いがん
胃がん
胃の壁の粘膜にできたがんのこと。ピロリ菌への感染や喫煙、塩分の多い食事などでリスクが上がる
24人の医師がチェック 325回の改訂 最終更新: 2022.10.17

胃がんのこんな疑問、聞いてもいいの?胃潰瘍との違い、食事の内容など

胃がんは日本人に多いがんの一つで、身近に胃がんを経験した人がいることは珍しくないと思います。胃がんについてのいろいろな疑問について解説します。 

胃がんには初期症状はないことのほうが多いです。また胃がんで出る症状はほかの病気でもよくあるものなので症状から胃がんを診断することは難しいです。胃がんに限らず病気があるなら治療でよくなる可能性がありますので、気になる症状があればまず医療機関で原因を明らかにしてください。

げっぷは医学用語で噯気(あいき)といいます。「おくび」ともいいます。噯気が胃がんの症状として出ることはありえます。噯気の原因は胃の中に空気が多く溜まることです。胃がんが胃の出口付近にできると胃の出口が狭くなることがあります。胃の出口付近を幽門部といい、出口が狭くなった状態を幽門部狭窄といいます。
噯気は他の原因で起こることもあります。例えば空気を胃の中に多く運んでしまう呑気症などです。噯気はお腹が張ったりして苦しくなるときもあります。噯気の症状が気になるときには消化器内科などで診てもらえます。

咳は胃がんの症状としては比較的少ないと考えられます。咳が症状として現れる胃腸関係の病気は逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)などが代表的です。胃がんが進行して胃の出口付近が狭くなるときには胃液が食道に逆流して咳が出ることはあるかもしれません。
咳が長引くときには肺がん肺結核などの肺の病気も心配する必要があります。しかし、もっと考えやすいのはマイコプラズマ肺炎などの感染症かもしれません。

おならは病院の言葉では排ガスといいます。以下ではおならを排ガスとします。排ガスが多いことをきっかけに胃がんが見つかることは腹痛と比べると少ないと考えられます。排ガスが多くて気になるときには大腸に原因があることも考えられます。過敏性腸症候群などが排ガスから見つかることもあります。
排ガスの回数が気になる場合は、消化器内科で診てもらえます。その際には1日どの程度の回数排ガスがあるかを記録しておくとよいと思います。

下痢は胃がんの初期症状として多いものではありません。胃がんの自覚症状として多いものは、腹痛(みぞおちのあたりの痛み)、食欲不振、体重減少などが知られています。胃がんはいろいろな症状から見つかることがありますが、下痢は他の原因でも起きます。
下痢が長引くときには消化器内科などで診察してもらえます。

胃がんはお腹側の臓器なので腰痛を起こすことは比較的少ないです。胃がんは同時に胃炎や胃十二指腸潰瘍などを発症していることがあるので、十二指腸潰瘍などの症状で腰痛を感じることはあります。以下に腰痛の原因となる病気や状態の例を挙げます。

腰痛だけで多くの原因が考えられます。原因によって痛み方や痛みが続く時間などが異なります。腰痛の中には原因がはっきりしないまま長引くものもあります。腰痛を感じてから一度も医療機関にかかったことがなければ、整形外科などで相談してみてください。

胃潰瘍と胃がんの症状は共通する部分が多いです。

  • 胃がんと胃潰瘍で共通する主な症状
    • みぞおちのあたりの痛み(上腹部痛)
    • 吐き気(悪心)
    • 血を吐く(吐血) 
    • 黒い便(タール便)
  • 胃がんで見られ胃潰瘍ではみられない主な症状
    • 腹水
    • 黄疸

胃潰瘍と胃がんは違う病気です。胃がんと胃潰瘍に共通しているのは、胃の壁を傷付け、進行すると胃の壁の深くに及んでいくということです。胃潰瘍ピロリ菌などの影響で胃に慢性的炎症が起きて、胃酸からの防御ができなくなり胃酸が胃の壁を溶かす病気です。胃がんも胃の粘膜にがんが発生してそれが壁の深くに浸潤していきます。胃がんの中には胃潰瘍と同じような形態をとるようなものもあれは、似た形をとらないものもあります。似た形であれば共通の症状が出ることもあります。

