2019.01.17 | コラム

薬に頼る前に!自分でやっておきたい便秘改善法

外科女医・アスカが紹介する便秘にならない身体づくり
薬に頼る前に!自分でやっておきたい便秘改善法の写真
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前回のコラムでは、間違った便秘薬の使い方が便秘をさらに悪化させ、「大腸がん」を引き起こす可能性もあることを紹介しました。今回のコラムでは、安易に薬を使用する前に自分でできる便秘対策について、さまざまな研究結果に基づいて外科医の視点から述べていきます。あまり便秘では困っていないという人にも意外に潜んでいる便秘があります。本コラムを読んで、普段の生活習慣をもう一度見直すきっかけにしてください。

1. 見直す項目は生活習慣と食事内容の大きく2つ

便秘の治療において、食事を含む生活習慣の改善は最も大事な柱です。疫学研究の結果から、食事や運動など生活の基本となる習慣によって便秘発生のリスクが変わることが分かっています。

ここでお通じが作られて身体の外に出るまでの流れを大まかに説明します。一般的には次の流れとなります。

 

  1. 消化された食べ物が大腸の中で便に変化し始める(生成) 
  2. 便が成長しながら肛門の手前の直腸まで運ばれる(運搬) 
  3. 直腸に貯まっている便が肛門から身体の外に出る(排泄) 

 

この3つに注目して、自分の便秘はどこが原因なのかを考えながら対策を立てるとより効果的です。

では、これまで報告されている研究結果とともに、外科医としての知識と経験も踏まえておすすめの便秘改善法について解説していきます。

 

2. 生活習慣の見直し

まずは食事内容以外の生活習慣について、先に述べた排便に至るまでの3つの行程と照らし合わせながら一つずつ項目を見ていきます。

 

朝食を摂る・・1, 2, 3. 全てに関わる

忙しいとついつい省いてしまいがちな朝食ですが、大学生を対象としたアンケート調査では便秘ではない人たちの朝食欠損率が20%に対し、便秘の人たちの朝食欠損率は約30-50%と差があったことが分かっています。

朝食を摂ることは規則正しい生活にもつながり、朝の決まった時間にトイレへ行く習慣付けにもなりますので、朝食のために少し早起きをする価値はありそうです。ちなみに昼食を摂らない人にも便秘が多いという報告があります。便秘対策においては規則正しく食事をとるほうが良いといえそうです。

 

水分を摂る・・1, 2, 3. 全てに関わる

水分が不足すると便の量が減るだけでなく、便の運搬も滞って便の出しづらさにもつながると報告されており、水分摂取は排便のどの行程においても大事な要素です。寒い季節は汗をかきにくいため特に飲水がすすまなくなります。また高齢者の中には、気がつかないうちに水分不足となっている人も見かけますので、水分制限の必要な持病がなければ意識して水分を多めに摂るように心がけてください。

 

たくさん噛む・・2.便の運搬に関わる

噛む回数も便秘と関係するのかと不思議に思われるでしょうが、一口の咀嚼回数が30回以上の人には快便が多いと報告されています。また、腹部手術の後に患者さんにガムを噛んでもらうと、手術で一旦止めた腸の動き〔蠕動(ぜんどう)といいます〕がより早く回復したという研究結果もあります。噛む行為そのものに腸の蠕動を活発にする働きがあるとされ、便秘対策として期待できるかもしれません。

 

運動で腸を動かす・・2.便の運搬に関わる

運動も便秘対策ではよくいわれることですが、その中でもジョギングなどの活発な運動は腸の機能を高めるとの報告があります。一方で、腸をとにかく動かすという観点では、ゆっくり歩くことが有効との報告もあります。

筆者も手術をした患者さんには、手術の翌日からでも自分の足で歩くよう心を鬼にしてスパルタ指導してきました(もちろん痛み対策は行います)が、これは単につらい思いをさせたいというわけではありません。寝たきりの予防とともに、一日でも早く腸の動きを回復させる目的があります。身体機能が低下していて活発な運動は難しいという人も、まずは自分の足を少しでも使うことが便通改善の第一歩になります

 

腹壁マッサージをする・・2.便の運搬に関わる

それほど高いエビデンスレベル(研究結果の信頼度)ではないのですが、1日15分、週5回の腹壁マッサージが便秘の症状改善に有効であったとの報告があります。腹壁マッサージとはいわゆる「の」の字マッサージのことです。15分も真面目にマッサージし続けるのはなかなか難しそうですが、テレビを見たり音楽を聞いたりしながらでも行えるので気軽にトライしてみてください。

 

便意は我慢しない・・3.便の排泄に関わる

これは今日からでもできるので特に意識して欲しい項目です。

せっかく便の生成と運搬が上手くいったのに最後の「ウンチしたい!!」という自然な便意を我慢すると、便を溜める役割を担う直腸や、便が身体の外に出てこないように蓋の役割を果たす肛門上皮や肛門括約筋(肛門を締める筋肉)に負荷がかかってしまいます。長くて15分ほど我慢すると自然に便意が薄れてきてしまうので、タイミングを逃すと出すべき便を腸の中に長時間溜め込むことになりがちです。

