じんがん(じんさいぼうがん)
腎がん(腎細胞がん)
腎臓の実質にできるがん。手術や分子標的薬により治療する。
10人の医師がチェック 197回の改訂 最終更新: 2018.07.20

腎がん(腎細胞がん)のステージと生存率(余命):5年生存率や転移のある状況での生存率など

腎がんは初期の小さなものから、大きくなって進行したものまでさまざまです。がんの状態によってステージはIからIVの4段階に分けることができます。また発見されたときのステージにより生存率は異なります。

1. 腎がんのステージ

腎がんのステージはI-IVまであります。ステージを決めることをステージングと言います。
腎がんのステージングを行うには、腎がんの状態を3つの方法で評価します。原発巣の状態(腎がんの腎臓での状況)、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無の3つです。
この3つでステージングを行うのはTNM分類と呼ばれます。

TNM分類とは?

TMN分類

TNM分類は次の3つの組み合わせでがんの状態を分類する方法です。

  • T分類:原発巣の状態(原発腫瘍
  • N分類:リンパ節転移
  • M分類:遠隔転移

がんの大きな特徴のひとつが転移を起こすことです。転移はがんが元あった場所とは違うところにも移動して増殖することです。
がんができた場所のがんを原発巣(げんぱつそう)または原発腫瘍と言います。腎がんであれば腎臓にできたがんが原発巣にあたります。転移によってできたがんを転移巣(てんいそう)と言います。肺に転移した腎がんは転移巣です。がんの進行度を判定するには、原発巣と転移巣の両方を考えに入れる必要があります。
以下ではそれぞれの分類について詳しく説明します。

T分類とは?

T分類のTはTumor(腫瘍)の頭文字をとったものです。大きくは4段階(T1、T2、T3、T4)に分かれ、その中がさらに細かく分かれます。T分類の診断はCT検査、MRI検査で行います。
ここからは細かい分類が続きます。これらの基準を覚えたり完全に理解する必要はありせん。医師はがんの状態を細かく調べているということを理解してもらえれば十分です。

  • T分類-原発腫瘍
    • T1   最大径が7cm以下で腎に限局する腫瘍
      • T1a 最大径が4cm以下
      • T1b 最大径が4cm以上を超えるが7cm以下
    • T2   最大径が7cmを超え腎に限局
      • T2a 最大径が7cmを超えるが10cm以下
      • T2b 最大径が10cm以上を超える腫瘍
    • T3 腫瘍が主要な静脈内への進展、または腎周囲脂肪組織への浸潤をきたすが同側副腎への浸潤はなく、Gerota筋膜を超えない
      • T3a 腎静脈または腎周囲脂肪組織への浸潤するがGerota筋膜を超えない
      • T3b 横隔膜以下の下大静脈内進展
      • T3c 横隔膜を超える下大静脈内進展または下大静脈壁への浸潤
    • T4  Gerota筋膜を超える腫瘍

腎がんは大きければ大きいほど手術後の再発率が高く、5年生存率が低くなります。腎臓局所のがんの状態は、大きさや周りへの広がりを重視して決められます。

腎がんは手術により治療が行われます。
手術の方法は腎臓を丸ごととる腎摘除術とがんとその周りだけを切り取る腎部分切除術の2つがあります。腎がんの大きさや場所によってどちらが適しているかの判断が行われます。詳しくは「腎がんの手術」で説明しているので参考にしてください。

腎がんは大きくなると血管(静脈)の中に入りむ性質があります。がんが血管の中に入り込んでいると血行性転移(がん細胞が血液にのって転移すること)の危険性が高くなります。腎がんが血管の中に入り込んでいる場合は、がんの大きさよりもその後の経過に大きく影響を及ぼします。

T4は原発巣の状態としてはもっとも深刻な段階です。
腎臓は脂肪により囲まれています(腎周囲脂肪織)。腎臓と腎周囲脂肪織はゲロタ筋膜(Gerota筋膜)という強固な膜で覆われています。強固なゲロタ筋膜をがんが突き破っているということは、浸潤性が強い、すなわち悪性度が高いことが示唆されます。T4の腎がんは手術でに完全にとりきれないと判断されることもありますし、他の臓器を合わせてとること(合併切除)もあります。

N分類とは?

