2019.04.30 | コラム

症状が悪くなる食べ物と、よくなる食べ物がある?:過敏性腸症候群(IBS)の人が知っておきたい食事療法とは

お腹の不調に長い間悩んでいる人におすすめの食事
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新しい職場や学校など、周りの環境が変化すると心身ともに疲れやすくなるものです。そうでなくとも、人間関係や将来のことなど、何かと悩みはつきません。「病は気から」とはよく言われることですが、最近の研究ではそれを科学的に証明するような報告が多数出ています。

過敏性腸症候群(IBS)は「お腹を壊しやすい」、「おならが出やすい」といったお腹の不調が続く病気ですが、精神的なストレスとの関わりが深いと考えられています。一方で、IBSの症状の強さは食事内容にも影響を受けることが分かってきました。全てのストレスから逃れるのはなかなか難しいものですが、食事療法でIBSの辛い症状を楽にできる可能性があります。IBSの症状で悩んでいる人は、本コラムを参考にしてみてください。

 

1. そもそも過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(IBS)とは、お腹の痛みや不快感が、明らかな原因がないにもかかわらず下痢や便秘に伴って続いている状態です。お腹の痛みや不快感は、排便後に軽くなるのもIBSの特徴です。

IBSが精神的なストレスによって発症したり悪くなったりすることは科学的に証明されつつあります。例えば仕事で大事な商談がある、学校で試験があるなど、精神的に強い緊張が強いられる時にIBSの症状が現れやすくなります。

IBSでは、病院で検査を受けても何も異常がみつかりません。血液検査や大腸カメラでは問題がないけれども、慢性的または繰り返して症状がある人は、IBSの可能性が高くなります。(IBSの詳しい診断基準については、こちらのページを参照してください。)

2015年の調査では、日本人の約14%がIBSだと報告されています。年齢でいえば20-40歳代の若い人に多く、男性より女性にやや多い傾向があります。

 

2. IBSの症状は、食事によって良くも悪くもなる

精神的なストレスが主な原因とされるIBSですが、食事の内容によって症状の強さが変わることも分かっています。報告によりますと、IBSの人のうち6割が特定の食べ物を摂ることによって、お腹の痛みや下痢などを悪化させているとのことです。一方で症状が良くなる食事内容も分かっており、多くのIBSの人に効果が見られることから食事の見直しは重要と考えられます。

以下では、IBSの人が控えておきたい食事とおすすめの食事の大きく2つに分けて、具体的な食事療法について説明しています。

 

控えておきたい食事

IBSの人は、以下の5つの食事内容によって症状が悪くなることが多いです。IBSの症状の中でもとくに下痢しがちで悩んでいる人は、これらの食事を避けて過ごすことを心掛けてみてください。

 

◎脂質が多い食事

IBSの人が脂質(あぶら)の多い食事を摂ると、普通の人よりも下痢になりやすいといわれています。脂質は腸の動きを活発にする身体の中で分解されて脂肪酸と呼ばれる物質になります。脂肪酸は腸を刺激する働きがあるので、脂質を摂り過ぎると腸に負担がかかります。

 

◎コーヒー

コーヒーには、影響の出方に個人差はあるものの、大腸の動きを活発にする働きがあることが分かっています。とくにコーヒーに含まれる成分の1つであるカフェインは、腸を刺激する作用があるため、下痢しやすくなります。お腹の調子が思わしくない時は、コーヒーをできるだけ飲まないようにしてください。

 

◎アルコール

アルコールにも腸を刺激する作用があるといわれています。お酒を飲み過ぎると翌日は下痢になるという人を見聞きしたことがあるかもしれません。ストレスがあるとお酒がすすみがちな人も多いと思いますが、お腹の調子を整えるためにはアルコールを控えたほうが良さそうです。

 

◎香辛料

香辛料も避けたほうがいい食べ物の一つです。IBSの人が香辛料が含まれた食事を摂ると、香辛料が含まれていない食事に比べて、お腹の痛みが現れやすいと報告されています。また、香辛料は下痢が起こる原因にもなります。香辛料は「胃が荒れる」といったイメージが強いかもしれませんが、腸にとっても良くありません。お腹のためにも香辛料はほどほどにしてください。

 

