外用薬のほか、飲み薬もあり!ボラギノール、プリザなど市販薬における痔の治療薬について解説
この記事のポイント
2.痔の代表的なOTC医薬品(市販薬)① ボラギノールシリーズ
3.痔の代表的なOTC医薬品(市販薬)② プリザシリーズ
痔は一説には成人の半数近くの人が何らかの症状を抱えているとも言われる意外(?)にも身近な病気です。それを表しているかのようにOTC医薬品(市販薬)でも多くの痔治療薬が発売されています。ここでは痔と代表的な痔の治療薬について解説します。
◆ 痔と痔の治療薬について
痔には大きく分けて痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻の3種類があり、便秘や下痢、排便時のいきみなどが原因となっておこります。中でも痔核は男女ともに多い痔の種類で内痔核と外痔核に分かれ、肛門への負担や肛門部の血流が悪くなり
痔瘻では主に切開により
◆ 痔の代表的なOTC医薬品(市販薬)① ボラギノール®シリーズ
OTC医薬品(市販薬)における痔の治療薬として天藤製薬株式会社から発売されているのが「ボラギノール®」シリーズです。
▪️ボラギノール®A(注入軟膏、坐剤、軟膏)
抗
ボラギノール®A注入軟膏は肛門の内と外の痔治療に使えるメリットがあります(通常、肛門内の痔には注入、肛門外や肛門付近の痔には塗布して使用)。
ボラギノール®A坐剤は主に肛門内部の痔に対して薬剤を挿入して使用します。挿入後、体温(直腸温)ですばやく溶けはじめ患部を目指して全体に拡がることで肛門内部のいぼ痔や切れ痔に対して改善効果が期待できます。
ボラギノール®A軟膏は基剤として一般的に刺激が少なくなめらかで滑りのよい油脂性基剤を使用していて、患部を保護する役割も果たします。患部に直接塗布又はガーゼなどにのばして患部に貼付して使用します。
局所麻酔薬(リドカイン)、ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)、組織修復薬(アラントイン)を含むのはボラギノール®Aシリーズと同様です。異なるのはAシリーズにおいて中心的な成分になっていたステロイド(プレドニゾロン酢酸エステル)を含まず、代わりに抗炎症作用をあらわすグリチルレチン酸という成分を含む点です。グリチルレチン酸(グリチルリチン酸の分解物)は生薬の甘草(カンゾウ)に含まれる成分で抗炎症作用や免疫調節作用などをあらわします。これにより痒みや痛みの原因になる痔の炎症を和らげる効果が期待できます。グリチルレチン酸は頻度は非常に稀ですが偽
生薬成分とビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)を含む
◆ 痔の代表的なOTC医薬品(市販薬)② プリザシリーズ
大正製薬株式会社から発売されている痔の治療薬が「プリザシリーズ」です。抗炎症成分を中心にした外用剤(坐剤、軟膏など)や生薬成分を含む内服薬もあり症状などに合わせた選択が可能です。
抗炎症作用などをあらわすステロイド(ヒドロコルチゾン酢酸エステル)、血管収縮作用などにより患部の出血や腫れを抑える塩酸テトラヒドロゾリン、痛みや痒みを抑える局所麻酔薬(リドカイン)、傷の治りを早める組織修復薬(アラントイン)、血液循環の改善作用などをあらわすビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)、殺菌成分(クロルヘキシジン塩酸塩)、清涼成分(l-メントール)が主な成分となります。軟膏(プリザエース軟膏)には坐剤や注入軟膏には含まれていない、痒みなどを抑える抗
ステロイド(ヒドロコルチゾン酢酸エステル)、組織修復薬(アラントイン)、ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)、殺菌成分(クロルヘキシジン塩酸塩)、清涼成分(l-メントール)といった成分は「プリザエース」と同じく含んでいます。この5成分に加え、坐剤(プリザS坐剤)は局所麻酔薬(リドカイン)を含み、主に肛門内側のいぼ痔や切れ痔に効果が期待できます。軟膏(プリザS軟膏)は先に挙げた5成分の他、局所麻酔薬としてジブカイン塩酸塩、痒みなどを抑える抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン塩酸塩)、血管収縮作用などをあらわすフェニレフリン塩酸塩を配合した製剤になっていて、主に肛門外側のいぼ痔や切れ痔に効果が期待できます。
「プリザエース」シリーズ、「プリザS」シリーズ共にステロイド成分であるヒドロコルチゾン酢酸エステルを含むため、「ボラギノール®Aシリーズ」の欄で紹介したように、長期に渡る使用などにおいて皮膚が薄くなるなどの可能性があることや患部の化膿に対しての注意は必要です。「プリザ」シリーズにはステロイドを含まない「プリザクールジェル」という外用製剤もあります(2016年2月現在)。この商品は血管収縮成分(塩酸テトラヒドロゾリン)、局所麻酔薬(塩酸リドカイン)、抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミンマレイン酸塩)、殺菌成分(ベンザルコニウム塩化物)、清涼成分(l-メントール)を含む製剤です。
▪️プリザ漢方内服薬
生薬成分を複数含む製剤で漢方薬の乙字湯(オツジトウ)にあたる内服薬です。乙字湯は痔核(いぼ痔)による疼痛など痔の漢方薬として最初に選択されることが多い薬で、特に痛みや出血などがある初期の痔などに対して使われています。本剤に含まれる当帰(トウキ)は血の働きを調和し排膿作用や止血作用などにより冷えや血行障害などの改善効果が期待できます。また本剤は緩下剤(緩やかに効果をあらわす下剤)の大黄(ダイオウ)を含み便通などの改善も期待できます。これらの作用によりプリザ漢方内服薬の効能は「体力中等度以上で、大便がかたく、便秘傾向のあるものの次の諸症:痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛」となっています。緩下作用をあらわすので下痢などの消化器症状には注意が必要です。また構成生薬として甘草(カンゾウ)を少量含むため、頻度は非常に稀ですが偽アルドステロン症などにも注意が必要となります。
ここでは痔の治療薬としてOTC医薬品(市販薬)の中で代表的な製剤となっている「ボラギノール®」や「プリザ」といった製剤とその成分などの違いを紹介しました。
今回紹介したように含有成分にいくつかの違いはあるものの、市販の外用薬では抗炎症成分、局所麻酔成分などを主とした製剤が多く、市販の内服薬では生薬成分を含む製剤が多く発売されています。
OTC医薬品は医療機関の受診をしなくても購入できるなどのメリットがありますが、使用しても症状が改善しなかったり逆に悪化する場合には特に注意が必要です。製剤によって違いはあるものの、外用薬(軟膏、坐剤など)では10日位、内服薬では1ヶ月位(切れ痔などの場合は一般的に5〜6日位)継続しても症状がよくならない場合などでは医師や薬剤師などへの相談や医療機関の受診を考慮した方がよいとされています。OTC医薬品を有効的に使い、医療機関の受診も視野に入れつつ身近な病気である痔に向き合うことが大切です。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。