しぼうにくしゅ
脂肪肉腫
脂肪細胞に似た細胞が腫瘍したもの。悪性腫瘍
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最終更新: 2022.02.09
脂肪肉腫の基礎知識
POINT 脂肪肉腫とは
脂肪細胞に似た腫瘍細胞が増殖する病気です。悪性腫瘍に分類され、転移(がんが発生した場所から移動して増殖すること)や、浸潤(周りの組織に入り込んでいくこと)を起こすことがあります。脂肪肉腫は四肢(特にふともも)に発生することが多いのですが、全身のどこにでも発生する可能性があり、お腹の中にもできます。脂肪肉腫の悪性度には幅があります。悪性度が低い「高分化型脂肪肉腫」は治療によって治ることが多いのですが、悪性度が高い「脱分化型脂肪肉腫」は治療が難しいです。無症状のこともありますが、腫瘤感(コブができた感じ)や神経の圧迫によるしびれなどさまざまな症状が現れます。手術を主体とした治療が行なわれますが、腫瘍を小さくするために、手術の前に抗がん剤治療が行なわれることがあります。脱分化型は再発が多いことが知られているので、長期の経過観察が必要です。再発時の治療は定まってはいませんが、手術もしくは抗がん剤治療、放射線治療が行なわれることが多いです。
脂肪肉腫について
- 脂肪を含んだ細胞が悪性化した
悪性腫瘍 (がん )- 身体全体に発生しうるが、中でも太ももに多い
- 主な原因
- 遺伝性があるという報告がある
- 粘液型脂肪肉腫では、
染色体 の異常が関係していると言われている
- 軟部
肉腫 の9.8-18%を占める- 30-60歳の男性にやや多い
- 分類
- 顕微鏡検査の
所見 によって大きく4つに分類される(悪性度 が低い順)- 高分化型脂肪肉腫
- 粘液型脂肪肉腫
- 多形型脂肪肉腫
- 脱分化脂肪肉腫
- 顕微鏡検査の
脂肪肉腫の症状
- 手足や体の表面に大きくなる腫瘤(こぶ)ができる
- 腫瘤はゆっくりと成長し、痛みはほとんど自覚されない
- 15cmくらいの大きさで発見されることもある
- 神経を圧迫すると、手足の
麻痺 ・頻尿 ・便秘などの症状が出現することもある - 骨盤腔内に発生した場合、周囲の器官を圧迫するため、さまざまな症状が現れる
- 進行すると、
がん の細胞が血液やリンパ液の流れに乗ってほかの臓器に転移 する- 肺への転移が最も多い
脂肪肉腫の検査・診断
- 画像検査:
腫瘍 の有無、大きさや位置などを調べるレントゲン 検査CT 検査MRI 検査
組織診 :脂肪組織の一部を切り取るか針をさすことで、脂肪組織にできた腫瘍ががん でないか調べる- この検査で詳しく腫瘍の様子を診ることで診断に至る
脂肪肉腫の治療法
- 基本的な治療方針と治療方法
- 原則的には手術による治療が行われる
- 周りの臓器を含めて大きく切除する「広範
腫瘍 切除術」という手術法が原則 - 切除手術で腫瘍を摘出しきれなかった場合や、切除ができない場合には、
放射線療法 、化学療法 (分子標的薬を含む)が行われる
- 長期的な経過
- 病気のタイプにより想定される経過が変わる
- 分化型が最も経過が良い
- 脱分化型は再発が多く、経過も良くない
- 再発は局所再発が最も多い
- 腫瘍が切除された後も、定期的な受診や検査など
経過観察 が続けられる
- 病気のタイプにより想定される経過が変わる