いがん
胃がん
胃の壁の粘膜にできたがんのこと。ピロリ菌への感染や喫煙、塩分の多い食事などでリスクが上がる
24人の医師がチェック 245回の改訂 最終更新: 2019.08.14

胃がんの生存率は?ステージごとの生存率や手術後の再発率などを解説

胃がんの生存率はステージごとに集計されています。ステージは大きく4つに分類されます。ステージが早いうちに見つかったほうが生存率は高くなります。しかし生存率は単純なものではありません。胃がんの生存率について解説します。 

がんの統計 ’19」には胃がんのステージごとの5年生存率が載っています。

ステージ 5年生存率(%)
ステージI 87.6
ステージII 57.4
ステージIII 44.5
ステージIV 6.6

ステージとはがんの進行度を分類したものです。5年生存率とは、診断から5年後に生存している人の割合です。この統計を読み取るときにはいくつか注意することがあります。
まずこの統計結果は2009-2011年に診断された人々の結果になります。現在より約10年も前の結果になりますが、がんの生存率について網羅的に記した「がんの統計」としてはこれが最新版です。胃がんの治療は近年目覚ましい進歩を遂げています。この数値には新しい薬の治療の効果などは含まれていません。

胃がんのステージは「がんの深さ」、「リンパ節転移の有無・個数」、「遠隔転移の有無」の3点の組み合わせで決定します。詳しくは「胃がんのステージとは?」で説明しています。

がんの大きな特徴のひとつが転移を起こすことです。転移とは、がんが元あった場所とは違うところにも移動して増殖することです。元あった場所のがんを原発巣(げんぱつそう)または原発腫瘍(げんぱつしゅよう)と言います。転移によってできたがんを転移巣(てんいそう)と言います。
がんの進行度を判定するには、原発巣と転移巣の両方を考えに入れる必要があります。胃がんのステージを決めるには、原発巣の状態(T因子)、リンパ節転移(N因子)、遠隔転移(M因子)の3点の組み合わせによってがんの状態を評価します。3点を元にしてステージを決定します。

  • T因子
    • TX:の浸潤の深さが不明なもの
    • T0:癌がない
    • T1:癌の局在が粘膜(M)または粘膜下組織(SM)にとどまるもの
      • T1a:癌が粘膜にとどまるもの
      • T1b:癌の浸潤が粘膜下組織にとどまるもの(SM)
    • T2:癌の浸潤が粘膜下組織を超えているが、固有筋層にとどまるもの(MP)
    • T3:癌の浸潤が固有筋層を超えているが、漿膜下組織にとどまるもの(SS)
    • T4:癌の浸潤が漿膜表面に接しているかまたは露出、あるいは他臓器に及ぶもの
      • T4a:癌の浸潤が漿膜表面に接しているか、またはこれを破って遊離腹腔内に露出しているもの(SE)
      • T4b:癌の浸潤が直接他臓器まで及ぶもの(SI)
  • N因子
    • NX:領域リンパ節転移の有無が不明
    • N0:領域リンパ節に転移を認めない
    • N1 : 領域リンパ節に1-2個の転移を認める 
    • N2 : 領域リンパ節に3-6 個のリンパ節転移を認める
    • N3:領域リンパ節に7個以上の転移を認める
      • N3a:領域リンパ節に7-15個の転移を認める
      • N3b:領域リンパ節に16個以上の転移を認める
  • M因子
    • MX:領域リンパ節以外の転移の有無が不明である
    • M0:領域リンパ節以外に転移を認めない
    • M1:領域リンパ節以外の転移を認める

T因子、N因子、M因子をそれぞれ評価したところで下の表に従いステージを定めます。

  N0 N1 N2 N3
T1a IA IB IIA IIB
T1b IA IB IIA IIB
T2 IB IIA IIB IIIA
T3 IIA IIB IIIA IIIB
T4a IIB IIIA IIIB IIIC
T4b IIIB IIIB IIIC IIIC
遠隔転移 IV     

ステージIVは末期がんを意味する言葉ではありません。確かにステージIVはステージ分類の中で一番進行したものになります。5年生存率6.6%という数字には重みがあります。
しかし、ステージIVでも元気な人もいますし、ステージIVで診断されてから長生きする人もいます。「末期がん」には厳密な定義はありません。ステージIVという診断を聞くと、言葉のイメージから末期がんを思い浮かべてしまうかもしれませんが、それは幾分違うと思います。
胃がんにおけるステージIVとは領域リンパ節以外に転移がある状態のことを指します。胃でのがんの状態(深さ)やリンパ節への転移の有無は問いません。ステージIVでは通常、手術を行うことはありません。抗がん剤により余命の延長を目的とした治療が行われます。症状があれば症状を緩和する治療を並行して行います。ステージIVでもまだまだ治療としてできることはあり、それぞれの効果を期待できます。

では「末期がん」はどういう状態でしょうか。
最初に述べましたが末期がんには定義がありません。一般的なイメージを考えてみることにします。末期というと余命がかなり限られていることが明らかな状態だと考えられます。そこで、ここで言う「末期」は抗がん剤による治療も行えない場合、もしくは抗がん剤などの治療が効果を失っている状態で、日常生活をベッド上で過ごすような状況を指すことにします。
胃がんの末期は、すでにいくつかの臓器に転移がある段階です。胃がんは肝臓、肺、骨などに転移し、転移しているがんが体に影響を及ぼします。このような状況では、以下のような症状が目立つ悪液質(あくえきしつ:カヘキシア)と呼ばれる状態が引き起こされます。

