2019.02.14 | コラム

熱が出るのは感染症だけではない:がんや薬が原因であることも

1週間以上熱が続く場合は受診を検討してください
熱が出るのは感染症だけではない:がんや薬が原因であることもの写真
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寒い季節に熱が出たら、風邪ひいたかな?もしかしてインフルエンザかな?と考える人が多いと思います。熱が出るとそれだけで食欲もわかないし身体もだるくなるし、しんどいものですが、風邪であれば、暖かくしてゆっくりと身体を休めていれば、数日以内で良くなってくることがほとんどです。
しかし、発熱は風邪などの感染症以外が原因で起こることがあり、熱がなかなか下がらない場合には、別の原因の可能性も考えなくてはなりません。熱の原因をはっきりさせることは適切な対処を考えるうえで非常に重要です。このコラムでは、そんな熱のさまざまな原因やそれぞれの対応について説明していきます。

1. そもそもなぜ感染症で熱が出るのか?

まず、熱の原因として真っ先に思い浮かぶ感染症について、発熱の仕組みを紐解いていきます。感染症とはウイルス細菌などが身体の中に入り、体調不良を起こすことをいいます。例えば、冒頭に出てきたインフルエンザインフルエンザウイルスに感染することで高熱や全身の痛みなどが現れるので、感染症の一つです。他にも膀胱炎肺炎などさまざまな感染症があります。

感染症で熱が出るのは身体の「免疫」という仕組みが関わっています。身体の中にウイルスや細菌が入ってくると、免疫がそれらを敵として認識し退治しようとします。その過程で、ウイルスや細菌を退治しやすくするためのさまざまな免疫物質が体内で産生されます。これら免疫物質の一部は体温上昇を引き起こす作用があるため、熱が出ます。感染症を起こすウイルスや細菌に種類がたくさんあるにもかかわらず、その多くで同じように熱の症状が出るのは、免疫がそれらを敵と認識して反応した結果と考えることができます。

感染症は熱の主要な原因の一つです。一方で、熱の全てが感染症によって引き起こされるわけではないことに注意が必要です。冒頭で触れたように、熱は感染症以外の原因でも起こります。特に「がん」「膠原病(こうげんびょう)」「薬剤」の3つは感染症と並んで代表的な熱の原因として挙げられます。

 

ここからは、これら3つの原因と熱の関係について詳しく説明していきます。

 

2. がんで熱が続くことがある

がんは熱が出る代表的な原因の一つです。がんは日本人の死亡原因の第1位でもあり(1)、熱が続いている場合には、しっかりと見極めを行う必要があります。熱の出やすさはがんの種類によってが異なり、出やすいものとしては血液のがん(白血病悪性リンパ腫)、腎臓がん腎細胞がん)、肝臓がん肝細胞がん)などが知られています。

感染症の場合には風邪のように数日で熱が下がるものもあるのですが、がんの場合には数日で下がることはなく、週単位から月単位に渡り熱が続きます。また、熱の持続に加えて、ここ数ヶ月で何kgも体重が減った、寝汗の量が多い、食欲がない日が続いている、といった症状もがんを疑うサインになります。もともとがんは症状が出づらい病気なので、痛みやだるさなどの辛い症状がなくても、熱が続いている場合や体重減少がある場合には、一度病院で調べてもらうことをお勧めします。

 

3. 膠原病では免疫が影響して熱が出る

私たちの身体はたくさんのタンパク質が組み合わさって構成されています。その中で皮膚、靭帯、関節、骨などを構成する重要なタンパク質にコラーゲン(膠原)があります。

膠原病はコラーゲンの豊富な場所に慢性的炎症が起こるいくつかの病気をひっくるめた呼び名です。膠原病に含まれる病気に関節リウマチ全身性エリテマトーデス血管炎などがあります。例えば、関節リウマチは関節に炎症が生じるために関節が腫れたり痛くなったりする病気です。

膠原病で熱が起こる理由は感染症と同様、免疫と深く関係しています。感染症では免疫がウイルスや細菌を攻撃する過程で熱の原因となる免疫物質が産生される、と前述しました。それに対し、膠原病では自分の身体のコラーゲンの豊富な場所を、免疫が誤って攻撃することで病気が起こります。この自分の身体を攻撃する過程において免疫物質が産生され、熱が出ます。

