認知症とはどんな病気?症状・原因・検査・治療など
認知症は、一つの病気ではなく認知機能が低下して日常生活に支障が出ている状態のことです。認知症は、様々な病気によって引き起こされます。ここでは認知症の症状、原因、治療などについて解説します。
1. 認知症は物忘れの病気なの?
認知症と聞くとどんな病気だと想像するでしょうか。まず「物忘れ」といった記憶の障害を想像する人が多いと思います。それはそれで正しいのですが、認知症は「もの忘れ」だけが症状ではありません。認知機能の低下は他にも様々な症状となって現れます。
2. 認知症の症状
認知症の症状は、中核症状と周辺症状という2つに分けることができます。
中核症状は認知機能障害を原因とした症状です。認知機能とは、理解・判断・論理などの知的な機能のことで、病気などのために知的な機能が低下した状態が認知症です。認知症と聞くと「物忘れ」の症状が思い浮かぶかもしれませんが後述するように多様な形で現れます。
もう1つの周辺症状は中核症状に伴って引き起こされる症状のことで行動に関する症状(行動症状)と心理に関する症状(心理症状)に分けることができます。
続いて中核症状と周辺症状ではどのような症状が現れるかをみていきます。
参考文献
・田崎義昭ほか/著, ベッドサイドの神経の診かた, 南山堂, 2016
・辻省次ほか/編, 認知症神経心理学的アプローチ, 中山書店, 2012
・水野美邦/編, 神経内科ハンドブック, 医学書院, 2016
認知症の主な中核症状:認知機能が低下したことによる症状
認知症の症状のうち中核症状は、認知機能が低下したことによる症状で、認知機能とは理解・判断・論理などの知的な行動を司る力のことです。中核症状は様々な形で現れ、以下のようなものになります。
- 記憶障害:物忘れ
- 実行機能障害:筋道をたてた行動が出来なくなる
- 見当識障害:場所や時間を把握できなくなる
- 視空間認知障害:視力に問題はないにも関わらずものをみつけたり認識することができなくなる
- 失行:目的をもった行動が出来なくなる
失語 :言葉の理解や発語が出来なくなる- 失認:五感に関する認知能力が正常ではなくなる
■記憶障害:物忘れ
記憶障害は認知症の主な症状で特にアルツハイマー型認知症ではほぼ全ての人に現れる症状です。認知症の記憶障害は時間の経過とともに悪くなっていきます。初期では周りの人から記憶障害を指摘されても本人は自覚しなかったり恥ずかしく感じて取り繕ったりすることもあるのでわかりにくかったりもします。
もし家族に記憶障害を心配するような症状がある場合には、本人の気持ちに気を配りながらなるべく早めに医療機関を受診することをお勧めします。認知症であった場合には早期に治療を開始することで記憶障害の進行を遅らせることも期待できるからです。
■実行機能障害:問題解決能力が低下する
実行機能障害は、筋道を立てた行動が出来なくなり直面する問題を解決する力が低下することです。実行機能障害が深刻になると物事の組み立てが出来なくなり、生活する上で大きな支障を来してしまいます。少し難しいので例を挙げてみます。
- 買い物で同じものばかりを購入してしまう
- 電気機器の操作が出来なくなる
実行機能障害は、理解力が失われているわけではないので工夫により物事をやり遂げることができるケースがあります。例えば家族などが付き添いながら手順を紙に書いたりして細かく確認することなどです。様々な方法が考えられるのでその人にあったやり方を探してみて下さい。
■見当識障害:場所や時間がわからなくなる
見当識は、時間・場所・周りの人などいわば自らの状況を把握することです。認知症では見当織の力が落ちてしまい自分がどこに居るのかや今日の日付などがわからなくなります。自分が一体どこでどんな状況にいるのかがわからなくなり、混乱や不安を感じて思ってもみない行動をとる原因になります。
時間や場所の感覚は外からの刺激によって認識することができるので、生活の中で適宜、今日の日付や場所などを教えると効果が出ることがあります。見当識を適宜伝えることはリアリティ・オリエンテーションという治療の方法にも応用されています。
■視空間認知障害:ものをみつけたり認識することができなくなる
視空間認知障害は、視力には問題がないにも関わらずものを見つけたりする能力が低下することです。視空間認知障害が起こると歩き慣れた道で迷ったり、しまったはずのものがみつけられないなどの症状が現れます。例を挙げてみます。
- 歩き慣れた道で迷ってしまう
- 自分で片付けたものの場所がわからない
視空間認知障害は図形を描くのが下手になったり車の車庫入れができなくなったりなどの症状も現れます。
