じんがん(じんさいぼうがん)
腎がん(腎細胞がん)
腎臓の実質にできるがん。手術や分子標的薬により治療する。
10人の医師がチェック 197回の改訂 最終更新: 2018.07.20

腎臓の腫瘍は腎がん(腎細胞がん)だけではない?良性腫瘍や腎盂がんとの違いなど

腎臓に腫瘍が指摘されると、その腫瘍が悪性なのか良性なのかを区別しなければなりません。腎臓腫瘍の良悪性や、どんなタイプの腫瘍なのかを判断するには画像検査が重要です。ここでは腎臓の腫瘍について種類や診断法を解説します。

 

1. 腎臓にできる腫瘍の種類

腎臓に腫瘍ができていると指摘された場合は、画像検査を追加したりして腫瘍の良悪性や種類についての診断を行います。腎腫瘍は医師によっては腎腫瘤と表現される場合もありますが、ここでは腫瘍と腫瘤を厳密には分けずに腫瘍として説明します。

腎腫瘍の種類には主なものとして以下が挙げられます。

  • 充実性腫瘍(じゅうじつせいしゅよう)
    • 良性腫瘍
      • 腎血管筋脂肪腫 
      • オンコサイトーマ
    • 悪性腫瘍
      • 腎がん(腎細胞がん)
        • 淡明細胞型(たんめいさいぼうがた)腎細胞がん
        • 乳頭状腎細胞がん
        • 嫌色素性(けんしきそせい)腎細胞がん
        • 透析関連腎がん
      • 腎盂(じんう)がん
  • 嚢胞性腫瘍(のうほうせいじんしゅよう)
    • 良性腫瘍
      • 単純性腎嚢胞(たんじゅんせいじんのうほう)
      • 非典型的腎嚢胞(ひてんけいてきじんのうほう)
      • 傍腎盂嚢胞(ぼうじんうのうほう)
      • 染色体優性多発性嚢胞腎(じょうせんしょくたいゆうせいたはつせいのうほうじん)
    • 悪性腫瘍
      • 嚢胞性腎がん
    • 水腎症 便宜上の分類
  • 炎症性腎疾患
  • 腎血管性病変、外傷性疾患
    • 腎動脈瘤(じんどうみゃくりゅう)
    • 腎梗塞(じんこうそく)
    • 腎被膜下血腫(じんひまくかけっしゅ)・表在性損傷

上記の病気はあくまでも腎腫瘍との区別(鑑別)を行う可能性がある病気です。大きく分類して4つに分かれます。大まかに言うと次の違いがあります。

  • 充実性腫瘍:腎臓にできた固形のかたまり
  • 嚢胞性腎腫瘍:腎臓に液体のたまりができる
  • 炎症性腎疾患:細菌などを原因として腎臓に炎症が起きる
  • 腎血管性病変:腎臓の血管が破裂したりして、画像上腎臓にかたまりがあるように見える

腎臓の腫瘍は、画像検査で明らかに区別がつく場合もあれば、そうでない場合もあります。
腫瘍を診断する方法は、そのものを一部切り取ってきて顕微鏡で観察すること(病理検査)が最も確実です。しかし腎腫瘍の場合は組織をとって診断を行うことはほとんど行われません。

特に、腎がん(腎細胞がん)は組織を取ると出血や転移を起こしやすい性質があります。そのため一般的には腎がんの疑いがある腎腫瘍に生検は行いません。

つまり、腎臓の腫瘍は多くの場合、画像検査で診断を確定する必要があります。画像を見て上に挙げた多くの病気の可能性をひとつひとつ除外していき診断に至らねばなりません。画像診断だけで診断をするのは難しいことも多いです。
1つの画像検査だけで診断が難しい時は、それぞれの検査による特徴を生かして、画像検査(超音波検査CTMRIなど)の結果を組み合わせて最終的な判断を行います。これは、腎がんの疑いで切除したもののそうではなかったなどということを極力避けるためです。そのため、いくつもの画像検査が必要になることがあります。

腎がんと区別が必要な病気にはまれな病気も考えると他にもたくさんありますが、今回は腎がんの解説なので病名を紹介するに留めます。

小児に発生する腎腫瘍は成人にできやすいものとは異なります。

腎臓に腫瘍があると多くの可能性を考えて、画像検査を中心に詳しく調べられます。
次に腫瘍では悪性と良性の2つがあります。その違いについて説明します。

悪性と良性の違い

腫瘍には悪性腫瘍と良性腫瘍があります。
悪性腫瘍はいわゆるがんのことです。周囲の臓器に壊したり転移をして命を脅かします。対して良性腫瘍は大きくなったりする場合もありますが、悪性腫瘍のような振る舞いする訳ではありません。

良性腫瘍と悪性腫瘍は全く異なるものですが、腎腫瘍を画像検査だけで良性腫瘍か悪性腫瘍か完全に見分けるのは簡単ではありません。最初に挙げた鑑別するべき腫瘍の特徴が当てはまるかどうかを一つひとつ調べていきます。

良性腫瘍には手術が必要なのか

ほとんどの良性腫瘍は治療の必要がありません。
良性腫瘍で手術が考慮される場合として以下のケースが考えられます。

  • 悪性が完全には否定できない 
  • 症状が強い
  • 放置しておくと症状が出現しそうな状態である

それぞれの状態について説明します。

■悪性が否定できない場合

腎臓の腫瘍は画像のみで診断が行われることが多く、特に小さな腫瘍の場合は小さければ小さいほど腫瘍の特徴がわかりにくく診断が難しくなります。

がんの診断は腫瘍の一部を取ってきて顕微鏡で見ること(生検)が一般的ですが、腎臓の腫瘍の場合には一般的ではありません。

  • 腎臓腫瘍に針を刺すことで、悪性腫瘍であった場合は転移を誘発する危険性がある
  • 腎臓は血流が豊富なために生検による出血などの危険性がある。
  • 腫瘍から組織を採取しても良悪性の診断が難しく、結局手術が考慮される場合がある。

腎臓の悪性腫瘍が疑われる病変に対して針を刺して生検を行うことで、がんが転移したり広がったりしてしまう危険性が以前から問題視されています。その一方で現在は技術が向上したことにより、その危険性は低下しているという意見もあります。
しかし、組織の採取後の診断で確定診断に至らないことも多く、そのために手術が考慮される場合があります。現在の腎腫瘍に対する生検は確実に良性を保証(担保)できないことが問題です。
悪性が完全に否定出来ない場合は、手術による利益と不利益を鑑みて方針が決められます。自分の状況を整理して医師としっかりと話し合うことが大切です。

