺塞栓症は、肺の血管に血栓などが詰まる病気です。エコノミークラスのような狭い椅子の上で身動きせずに長時間いると、足にできた血の塊が肺まで流れ着いて、この病気になりやすいことから、エコノミークラス症候群とも言います。主な症状は、息切れ・咳・胸痛・血痰・失神などです。 症状の程度と背景から肺塞栓症を疑い、心電図検査・血液検査・心エコー検査・造影CT検査などで診断します。治療には血液をサラサラにする薬を用います。足から肺に血栓がとばないように、血管内フィルターを入れる治療もあります。重症の場合には人工心肺装置(PCPS)と呼ばれる医療器具を用いて救命することがあります。また、エコノミークラスなどの狭いスペースで長時間過ごさなければならない人は、こまめにつま先を上げ下げする運動をすると肺塞栓症を予防できます。肺塞栓症が心配な人や治療したい人は、呼吸器内科や循環器内科や救急科を受診して下さい。

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)について

  • 手足の静脈にできた血のかたまりが血管の中を流れて、心臓から肺へ向かう動脈(肺動脈肺と心臓は血液を互いに送り合って、酸素を血中に取り込む作業をしているが、この中で肺から心臓に向かう血管が肺動脈)に詰まってしまった状態
    • 血管が詰まると肺の血流が途絶えてしまい、酸素を体内に十分取り込めなくなってしまう
    • 急に症状を起こす場合が多いが、少しずつ血管が詰まることもある
  • 塞栓血液中を流された血栓などの異物が、細い場所で血管に詰まった状態。その先へ血流が流れにくくなってしまうの原因となり得る病気や状態
    • 血栓性静脈炎静脈血栓症
    • もともと血液が固まりやすい
    • 長時間同じ姿勢でいて、手足の血流が悪くなってしまった
    • 脱水症
    • 妊娠中や経口避妊薬排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑える薬剤。エストロゲンとプロゲステロンといった、いわゆる女性ホルモンを含む薬剤である(ピル)を服用中
    • 手術や大きなけがの後
      ・帝王切開のあとは要注意
    • がん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあるの患者
  • 長時間の飛行機のフライトは、長時間同じ姿勢でいて、かつ脱水が起こりやすい環境であるため肺塞栓が起こりやすいと言われており、「エコノミークラス症候群」という言葉ができた

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の症状

  • 主な症状:以下のような症状が突然出現する
    • 胸の痛み
    • 息切れ、呼吸困難
    • 動悸心臓や太い動脈の脈拍を自覚すること。精神的な緊張や運動だけでなく、ホルモンバランスの異常や貧血など、様々な病気の症状として起こる
    • めまい、失神脳への血流が一時的に足りなくなることによって、意識を失うこと
  • 軽いものでは無症状のこともある一方、重症例では命に関わる場合もある
  • 塞栓血液中を流された血栓などの異物が、細い場所で血管に詰まった状態。その先へ血流が流れにくくなってしまうの症状にはさまざまなパターンがあり、症状のみから診断することは難しい
  • 肺塞栓症の原因が足の深部静脈血栓の場合、片方の足のむくみ体の部位がむくんだ状態のこと。血液から水分が周囲に漏れ出ることで、全体が腫れてむくみが生じる(靴下の跡が強く残る等)などの症状が併存している場合がある

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の検査・診断

  • 画像検査
    • 胸部造影CT検査X線(放射線)を用いて胸の中の状態を調べる検査。肺や肋骨などの状態を確認するために行われることが多い
    • 心臓超音波空気の細かな振動である超音波を使って、心臓の状態を調べる検査心エコー空気の細かな振動である超音波を使って、心臓の状態を調べる検査)検査
  • 血液検査や胸部レントゲン X線(放射線)によって撮影する画像検査の一種で、心臓や肺、骨などの状態を調べるために行われる検査、心電図検査心臓から出ている弱い電気を感知して、心臓の状態を調べる検査も参考になるが、それだけで診断をつけることはできない
  • 足に血のかたまりがあるかどうかは超音波検査空気の細かな振動である超音波を使った画像検査。体の奥の血管や臓器を観察することができるCTX線(放射線)を用いて、体の内部を画像化して調べる検査検査で調べることができる

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の治療法

  • 主な治療
    • 重症で、すぐに命に関わるような場合には手術を行ったり、心肺補助装置(PCPS)を使用したりする場合がある
      ・ただし、どこの医療機関でもすぐに行える治療ではない
    • 重症例以外には血のかたまりを溶かす薬を使う
      血栓血管や心臓の中にできた、血のかたまりのこと。血流が悪くなることが原因で、生じることが多いを急激に溶かす方法と、それ以上血栓が大きくならないように抗凝固薬血液を固まりにくくする薬。不整脈に対して、血栓ができるのを予防する目的で用いられることが多いを使用して改善を待つ方法がある
      ・急激に血栓を溶かす治療は体の色々な場所で出血を起こす危険があるので、出血しそうな場所がないことを確認しなければ使えない
  • 補助的な治療
    • 酸素の取り込みが障害されるので、酸素マスクで補充することが必要
    • 重症の場合には人工呼吸器を使用することも必要になる
  • 塞栓血液中を流された血栓などの異物が、細い場所で血管に詰まった状態。その先へ血流が流れにくくなってしまうは予防することが大事
    • 長時間のフライトなど、同じ姿勢を続ける場合には、時々立って歩いたり、足のマッサージをしたりすることが有効
    • また、水をよく飲むことも重要
  • 足の血のかたまりの量があまりに多い場合は、下大静脈フィルターと言って、血のかたまりをひっかける「ざる」のようなものを胸の血管に留置して、血のかたまりが肺に流れるのを防ぐ方法もある