■失行:目的をもった行動が出来なくなる
失行は、体は動かせるにも関わらず行うべき動作や行為ができない状態のことです。服を着ることが出来なくなったり箸を使って食事をすることが出来ないなどが症状として知られています。失行は以前にできていた行動のやり方がわからなくなっていることで、体の
■失語:言葉の理解や発語が出来なくなる
失語は、言葉に関する能力が失われることです。ここでいう言葉に関する能力とは、「しゃべる・言葉を理解する・文字を読む・字を書く」といった言葉に関するものすべてを指します。失語が起こると流暢にしゃべれなくなったり、しゃべる内容が意味不明になったりと様々な症状が現れます。
言葉に不自由さが現れるとコミュニケーションに障害がでます。患者さんは、コミュニケーションに障害を感じると他人との関わりに対して消極的になっていき、それが原因で周囲から孤立していると感じてしまい
■失認:五感に関する認知能力が正常ではなくなる
五感を感じる器官(眼・耳・鼻・舌・皮膚など)に問題がないにも関わらず、認識する対象が何かを感じて判断することが出来なくなることを失認といいます。失認には様々なパターンがあります。
- 線を等分できない
- 音は聞こえるものの識別ができない
- 触っている感触はあるもののそのものの質感がわからない
- 運動麻痺がなくても体の半分がないように感じる
失認は五感に関わる症状ですが、全てが一度に起こるわけではありません。このため周りの人は、患者さんがどのようなことをできないかを把握して低下している能力を補うような工夫をすることが大切です。
認知症の主な周辺症状:認知機能障害以外の症状
認知症は、認知機能障害による中核症状の他に周辺症状と呼ばれる症状が現れます。周辺症状は中核症状によって引き起こされる症状です。周辺症状は主に行動の症状と心理の症状に分けられ、BPSDと呼ばれることもあります。BPSDは「認知症の行動・心理の症状」の英語訳であるbehavioral and psychological symptoms of dementiaの頭文字をとったものです。周辺症状は、言葉からすると大きな問題にはならない症状という印象があるかもしれませんが、認知症においては中核症状より深刻な事態を引き起こすこともあり適切な治療や対処が望まれます。
周辺症状は中核症状によって引き起こされると考えられていますが、比較的早期にでることや中核症状の先に現れることも珍しくはありません。また1日のうちに変化があるのも周辺症状の特徴の1つで、夕暮れに症状が悪くなることが多く「日没症候群」や「夕暮れ症候群」と呼ばれることがあります。
■行動症状
行動症状は、患者さんの行動を観察することにより確認できるものを指し、主に以下のリストのような症状が現れます。
- 暴言・暴力
- 徘徊
不穏 - 性的脱抑制
行動症状は後述する心理症状に比べて薬物療法の効果が乏しいので介護をする上で問題になりやすいです。まずはどのような症状かを知ることが大切です。
【暴言・暴力】
認知機能障害が高度な男性や人間関係が不得手な人に多く見られる症状で、アルツハイマー型認知症より前頭側頭型認知症の方に多いとされています。暴言・暴力が起きると薬物治療の対象と捉えられることが多いのですが、原因を明らかにして早期に問題に取り組むことで薬物治療を行わずによくなることもあります。原因がはっきりしたらそれを取り除いたり解決するよう努力をします。
【徘徊】
家の中や外をあてもなくうろうろと歩き回ることです。徘徊は、アルツハイマー型認知症では長い期間に渡り現れることもあり介護者の負担にもなります。なぜ徘徊をしてしまうのでしょうか。徘徊をする背景には不安や見当識障害(時間や場所を把握する力)があると考えられています。漠然とした不安があり自分がどこにいるかがわからない状況になると不安はさらに膨らんでしまい、いてもたってもいられなくなって徘徊という行動をとってしまうと考えられています。
【不穏】
不穏は字のごとく穏やかではないことを指す言葉です。攻撃性の1つとして現れることが多く怒りの表情や態度、抵抗などを伴うことが多いです。不穏は不安になりやすい環境などで起こることが多く環境を改善したりすることで症状が現れなくなったりすることがあります。不穏が起きた状況を観察して「同じ状況でまた不穏が起こるか?」などを検討することが症状を落ち着けるヒントになるかもしれません。不穏を起こす原因が明らかになれば原因となる状況を避けたりすることで不穏の症状は出にくくなるかもしれません。
【性的脱抑制】