■症状が強い/放置しておくと症状が出現しそうな場合

良性腫瘍と診断されても手術が必要な場合があります。症状があったり、放置しておくと症状が出現することが懸念されるときなどは手術により病変の摘出を行います。

例として次のような場合があります。

  • 大きくなった腎血管筋脂肪腫が破裂する前に手術で切除する
  • 腎臓に感染があり(腎症)、手術で取り除くしか改善が見込めない

良性であっても利益が大きいと考えられる場合は手術が行われます。どんな利益があるのかを医師からしっかりと聞いて話しうあことが大切です。

腎がんと腎結石の違い

腎がんと腎結石を見分けることは難しくはありません。CT検査が2つの病気の区別に役立ちます。
腎がんは腎臓の実質から発生しますが、腎結石の多くは腎盂・腎杯(じんぱい)というところに発生します。腎がんと腎結石はできる場所が違うので、画像検査で見分けにくいケースは多くはないです。
しかし、腎臓の中に埋もれるような場所に結石ができる場合は見分けにくいので、より詳しく調べられる造影CTを行う場合があります。
腎結石については「尿路結石の詳細情報ページ」で説明しているので参考にしてください。

2. 腎臓の充実性腎腫瘍:AML、オンコサイトーマ、腎がん、腎盂がん

充実性とは、中身まで詰まった固形のかたまりであるという意味です。
充実性腎腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、悪性腫瘍の代表は腎がん(腎細胞がん)です。

【腎臓の充実性腎腫瘍】

  • 良性腫瘍
    • 腎血管筋脂肪腫 
    • オンコサイトーマ(境界悪性とされる場合もあり)
  • 悪性腫瘍
    • 腎細胞がん(腎がん)
      • 淡明細胞型(たんめいさいぼうがた)腎細胞がん
      • 乳頭状腎細胞がん
      • 嫌色素性(けんしきそせい)腎細胞がん
      • 透析関連腎がん
    • 腎盂(じんう)がん

それぞれについて順に説明します。

腎血管筋脂肪腫(renal angiomyolipoma:AML)

腎血管筋脂肪腫は、脂肪と筋肉で構成される良性腫瘍です。女性に多く、画像検査で発見されることが多いです。周囲に浸潤することはありません。大きくなったときにみられる症状として腹部膨満感(お腹が張る)、出血(血尿や腹痛)があります。これらの症状が出現する前に大きな腎血管筋脂肪腫は手術により切除することがあります。

■画像検査の特徴

超音波検査では比較的わかりやすく、腫瘍が白く描出されます。脂肪成分の有無を確認するのにはCTよりもMRIが有効になることがあります。脂肪成分が明らかな場合はわかりやすいですが、脂肪成分が少なく血管が目立つ場合は腎がんとの鑑別が難しい時があります。

■治療

大きさにより治療法が異なります。

  • 腫瘍の大きさが4cm(意見によって10cm)未満の場合の治療
    • 経過観察
  • 腫瘍の大きさが4cm(意見によって10cm)以上の場合の治療
    • 手術による切除
    • 血管塞栓
    • 分子標的薬(エベロリムス)
  • 腎がんとの鑑別が難しい場合の治療
    • 手術もしくは生検

腎血管筋脂肪腫は小さな場合は経過観察を行います。一方大きな場合は、自然破裂の可能性を考えて手術で摘出することがあります。どの程度の大きさで手術をすべきかということは意見が統一されていません。以前は4cmを超えた時点で手術するべきとされていましたが、良性腫瘍に対して侵襲(体を傷付けること)の大きい手術は慎重であるべきという考えから、10cmまでは様子をみるという意見もあります。

腎がんとの鑑別が困難な場合は、正確な診断をするという目的でも手術を考慮する場合があります。他の治療法として腫瘍を栄養としている(育てている)血管の血流を止めてしまい腫瘍を小さくしたり、分子標的薬(エベロリムス)という薬を用いることもあります。

■病気の経過

腎血管筋脂肪腫は良性腫瘍なので転移したり他の臓器に浸潤することはありません。しかし、腫瘍が破裂して出血を起こすことがあるので、破裂を予防するために腫瘍を切除することがあります。

手術を行わないときでも増大傾向などを確認するために、定期的に画像検査を行う場合もあります。

腎オンコサイトーマ

オンコサイトーマは、腎臓にできる良性腫瘍の一つです。腎がんの一つである嫌色素性腎がんと似ているので区別が必要です。

■画像検査の特徴
画像検査で見られる特徴(所見)について説明しますが、かなり専門的な内容になります。
ここを飛ばして「治療」を読んでも理解に支障はありません。

  • 超音波検査での特徴
    • 血管を詳細に観察する方法で腫瘍の中心から血管が放射状に分布する車軸状の血管構築が見られることがある。
  • CTでの特徴
    • 造影早期相で中程度の染まりを呈して、早期排泄相では低吸収になる。
    • 腫瘍の真ん中が黒く映る(中心性瘢痕)。

画像上では嫌色素性腎がんがオンコサイトーマと似た所見を取ることがあり、特に小さな腫瘍の場合は鑑別が難しいことがあります。

■治療
画像診断で嫌色素性腎がんとの鑑別が難しく、特に腫瘍が小さな場合は見分けることがさらに困難です。このため腎がんの疑いとして治療されることがあります。

  • 明らかなオンコサイトーマと診断された場合:経過観察
  • 嫌色素性腎がんなどの悪性腫瘍と区別がつかない場合:手術もしくは生検
    • 生検では診断がつかない場合に手術が考慮される

実際のところ画像診断でオンコサイトーマと診断するのは経験のある医師でも難しいことがあります。
このため、オンコサイトーマと診断されてもしばらくは超音波検査などを使って定期的に検査を受けることになります。病気の部分が大きくなる場合や中身の状態に変化が見られる場合には再び詳しい検査が行われることがあります。

腎がん(腎細胞がん)

腎がんは腎臓にできる悪性腫瘍のことです。一般的に「腎がん」という言葉は腎細胞がんを指します。
腎がんには以下のようにいくつかの種類があります。

  • 淡明細胞型(たんめいさいぼうがた)腎細胞がん
  • 乳頭状(にゅうとうじょう)腎細胞がん
  • 嫌色素性(けんしきそせい)腎細胞がん 
  • 透析関連(とうせきかんれん)腎がん