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)に関連する治療薬

クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)

  • ビタミンKが関与する血液凝固因子の産生を抑え、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 体内で血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)の中にビタミンKを必要とするものがある
    • 本剤は体内でビタミンKの作用を阻害し、ビタミンKを必要とする血液凝固因子の産生を抑えることで抗凝固作用をあらわす
  • ビタミンKを多く含む食品などを摂取すると薬の効果が減弱する場合がある
    • 納豆、クロレラ、青汁などはビタミンKを多く含む
    • 本剤を服用中は上記に挙げた食品などを原則として摂取しない
クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)についてもっと詳しく

ダビガトラン(直接トロンビン阻害薬)

  • 血液が固まる過程を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞や心筋梗塞などを予防する薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因(血液凝固因子)が必要となる
    • 本剤は血液凝固因子の一つトロンビン(第IIa因子)を阻害し、血液の抗凝固作用をあらわす
ダビガトラン(直接トロンビン阻害薬)についてもっと詳しく

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の経過と病院探しのポイント

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)かなと感じている方

肺塞栓症では、息切れや胸痛、時には失神脳への血流が一時的に足りなくなることによって、意識を失うことなどの症状がみられます。

肺塞栓症の診断はCTX線(放射線)を用いて、体の内部を画像化して調べる検査で行います。国内の総合病院内科、外科、小児科、産婦人科など主要な科が揃っている病院のこと。現在、明確な定義はないであればほとんどのところにCTの設備がありますので、診断の観点からは特殊な病院を選ぶ必要はありません。しかし、肺塞栓症の治療まで行うとなると一定以上の規模の病院である必要があることや、診断がつけば一刻も早く治療を行う必要があるためその点に注意が必要です。

病状によっては緊急での治療が必要で、カテーテル治療カテーテルと呼ばれる細い管を、腕や脚の付け根の血管から挿入し、治療したい部位の近くまで血管内を進めて治療する方法後もICUICU = intensive care unit 「集中治療室」のこと。重症度の高い患者さんが入院する病棟 (intensive care unit), HCU (high care unit) などと呼ばれるような集中治療室で引き続き治療を行うことになります。このように、中規模以上の病院で、循環器疾患の診療体制が整っている病院であることが望ましいです。

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)に関連する診療科の病院・クリニックを探す

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)でお困りの方

肺塞栓症の根本治療としては、点滴や注射で血液を固まりにくくしたり、血のかたまり(血栓血管や心臓の中にできた、血のかたまりのこと。血流が悪くなることが原因で、生じることが多い)を溶かしたりするような治療を行う場合と、カテーテル治療カテーテルと呼ばれる細い管を、腕や脚の付け根の血管から挿入し、治療したい部位の近くまで血管内を進めて治療する方法、そして手術による治療があります。どの治療を行うかは、病気の重症度と病院の設備や医療体制によって分かれてきます。

手術を行うのは、極めて重症な場合や、何らかの事情で点滴や注射の治療、そしてカテーテル治療が行えないような場合(薬に対するアレルギー免疫反応によって、体が過剰な防御反応を起こして悪影響が生じてしまう状態があるなど)です。そのようなまれなケースを除けば、一般的にはカテーテル治療を行っている病院で治療を受けることになります。

肺塞栓症の治療は、診断がつけばその場で緊急で行われることが多いです。平日の日中であれば良いのですが、土日祝日や夜間は院内に残っているスタッフが少ないため、緊急で治療を行える病院と、そうでない病院があります。ある程度の規模の病院や、カテーテル治療の件数が多い病院、循環器専門医の多い病院の方が、時間外の緊急治療により迅速に対応できるところが多い傾向にあります。

そして肺塞栓症の治療が一旦落ち着いた後は、肺塞栓症の再発を防ぐことが治療の目的となります。血液をサラサラにする薬を内服するのは大切な方法の一つです。こちらであれば、一般的な内科、もしくは循環器内科のクリニックへ定期的に通院することで治療が可能です。

まだ体内(特に足の部分が多いです)に血のかたまりが残っていて、その血栓が流れてしまうと再び肺塞栓症を引き起こす可能性がある、という場合には、再発予防のためにカテーテル治療を行うケースもあります。この治療では、下大静脈フィルターと呼ばれる網の目状の金属を、血管の中に入れてそのまま置いておくことを目的とします。大きな血液のかたまりが流れてきた時に、それが大切な血管に詰まる前に、このフィルターに引っかけて食い止めるためのものです。初回の入院時に、治療に引き続いてこの予防処置を行ってしまうケースも多いでしょう。

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)に関連する診療科の病院・クリニックを探す

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)のタグ


肺塞栓症(エコノミークラス症候群)に関わるからだの部位