性的脱抑制は不適切な性的言動から性的問題行動にいたるまでさまざまな程度で現れます。性的脱抑制の背景には、見当識障害(時間や場所を把握する力)や着衣失行(着衣ができない)、陰部の皮膚の病気などが関係している可能性があります。
■心理症状
心理症状は、行動症状と違い、患者さんや介護者などと医療者が面接することによって起きていることが確認できる症状です。主な心理症状は以下のリストのようなものになります。
- 不安
- 焦燥性興奮
- 幻覚
- 妄想
- うつ症状
- 無気力・無関心
- 性格の変化
- 不眠
心理症状の中でもうつ症状や不安などに対しては抗うつ薬や
【不安】
認知機能が低下するとちょっとしたことでも不安になり何度も必要以上に尋ねたりすることがあります。不安が大きくなると自分だけが取り残されはしないか感じたりして焦りや徘徊につながることがあります。
【焦燥性興奮】
苛立ちや焦りを感じることです。焦燥性興奮から周りの人に不満を行ったり、奇妙な音を出したり、無視したりといったものから暴力に至るまで様々な症状として現れます。
【幻覚】
幻覚はありもしないものを感じることでその中でも
幻覚は他の感覚にも起こりえ、本来はないはずの音が聞こえる幻聴が幻視に続いて多くその他の幻覚は比較的まれと考えられています。
一部の幻覚(特に幻視)は照明の影響が関与しているのではないかとの推測があり、照明の最適化によって症状が落ち着くこともあります。幻覚が現れた場合にはそれが起きる場所の状況などを細かく医師に伝えることが症状を改善するきっかけになるかも知れません。
【妄想】
本来はない事実に対して誤った判断や確信をしてしまうことを妄想といいます。妄想は様々な形で現れ、主には以下のようなものがあります。
- もの盗られ妄想
- 例)家族に財産などを横領されたなど
- 見捨てられ妄想
- 例)家族などに見捨てられたと思い込んでしまう
- 嫉妬妄想
- 例)配偶者が性的に自分を裏切っている
- 誤認妄想
- 例)身近な人が姿はそのままで違う人と入れ替わっていると確信する
妄想の対象は家族などの身近な人に対して抱くことが多く、人間関係の悪化を招いてしまうこともあるので対応には注意が必要です。
例えばものを盗られたという場合にはものは盗まれてはいないとただ事実を伝えるのではなく、一緒にものを探す姿勢を見せたり探し出して盗まれてはいなかったという事実を伝えます。そうすることで盗まれてはいなかったと本人に認識させることができ安心につながります。
【うつ症状】
認知症の人はうつ症状に陥りやすいのですがうつ病とは症状の現れ方がやや異なります。典型的なうつ病では悲哀感(悲しみや哀れみ)や罪責感(自分に罪があると感じ責める気持ち)、低い自己評価などの症状が現れます。対して認知症によるうつ症状は、喜びの欠如や身体の不調感などが主なものになります。
少しややこしい話ですがうつ病が原因で認知症に似た症状が現れることがあり、この場合は抗うつ薬に対する反応がよく改善が期待できます。一方で認知症によるうつ症状は抗うつ薬による効果が小さいことが多いです。治療薬という視点からもうつ症状が認知症によるものなのかうつ病によるものなのかを見きわめることは大切です。
3. 認知症と軽度認知障害の違い
軽度認知障害は、認知症の手前の状態で、言いかえると認知症ではないけれども正常でもない中間の状態のことを指します。よく用いられる軽度認知障害の診断基準は以下のようなものになります。
- 本人や家族から認知機能低下の訴えがある
- 認知機能は正常とは言えないものの認知症の診断基準も満たさない
- 複雑な日常生活動作に最低限の障害はあっても基本的な日常生活機能は正常
少し難しいので、一度認知症の定義に立ち返って考えてみたいと思います。
認知症の定義は「いったん正常に発達した認知機能や精神機能が後天的な脳の障害により低下し、日常生活・社会生活に支障をきたしている状態」です。これを踏まえて考えると、軽度認知障害は認知機能が低下しているもののそれは軽度であり日常生活に支障を起こさない状態と言いかえられます。
軽度認知障害の一部は認知症に進行して日常生活に支障をきたします。
今の所、進行を予防する有効な治療薬はなく、進行予防としてアメリカ神経学アカデミーの
軽度認知障害から認知症へ進行した場合は、早期に認知症の治療を始める方がよいと考えられます。認知症は早期に治療を開始する方が、その効果が高いという意見があるからです。このため軽度認知障害の人は定期的に認知機能の低下が進んでいないかを確認することはよい効果をもたらすかもしれません。
アメリカ神経学アカデミーの軽度認知障害に対するガイドラインについては「このページ」も参考にして下さい。
