転移した腎がんにインターフェロンと分子標的薬のどちらが効く?

転移のある腎がんに対して、免疫を利用して攻撃するインターフェロンαは歴史の長い薬ですが、分子標的薬の登場により使われる場面が減りました。研究結果の調査により効果の違いが検証されました。
転移のある腎がんに対するインターフェロンとニボルマブの効果
ドイツの研究班が、文献からデータを集める方法により
研究班は、
ニボルマブは最近登場した分子標的薬のひとつです。ニボルマブも
インターフェロンは分子標的薬よりも死亡率が高い、ニボルマブは良好
関係する8件の研究が見つかりました。
集まったデータから次の結果が得られました。
インターフェロンα単独療法はおそらく、テムシロリムスとスニチニブによる標準的な分子標的薬治療と比べて、1年間の全死亡率を高くする(リスク比1.30、95%信頼区間1.13-1.51、2件の研究、1,166人の参加者、中等度の質の証拠)[...]。
インターフェロンαとテムシロリムスの併用と、テムシロリムス単独療法のあいだで、1年全生存率にはおそらく差がない(リスク比1.13、95%信頼区間0.95-1.34、1件の研究、419人の参加者、中等度の質の証拠)[...]。
分子標的薬のテムシロリムスとスニチニブを使った標準的な治療法に比べて、インターフェロンαだけを使った治療のほうが1年間の死亡率が高いと見られました。
また、テムシロリムスによる治療にインターフェロンαを加える場合と加えない場合を比較すると、1年間の生存率には統計的に差が確かめられませんでした。
ほかの治療を受けたあとの患者を対象とした研究から次の結果が得られました。
以前に治療を受けた患者では、ニボルマブはおそらくエベロリムスによる標準的分子標的治療に比べて1年全死亡率を減らす(リスク比0.70、95%信頼区間0.56-0.87、1件の研究、821人の参加者、中等度の質の証拠)。またおそらくQoLを改善する(たとえば臨床的に意義のあるFKSI-DRSの改善のリスク比1.51、95%信頼区間1.28-1.78、1件の研究、704人の参加者、中等度の質の証拠)。またおそらくグレード3以上の有害事象の発生率を減らす(リスク比0.51、95%信頼区間0.40-0.65、1件の研究、803人の参加者、中等度の質の証拠)。
分子標的薬のエベロリムスに比べて、ニボルマブのほうが1年間の死亡率が低く、生活の質(QoL)が高く、副作用の可能性がある出来事として特に深刻なもの(入院が必要な程度以上のもの)が少なくなっていました。
時代とともに移り変わる治療薬
インターフェロンαと分子標的薬の効果についての研究を紹介しました。
インターフェロンαが生存率を高める効果でテムシロリムスとスニチニブに劣るという結果がありました。現在、転移のある腎がんの薬物療法としては分子標的薬が主流になり、インターフェロンαの役割は限られてきています。現在行われている治療方針を支持するデータが得られたと言えます。
また、ニボルマブはエベロリムスよりも優れた点を示しました。ニボルマブの位置付けについてはまさに議論がなされつつあります。日本でニボルマブ(商品名オプジーボ®)の効能・効果として「根治切除不能又は
時代とともに新しい薬剤が開発され、薬物療法は姿を変えていきます。その中でも、ここで紹介したようにひとつひとつデータを確かめていくことで、より合理的に判断することが可能になります。
執筆者
Immunotherapy for metastatic renal cell carcinoma.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 May 15. [Epub ahead of print]
[PMID: 28504837]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。