他にもまれなものを含めるといくつかの種類がありますが、主な腎がんは上の通りです。
どのがんであっても治療は共通しており、手術が主体になります。転移している場合や再発した場合は薬物療法(分子標的薬もしくはサイトカイン療法)を行います。
治療に関しては「腎がんの手術」と「腎がんの薬物療法」で説明しているので参考にしてください。

次にそれぞれの腎がんの特徴について解説します。

■淡明細胞型腎がん

淡明細胞型腎がん(淡明細胞型腎細胞がん)は、腎がんの中で最も多いタイプです。腎がんの70-80%を占めるとされています。淡明細胞という名前は、がん組織にHE染色という方法で色をつけて顕微鏡で観察した時、細胞に淡く色がつくことに由来します。血流が多いがんで、造影CTでは特徴的な所見があります。淡明細胞がんの発生とVHLという遺伝子の異常に関連があることがわかってきています。

◎画像検査の特徴

  • 造影CTで特徴的な所見を示します。(専門的な表現になります)
    • 偽被膜を有する腫瘍で、早期相で濃染し、平衡相でwash outされる。
  • MRIは腎がんが血管の中に入り込む腫瘍栓の有無の評価に優れています。造影CTが行えない場合などには積極的に用いられます。

淡明細胞がんは、血流が豊富なことを特徴としており、画像検査でも特徴がはっきりとわかる場合が多いです。

■乳頭状腎がん

乳頭状腎がん(乳頭状腎細胞がん)は、腎がんの中で約5%程度を占めるとされています。画像診断で淡明細胞型腎がんとの区別は比較的容易です。良性腫瘍(脂肪成分の少ない腎血管筋脂肪腫、オンコサイトーマ)と鑑別診断が難しい時があります。

乳頭状腎がんは顕微鏡による観察(病理検査)でtype1、type2に分類されます。一般的にはtype1の方が再発率や転移する可能性が低いとされています。

◎画像検査の特徴

造影CTではよく造影される(造影効果が高い)淡明細胞型腎がんと異なり、造影効果は軽度で腫瘍の内部は均一です。

■嫌色素性腎細胞がん

嫌色素性(けんしきそせい)腎細胞がんは、腎がんの中で5%程度を占めるとされます。診断で問題になるのは、オンコサイトーマという良性腫瘍との鑑別診断です。嫌色素性腎細胞がんとオンコサイトーマは画像での特徴が似通っており、特に腫瘍が小さな場合は鑑別が難しい時があります。

乳頭状腎がんと嫌色素性腎細胞がんの鑑別も難しい時がありますが、治療方針はほとんど同じなので、鑑別できなくてもよいとする考え方もあります。

◎画像検査の特徴

造影CTでは血流が多い場合と少ない場合があり、傾向は様々です。特に血流が少ない場合(乏血性)はオンコサイトーマとの鑑別診断が重要です。

■透析関連腎がん

糖尿病や腎炎などで腎臓の機能を失うと透析という治療が必要になります。透析を長年続けている患者さんは腎がんになりやすいことが知られています。透析患者さんでの腎がんの発生頻度は透析を行っていない人に比べると10-40倍とされています。透析期間に腎がんの発生が関係しており、透析期間が長いほどに腎がんの発生する頻度も上昇します。再発率や転移する確率は低いとされています。

◎画像検査の特徴

透析関連腎がんの検査は、その他の腎がんと同様に、造影CTを中心に行われます。嚢胞という水が溜まった袋の内側に腎がんが発生することが典型的な形です。

腎盂がん

腎がんに似た悪性腫瘍の1つに腎盂がんがあります。名前は似ていますが、2つは全く違う病気です。

腎がん(腎細胞がん)と腎盂がんの違いとは?

腎細胞がんと腎盂(じんう)がんは発生する場所が異なり、性質も異なります。

  • 腎細胞がん(腎がん):腎臓の実質から発生する
  • 腎盂がん:腎盂から発生する

腎細胞がんと腎盂がんの説明

「腎がん」という言葉は一般的に腎細胞がんのことを指します。腎細胞がんは腎臓の実質から発生するがんです。それに対して腎盂がんは腎盂という部分から発生します。腎盂は腎臓と尿管をつなぐ位置にあります。腎細胞がんと腎盂がんは治療法に違いがあるためにしっかりと区別(鑑別)されなければなりません。

治療法の違いの例として、抗がん剤の選択があります。腎盂がん膀胱がん尿管がんと同じ尿路上皮がんに分類されます。腎盂がんに対する抗がん剤は膀胱がんで使用する薬剤と同様です。
一方で、腎がんに対しては腎盂がんに効果のある薬には効果がほとんどないとされており、別の抗がん剤を選ぶ必要があります。

また、手術の方法も違います。
腎臓を取るという点は腎がんと腎盂がんで共通しています。腎盂がんでは、尿管と膀胱壁を同時に全て切除(腎盂尿管全摘除術)しなければ治療として不十分です。一方、腎がんでは尿管は半分程度しか切除しません(根治的腎摘除術)が治療としては問題ありません。
腎がんと腎盂がんでは根本的に手術の方法が異なるので、2つの病気の区別は重要です。

下に表でまとめます。

がんの種類 腎がん 腎盂がん
手術方法 腎部分切除術、根治的腎摘除術 腎盂尿管全摘除術
薬物療法 分子標的薬、サイトカイン療法 膀胱がんに準じた抗がん剤治療

医師から腎臓にがんができていると説明を受けた場合にはそれが「腎がん」なのか「腎盂がん」なのかをしっかりと聞くようにしてください。

腎がんと腎盂がんの症状や検査結果の違い

腎がんと腎盂がんの症状を表で比較します。

がんの種類 腎がん 腎盂がん
早期 症状なし 肉眼的血尿(見た目で赤い)
進行したとき 疼痛、肉眼的血尿、腹部腫瘤感 側腹部痛、肉眼的血尿

腎がんと腎盂がんの症状は似通ったところが多く、このために症状で見分けることは困難です。
このため、腎がんと腎盂がんの区別(鑑別)には超音波検査、造影CT検査、MRI検査、尿細胞診などを用います。