4. 認知症の原因
認知症は一つの病気ではなく、いったん正常に発達した認知機能や精神機能が後天的な脳の障害により低下して、社会生活に支障を来たす状態です。このため様々な病気などが認知症の原因になります。次に認知症を起こす原因について主なものと比較的まれなものに区別して原因の解説を行います。
参考文献
・田崎義昭ほか/著, ベッドサイドの神経の診かた, 南山堂, 2016
・辻省次ほか/編, 認知症神経心理学的アプローチ, 中山書店, 2012
・水野美邦/編, 神経内科ハンドブック, 医学書院, 2016
認知症を起こす主な病気
認知症を起こす主な原因は4つあります。この4つは脳の病気で脳細胞が変化することや脳への血流が悪くなることによって起こります。
以下でそれぞれの病気について解説します。
アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)は、認知症の原因になる病気の中では最も多くその半分以上を占めます。
アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり神経細胞が壊れていくことが原因だと考えられています。
アルツハイマー型認知症の症状は記憶障害が特徴的です。特に近い過去の記憶の障害が起こり、少し前に聞いたことや物をおいた場所を忘れるといった症状を初期に認めることが多いです。
現在、アルツハイマー型認知症を完治に導く治療法は確立されていないので治療の目的は病気の進行を遅らせることです。アルツハイマー型認知症の治療にはコリンエステラーゼ阻害薬といった薬物療法と行動や情緒に訴えかける非薬物療法の2つを組み合わせて行います。
脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血といった脳血管の病気の後に現れる認知症です。
脳血管性認知症の症状は多様です。例えば脳梗塞と脳出血では症状が異なりますし、脳のどの部位に病気が起きたかも大きく影響します。脳血管性認知症は、脳血管が原因になっているという共通点だけでひとくくりになっている病気なのでその程度や症状は様々です。
脳血管性認知症の症状の特徴の一つに階段状の進行があります。階段状の意味する所は、アルツハイマー型認知症のようになだらかな進行ではなく症状が突然進行してその後しばらくは安定するという状態を指しています。
脳血管性認知症の治療にはアルツハイマー型認知症と同様に進行を遅らせるためにコリンエステラーゼ阻害薬を用いることがあります。また異常行動やうつ症状などの周辺症状に対しては
脳血管性認知症にならないためにはその原因となる脳梗塞や脳出血を起こさないことが予防や進行の予防につながります。脳梗塞や脳出血の危険性を高めるものとして高血圧や糖尿病、脂質異常症などが知られています。これらの病気をきちんと治療することが脳梗塞や脳出血の予防になりひいては脳血管性認知症にならないことにもつながります。
レビー小体型認知症は、脳の中に
レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症に比べると認知機能の低下は軽いことが多く、一方で幻視(実際にはないものが見える)や睡眠時に夢の内容に影響を受けて暴れたり大声をあげるなどの症状が現れます。特に幻視はレビー小体型認知症に特徴的な症状なので他の認知症の原因と区別する際に手がかりになります。
もう一つの特徴はパーキンソニズムです。パーキンソニズムはパーキンソン病に現れる特徴的な症状のことで、以下のようなものがあります。パーキンソニズムはパーキンソン病に特徴的ですが他の病気などが原因でも起りえます。レビー小体型認知症はその病気の一つです。
【主なパーキンソニズム】
- 安静時振戦:安静時に手足が震える
- 無動・寡動:動作の開始ができないまたはゆっくり
- 筋固縮(筋強剛):腕や足がスムーズに動かなくなる
- 姿勢反射障害:姿勢を保てない
認知機能の低下にパーキンソニズムや幻視などの症状が伴って現れると認知症の原因はレビー小体型認知症の可能性を強めることができます。
レビー小体型認知症の治療は、アルツハイマー型認知症と同様に薬物療法と非薬物療法の2つを組み合わせて行われます。レビー小体型認知症もアルツハイマー型認知症と同じく根本的な治療は現在のところ確立されていないので症状の進行を緩やかにするのが目的です。
パーキンソニズムに対する治療は、パーキンソン病と同様にレボドパ製剤やドパミン作動薬などを用いますが幻視が悪化したりするなどの副作用が出やすいので、少量から開始して副作用に注意をしながら薬の量を調整します。