胃潰瘍は胃がんとは違って良性の病気なので、他の臓器に転移や浸潤をすることはありません。胃がんではお腹の中にがんが飛び散り腹水の原因になったり、胆管を閉塞させて黄疸などの症状を起こしたりすることがあります。しかし、これらは胃がんがかなり進行してから出る症状なので、小さい胃がんと胃潰瘍を症状で見分けるのはやはり困難です。

胃潰瘍と胃がんの区別には、内視鏡検査を行い腫瘍の一部から組織を採取して調べた結果で判断します。

症状だけで胃潰瘍と判断しようとするのは危険です。みぞおちの痛みなどの症状があるときには消化器内科で相談してください。

胃がんと生活習慣の関係はいくつか調査が行われています。ここでは喫煙、飲酒などを中心に解説します。

喫煙は胃がんを発生させる原因の一つだと考えられています。多くの科学物質を含む喫煙はいくつかのがんの発生に強く関与しています。喫煙者と非喫煙者を比べたとき胃がんが発生するリスクは男性で1.8倍、女性で1.6倍になるという報告があります。喫煙は胃がん以外にも多くのがんの発生リスクを上昇させます。健康のために禁煙を実行に移すことは大事なことです。
参考:国立研究開発法人 国立がん研究センター 予防研究グループ

飲酒と胃がんの関係は明らかではありません。飲酒は胃がんの発生リスクを増加させるという報告とリスクを増加させないという報告があり結論は出ていません。
しかし、過度の飲酒はほかの病気(急性膵炎膵臓がん肝臓がんなど)の発生リスクを上昇させることが知られています。飲酒は適度な量にしたほうがよいでしょう。
参考:国立研究開発法人 国立がん研究センター 予防研究グループ

ここでいうストレスは、社会生活を送る上で精神面に負荷がかかるものとします。編集部で調べた限りでは胃がんとストレスの関係を明らかにしたと言える報告はありませんでした。ストレスと胃がんの関係については不明であると言わざるを得ません。現代社会では誰もがある程度のストレスを抱えて生きていかねばなりません。ストレスと胃がんの関係はさておいても、多くの病気の原因となるストレスとはうまく付き合って行くことが重要です。

早食いと胃がんの発症について調べた科学的に妥当な研究は、編集部で調べた限りでは該当するものがありませんでした。早食いは食事が十分に噛み砕かれずに胃に運ばれてしまうのでどうしても消化不良になりがちで、その分胃に負担がかるのであまりいい影響はないことが想定されます。胃がんとの関係はさておき食事はできるだけゆっくりと食べることがよいと思われます。

胃がんの予防に効果のある食事について調べた科学的に妥当な研究は多くはありません。ここではいくつかの食品について紹介します。

緑茶で胃がんの発生リスクを抑える可能性があると考えられています。緑茶に含まれるポリフェノールによる抗酸化作用は細胞のがん化を防ぐ効果が期待されています。緑茶と胃がんの発生を調べた研究では、女性で1日5杯以上緑茶を飲む人は胃がんの発生リスクが下がったと報告されています。

参照:Jpn J Oncol.2012;42:335-46
 

野菜の摂取で胃がんにかかるリスクを抑えられる可能性があります。日本で調査された研究では野菜や果物を多く摂取する人はしない人に比べて胃の出口に発生する胃がんが減少したという報告があります。野菜を食べれば胃がんにならない訳ではありませんが、栄養バランスの面でも、適度な範囲で野菜をとることはよいことだと考えられます。

参照:Ann Oncol.2014;25:1228-33
 

胃がんと食事の関係については、今も様々な研究が行われています。紹介したようにいくつかの食品は胃がん予防になる可能性が報告されています。

食事を考える上で、前提として食事は日々の栄養バランスを保つことが第一です。食事と関係する病気は胃がんだけではありません。胃がんへの影響を気にするあまり栄養バランスを崩してしまっては本末転倒です。

また、食事が胃がんに影響する強さはわずかです。胃がんのリスクを下げる食事に長年努めることで、胃がんになる確率は下がるかもしれませんが、確率が下がってもゼロにはなりません。どんなに気を付けても胃がんになるときはなります。反対に、胃がんとの関係をまったく気にせず食べていたとしても、一生胃がんにならない人のほうが多数です。

このページの情報を実際の食生活に応用しようと思うときは、栄養、胃がんとの関係の弱さ、好きなものを食べられる楽しい生活とのバランスを考えて、個人や家族の価値観に基づいて判断してください。