  • 常に倦怠感(けんたいかん)につきまとわれる
  • 食欲がなくなり、食べたとしても体重が減っていく
  • 身体のむくみがひどくなる
  • 意識がうとうとする

悪液質は身体の栄養ががんに奪われ、点滴で栄養を補給しても身体がうまく利用できない状態です。気持ちの面でも、思うようにならない身体に対して不安が強くなり、苦痛が増強します。
末期がんの症状を楽にするには抗がん剤治療だけでは足りないことが間々あります。緩和医療で症状を和らげることが重要です。また不安を少しでも取り除くために、できるだけ過ごしやすい雰囲気を作ることも大事です。

胃がんを診断された時点で年齢が高いほうが生存率は低いと考えられます。
がん治療の生存率には2つの考え方があります。死因を胃がんに限った場合と胃がん以外の原因も全てを含めた場合です。
胃がん以外の死因を考えると、高齢者のほうが若い人よりも胃がん以外で亡くなる場合が多い、すなわち高齢者のほうが生存率が低いと考えられます。胃がんの患者さん同士で比較しても、年齢以外の要素が同じような人ならば高齢者のほうが生存率が低いことが考えられます。
死因を胃がんに限った場合は、年齢によらず生存率には差がないとする意見もあります。つまり、胃がんが高齢だから急速に進行するといった関係は認められていません。
このため胃がんの治療は例えば85歳以上の超高齢者だからという理由だけで手術ができないということはありません。身体の状態がよい患者さんに対しては高齢でも手術を行うことが可能です。
ただし、高齢者は持病を多く抱えている場合や、体力が落ちている場合があります。体の状態が手術に適していないと見られる場合にはもちろん手術が勧められません。手術を行う際には手術前の検査をしっかりと行い手術後もリハビリテーションを行うことや家族のサポートなどが重要です。

参考:
日本臨床外科学会雑誌.1999;60:2305-2310
日本消化器外科学会雑誌.2014;47:1-10

胃がんは早期に発見すると生存率が上がると考えられます。
胃がん生存率はステージごとに集計されて、発表されています。「がんの統計 '19」で発表されている資料を参考にして説明を行います。がんの治療では5年後にどれほどの人が生存できているかを目安にすることが多く、今回も5年生存率を紹介します。

ステージ 5年生存率(%)
ステージI 87.6
ステージII 57.4
ステージIII 44.5
ステージIV 6.6

ステージの数字が小さいほど早期の段階です。早く発見されたものほど生存率が高くなっています。
早期発見・早期治療の効果を知るには、同じ程度に進行しているがんを早期治療した場合としなかった場合を比較する必要がありますが、そのような研究を行うのは現実に困難です。
一般に、がんは早期で治療をした方が生存率は上昇します。
胃がんは時間とともに進行して胃の壁の深くに浸潤していきます。胃の壁の深くに浸潤していくとがんが血管やリンパ管に入り込み全身へ転移する可能性が高くなります。このためにがんを早期に見つけるほうががんを身体から取り除ける可能性が高くなるので早期に発見する方が生存率もあがると考えられます。

胃がんの治療後の生存率が「がんの統計 ’19」に記載されています。手術ができた人に限った場合の生存率は以下のようになります。

ステージ 5年生存率(%)
ステージI 87.4
ステージII 59.6
ステージIII 46.5
ステージIV 18.2

手術症例に限った場合の5年生存率を示します。このステージは臨床病期といって手術前に定められたものです。またこの手術の内容も根治的な手術なのかそれとも症状の緩和を目的としたものなのかの区別が記載されていないのでどのような手術が行われたかは不明です。そのためここで示した数字は参考程度にすることをお勧めします。手術をするとどの程度生存できるのか、5年後はどのくらいの確率で生き残れるかなどは気になる所ですががんの状態も違えば身体の状態も人それぞれ異なります。自分の状態に向き合ってしっかりと日々を過ごすことが大事です。

胃がんが再発する場合は2通り考えられます。

  • 胃の中に再発 
  • リンパ節や他の臓器に再発

胃の中に再発するのは、内視鏡治療の後や手術で胃を残して切除した場合に想定されます。胃の中に再発した場合は内視鏡治療や手術による治療が可能な場合があります。再発した時のステージによって生存率が違うと考えられます。
対してリンパ節や他の臓器に胃がんが再発した場合は、全身にがん細胞が散らばっている可能性を考えなければなりません。このような場合は治療法は抗がん剤治療になります。
再発や転移をした状況はそれぞれの人で異なります。抗がん剤治療が必要な人でも極端な例でいうと転移している場所がたくさんある人とリンパ節にだけ再発した人では状況が大きく異なることは直感的に理解できると思います。再発してもそれぞれで状況が異なるので、生存率などの推定にはどうしても誤差があります。
自分の状況をしっかりと把握して、目の前の選択肢の中で自分や家族などにとって一番いいと思った治療を選んでいくことが大事です。