■前頭側頭型認知症(FTLD:Frontotemporal Lobar Degeneration)
前頭側頭型認知症は、脳の中でも主に前頭葉と側頭葉の部分に異常が起こる病気です。アルツハイマー型認知症では脳の後方を中心とした部分に問題が起こりますが、前頭側頭型認知症は病気の起こる場所が異なるので症状にも違いがあります。
前頭側頭型認知症は元々はピック病と呼ばれていた病気です。現在は前頭葉ないし側頭葉あるいはその両方の脳が萎縮することが原因で認知症が起こる病気の総称です。萎縮が起こる原因についてはまだ明らかになっていません。
前頭側頭型認知症は性格の変化と行動異常が目立ち、記憶や空間認識能力、知覚といった機能は保たれることが多いです。言葉を発することの障害が初期から出ることがあり、流暢に話せなくなったりしますが、言葉の理解に関しては比較的保たれます。
病気が進行するとレビー小体型認知症のようにパーキンソン病に特徴的なパーキンソニズムという症状が現れます。パーキンソニズムについてはレビー小体型認知症のパートを参考にして下さい。
前頭側型認知症は、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症と同様に根本的な治療はありません。またアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症には進行をできるだけ遅らせるためにコリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンといった薬が用いられますが、前頭側頭型認知症に対する有効性は不明でありコリンエステラーゼ阻害薬は症状を悪化させることがあるので治療には推奨されていません。
行動異常に対しては選択的
認知症を起こす比較的稀な病気
ここでは認知症を起こすことがある比較的稀な病気について解説します。認知症は以下の様な病気が原因でも起こることがあります。
ビタミン 欠乏症- ビタミンB1の欠乏
- ビタミンB12の欠乏
- 内分泌の病気
感染症 - HIV関連神経認知障害
- 神経梅毒
- インフルエンザ脳炎
- ヘルペス脳炎
- 脳や神経の病気
- 薬の副作用
以下ではそれぞれについて解説します。
■ビタミン欠乏症:ビタミンの不足
一部のビタミン欠乏(ビタミンの不足)が認知症の原因になります。認知症の原因となるビタミンはB1とB12です。ビタミンの不足が原因で認知症が起きている場合にはビタミンを補うことによって認知症が治ることがあります。
■内分泌の病気:
内分泌は内分泌腺でつくられたホルモンを放出することです。体の中でホルモンが過剰になったり少なくなったりすることが認知症の原因になることがあります。以下が認知症を起こす主な内分泌の病気です。
内分泌の病気が認知症の原因になっている場合は、不足したホルモンを補充したりホルモンが過剰になっている原因を取り除いたりすることで治療ができることがあり、程度にもよりますが認知症が治ることもあります。
■感染症
感染症の一部は認知症の原因になることが知られています。認知症を起こす感染症は以下のものになります。
- HIV関連神経認知障害
- 神経梅毒
- インフルエンザ脳症
- ヘルペス脳炎
感染症が原因で認知症が起きている場合は、感染症を治療することで認知症が良くなったり進行を抑えることができます。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などの認知症を起こす主な病気と感染症が原因の認知症には治療に用いる薬などが異なるので検査などを用いて見分けることが大切です。
■脳や神経の病気
一部の脳や神経の病気は認知症の原因になります。慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症という病気が原因で認知症になっている場合は手術により認知症が良くなることがあります。以下が認知症の原因になる脳や神経の病気です。
慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症が原因の認知症は治療によって良くなったり進行を止めることが期待できます。一方でパーキンソン病や多発性硬化症、進行性核上性麻痺に伴う認知症に対しては有効な治療法が確立されていないので治すことは難しいと考えられています。このため治療の目的は病気を治すことではなく進行を遅らせることになります。
■薬の副作用
他の病気の治療で用いられる薬の副作用で認知症になることがあります。薬の副作用による認知症を
