じんがん(じんさいぼうがん)
腎がん(腎細胞がん)
腎臓の実質にできるがん。手術や分子標的薬により治療する。
10人の医師がチェック 197回の改訂 最終更新: 2018.07.20

腎がん(腎細胞がん)の症状:初期症状から転移した場合の症状まで

腎がんには初期症状がほとんどありません。一方で、進行した腎がんは疼痛(痛み)、血尿などの症状から発見されることがあります。ここでは腎がんの初期症状や転移が現れたときの症状、末期の症状まで説明します。

1. 腎がんに初期症状はあるのか

腎がんにはほとんど初期症状がありません。
腹部超音波検査などで偶然、無症状のうちに腎がんが見つかる割合は70-80%とされています。一方で、進行した状態では疼痛(痛み)や血尿、腹部腫瘤感などの症状が見られることもあります。

2. 腎がんの症状

腎がんには古典的3徴と呼ばれる症状があり、次のものを指します。

  • 疼痛(とうつう)
  • 血尿
  • 腹部腫瘤感(ふくぶしゅりゅうかん)

これは進行した状態の腎がんで見られることが多いです。また、実際には腎がんがあってもこれら「3つ全て」が現れる人は少ないです。腎がんの血尿について次で詳しく説明します。

血尿

腎がんがかなり大きくなり、進行した状態で血尿が現れることが多いです。がんがまだ小さい早期の状態では、血尿が出ることはまれです。
腎がんで血尿が現れるメカニズムについて説明します。

■腎がん自体からの出血
腎がんは血管を多く作る性質があります。腫瘍の作る血管はもろいために出血しやすい傾向にあります。腎がんが大きくなり、腎盂(じんう)までがんが浸潤している場合には、血尿として症状が現れる可能性があります。

■静脈内圧の上昇によって静脈から出血
腎がんは大きくなると血管(静脈)の中に腫瘍が入り込み、血管の蓋をすることもあります。これを腫瘍栓といいます。静脈の中に腫瘍が充満すると血管の中の圧が上昇して血管が破れます。破れた血管からは血液が漏れ出て尿に混じり血尿として現れます。

血尿が出るのは腎がんがかなり進行した状態の可能性が高いです。

■腎がん以外の血尿の原因

血尿は腎がんの古典的な3徴(疼痛、血尿、腹部腫瘤感)の一つです。
腎がん患者の10%程度が血尿によって発見されます。反対の見方をすると腎がんの90%の人には血尿がありません。血尿は腎がんを疑う重要な症状の1つですが、他の病気の可能性についても十分に検討されなければなりません。

腎がん以外で血尿の原因となりうる代表的な疾患の例を挙げます。

血尿が出たからと言って必ずしも腎がんとは限りません。むしろ腎がんで血尿を認めることは比較的少ないです。血尿の原因にはがんなどの生命に関わる病気や膀胱炎などのように短い治療期間で治るものまでさまざまですが、どんな原因であっても検査や治療は必要です。
血尿の検査や治療ができるのは内科や泌尿器科です。血尿が見られた場合には泌尿器科を受診してください。

3. 腎がんが転移したときの症状:骨転移・肺転移

腎がんは骨と肺に転移しやすいことが知られています。肺と骨に転移したときの症状について説明します。

骨転移の症状

腎がんは骨に転移しやすいです。
日本で、1463人の転移がある腎がんの人を調べた研究報告によると、24.6%の人に骨転移がみられました。
腎がんは以下の場所によく転移を起こします。

  • 脊椎(せきつい:背骨) 
  • 肋骨(ろっこつ)
  • 大腿骨(だいたいこつ)
  • 上腕骨

体の先の方に腎がんの骨転移が起こることはまれです。腎がんの骨転移は体幹や体幹に近い太い骨に起こる傾向があります。脊椎への転移があるとしだいに神経への影響が出てくることがあるため注意が必要です。神経に影響が及ぶとしびれを感じたり手足の動かしにくさを感じたりします。神経(脊髄)に影響したときに現れる症状として次のものがあります。

  • 痺れ(しびれ)
  • 感覚が鈍くなる:知覚鈍麻(ちかくどんま)
  • 手による細かな作業ができなくなる:巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)
  • 歩くのが困難になる:歩行障害
  • 便失禁、尿失禁、尿が出なくなる
  • 呼吸がしにくくなる

転移が神経に与えて現れる症状はさまざまです。転移した場所により出現する症状の種類や程度が決まります。

骨転移が原因の痛みやしびれに対しては、放射線治療が有効です。薬物治療(分子標的薬)と並行して放射線治療を行います。放射線治療の効果として以下が確かめられています。

  • 痛みの緩和
  • 神経への影響の予防
  • 骨折の予防

脊椎への転移は放射線治療や鎮痛剤の使用、ステロイドの投与などを行うことで症状を回避したり、緩和することが期待できます。場合によっては手術により神経の圧迫を緩和する方法が考慮されることがあります。脊髄の転移は進行すると生活が困難になる症状も多いので、早めの対応が重要です。

腎がんの骨転移は、骨を溶かすこと(溶骨性)を特徴としているので骨折にも注意が必要です。骨転移の程度によっては骨を人工の骨に置換するなどの手術も考慮される場合があります。骨折が起こった場合でも、骨を固定したり補強することで症状が改善することがあります。

肺転移の症状

肺転移の状況によりますが、腎がんの転移している部位が小さな場合や数が少ない場合は特に症状がありません。転移が大きくなったり数が増えると出現する症状として以下のものがあります。

  • 息苦しさ

腎がんは非常に血管が多く、出血しやすい特徴があります。肺転移が進行して空気の通り道(気道)に浸潤すると喀血(かっけつ;血を吐くこと)などの症状が出ることがあります。大量の喀血をした場合は入院治療が必要です。

大量の喀血は点滴で止血剤を投与したり酸素の吸入を行ったりします。
止血が難しい場合には、気管支鏡による止血や出血の原因となる血管を塞ぐ治療(気管支動脈塞栓術)が行われる場合があります。

4. 腎がんの末期の症状は?

『がんの末期』には明確な定義はありません。
ここで言う「末期」は抗がん剤による治療も行えない場合、もしくは治療が効果を失っている状態で日常生活をベッド上で過ごすような状況と考えて解説を行います。
腎がんの末期は、緩和的な治療が主体になってきている段階です。腎がんの末期では肺、肝臓、骨への転移が起こりやすく、転移しているがんが体に影響を及ぼします。このような状況では悪液質(カヘキシア)と呼ばれる以下のような症状が目立ってきます。

  • 常に倦怠感につきまとわれる
  • 食欲がなくなり、食べたとしても体重が減っていく
  • 身体のむくみがひどくなる
  • 意識がうとうとする

悪液質は身体の栄養ががんに奪われ、点滴で栄養を補給しても身体がうまく利用できない状態です。思うようにならない身体に対しても不安が強くなり、苦痛が増強します。末期の症状は抗がん剤治療によって改善することはなく、緩和医療で症状を和らげることが重要です。また不安を少しでも取り除くために、できるだけ患者さんが過ごしやすい雰囲気を作ることも大事です。
緩和医療に関しては「緩和医療って末期がんに対して行う治療じゃないの?」で詳細に解説しています。