N分類は所属リンパ節への転移の有無を評価します。Nはリンパ節(lymph node)を指すNodeの頭文字です。所属リンパ節転移がある腎がんの経過は良くないことが知られています。

  • N分類-所属リンパ節(腎門、腹部大動脈、大動脈リンパ節)
    • N0  所属リンパ節転移なし
    • N1  単発の所属リンパ節転移あり
    • N2  複数の所属リンパ節転移あり

リンパ節というのは、全身にたくさんある小さな器官です。がん細胞が最初の段階で辿り着くリンパ節を所属リンパ節と呼びます。
がんは時間とともに徐々に大きくなり、リンパ管や血管などの壁を破壊し侵入していきます。リンパ管の中にはリンパ液という液体が流れています。全身のリンパ管はつながっています。リンパ管にはところどころにリンパ節という関所があります。リンパ管に侵入したがん細胞はリンパ節で一時的にせき止められます。がん細胞がリンパ節に定着して増殖している状態がリンパ節転移です。転移があるリンパ節は硬く大きくなります。

腎臓の所属リンパ節には以下のものがあります。

  • 腎門部リンパ節
  • 腹部傍大静脈リンパ節
  • 腹部大動静脈間リンパ節
  • 腹部傍大動脈間リンパ節

腎がんの所属リンパ節に転移がある場合で、1個の転移の場合はN1、複数のリンパ節転移がある場合はN2とします。所属リンパ節以外のリンパ節転移は遠隔転移に分類されます。遠隔転移がある腎がんはステージⅣにあたります。

リンパ節転移が1個と複数個で比較したところ、複数個のリンパ節転移を認めた場合の方が再発率や余命が短かったとする報告があります。遠隔転移がなく所属リンパ節転移だけがある腎がんは、手術で原発巣とリンパ節転移の両方を取り除くことで全てのがんを体から取り除ける可能性があり、上手く行けば長期に治ることや長期に生存することも可能です。

参考:
J Urol. 2006;175:864-869, Eur Urol. 2009;55:28-34

M分類とは?

M分類は遠隔転移の評価です。MはMetastasis(転移)の頭文字です。
腎臓から離れた臓器に腎がんが転移することを遠隔転移と言います。転移でも所属リンパ節への転移は遠隔転移とは言いません。また、単に「転移」と言うと遠隔転移を指す場合が多いです。
腎がんが転移しやすい臓器は、肺、肝臓、骨、膵臓、脳などが挙げられます。

混乱しがちなのですが、所属リンパ節以外のリンパ節転移は遠隔転移に分類されます。

  • M分類-遠隔転移
    • M0  遠隔転移なし
    • M1  遠隔転移あり

肺がんなどでは、遠隔転移があれば手術をしてもがんを取り切れる可能性がないと考え、遠隔転移があるときに手術はしないのが普通です。
しかし、腎がんでは遠隔転移がある場合でも、原発巣を切除することで余命が延長することがわかっています。全身状態が良いことなどの条件を満たしている場合には遠隔転移があっても手術をすることがあります。

ステージの決め方

T分類、N分類、M分類を決めると、下の表に従ってステージが決まります。

ステージ分類 T分類 N分類 M分類
ステージⅠ T1 N0 M0
ステージⅡ T2 N0 M0
ステージⅢ T3 N0 M0
T1-T3 N1 M0
ステージⅣ T4 any N0 M0
any T N2 M0
any T any N M1

*anyはどの状態でもという意味です。

TNM分類によってステージが決まります。

2. 腎がんのステージと生存率:ステージIII(3)、ステージIV(4)の生存率

腎がんの生存率は、ステージ毎の成績が示されることが多いです。
ここでは、TNM分類によって決められたステージごとの生存率を説明します。

ステージ 5年生存率 10年生存率
95% 91%
82% 75%
62-77% 58-65%
10%以下 不明

参考:
Cancer. 2005;104:968-074,
Cancer. 2007;109:2439-2444
J Clin Oncol. 2002;20:2376-2381

各ステージでの生存率について解説します。

ステージI

転移がなく、大きさが7cm以下の腎がんです。手術は腎部分切除を中心に行われます。(腎部分切除の詳細については「腎がんの手術はどんな手術?」で説明しています)
手術によって治る可能性が高いステージIの5年、10年生存率は共に高い数字になっています。

ステージII

転移がなく大きさが7cmを超えるものの、がんが腎臓に留まっている状態です。腎がんは大きいほうが転移や再発が多い特徴があります。ステージIIはステージIに比べると生存率は低い傾向にありますが、他のがんと比べると5年生存率、10年生存率ともに高い水準と言えます。

ステージIII

ステージIIIは下記のいずれかを1つ満たすことが条件です。

  • 転移がなく、腎臓の周囲の脂肪(腎周囲脂肪織)に浸潤している
  • 転移がなく、腎がんが静脈の中に入ってい、腫瘍栓を形成している
  • 1つのリンパ節転移を有する(腎がんはゲロタ筋膜を超えて進展しておらず、遠隔転移がない)

ステージⅢは、腎がんがある程度進行しているものの、腎臓から離れた場所には転移が見つからない状態です。腎がんは血管の中に入り込んでどんどん発育し、腫瘍栓(しゅようせん)というものを形成することがあります。腫瘍栓は転移とは呼びません。腫瘍栓は原発巣(もともと発生した場所にある腎がん)と繋がっており摘出することでがんを取りきれる場合があります。
腎臓にがんが限局している(留まっている)場合でも、所属リンパ節に1個のリンパ節転移がある場合はステージⅢになります。複数の所属リンパ節転移がある場合はステージⅣです。
ステージⅢの腎がんで5年生存率は62-77%です。進行した状況ですが、手術によりがんを全て取り除くことができれば完治が望める方もいると考えられます。