- 注意力の低下が目立つ
- 薬の使用によって認知症の症状が現れる
- 認知症の原因になっている薬を中止することで症状が改善する
新しい薬を飲み始めた時期に一致して認知症が現れた場合は、薬の副作用による影響を考えます。また薬剤性の認知症が起こりやすい人がわかっていて、高齢者や肝臓または腎臓の機能が低下している人やいくつもの種類の薬を飲んでいる人などに起こりやすいとされています。アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などすでに認知症と診断されている人は一部の薬によって症状が悪くなることもあります。認知症の原因として薬の副作用は可能性として見過ごせないので、新しい薬を飲み始めて症状が悪化した場合には病気が進行したのではなく薬の影響の可能性もあるので医師に薬の影響や調節について相談してみてください。
5. 認知症の検査
認知症で検査を行う目的は主に2つです。1つは認知症であるかどうかを診断することでもう1つは認知症の原因を調べることです。認知症で行う診察や検査は以下のようになります。
問診 - 身体診察
バイタルサイン の測定- 視診
- 神経学的診察
- 質問式検査
- 改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)
- ミニメンタルステート検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)
- 血液検査
- 画像検査
頭部CT検査 頭部MRI 検査SPECT検査 心筋シンチグラフィー
髄液検査
認知症の疑いがある人に対してこれらの検査を全て用いる訳ではありません。必要に応じて検査を省略することもあり逆に特別なケースでは追加で他の検査をすることもあります。以下ではこれらについて個別に解説を行います。
問診:状況や背景の確認
問診は医師との対話による診察のことです。患者さんや家族が、認知機能が低下したことを示唆するエピソードの内容や心配な症状などを医師に話します。その後医師から焦点を絞った質問がありそれについて答えていきます。以下は例です。
- 受診するきっかけになったのはどんな症状なのか
- 症状はいつ現れたのか
- 症状がひどくなったり他の症状が現れてきていないか
- 症状は1日のうち変化はあるか
次に認知症の原因を絞り込むために医師から具体的に質問がなされます。例を挙げてみます。
- 過去に治療した病気(入院歴、手術歴)
- 現在治療中の病気
- 内服中の薬について
- 最近頭を強く打つことはあったか
- 飲酒はするか
- 喫煙はするか
- これまでのどのような教育を受けてきたか
- 家族に認知症の人はいるか
問診だけで認知症の原因を特定できる訳ではありませんが、その後の検査の方向性などを定める上で重要です。
身体診察:状況の客観的評価
身体診察は、病気の状況やそれに影響を与えている身体の状況を医師が身体に手を触れたりなどして客観的に評価します。身体診察による客観的な評価は、後に行われる検査でどのようなものが適しているかを判断する材料になります。主な身体視察は以下のものになります。
- バイタルサインの測定
- 視診
- 神経学的診察
バイタルサインは、脈拍数・呼吸数・体温・血圧・意識状態のことで全身状態を把握するのに役立ちます。
視診は患者さんの体の状態を観察して外見上の異常がないかを調べます。視診では表情や受け答えの反応なども観察しています。例えば認知症を起こす病気にパーキンソン病があります。パーキンソン病の人は表情に乏しかったり無表情(仮面様顔貌)であったりします。
神経学的診察は、脳や神経の状態を医師が体に触れたりすることで調べていきます。認知症は体を動かしづらくなるなどの症状も現れる病気が原因になることがあるので、神経学的診察によって神経や筋肉の状態を評価します。
質問式検査
質問式検査は認知機能を調べるために用意された質問について答えていくことで認知機能を調べる検査です。質問式検査は様々なものがありますが、改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)とミニメンタルステート検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)がよく用いられます。ともに点数形式で認知機能が低下しているかどうかを判断します。
血液検査
認知症の診断を血液検査だけで行うことは一般的ではありません。認知機能が低下している原因を調べるために用いられます。血液検査は以下の点に注目します。