膠原病もがんと同様、熱の期間が週単位から月単位で続き、体重減少を伴うこともあります。また膠原病は症状が関節や皮膚に出やすいという特徴もあります。言い換えれば、熱が続くという症状に加えて、関節の腫れや皮膚に発疹がみられる場合には膠原病を疑うきっかけになります。他にも膠原病の種類によりさまざまな全身の症状が現れます。些細なことでも構わないので、これまでと違うなと思う症状の変化があれば、お医者さんに相談してみてください。

 

4. 治療のために使っている薬剤で熱が出ることも

がんや膠原病と並んで重要な熱の原因に薬剤があります。薬剤が原因の熱は「薬剤熱」と呼ばれます。病気の治療のために用いられるはずの薬剤が原因で熱が出るというと、意外に感じられる人がいるかもしれません。

薬剤熱を起こす薬剤は数多く報告されています。薬を飲み始めてから薬剤熱が起きるまでの期間は数日以内のことが多いですが、しばしば数週間以上経ってから現れることもあります。薬剤熱の原因となっている薬剤を判定できる検査はないので、その薬をやめて熱が下がるかどうかでしか判断できません。ただし、急に中止することが好ましくない薬もあるので薬剤熱かもしれないと思ったら医療機関で相談するようにしてください。

 

薬剤熱の1/3は抗菌薬が原因

薬剤熱の原因薬剤として報告が多いものの一つに抗菌薬(抗生剤、抗生物質)があります。具体的には薬剤熱の1/3は抗菌薬が原因であるといわれており(2)、今回は抗菌薬にスポットを当てて考えてみます。

この抗菌薬ですが、感染症の治療のための薬剤であるということを考えると、事態は少々ややこしくなります。つまり、感染症を抗菌薬で治療中にも関わらず熱が続いてしまった場合に、感染症が治ってないから熱が下がっていないのか、実は感染症は治っているけれど薬剤熱が起きてしまっているのか、判断が難しくなってしまうわけです。どちらが原因かによって抗菌薬を続けるべきかやめるべきかが大きく変わってくるので、これはとても重要な問題です。

そのため、抗菌薬による薬剤熱は可能な限り起きないようにするのが望ましいといえます。つまり、「必要のない抗菌薬は処方しない・飲まない」ということが非常に大事になってきます

ここで、必要のない抗菌薬が処方されることがあるのか?と疑問に思う人もいるかと思います。

感染症の治療に抗菌薬が必要なケースはあります。しかし、全ての感染症に抗菌薬が有効であるわけではなく、例えば感染症の代表である風邪には抗菌薬はほとんど効果がありません。むしろ風邪は自然に治ることが多い病気なので、本来必要ないはずの抗菌薬を使って薬剤熱を起こす可能性があることを考えると、風邪に対する抗菌薬処方はデメリットが大きな治療と言えます。

しかしながら、現実としては風邪に対する抗菌薬処方があとを絶たちません。2017年にはこの現実を踏まえて、厚生労働省から「かぜ患者に対して抗菌薬を処方しないように」と医師に対する手引書が公表されています(3)。抗菌薬による薬剤熱を減らすためには、医療者の立場からは「不必要な抗菌薬の処方をなくす」努力が必要ですし、患者の立場からは「風邪で抗菌薬の処方を求めない」姿勢が重要になるかと思います

 

5. まとめ

今回は、身近な症状である「熱」がさまざまな原因で起こることをお話ししてきました。思いもよらない病気が隠れていることもありますし、良かれと思って使っていた薬剤が原因になることもあります。熱の症状がいつもの風邪と違うな、なかなか下がらないなという時には医療機関を受診することをお勧めします。

 

執筆者

佐々木 貴紀

参考文献

1. 厚生労働省 平成 29 年 人口動態統計月報年計の概況

2. UpToDate : Drug fever. Malcolm McDonald, PhD, FRACP, FRCPA, Daniel J Sexton, MD

3. 抗微生物薬適正使用の手引き

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。