その間に腸が便から水分をさらに奪ってより硬い便になってしまい、排便しづらくなります。さらに便が貯まっていることに対して腸がどんどん鈍感になり、便意を感じにくくなるという悪循環に陥ります。

そしてこの悪循環によって日常的に直腸や肛門に負荷がかかり続けると、「痔(じ)」疾患の発生や悪化にもつながってしまうのです。今回は痔疾患について詳しく述べませんが、痔に悩んでいるという人は便意を我慢しがちなために、知らない間にこの悪循環にはまり込んでいることが多いです。

さて、こうならないためにも、毎朝決まった時間にトイレに行くとか、職場や学校の中で安心して行けるお気に入りのトイレを見つけておくなどして、日頃から快適な排便のための準備をしておくことをお勧めします。何事も上手くいくかは準備で8割がた決まるものです。

 

排便姿勢を見直す・・3.便の排泄に関わる

便の生成も運搬も上手くいって、便意も我慢しないようにしているけれども最後の排泄でつまずいてしまい、自覚がないまま便秘になっている人も意外に多いです。毎日排便があっても、お通じした時に出始めの最初の便だけ硬くて切れ痔になることはありませんか。これは前回のお通じの残りが直腸にとどまっていたサインです。直腸の中に古い便が残っていると、その上に新しい便がどんどん上積みされ、たとえ毎日排便していても便秘が潜んでいる状態となっています。

そこで、出すべき便を直腸の中に残さずできるだけスッキリ外に出すためにやっておきたい、家でできる簡単な方法があります。「できるだけ良い姿勢でお通じをすること」がポイントです。

良い排便姿勢とは「前傾」で「膝を曲げて胸のほうに引き寄せ」て座るスタイルです。こうすることで肛門が開きやすくなり、いきみ(お通じを出そうと力を入れること)も腸に伝わりやすくなるといわれています。腹筋が弱い人はこれに加えてお腹に手を押し当てて力を入れ、腹筋を助けてあげるのもお勧めです。

このスタイルは和式トイレで用を足す時の姿勢と似ています。しかし、今や和式トイレはほとんど見かけなくなっています。家に洋式トイレしかない場合はどうすればいいかというと、踵をあげてつま先立ちするか、足元に段ボールやティッシュの空き箱など何でもいいので膝が折れ曲がるくらいの高さの足台を用意すると良いです。足台に足を乗せて、前かがみになるだけで簡単に理想的な姿勢がとれます。これは筋力が落ちた高齢者やお腹が大きくなった妊婦さんなど、お腹に力を入れにくくて困っている人には特におすすめです。実は筆者も自宅では段ボールの足台を愛用しています。

 

ストレスを取り除く・・1,2,3.全てに関わる

便秘の人の6割は気分の落ち込みや不安など精神的な問題を抱えていることが分かっています。慢性の便秘症の人の中には便秘型の過敏性腸症候群と診断される人が多くいます。学校のテスト期間中や、大きな仕事に取り組んでいる時など、精神的にプレッシャーを感じやすい場面で便秘と下痢を繰り返すような人は、過敏性腸症候群に当てはまるかもしれません。

便秘型の過敏性腸症候群の人が催眠療法やリラクゼーション法を行うと症状が改善されたとの報告があります。過敏性腸症候群の原因はまだ十分解明されていないながらも精神的なストレスが大きな要因と考えられており、心と腸の働きには密接な関係があるようです。

よって、ストレスを取り除くことは便秘解消にもつながると考えられます。

 

定期内服薬を見直す

持病のためにかかりつけの医療機関があって、色々な薬を飲んでいるという人は要注意です。もちろん必要があって処方されているのだと思いますが、薬の副作用の一つとして便秘が引き起こされていることもあります。長年、薬を沢山もらって飲んでいるけれど、もしかして私もと思う人は、今飲んでいる薬は本当に必要なのか一度お医者さんとともに見直してみてください

 

3. おすすめの食事内容

次に、便秘予防のための食事内容を詳しくみていきます。実は食事療法もエビデンスレベル(研究結果の信頼度)が高い報告はあまりありません。食事は研究として厳密に計画しにくいというのが本当のところだと思いますが、少しでも良い便の生成と運搬につながるよう、できることから始めてみましょう。

 

食物繊維

食物繊維は便の量を増やし、便の運搬時間も短縮するといわれています。中には便秘改善と食物繊維は関係ないとする報告もありますが、数ある研究結果をまとめると、食物繊維の摂りすぎは便秘を悪化させるが、不足している人には比較的有効な方法だという見解になります。