- 全身状態・臓器機能の把握
- ビタミンの欠乏はないか
- 感染症の可能性はないか
- ホルモンに異常はおきていないか
稀ですが認知症は腎臓や肝臓の機能が低下することで起こることがあり、血液検査でそれぞれを調べることができます。ビタミンの不足や一部の感染症、ホルモンの異常も認知症の原因になることがあり血液検査を用いて調べることができます。
画像検査
認知症で画像検査を行う目的は、認知症を起こしている原因を調べるためです。認知症を起こす病気の中には治療をすることで症状が改善する病気があるので、見極めという意味でも画像検査は重要な役割を果たします。認知症の画像検査には主に以下のものを用います。
- 頭部CT検査
- 頭部MRI検査
- SPECT検査
- 心筋
シンチ グフィー
これらの検査により認知症の原因を調べて治療やその後の経過を予測するのに役立てます。
画像検査の詳細については「このページ」で詳しく解説しているので参考にして下さい。
髄液検査(脳脊髄液検査)
髄液検査は、認知症が疑われる人全てに行われる訳ではありません。認知症の原因の多くを占めるアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症で髄液検査を行うことは稀です。髄液検査は髄膜炎や脳炎、多発性硬化症などが認知症の原因と疑わしい場合に用いられます。髄液液を取り出すには
腰椎は
腰椎穿刺は、身体の側面を下にして横になった状態で行い、背中側から医師が針を指します。腰椎穿刺の詳細な情報については「腰椎穿刺の目的、方法、合併症」を参考にして下さい。
参考:認知症疾患治療ガイドライン
6. 認知症の治療
認知症の原因は様々なので適した治療もそれぞれで異なります。認知症を治療という面から眺めると治療によって治るタイプの認知症と根本的な治療がないタイプに分けることができます。
認知症の治療の目的や方法
治療が可能な認知症とは原因を取り除いたり異常な状態を補正することで認知症が治るものです。一方で認知症の原因の大半を占めるアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症などは根本的な治療は確立されていません。つまり治療をしても低下した認知機能を元に戻すことは難しいと考えられています。根本的な治療がない認知症に対する治療の目的は病気の進行を遅らせたりすることです。
以下では認知症を治療が可能な場合と根本的な治療がない場合に分けて原因と治療について解説します。
■治療が可能な認知症の場合
頻度は多くはないですが治療によって認知症が治ったり進行を止められるケースがあります。このようなケースは治療が可能な認知症(treatable dementia)として知られています。治療が可能な認知症の原因には以下のようなものがあります。
- ビタミンの欠乏
- ビタミンB1
- ビタミンB12
- 内分泌の病気
- 感染症
- 脳の病気
- 薬の副作用
これらの原因で認知症を起こしている場合には適切な対応をとることで症状の改善が期待できます。例えば慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などが認知症の原因である場合は、手術によって症状がよくなることがあります。また他の原因についてもビタミンの補充や薬による治療などにより認知症の改善が期待できます。
■根本的な治療がない認知症の場合
アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症は、認知症の原因のほとんどを占めますが、これらの病気を治す治療は現在のところ確立していません。つまり認知症のうちのほとんどは根本的な治療法はありません。
ではなぜそれらが原因の認知症に対しても治療を行うのでしょうか。根本的な治療がない認知症は、病気の進行と症状を抑えることを目的として治療が行われます。認知症の症状は多様なので問題になっている症状に合わせて治療を選んでいきます。
認知症の症状は認知機能の低下による中核症状とそれにともなって起こる周辺症状がありそれぞれで使う薬が異なります。中核症状と周辺症状に分けて治療を解説します。
【中核症状の治療】
中核症状は認知機能が低下することによって現れる症状です。認知機能は理解・判断・論理などの知的な行動を司る力のことです。中核症状の代表は記憶障害いわゆる物忘れですが他にもいくつか症状があります。
- 中核症状
- 記憶障害:物忘れ
- 実行機能障害:問題解決能力が低下する
- 見当識障害:場所や時間を把握できなくなる