検査では下の表のような特徴が見られます。

がんの種類 腎がん 腎盂がん
造影CT ・早期濃染、平衡相での洗い出しなどの特徴がある
・腫瘍の周りにカプセル(被膜)がある
・造影CTの排泄相で、腎盂内に腫瘍性病変が確認できる
MRI 腎盂に腫瘍性病変なし 腎盂に腫瘍性病変を認める
尿細胞診 陰性 陽性
逆行性尿路造影 腫瘍の描出なし 腫瘍の描出あり

*尿細胞診は腎盂がんでも悪性度が低い場合には、陽性にならない場合がある

検査結果はがんの程度に影響を受けるので、上の表とは異なる結果も想定されます。
さまざまな検査を組み合わせて、総合的に判断を行うことが正確な診断につながります。

最初に述べたように、腎がんと腎盂がんでは治療法(手術法、薬物の種類)が異なるため区別をしっかりと行うことが重要です。

3. 腎臓の嚢胞性腫瘍(のうほうせいしゅよう)

嚢胞とは中身が水の風船のようなものを指します。
嚢胞にも色々あります。造影剤で造影効果があるものや、中身が単純な水ではなくて濃い濃度のものなど違った特徴があり、それぞれで治療法も違います。
腎臓の嚢胞性腫瘍には次のものがあります。

  • 良性腫瘍
    • 単純性腎嚢胞(たんじゅんせいじんのうほう)
    • 非典型的腎嚢胞(ひてんけいてきじんのうほう)
    • 傍腎盂嚢胞(ぼうじんうのうほう)
    • 常染色体優性多発性嚢胞腎(じょうせんしょくたいゆうせいたはつせいのうほうじん)
  • 悪性腫瘍
    • 嚢胞性腎がん
  • 水腎症 ※便宜上の分類

水腎症は腎盂という腎臓の一部が拡張した状態を指す言葉なので、嚢胞性腫瘍とは分類されません。
しかし、他の嚢胞性腫瘍と形が似ているので、便宜上ここでは嚢胞性腫瘍に分類して説明します。

単純性腎嚢胞

単純性腎嚢胞(たんじゅんせいじんのうほう)は、腎臓に発生した水のような液体を中身とする袋状の腫瘍です。尿細管(にょうさいかん)という尿が流れる管が閉塞することが原因でできると推測されています。
診断には腹部超音波検査腹部CT検査が役立ちます。
嚢胞の中身がCTに写る濃度(画像上の色の白さ)により中身を推定することができます。腎嚢胞の中身が水成分より濃度が濃い場合や、造影CTで中身が造影される場合には非典型的腎嚢胞と診断されます。
単純性腎嚢胞は小児では稀ですが、加齢とともに頻度が増加します。

■画像検査結果の特徴

専門的な内容になるのでこの部分を飛ばして治療に進んでも問題はありません。

  • 超音波検査
    • 黒く映る領域として描出される(無エコー領域)
  • CT検査
    • 嚢胞の内部は水とほとんど同じ色(CT値が水と同様) 
    • 丸い形
    • 輪郭がくっきりしている(類円形、境界明瞭)
    • 造影効果がない
  • MRI検査
    • T2強調画像で均一な低信号を示す

医師は画像検査から上に示した特徴が見られるかを検討し診断を行っています。

■治療

通常は治療の必要がありません。
腎嚢胞が大きくなると症状が出現します。圧迫による痛みや、尿の流れを邪魔することで水腎症(すいじんしょう)の状態が出現することがあります。症状の程度をみて治療を考慮します。
以下の治療法があります。

  • 経皮的腎嚢胞穿刺術(けいひてきじんのうほうせんしじゅつ)
    • 体の外から針を刺して水を抜く
  • 硬化療法
    • 経皮的腎嚢胞穿刺術を行いその後、水が溜まっていたところに接着効果のある物質を注入し嚢胞をつぶす

これらの治療を行っても再発することもあります。
どちらも背中から針を刺して治療する方法なので、痛みを伴います。

■経過

嚢胞を放置すると大きくなることはありますが、症状が現れることはまれです。このため、治療の基本は経過観察です。また、治療を行っても再発する場合があります。

非典型的腎嚢胞

非典型的腎嚢胞(ひてんけいてきじんのうほう)は、液体を中身とする袋が腎臓に発生する病気ですが、単純性腎嚢胞と異なるのは、中身が水成分ではない点です。中身は液体ですが出血、腫瘍、感染などを原因としているためタンパク質などの成分を多く含んでいます。

■画像検査の特徴

非典型的腎嚢胞に用いられる画像検査には次のものがあります。

  • 超音波検査
    • 単純性嚢胞との区別(鑑別)が難しい場合がある
  • 腹部CT検査(造影CT検査)
    • 超音波検査より多くの情報を得られる
      • 造影CTで造影されるか
      • 袋の壁の部分が厚さ(嚢胞壁の肥厚)があるか
      • 骨のような硬いもの(石灰化)があるか
  • 腹部MRI検査
    • 診断の補助に用いられる
    • 中身の成分や嚢胞の中に壁などの情報をより詳しく得られることがある

これらの検査を組み合わせて非典型的腎嚢胞は両悪性が調べられます。次に説明するボスニアク分類が臨床現場ではよく用いられます。

■ボスニアク分類

非典型的腎嚢胞が悪性の可能性があるかを判断する材料としてボスニアク(Bosniak)分類が用いられます。ボスニアク分類はCTの所見をもとに非典型的腎嚢胞を分類する基準です。表に示します。

カテゴリー 内容
1 単房性、薄い隔壁、内容は水濃度
2 2つ以下の薄い隔壁、わずかな石灰化、3cm以下の高吸収嚢胞
2F 3つ以上の薄い隔壁、最小限の増強効果、3cm以上の高吸収嚢胞
3 厚い不整な嚢胞壁や隔壁、最小限の増強効果、粗大な石灰化
4 嚢胞壁や隔壁から隆起あるいは浸潤する造影される充実部分の存在

ボスニアク分類により治療方針が決定されます。

■治療

ボスニアク分類と治療の対応を表に示します。

カテゴリー 方針
1 良性
2 良性
2F 悪性の可能性は低い(約5%)
3 悪性の可能性は約50%、手術を考慮
4 悪性とみなして手術を行う

手術は可能であれば腎部分切除、腫瘍が大きい場合は根治的腎摘除術が行われます。

ボスニアク分類の2FのFはfollow(フォロー)の略です。経過観察が必要という意味です。2Fのうち一部は経過観察のうちに悪性の可能性が否定できず手術を行うことになります。悪性である可能性は5%程度と考えられています。