厚生労働省が出した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では1日あたり男性は20g以上、女性は18g以上の食物繊維摂取をすすめています。一方で、日本人の1日あたりの食物繊維摂取量の現状(平成29年)は、一番少ない20代でおよそ12g、一番多い70代でおよそ17gで、ほとんどの人が足りていません。特に食事量そのものが少ないダイエット中の人や高齢の人は、意識して食物繊維を摂るようにしてください。 日本人を対象とした研究では、小麦より米や豆類由来の食物繊維を多く含む食事のほうが便秘改善に有効だと報告されています。

なお、便を柔らかくするために柔らかいものを摂ったり、消化しやすいものが便秘にも良いと思っている人もいるようですが、それは誤解です。一般的に食物繊維の多い食事とは硬いものが多く、繊維を断ち切るためによく噛む必要があります。消化にも時間がかかるので腸にとっては負担になりやすいものです。(詳しくは最後の表を参照してください。)腸を切る手術を受けた患者は術後に消化の良い食べ物をすすめられますが、こちらはむしろ食物繊維が少ない柔らかい食事のことを指していて一般的な便秘には逆効果です。混同しないように注意してください。

以上を参考に、主な食品中の食物繊維量を本コラム最後の表で確認してみてください。

 

余談になりますが、手軽に食物繊維を補う方法としておすすめなのは、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の粉末をそれぞれ単品で購入し、不溶性:水溶性=2:1の割合で混ぜたものを小分けの瓶に入れておき、毎朝のコーヒーや味噌汁などにひとさじ加える方法です。もちろん個人差はあるとは思いますが、これを始めて我が家はみな快便生活を手に入れました。

 

乳酸菌食品

ヨーグルトなどの乳酸菌食品も日本人の慢性便秘患者に対して有効であるとの報告があります。また、乳酸菌食品以外にも納豆やキムチなどの発酵食品が腸内環境を改善するとの報告も多くあり、便秘解消につながると考えられます。

 

便秘を悪化させる食べ物

お茶、ココア、渋柿、赤ワインにはポリフェノールの一種であるタンニンが多量に含まれます。タンニンは下痢を止める薬(タンナルビン)にも使われている成分で、摂りすぎると便秘になりますので気を付けてください。

 

4. まとめ

今回のコラムでは外科医の視点から便秘対策を紹介しました。こちらを参考に、皆さんにも薬に頼りすぎることなく健やかな日常を送っていただければと思います。かくいう筆者も早起きは苦手でついつい朝食を省きがちですが、これを機に便秘と闘う皆さんと一緒に生活習慣を改善していきたいと思いました。

しかし、自分で便秘対策を色々やってみたがなかなか治らない、もしくはこれまで便秘なんてなかったのに急に便秘になったという人には、便秘に隠れた別の病気が原因となっている可能性もあります。思い当たる節がある人は医療機関で調べてもらうようにしてください。また、自分で思う便秘のタイプと対策が上手く噛み合っていない可能性も考えられます。便秘解消が上手くいかないまま放置するのではなく、気持ちの良い日々を送るために早めに受診してください。

 

【表:主な食品中の食物繊維量】

食品 食品常用量  食物繊維量 食品 食品常用量  食物繊維量
野菜類     果物類    
キャベツ 50g 1.0g りんご 中1個(200g) 2.6g
だいこん 2切(100g) 1.2g オレンジ 中1個(150g) 2.6g
切干しだいこん 乾10g 2.0g 夏みかん 中1個(300g) 3.0g
かぼちゃ 2切(100g) 2.8g グレープフルーツ 小1個(200g) 1.4g
トマト 中1個(150g) 1.1g いちご 中10個(100g) 1.3g
ごぼう 中1/4個(50g) 4.3g バナナ 中1本(100g) 1.7g
たけのこ 3切(50g) 1.6g もも 中1個(150g) 1.8g
なす 中1個(70g) 1.3g 中1個(200g) 3.2g
にら 1/3束(50g) 1.0g 中1個(200g) 1.8g
トウモロコシ 中1本(150g) 5.1g 穀類    
さやいんげん 5本(50g) 1.2g 米飯 茶碗2杯(220g) 0.9g
セロリ 10cm(40g) 0.5g うどん 1玉(250g) 1.5g
いも類     そば 1玉(200g) 4.0g
さつまいも 小1本(100g) 1.7g 食パン 2切(120g) 2.8g
じゃがいも 中1個(100g) 1.1g フランスパン 1個(50g) 1.5g
きのこ類     スパゲティ 1人前(100g) 2.7g
干ししいたけ 3枚(7g) 3.0g 豆類    
えのきたけ 50g 1.6g 納豆 1/2包(40g) 2.7g
しめじ 50g 1.5g おから 60g 5.9g
マッシュルーム 小5個(50g) 1.1g 大豆 乾30g 5.1g
海藻類     あずき 乾50g 8.9g
のり 1枚(2g) 0.8g 甘栗 10個(50g) 2.5g
こんぶ 5g 1.4g 落花生 50g 3.6g

*表中の食物繊維量は「四訂日本食品標準成分表」に基づく

 

執筆者

池田 飛鳥

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※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。