2016.03.25 | コラム

外用薬のほか、飲み薬もあり!ボラギノール、プリザなど市販薬における痔の治療薬について解説

市販薬について
外用薬のほか、飲み薬もあり!ボラギノール、プリザなど市販薬における痔の治療薬について解説の写真
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この記事のポイント

1.痔と痔の治療薬について
2.痔の代表的なOTC医薬品(市販薬)① ボラギノールシリーズ
3.痔の代表的なOTC医薬品(市販薬)② プリザシリーズ

痔は一説には成人の半数近くの人が何らかの症状を抱えているとも言われる意外(?)にも身近な病気です。それを表しているかのようにOTC医薬品(市販薬)でも多くの痔治療薬が発売されています。ここでは痔と代表的な痔の治療薬について解説します。

◆ 痔と痔の治療薬について

痔には大きく分けて痔核(いぼ痔)、裂肛切れ痔)、痔瘻の3種類があり、便秘や下痢、排便時のいきみなどが原因となっておこります。中でも痔核は男女ともに多い痔の種類で内痔核外痔核に分かれ、肛門への負担や肛門部の血流が悪くなりうっ血し腫れることなどによって発症・悪化するとされてきました。現在では痔核は肛門クッション(肛門括約筋と直腸粘膜及び肛門部分の皮膚の間にある、毛細血管が網目状に集まった弾力性が高い部分)やそれを支える組織の減弱、肛門内圧などが病因となるとされています。

痔瘻では主に切開によりを取り除くなどの治療が行われていますが、痔核や切れ痔の治療では薬剤による治療も選択肢の一つです。痔の治療薬は医療用医薬品の他、OTC医薬品(市販薬)においても多くの製剤が発売されていてセルフメディケーション(自分自身で健康の維持・増進、病気の予防・治療にあたること)の一翼を担っています。次の項目からはOTC医薬品の痔治療薬の中でよく知られていて種類も豊富な「ボラギノール®」シリーズと「プリザ」シリーズに関して配合成分の違いなどを含めてみていきます。(なお、本記事に登場する薬剤に関して、株式会社メドレーは特定の製薬企業との利害関係はありません)

 

◆ 痔の代表的なOTC医薬品(市販薬)① ボラギノール®シリーズ

OTC医薬品(市販薬)における痔の治療薬として天藤製薬株式会社から発売されているのが「ボラギノール®」シリーズです。外用薬(軟膏剤、坐剤)だけでなく生薬成分を含む内服製剤も販売されています。ここでは代表的な製剤をいくつかみていきます。

 

▪️ボラギノール®A(注入軟膏、坐剤、軟膏)

炎症作用などをあらわすステロイド(プレドニゾロン酢酸エステル)に疼痛や痒みを抑える作用をあらわす局所麻酔薬(リドカイン)、末梢血液循環を改善することでうっ血の改善作用をあらわすビタミンE(トコフェノール酢酸エステル)、傷の治りを補助する組織修復薬(アラントイン)を配合した製剤です。主に局所に対して効果をあらわす製剤なので内服剤や注射剤としてのステロイドに比べ一般的に副作用はかなり軽減されていますが、ただ漫然と長期に渡り使用した場合などで皮膚が薄くなったりする可能性があるため注意が必要です。また患部が化膿している場合ではステロイドの免疫抑制作用などによりかえって化膿が悪化する場合があり注意が必要です。

ボラギノール®A注入軟膏は肛門の内と外の痔治療に使えるメリットがあります(通常、肛門内の痔には注入、肛門外や肛門付近の痔には塗布して使用)。

ボラギノール®A坐剤は主に肛門内部の痔に対して薬剤を挿入して使用します。挿入後、体温(直腸温)ですばやく溶けはじめ患部を目指して全体に拡がることで肛門内部のいぼ痔切れ痔に対して改善効果が期待できます。

ボラギノール®A軟膏は基剤として一般的に刺激が少なくなめらかで滑りのよい油脂性基剤を使用していて、患部を保護する役割も果たします。患部に直接塗布又はガーゼなどにのばして患部に貼付して使用します。

 

▪️ボラギノール®M(坐剤軟膏

局所麻酔薬(リドカイン)、ビタミンE(トコフェノール酢酸エステル)、組織修復薬(アラントイン)を含むのはボラギノール®Aシリーズと同様です。異なるのはAシリーズにおいて中心的な成分になっていたステロイド(プレドニゾロン酢酸エステル)を含まず、代わりに抗炎症作用をあらわすグリチルレチン酸という成分を含む点です。グリチルレチン酸(グリチルリチン酸の分解物)は生薬の甘草(カンゾウ)に含まれる成分で抗炎症作用や免疫調節作用などをあらわします。これにより痒みや痛みの原因になる痔の炎症を和らげる効果が期待できます。グリチルレチン酸は頻度は非常に稀ですが偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症:手足のだるさ、しびれなどがあらわれる)などを引き起こすことがあり、ただ漫然と長期に渡り使用した場合や甘草やグリチルリチン酸を含む薬剤(製剤例:グリチロン®配合錠 など)を服用している場合は特に注意が必要です。

 