■経過

ボスニアク分類の1、2は良性腫瘍なので経過観察の必要はありません。2Fに分類された人は定期的に超音波検査や場合によってはCTなどで経過観察を行います。

カテゴリー4、5で手術を行い腎がんであった場合には腎がんと同様に再発の有無を確認するために定期的な画像検査を行います。

傍腎盂嚢胞

傍腎盂嚢胞(ぼうじんうのうほう)は、腎洞(じんどう)という場所から発生した、液体の入った風船状の腫瘍です。腎臓の内側から発生する場合もあり、他の病気と見分けるのが難しいことがあります。
健診などで発見されることは珍しくはありません。

■検査
超音波検査:傍腎盂嚢胞は腎臓の内側から発生するので、腎盂が拡張する水腎症との鑑別が難しいです。水腎症を疑った場合は超音波検査以外の情報も必要です。

◎CT検査
造影剤を使わない単純CTでは水腎症と傍腎盂嚢胞の見分けがつかない場合があります。造影CTで尿の流れを詳細に観察できる撮影方法(CT ウログラフィー)を行うことでより詳しく調べることができます。

◎MRI検査
造影CTが行えない場合に行われます。
尿の流れに注目したMR ウログラフィーという撮影方法で水腎症との鑑別が可能です。

■治療
傍腎盂嚢胞で症状が現れることはまれなので、ほとんどの場合治療は不要です。

■経過
症状がない限りは経過観察を行います。急激に大きくなることはほとんどありません。

常染色体優性多発性嚢胞腎

常染色体優性多発性嚢胞腎は最も多い遺伝子病の1つであり、腎不全の原因になります。腎臓の機能が低下して腎不全になることに加えて、他の臓器にも嚢胞ができて、さまざまな病気を起こします。

常染色体優性多発嚢胞腎の人の典型的な経過では30-50歳で血尿、側腹部痛をきっかけに発症を指摘されます。腎がんの発生は透析患者さんなどでなる後天性腎嚢胞症(腎臓にのう胞がたくさんできる病気)に比べると少ないとされます。

■遺伝について:常染色体優性についての説明
「常染色体優性」という言葉は、この病気が遺伝するパターンを示しています。
この病気を発症した患者の子どもは、男女にかかわらず50%の確率で同じ病気の原因遺伝子を持って生まれます。しかし、原因遺伝子を持っていると必ず発病するとは限りませんが、原因遺伝子を持っている人はいつか発症してもおかしくないと言えます。また、原因遺伝子を持っていて発病していない人からも、50%の確率で子どもに原因遺伝子が受け継がれます。

多発性嚢胞腎と呼ばれる病気は他にもあり、具体的には常染色体劣性多発性嚢胞腎というものです。
常染色体劣性多発性嚢胞腎は常染色体優性多発性嚢胞腎と似た特徴がありますが、別の病気です。医師から説明があるときには病名をよく聞くようにしてください。

■検査
初期の状態では腎嚢胞は数個しか発生していないので、単純性腎嚢胞と鑑別することが困難です。
検査も重要ですが、遺伝性疾患であるので、家族歴(家族に同じ病気の人がいるか)や血尿などの症状が重要です。症状や患者さんのもつ背景について、医師に詳しく説明してください。

■経過
常染色体優性多発性嚢胞腎には手術は行いません。腎機能をなるべく維持することが最も大切な治療です。腎機能を維持するには血圧を適正に保ったり食事に気をつけることなどが重要です。


水腎症

水腎症(すいじんしょう)は腎盂という場所が膨らんだ状態のことを指します。結石や腫瘍などにより腎盂や尿管が塞がって、尿の流れが悪くなることが原因です。

水腎症の原因として以下のものが挙げられます。

治療法が異なるので、原因を詳しく調べることが重要です。

■検査
主に腹部超音波検査と腹部CT検査が用いられます。

◎腹部超音波検査
水腎症の程度などが判断できます。

◎腹部CT検査
腫瘍や結石の描出に優れており、原因をかなり絞り込むことができます。場合によっては、造影剤を注射して行う造影CT検査が行われることもあります。

■治療
水腎症が存在するだけでは治療を行う判断材料にはなりませんが、次のような場合は速やかに治療する必要があります。

  • 腎臓の機能が低下して、生命に危険が及ぶ可能性がある
  • 水腎症感染症の原因となっていて、尿を抜く(ドレナージ)必要がある

水腎症の治療には次の方法があります。

  • 経皮的腎造設術(けいひてきじんろうぞうせつじゅつ)
  • 尿管ステント留置術

それぞれは全く違う治療法なのでこの次に説明します。

図:経皮的腎瘻造設術の説明イラスト。

◎経皮的腎瘻造設術
腎臓は背中側にある臓器なので、背中に針を刺して腎臓に直接届く穴(腎瘻)を開け、カテーテルを入れると、尿を体の外に出すことができます。
経皮的腎瘻造設術には次のようなメリットとデメリットがあります。

  • メリット
    • 腎臓に直接管を挿入するので、確実に尿を体外に出すことができる
  • デメリット
    • 全身の状態が悪い場合や、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合には行えない場合がある
    • 腸や太い血管に傷がついてしまう合併症がまれにある
    • 背中に入れた管を袋につないだ状態での生活なので、少し生活が不自由である

メリットとデメリットを鑑みて経皮的腎瘻造設術と尿管ステントのどちらかが選ばれます。

◎尿管ステント留置術

ステントは管のことです。狭くなった尿管にステントを入ることで、尿は管の中を流れることができ尿の流出を確保できます。
ステントを入れるためには内視鏡を使います。尿道から内視鏡を入れて尿管が膀胱に開口している部分(尿管口)まで内視鏡を進めます。内視鏡は道具を送り込めるようになっているので、ステントを尿管に挿入し腎臓まで届かせることができます。尿管ステントは体の外に出ることはないので、日常生活にはほとんど影響しません。

4. 炎症性腎疾患

腎臓に感染などの炎症が起きた場合、CT検査などの画像検査では腎臓に腫瘍があるように見えます。このため、腎がんなどの他の病気との鑑別が必要になる場合があります。
炎症性腎疾患には次のようなものがあります。

