かびんせいちょうしょうこうぐん
過敏性腸症候群
検査では異常が見られないが、お腹の不快感・下痢・便秘などが続く状態
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最終更新: 2024.07.17
過敏性腸症候群の基礎知識
POINT 過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群は検査では異常が判明しないが、腹痛、下痢、便秘などが続く状態の病気です。これらの症状は排便によって良くなるのが特徴的です。また、ストレスで症状が悪化することが多いです。大腸がん、憩室症(腸憩室)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などで似たような症状が出るため、検査を受けて他の病気でないことを確認することが大事です。症状や身体診察に加えて、血液検査、画像検査、内視鏡検査などを用いて診断されます。治療には日常生活の改善やストレス対処などの環境整備を行いますが、症状が強い人やなかなか改善しない人は薬物を用いることもあります。過敏性腸症候群が心配な人や治療したい人は、消化器内科、総合内科、心療内科を受診して下さい。
過敏性腸症候群について
過敏性腸症候群の症状
- 主な
症状 は便通の異常- 下痢
- 便秘
- ころころした便
- 腹痛:排便によって改善することが多い
- お腹が鳴りやすい
- おならが出やすい など
- その他に以下の様な症状が起こる
- 頭痛
- だるさ
- 不安
- 不眠
- 発汗 など
過敏性腸症候群の検査・診断
腹部レントゲン 検査(X線 写真)や腹部CT検査 、大腸内視鏡検査 といった検査では異常が見つからないことが特徴である- 日々の
症状 の出方を詳しく確認し、検査で他の病気を示すような異常が見られないことと合わせて診断される - 診断基準:
- 過去3か月の間に1週間あたり1日以上の腹痛が見られること
- 上記に加えて以下のうち2項目以上該当すること
- 排便することによって腹痛などの症状が改善する
発症 時に排便回数の変化がある- 発症時に便形状(外観)の変化がある
- 似たような症状を示す他の病気がないことを確認する
過敏性腸症候群の治療法
- 日常の生活、食事、ストレス環境で改善できるところがあれば、その取り組みが最も重要
- 不規則な食事や睡眠を改善する
- 偏った食事内容を避ける(脂肪食を避ける、食物繊維をきちんととるなど)
- 適度な運動を行う
- ストレスを発散する時間を作る など
- 必要に応じて薬物療法も検討する
- 「命に関わることはないが、経過が長く完全に治ることが少ない」というこの病気の性質を理解することが大事
症状 が長らく続き精神的ストレスが大きくなっているような場合は、精神科や心療内科の専門外来への受診も考慮される
過敏性腸症候群に関連する治療薬
ポリアクリル樹脂経口薬(過敏性腸症候群治療薬)
- 消化管内で水分を吸収し、消化管の内容物の動きを調節することで下痢や便秘などの症状を改善する薬
- 過敏性腸症候群は下痢、便秘、腹痛などが続き、ストレスなどによっても悪化する現代病の一つである
- ポリアクリル樹脂という物質は水分を吸収し容積を大きくする性質をもつ
- 本剤はポリアクリル樹脂の経口薬であり、下痢時には余分な水分を吸収し、容積が大きくなることで便秘時には排便を促す
- 本剤の服用は十分量(約200ml)の水とともに服用する
植物ステロール製剤(ガンマオリザノール)
- コレステロールや脂質の低下作用や脳内の機能改善作用により脂質異常症や心身症による症状を改善する薬
- ガンマオリザノールは植物ステロールという物質に分類されコメ胚芽や米ぬかなどに多いポリフェノールの一種
- ガンマオリザノールはコレステロール吸収低下作用や脂質低下作用などをもつ
- ガンマオリザノールは脳内ノルアドレナリン量の増加作用などにより脳の機能改善作用をもつ
- 本剤はガンマオリザノールの製剤であり脂質異常症や更年期障害、過敏性腸症候群などに使用される
整腸剤
- 腸内環境を整えることで下痢、便秘、腹部膨満などの消化器症状を改善する薬
- 腸内には多くの細菌が生息していて、何らかの原因により細菌の集団のバランスが崩れ異常をきたすと下痢や便秘などの症状があらわれる場合がある
- 本剤は乳酸菌などを含む製剤で腸内細菌の環境を整える作用をあらわす
- 本剤の中には抗菌薬投与時に使用される製剤(抗菌薬耐性乳酸菌製剤など)もある