はいそくせんしょう(えこのみーくらすしょうこうぐん)
肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
手足の静脈に血栓ができ、血管の中を流れて肺の血管に詰まってしまう病気。呼吸が苦しくなったり、場合によっては命に関わる
21人の医師がチェック 213回の改訂 最終更新: 2020.07.29

肺塞栓症の症状について:息苦しさ、胸痛など

肺塞栓症は、脚や骨盤などでできた血の塊(血栓)が流れてきて、心臓から肺に血液を送り出す血管で詰まってしまう病気です。息苦しさ、胸の痛み、動悸、めまい、失神などが主な症状で、命に関わることも少なくありません。ここではよくみられる症状や、関連する症状について解説します。

1. 肺塞栓症の主な症状

肺塞栓症では心臓から肺に向かう血管に血栓が詰まることで、以下のような症状がでます。

【肺塞栓症の主な症状】

  • 呼吸が苦しい (出ることが特に多い)
  • 胸の痛み (出ることが多い)
  • めまい、失神 (出ることもある)
  • 冷汗 (出ることもある)
  • 動悸 (出ることもある)
  • 発熱 (出ることもある)
  • 咳 (出ることがまれにある)
  • 血痰 (出ることがまれにある) など

上記のような症状が強く出ている人は肺塞栓症を含めた重大な病気である可能性もあるため、直ちに医療機関を受診してください。肺塞栓症を専門とする診療科は主に循環器内科や心臓血管外科ですが、診断や初期対応については救急科、一般内科、呼吸器内科などでも可能な場合があります。肺塞栓症では専門的な治療が必要になるため、比較的大規模な医療機関で治療されることが一般的です。

2. 肺塞栓症に関連した症状

肺塞栓症は、主に脚や骨盤などを流れる静脈でできた血栓が流れてくることで、心臓から肺に向かう血管に血栓が詰まる病気です。その原因となる「主に脚や骨盤の静脈内で血栓ができる病気」のことを「深部静脈血栓症」と呼びます。英語で「Deep Vein Thrombosis(深部静脈血栓症)」というので、頭文字をとってしばしば「DVT(ディーブイティー)」と略されます。

肺塞栓症は基本的に深部静脈血栓症(DVT)から連続して発症します。そのため肺塞栓症の症状に先行して、あるいは同時に、以下のようなDVTの症状が見られることもよくあります。

【DVTの主な症状】

  • 脚のむくみ
  • 脚の痛み
  • 皮膚が赤黒く変色する
  • こむら返り
  • 脚が重だるい
  • 脚の皮膚の痒み など

肺塞栓症を起こすようなDVTがある人では、上記のような症状が膝下ではなく膝上(太もも)で見られることが多いです。また静脈の流れ方の関係で、DVTは右脚よりも左脚で起こることが1.5-2倍ほど多いと言われています。両側の脚で同時にDVTを発症することはあまり多くありません。

また、肺塞栓症と比べればかなり珍しいですが、DVTでは血栓の影響で脚の血流が途絶えてしまうことがあります。脚の血管には迂回路が発達しているので、簡単に血流が途絶えてしまうことはありません。しかし、血流が途絶えてしまうと脚が白く、または青紫色(チアノーゼ)に変色し、激烈な痛みを伴って腫れ上がります。この状態は有痛性青股腫(ゆうつうせいせいこしゅ)と呼ばれる危険な状態です。

肺塞栓症の症状以外でも、有痛性青股腫でみられるような症状があれば、血栓に関連した危険な症状である可能性があります。そのような場合には直ちに循環器内科や血管外科を受診してください。夜間や休日には救急科での対応となることも多いです。また肺塞栓症や有痛性青股腫が考えられる強い症状がある人は、救急車での受診を検討してください。

参考文献:肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)

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