それぞれについて説明します。

腎膿瘍

急性腎盂腎炎が悪化すると腎臓に膿(うみ)の溜まりを作ることがあります。この状態を腎膿瘍(じんのうよう)といいます。糖尿病や、免疫抑制剤の使用で感染症にかかりやすい状態の人が腎盂腎炎になったときには腎膿瘍に特に注意が必要です。まれですが、腎がんなどと画像検査の結果が紛らわしいことがあります。

■検査
◎腹部超音波検査
膿瘍を捉えることはでき、放射線を使わないので被曝しない点でも優れています。一方で、ほかの病気と膿瘍とを区別して確定診断することには向きません。

◎腹部CT検査
特に造影剤を注射して行う、造影CTが有効です。
膿瘍は造影効果を認めますが、腎がんの特徴とは異なることから鑑別できます。

◎腹部MRI検査
全ての人に対して行われる検査ではありません。腹部超音波検査や腹部CT検査ではっきりと結果がわからない場合の補助に使われます。

■治療
抗菌薬抗生物質、抗生剤)により治療されます。
膿瘍が大きい場合には抗菌薬だけでの治療は不十分なことがあり、その場合は体の外から膿瘍に針を刺し、膿を抜く治療(ドレナージ)が効果的です。

■経過
2週間程度の抗生物質の投与を行い完治を目指します。
治療後、中には腎臓の機能が低下する人がいますがその後の生活に影響を及ぼさないことが多いです。

黄色肉芽腫性腎盂腎炎とは?

黄色肉芽種性腎盂腎炎(おうしょくにくげしゅせいじんうじんえん)はまれな腎臓の病気です。脂肪を多く含む肥満細胞によって見た目が黄色のかたまり(結節)を腎臓につくる病気です。原因については解明されていませんが、尿の通り道の感染(尿路感染症)に過去にかかった中年女性に多いとされているので、尿路感染症によって肥満細胞の浸潤が起こることが原因と推測されています。
持続する発熱などの症状を契機に見つかることもあります。

■検査

◎CT検査
黄色肉芽種性腎盂腎炎は腎がんや腎盂がんと同様な造影効果を示す場合もあり鑑別が難しい時があります。このため、他の病気と違いCT検査が決め手にならないことも珍しいことではありません。

◎生検
黄色肉芽種性腎盂腎炎を疑った場合、診断目的の生検は行っても良いとする意見があります。その一方で、腎がんの可能性が高い場合は、生検は慎重に検討するべきとの意見もあります。
まれな疾患なので、その時々で適切な判断が求められます。画像検査で区別が難しい場合には生検が強く検討されることもあります。

◎血液検検査
白血球の上昇など、炎症反応を表すことがあり、診断を行う際の参考にすることができます。

■治療

治療法は病変の広がりによって異なり、次のように別れます。

  • 病変の広がりが狭い場合(focal form):抗菌薬の投与
  • 病変の広がりが広い場合(diffuse/global form):腎臓摘除術、抗菌薬の投与

腎臓を取り除くのは身体の負担にもなるので慎重に検討されます。このため、最初は抗菌薬による治療が行われることが多いです。

腎結核

腎結核(じんけっかく)は、結核菌が血液の中に入り込み、腎臓に感染することを原因とします。結核患者自体が減少しているために、腎結核を発症する人も減っています。結核は腎臓に小さな感染巣(かんせんそう、感染している場所)を形成します。多くはこの段階になっても自然に治癒します。治癒しない場合は徐々に大きくなり腎臓を破壊していきます。

■症状

結核の症状に加えて膀胱炎に似た症状が見られることが知られています。

  • 頻尿 
  • 排尿時痛
  • 残尿感
  • 腰痛
  • 倦怠感
  • 体重減少 
  • 微熱、寝汗

■検査

  • 尿検査:尿の中に膿(白血球)はあるが原因となる細菌が検出されない無菌性膿尿が特徴です。
  • 尿中の抗酸菌染色(チール・ニールセン染色)
  • 尿中の抗酸菌培養
  • 尿中のQTF(クォンティフェロン)-2g
  • CT:腎結核がかなり進行した状態で見られる特徴を漆喰腎(しっくいじん)と表現することがあります。

■治療

結核薬を6-9ヶ月内服します。

結核薬は4剤同時に飲みます。高齢者の場合は3剤で治療することもあります。

  • イソニアジド
  • リファンピシン
  • エタンブトール
  • ピラジナミド(高齢者では省く場合も)

たくさんの薬を使うのは、どれかひとつだけで治療しようとすると、結核菌が薬の効かない耐性菌に変化することがあるためです。抗結核薬は決めたとおりに飲むことがとても大切なので、DOTS(Directly Observated Treatment Short Course )と言って治療期間中は医療者の目の前で患者さんが薬を飲み、正しく内服を行っていることを確認する方法を行います。

重症の場合の治療として、腎臓が機能しておらず、かつ摘出することで感染の改善が期待される場合は腎摘除術を考慮することがあります。

参考:「ワシントンマニュアル 第12版」

5. 腎臓の血管の病気

腎臓には多くの血管があります。腎臓の血管の異常が起こることもあります。症状に乏しい場合や大きくなった場合などは腎がんとの区別が難しくなることがあります。
腎臓の血管の病気は多くありますがここでは、腎動脈瘤(じんどうみゃくりゅう)と腎梗塞(じんこうそく)を解説します。

腎動脈瘤

瘤(りゅう)とはこぶのことです。本来はまっすぐの動脈にこぶが発生した状態を動脈瘤といいます。腎動脈に発生した動脈瘤が腎動脈瘤です。腎動脈は大動脈から分かれて腎臓に血液を送る動脈です。
腎動脈瘤は大きくなると腎がんと紛らわしくなる場合があります。

腎動脈瘤が破裂すると命に危険が及ぶ場合があります。
大きさが15-20mm以上の腎動脈瘤は破裂する危険性が高いという意見があります。腎動脈瘤が見つかった場合、大きさや形などを考慮して、破裂を予防するための治療を検討します。

腎動脈瘤の原因になりうるものを挙げます。

  • 細菌性
    • 細菌感染症を原因とする 
  • 外傷性
    • 怪我などによる外からの圧力による
  • 動脈硬化
  • 血管炎
    • 免疫の異常などで起こる血管の炎症による