ステージIV

ステージIVは以下のいずれかに当てはまる場合です。

  • 腎がんがゲロタ筋膜を超えて進展している
  • 所属リンパ節に複数個の転移がある
  • 遠隔転移がある

ステージIVの5年生存率は10%とされており、厳しい数字です。
しかしながら、ステージ4でも3つの条件を全て満たすものと1つだけ満たすものでは、大きく状態が異なります。全身の状態がよく切除可能であると考えられる場合には、原発巣や転移巣の切除も考慮されます。
加えて腎がんは転移をしている場合でも手術により余命の延長が期待できます。手術により腎臓を摘除できた場合は余命が5.8ヶ月延長されたとする報告があり、腎がんの場合は転移があっても可能な限り手術で腎臓を取り除くことが推奨されています
また、近年は腎がんに対して効果のある薬物療法が多く登場しており、かつての数字以上の生存が可能と考えられます。

腎がんのステージⅣの状態は人によってさまざまです。自分の状態をしっかり把握して治療に望むことが重要です。

参考:
J Urol 2004;171:1071-1076

3. 腎がんが転移したときの生存率:骨転移・肺転移

腎がんは骨や肺に転移しやすいことが知られています。骨転移と肺転移がある人の生存率について説明します。

骨転移

骨は腎がんが転移しやすい部位の一つです。転移のある腎がん患者さんを集計した結果、24.6%の人に骨転移があったという報告があります。
腎がんの骨転移が見つかるタイミングは大きく2通りに分けられます。

  • 腎がんと診断された時にすでに転移がある場合
  • 再発として骨転移を認めた場合

腎がんの骨転移が出現したとき、ほかの転移があるかないかでも分けられます。

  • 骨転移のみ
  • 転移が他にもある

腎がんが骨に転移をしたとひとくちに言っても以上の場合分けによって状況は異なります。生存率には体の状態なども大きく影響してくるので、「骨転移がある」というだけの情報から正確な生存率を推測することは困難です。
日本人の転移のある腎がん患者1,436人を集計した報告によると、骨転移があった人のうち半数の人が生存できた期間(生存期間の中央値)は約16ヶ月とされています。骨転移がなかった人の生存期間の中央値は、約23ヶ月でした。

骨転移の有無 生存期間の中央値(月) 1年生存率(%)
骨転移あり 16.8 57.6
骨転移なし 23.6 66.4

参考:
Eur Urol. 2010;57:317-325

繰り返しになりますが、これはあくまで骨転移がある人という特徴だけを見て集めた数字です。骨転移のある人にもいろいろあります。骨転移のみの人と他にも転移がある人では余命が変わってくることが想像できます。
また、この数字は薬物療法としてサイトカイン療法しか行えなかった時代のデータです。近年、腎がんの薬物治療は飛躍的に向上しています。サイトカイン療法より効果が高いことが明らかな分子標的薬も多く登場しています。したがって、現在は生存期間も向上していることが推測されます。
転移や再発が起きた時は生存率や余命などの数字がどうしても気になる気持ちは理解できます。しかし、大事なのは、自らの状況を受け止めたうえで一番自分の希望に近い治療は何かを考えることです。

肺転移

肺は腎がんがもっとも転移しやすい臓器です。転移のある腎がん患者さんを集計した結果、62.3%の人に肺転移があったという報告があります。腎がんの経過の中で最初に見つかる遠隔転移が肺転移であることも多いです。
遠隔転移と言っても、原発巣である腎臓とともに肺の転移巣を切除することで根治(がんを体からなくすこと)が可能な人も中にはいます。
腎がんに対して腎摘除術を行った後に肺転移が出現するまでの期間は平均で3.4年とする報告があります。
肺転移がある人の中で余命が比較的短いことを予測させる要因も指摘されています。

  • 肺転移が多発している
  • 再発までの期間が3年以内

転移巣を切除する手術は、手術によってがんが全て取り切れると思われた場合にだけ行われます。肺転移を完全に切除できた場合は5年生存率は40%前後とされています。遠隔転移がある人(ステージⅣ)全体の平均では5年生存率は10%程度とされていますが、肺転移が切除可能な場合というのはステージⅣの中でも比較的軽症であり、見通しも良い人と考えられます。つまり、ステージⅣであっても一人一人の状態にはかなり幅があるので、自分に合った治療を選んで進めていくことは大切です。
長期に生存が可能であったり中には根治できる人もいると考えられます。

参考:
泌尿器外科 2014;27:823-827