▪️内服ボラギノール®EP

生薬成分とビタミンE(トコフェノール酢酸エステル)を含む内服薬で、主に痔核や切れ痔に伴う痛み・出血・腫れ・痒みなどの症状を改善する効果が期待できます。生薬成分の中で牡丹皮(ボタンピ)は植物の牡丹の根皮を由来とする生薬で血液循環の改善作用、中枢抑制作用などにより炎症などを改善する作用をあらわします。他の生薬成分である西洋栃の木(セイヨウトチノキ)の種子、紫根(シコン)にも炎症を抑える作用などが期待でき、ビタミンEによる末梢の血液循環を改善する作用と合わせて、いぼ痔切れ痔の改善効果が期待できます。

 

◆ 痔の代表的なOTC医薬品(市販薬)② プリザシリーズ

大正製薬株式会社から発売されている痔の治療薬が「プリザシリーズ」です。抗炎症成分を中心にした外用剤(坐剤、軟膏など)や生薬成分を含む内服薬もあり症状などに合わせた選択が可能です。

 

▪️プリザエース(坐剤軟膏注入軟膏

抗炎症作用などをあらわすステロイド(ヒドロコルチゾン酢酸エステル)、血管収縮作用などにより患部の出血や腫れを抑える塩酸テトラヒドロゾリン、痛みや痒みを抑える局所麻酔薬(リドカイン)、傷の治りを早める組織修復薬(アラントイン)、血液循環の改善作用などをあらわすビタミンE(トコフェノール酢酸エステル)、殺菌成分(クロルヘキシジン塩酸塩)、清涼成分(l-メントール)が主な成分となります。軟膏(プリザエース軟膏)には坐剤や注入軟膏には含まれていない、痒みなどを抑える抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミンマレイン酸塩)を含み主に肛門外側のいぼ痔切れ痔に対して有効です。坐剤(プリザエース坐剤T)は主に肛門内側の痔に効果をあらわし、注入軟膏(プリザエース注入軟膏T)は肛門内側には注入し肛門外側には塗布することで内側外側どちらのいぼ痔切れ痔に対しても効果が期待できる製剤となっています。

 

▪️プリザS(坐剤軟膏

ステロイド(ヒドロコルチゾン酢酸エステル)、組織修復薬(アラントイン)、ビタミンE(トコフェノール酢酸エステル)、殺菌成分(クロルヘキシジン塩酸塩)、清涼成分(l-メントール)といった成分は「プリザエース」と同じく含んでいます。この5成分に加え、坐剤(プリザS坐剤)は局所麻酔薬(リドカイン)を含み、主に肛門内側のいぼ痔切れ痔に効果が期待できます。軟膏(プリザS軟膏)は先に挙げた5成分の他、局所麻酔薬としてジブカイン塩酸塩、痒みなどを抑える抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン塩酸塩)、血管収縮作用などをあらわすフェニレフリン塩酸塩を配合した製剤になっていて、主に肛門外側のいぼ痔切れ痔に効果が期待できます。

「プリザエース」シリーズ、「プリザS」シリーズ共にステロイド成分であるヒドロコルチゾン酢酸エステルを含むため、「ボラギノール®Aシリーズ」の欄で紹介したように、長期に渡る使用などにおいて皮膚が薄くなるなどの可能性があることや患部の化膿に対しての注意は必要です。「プリザ」シリーズにはステロイドを含まない「プリザクールジェル」という外用製剤もあります(2016年2月現在)。この商品は血管収縮成分(塩酸テトラヒドロゾリン)、局所麻酔薬(塩酸リドカイン)、抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミンマレイン酸塩)、殺菌成分(ベンザルコニウム塩化物)、清涼成分(l-メントール)を含む製剤です。

 

▪️プリザ漢方内服薬

生薬成分を複数含む製剤で漢方薬の乙字湯(オツジトウ)にあたる内服薬です。乙字湯は痔核(いぼ痔)による疼痛など痔の漢方薬として最初に選択されることが多い薬で、特に痛みや出血などがある初期の痔などに対して使われています。本剤に含まれる当帰(トウキ)は血の働きを調和し排膿作用や止血作用などにより冷えや血行障害などの改善効果が期待できます。また本剤は緩下剤(緩やかに効果をあらわす下剤)の大黄(ダイオウ)を含み便通などの改善も期待できます。これらの作用によりプリザ漢方内服薬の効能は「体力中等度以上で、大便がかたく、便秘傾向のあるものの次の諸症:痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛」となっています。緩下作用をあらわすので下痢などの消化器症状には注意が必要です。また構成生薬として甘草(カンゾウ)を少量含むため、頻度は非常に稀ですが偽アルドステロン症などにも注意が必要となります。

 

ここでは痔の治療薬としてOTC医薬品(市販薬)の中で代表的な製剤となっている「ボラギノール®」や「プリザ」といった製剤とその成分などの違いを紹介しました。

今回紹介したように含有成分にいくつかの違いはあるものの、市販の外用薬では抗炎症成分、局所麻酔成分などを主とした製剤が多く、市販の内服薬では生薬成分を含む製剤が多く発売されています。

OTC医薬品は医療機関の受診をしなくても購入できるなどのメリットがありますが、使用しても症状が改善しなかったり逆に悪化する場合には特に注意が必要です。製剤によって違いはあるものの、外用薬(軟膏、坐剤など)では10日位、内服薬では1ヶ月位(切れ痔などの場合は一般的に5〜6日位)継続しても症状がよくならない場合などでは医師や薬剤師などへの相談や医療機関の受診を考慮した方がよいとされています。OTC医薬品を有効的に使い、医療機関の受診も視野に入れつつ身近な病気である痔に向き合うことが大切です。

執筆者

中澤 巧

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。