腎動脈瘤があるだけでは症状はありません。腎動脈瘤が破裂したときには大量の血尿や腹痛が現れることがあります。

■検査

造影CTやMRIで動脈の形状を観察しますが、はっきりとわからないこともあります。血管造影の方が動脈瘤の診断においては確実です。
血管造影は造影剤を動脈瘤の近くの血管から注入して撮影する方法です。血管の形がはっきり写ります。血管造影で動脈瘤の有無や形がわかります。
血管造影をするためには、太ももなどの血管からカテーテルという細い管を挿入します。カテーテルを腎動脈の位置まで進めて、カテーテルの先から造影剤を注入します。腎動脈瘤と判断された場合はそのままカテーテルで動脈瘤を塞ぐ治療(塞栓術)を行います。腎動脈瘤が疑われる場合は針を刺す生検などは行うべきではありません。もし腎動脈瘤だった場合、針を刺すと大出血を起こす可能性があります。

■治療

腎動脈瘤の治療は、以前は腎臓をまるごと取ってしまう腎摘除術が行われていましたが、現在、ほとんどの人はカテーテルで治療を行えるようになりました。カテーテル治療は手術とは違い腎臓の昨日をほとんど損なうことがないのでメリットが大きいです。

腎梗塞

腎梗塞(じんこうそく)は腎動脈が詰まってしまい、その血管が流れている(栄養している)先の腎臓の一部分が死滅(壊死)してしまうことです。腎がんでも大きくなると壊死がおきることがあります。腎がんと腎梗塞はときとして紛らわしく見えるため、区別する必要があります。

腎梗塞の主な原因は次のものです。

  • 血管に塊がつまる(血の塊、脂の塊など) 
  • 血管が徐々に狭くなる

血液の塊(血栓)は心臓の不整脈心房細動)などで発生します。また動脈硬化などによって徐々に血管が細くなることもあります。
腎梗塞の主な症状は以下のものです。

  • 急な強い背部痛
  • 血尿

このうち、急な強い背部痛が特徴的です。
急な強い背部痛は急性大動脈解離尿路結石などさまざま病気が原因になり、中には生命に危険を及ぼすものもあるので、速やかに病院を受診してください。

■検査
造影剤という薬を注射してCT検査を行うと腎がんと腎梗塞の区別がしやすくなります。
造影剤を使うと有用なことが多いのですが、腎機能(腎臓の機能)が低下していると、造影剤が腎機能に悪影響を及ぼすことがあります。腎梗塞が起きた腎臓は一部が壊死して機能が低下するために、造影剤が使いにくいことがります。そのため、診断の補助としてMRI検査を追加する場合があります。

■治療

腎梗塞と明らかに診断でき、発症から間もない場合は腎臓の機能が回復することも期待できます。詰まりが大きな場合は薬で溶かすことも検討されますが、基本的には経過観察を行います。

6. 小児(子ども)の腎腫瘍とは?

子どもの腎臓に腫瘍には主に次のような種類があります。

たくさん種類はあるのですが、小児(子ども)の腎腫瘍はほとんどが腎芽腫ウィルムス腫瘍)です。他の腫瘍はまれなので、ここでは腎芽腫に限って解説します。

腎芽腫(ウィルムス腫瘍)

腎芽腫(じんがしゅ)は子どもに生じる腎の悪性腫瘍です。
ウィルムス腫瘍(Wilms腫瘍)とも呼ばれます。5歳以下での発症が90%を占め、女児にやや多いです。ウィルムス腫瘍は1.2-1.5万人に1人が発症し、日本では年間80-100人が発症していると推測されます。
ウィルムス腫瘍は腎腫瘍の他に筋肉、骨、皮膚、心臓や呼吸器の先天形態異常を伴うことがあります。

■症状

ウィルムス腫瘍の代表的な症状は次の表のようなものになります。

症状 頻度
腹部に塊ができる(腹部腫瘤感) 75-95%
血尿 25%
高血圧 25%
腹痛 不明

■検査・診断

腎芽腫が疑われる場合には次のような画像検査が行われます。

  • 超音波検査
  • CT検査
  • MRI検査

画像検査では腎臓の外に腫瘍が広がっているか(進展)の確認も行います。血液検査や尿検査での腫瘍マーカーはありません。画像検査の結果によって進行度(病期)を分類します。分類の基準と当てはまる人の割合を表に示します。

【National Wilms Tumor Study(NWST)による病期分類(ステージ)】

ステージ 詳細 割合
1 腫瘍が腎に限局して、完全に摘出できたものの、腎被膜や腎洞内部への浸潤がみられない。腹膜播種がない 約40%
2 腫瘍が腎被膜や腎洞に及んだり、血管浸潤がみられるか完全摘出できたもの。リンパ節転移なし 約20%
3 腹部リンパ節、下大静脈など腎外への非血行性腫瘍進展あり、腫瘍摘出後残存あり。摘出時腹腔内播種あり 約20%
4 他臓器転移または腹腔外リンパ節転移 約10%
5 診断時両側性腎腫瘍 約5%

割合はアメリカの統計によるものです。
日本では正確なデータがありませんが、参考にすることはできます。
 

腎芽腫はほかのがんと違い、ステージ5までの分類があります。
ステージ4またはステージ5の腎芽腫はかなり進行した状態ですが、その状態は人によって違います。つまり、ステージ5だからといって必ずしも「末期がん」とは限りません。
また、腎芽腫ではステージのほかに病理組織学的診断による分類も治療法や先の見通し(予後)に大きく影響します。

【病理組織学的診断の割合と抗がん剤の効果】

分類 割合 抗がん剤の効果
予後良好群 約90% 効果あり
予後不良群 約10% 効果不良

ウィルムス腫瘍は切除または生検によって採取した組織を顕微鏡で診断(病理診断)することで「予後良好群」と「予後不良群」の2つに分類されます。分類は腫瘍組織を顕微鏡で観察した結果で行われます。具体的には、がん細胞の核の変形であるanaplasia(退形成)の有無で判断します。

「予後不良」という言葉は「見通しがよくない」という意味がありますが、ウィルムス腫瘍の予後不良群でも治療により長期生存が期待できる場合はあります。ステージなどとあわせて今の状態を正しく把握し、一番良い治療を選ぶことが大切です。