アレルギーの可能性がある食べ物

IBSの人の中の一部に、実は食物アレルギーが隠れている可能性があるといわれています。アレルギー物質を含む食事を摂ると、IBSと同様にお腹の痛みや下痢が起こりやすくなります。

食物アレルギーは大人になってから発症することがあり、それまで口にしてもなんともなかった食べ物で、突然アレルギーになることがあります。身体の不調の原因が、実は食物アレルギーだと気づいていない人も少なくありません。原因が分からない身体の不調が続いたら、食物アレルギーの可能性も意識しながら、調子が悪くなる前に口にしたものを確認してみてください。

 

おすすめの食事

次に、IBSの人におすすめしたい食事内容について解説します。上記の食べ物をできるだけ避けることに加えて、以下の食事を意識することで腸の調子が整ってきます。いずれも科学的根拠を踏まえた内容となっていますので、安心して取り組んでみてください。

 

◎低FODMAP(フォドマップ)食

FODMAP(フォドマップ)とは特定の糖類をまとめた呼び名で、Fermentable(発酵性の) Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(二糖類)、Monosaccharides(単糖類)、And Polyols(ポリオール)の頭文字からなっています。これらの糖類は炭水化物の一部で、身近な食べ物に含まれています。

FODMAPの特徴は以下の通りです。

 

  • 小腸で消化や吸収がされにくい
  • 大腸で異常な発酵がすすみ、ガスを発生させる
  • 腸の中に水分をとどまりやすくする

 

上記の結果として、FODMAPが多い食べ物を摂るとおならが出やすくなる、お腹が張りやすくなる、下痢になりやすくなるなど、IBSの症状が現れやすくなります。

そこでIBSの症状がある人は、FODMAPが少ない「低FODMAP食」を摂ることがすすめられます。実際に多くの研究で、低FODMAP食にするとIBSの症状が和らぐことが報告されています。(低FODMAP食の科学的な効果に関する詳しい報告はこちらのニュースを参照してください。)

具体的には、FODMAPを多く含む以下の食べ物を減らすことです。

 

【FODMAPが多い(摂取を避けると良い)食品】

  • 小麦製品
  • 大豆(納豆含む)、レンズ豆、ひよこ豆などの豆類
  • 牛乳、ヨーグルトなど
  • 果物(りんご、もも、すいかなど)
  • 玉ねぎ、カリフラワー、ごぼう、にんにく
  • マッシュルームなどのきのこ類
  • ハチミツ
  • 人工甘味料(キシリトールなど)

 

上記は、FODMAPが多い食べ物です。効果はすぐには現れにくいので、まずは3週間ほどこれらの食品を避けてみてください。低FODMAP食を続けることで、多くの人でお腹の調子が整ってきます。

 

◎高繊維食

食物繊維の多い食事を摂ることは、IBSの症状のなかでもとくに便秘で悩む人に効果があると報告されています。食物繊維は便の量を増やし、腸内における便の運搬をスムーズにする働きがあるといわれています。日本人の多くは食物繊維が不足しがちです。意識して食物繊維を摂ることは、便秘対策の一つになります。

食物繊維の中には、水に溶けやすい水溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維の2種類があります。報告によりますと、水溶性食物繊維は便秘の症状に限らずIBSの幅広い症状に効果があることが示されています。水溶性食物繊維は、わかめや昆布などの海藻や里芋、果物などになります。一方で、不溶性食物繊維を摂ることでお腹が張りやすく感じる人が一部いることが報告されています。食物繊維は摂り過ぎるとまれに便秘が悪化することもありますので、自分の体調をみながら少しずつ取り入れるようにしてください。

便秘解消のための具体的な方法や、食物繊維についての詳しい説明は、こちらのコラムにまとめてありますので参照してみてください。

 

3. まとめ

本コラムでは、過敏性腸症候群(IBS)の人が知っておきたい食事療法について解説しました。お腹の不調は、日常生活にも支障をきたす辛い悩みです。ストレスを自分で減らすことはなかなか難しくても、食事の内容を変えることで少しでもお腹の調子が整って、毎日が過ごしやすくなることを願っています。

 

執筆者

池田 飛鳥

参考文献

・「過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドライン2014」日本消化器病学会 

・Fukudo S, et al : J Gastroenterol 2015: 50: 11-30.

・細田誠弥 生活習慣と排便異常 順天堂医学 50. 330-337 (2004)

・厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査結果の概要

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。