■治療

分類 予後良好群 予後不良群
ステージ1 手術+抗がん剤治療 手術+抗がん剤治療+放射線治療
ステージ2 手術+抗がん剤治療 手術+抗がん剤+放射線治療
ステージ3 手術+抗がん剤治療+放射線治療 手術+抗がん剤+放射線治療
(抗がん剤を手術前に行う場合あり)
ステージ4 手術+抗がん剤治療+放射線治療
転移をしている部位への放射線治療
手術+抗がん剤+放射線治療
(抗がん剤を手術前に行う場合あり)
転移をしている部位への放射線治療
ステージ5 下記 下記

ステージ5は、複雑な状態なので、以下で詳しく説明します。
両側に腫瘍がある状態です。
両側の腎臓を切除すると、腎臓の機能が失われてしまいます。腎臓の機能がないと生きていけないので、週3回4時間ほどかかる血液透析などの治療で腎臓の機能の代わりをする必要があります。
腫瘍を取り除く意味では、両側の腎臓を切除することが最も治療効果が高いです。しかしながら腎臓の機能を失ったまま過ごすことは、生活の質を著しく下げてしまいます。
このため腎臓の機能を残しながら、最大限腫瘍をとりのぞく方法が望ましいです。ステージ5の場合は手術より先に抗がん剤治療を行い、腫瘍をできるだけ小さくしたり複数回に分けて手術を行うこともあります。手術はできるかぎり腎臓を残すことが望ましいので腎部分切除術が考慮されます。

■経過

腎芽腫の治療後の5年生存率は80-90%以上と報告されています。

参考:
『標準泌尿器科学』
『知っておきたい泌尿器のCT・MRI』

7. 腎がんの検査

腎がんの多くは検査により発見されます。
超音波検査、CT検査、MRI検査などが主な検査です。腎臓に発生する腫瘍には多くの種類があり、画像検査による区別(鑑別)が重要です。
ここでは腎がんの検査について説明していきます。

腎がんは腫瘍マーカーはあるのか

腎がんに腫瘍マーカーはありません。
つまり腎がんを血液検査のみで、疑ったり診断することはできません。腫瘍マーカーではありませんが、腎がんと診断された後で、その後の余命を予測する検査としてLDH、カルシウム(補正)、ヘモグロビン値などが重要視されています。

■LDH
LDHは細胞が壊れると上昇します。
がんが活動して組織を破壊しているときにはLDHの数値が高くなることがあります。

■Ca(カルシウム)
カルシウムは腎がんの活動によって高くなる場合があります。
腎がんの一部は骨から血液にカルシウムを放出させる物質を作ります。がんで栄養状態が悪くなっていると、カルシウムの計測値が低く出てしまうことがあるので、栄養状態(アルブミンの数値)に合わせて補正します。

■ヘモグロビン
ヘモグロビンは血液の中で酸素を運んでいる物質です。ヘモグロビンが少なくなった状態が貧血です。
がんが長引くことでヘモグロビンが少なくなります。

腎がんには発見や治療効果を推定する腫瘍マーカーはありません。しかし、

腫瘍の大きさで腎がんかどうかわかるのか

腎臓に腫瘍が見つかったとき、良性腫瘍と悪性腫瘍の可能性を考えます。
小さくても腎がんの可能性は否定できませんが大きいほど腎がんの可能性が高まります。

腎腫瘍の大きさに注目した統計があります。

直径 腎がんであった割合
4cm以下 80%
4cmより大きい 95%

参考:
Int J Urol. 2004;11:63-67

腎腫瘍は大きくなればなるほど腎がんかどうかを正しく診断される可能性が高まります。その理由は、腎臓の腫瘍は大きくなればなるほど画像の特徴、特に造影CTでの特徴がはっきりとするからです。腎腫瘍で区別(鑑別)が難しいのは小さい腎腫瘍です。

腎がんの超音波検査

超音波検査(エコー)は簡便で放射線被曝もしないことから、健康診断などでよく用いられる検査です。腎がん発見の契機になる検査です。しかし、超音波検査だけで腎がんの確定診断を行うことは稀です。超音波検査で腎臓に腫瘍性病変が発見された場合は、CT(造影CT)による確定診断を行います。

腎がんのCT検査

腎がんの確定診断には、CT検査が有用とされています。腎がんの中でも淡明細胞型腎がんは、造影CTにおいて特徴的な画像が得られます。造影CTとは造影剤を静脈から注射して撮影するCT検査です。造影剤は血管の中を流れていき血管を白く映し出します。造影CT検査により体の中の血管などが見分けやすくなります。腎臓がんの中でも淡明細胞型腎がんは血管を腫瘍自体に多く作ります。このため、血管を染める造影CT検査で腫瘍はくっきりと写ります。その後、腎臓が染まってくる頃にがんからは造影剤が排出され、腎臓の周りより黒く写ります。また腎がんと周りの境界ははっきりとしています。

厳密には腎がんの造影CTはdynamic(ダイナミック) CTとよばれる撮影方法です。dynamic(ダイナミック) CTとは造影剤を一気に静脈から体に注入して数回CTで体の中を撮影する方法です。

淡明細胞型腎がんの造影CT検査での特徴

淡明細胞型腎がんの造影CT検査での特徴について説明します。
専門的な内容なので飛ばしても問題はありません。

  • 造影開始後腎臓より先にがんが染まる(早期濃染) 
  • 腎臓が造影剤により染まってくるころにがんは造影剤を排出するので周りより暗く映る(平衡相でのwash out)
  • がんの輪郭はくっきりとしている(偽被膜)

淡明細胞型腎がんは造影CTでは特徴的な所見(見た目の様子)を示す一方で、それ以外の腎がんは特徴的な画像所見はなく診断に悩むことがあります。

腎がんのMRI検査

腎がんの確定診断するときにMRI検査を用いることは多くはありません。
腎がんの診断でMRI検査は次のような場合に使います。

  • 腎機能が低下しており造影CTが行えない場合 
  • 造影CTを行ったものの淡明細胞型腎がんではなく、良性腫瘍との鑑別が難しい場合

造影剤は、腎臓の機能に悪影響を与えます。
腎臓の機能が低下している場合は、さらに悪影響が起こる確率が高まります。
このため造影CTを行えない場合があります。その際には、代用としてMRI検査を行います。

また、造影CT検査が行えたとしても診断が難しい場合があります。淡明細胞型腎がん以外の腎がんは造影CT検査でも良性腫瘍と同じような特徴を示す場合があります。このために、MRI検査を追加で検査して診断の参考にします。