- 視空間認知障害:ものをみつけたり認識することができなくなる
- 失行:目的をもった行動ができなくなる
- 失語:言葉の理解や発語ができなくなる
- 失認:五感に関する認知能力が正常ではなくなる
中核症状に対しては認知症の進行を遅らせる薬と非薬物療法(薬を用いない方法)を併用します。非薬物療法は文字通りに薬を用いずに行う治療で、行動・感情・認知・刺激という側面からアプローチして症状の改善を図ります。
- 薬物療法
- コリンエステラーゼ阻害薬
- ドネペジル(主な商品名:アリセプト®)
- ガランタミン(商品名:レミニール®)
- リバスチグミン(商品名:イクセロン®、リバスタッチ®)
- NMDA受容体拮抗薬
- メマンチン(商品名:メマリー®)
- 生物学的製剤
- レカネマブ(商品名:レケンビ®)
- コリンエステラーゼ阻害薬
- 主な非薬物療法
- リアリティ・オリエンテーション
- 定型リアリティ・オリエンテーション
- 非定型リアリティ・オリエンテーション
- 回想法
- 認知刺激療法
- 運動療法
- 芸術療法
- リアリティ・オリエンテーション
コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬はともに認知症の進行を遅らせる薬です。アルツハイマー型認知症などは脳内の
脳内のグルタミン酸という物質は記憶や学習などに関与する興奮性の神経伝達物質です。アルツハイマー型認知症はこのグルタミン酸神経系の機能異常が関係しており、グルタミン酸の受容体のひとつであるNMDA受容体の過剰な活性化が原因のひとつと考えられています。
NMDA受容体拮抗薬であるメマンチン(商品名:メマリー®)はグルタミン酸によるNMDA受容体の異常な活性化を抑えることで神経細胞保護作用及び記憶・学習機能障害を抑える作用をあらわします。主にアルツハイマー型認知症における認知機能障害の進行を抑え、言語、注意、実行などの悪化の進行を抑えることが期待できます。NMDA受容体拮抗薬はコリンエステラーゼ阻害薬と併用することもできるため、仮に認知症が高度に進行した場合にも効果が期待できます。
非薬物療法は、薬を使わずに行動、感情、認知、刺激の4つの側面から介入して認知機能の維持や精神の安定を図る治療です。中核症状だけではなく後述する周辺症状に対する好影響も期待されます。非薬物的療法は薬物療法と比べて副作用がほとんどないことも利点です。非薬物療法の方法は多様で一言ではあらわしにくいので詳細な解説を行っている「このページ」を参考にして下さい。
【周辺症状の治療】
周辺症状は、認知機能障害によって起こる中核症状以外の症状のことです。周辺症状はBPSDと呼ばれることもあり、行動症状と心理症状の2つに分けることができます。BPSDは「認知症の行動・心理の症状」の英語訳であるBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの頭文字をとったものです。
周辺症状という字面からすると大きな問題にはならないと感じるかもしれませんが、認知症においては中核症状より深刻な事態の原因になることがあり適切な治療や対処が望まれます。
- 行動症状
- 暴言・暴力
- 徘徊
- 不穏
- 性的脱抑制
- 心理症状
- 不安
- 焦燥性興奮
- 幻覚
- 妄想
- うつ症状
- 無気力・無関心
- 性格の変化
- 不眠
行動症状は文字通り行動に関する症状のことで、心理に関する症状は患者さんと医療者が対話をすることにより明らかになる症状です。
周辺症状に対する治療はまず症状が現れる原因があるのかどうかを調べます。もし原因があればそれを解決するだけで症状が改善することも期待できます。
周辺症状が現れるきっかけを詳細に調べて予防するような行動をしても症状をコントロール出来ずに生活に支障をきたしてしまうことがあります。その際には症状を落ち着けるために薬物療法を開始します。
以下が周辺症状の治療に用いる薬です。
- 抗精神病薬
- 抗うつ薬
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- SNRI(セロトニン・ノル
アドレナリン 再取り込み阻害薬)
- 抗不安薬
- 睡眠薬(睡眠導入薬)
- 漢方薬
認知症の周辺症状には夜間せん妄、幻覚、妄想、不安・焦燥などの陽性症状(過活動性症状)と意欲や自発性低下、抑うつなどの陰性症状(低活動性症状)があります。陽性症状に対しては抗精神病薬、陰性症状に対しては抗うつ薬、といった様に主に精神神経系へ作用する薬が使われます。
薬の多くが精神神経系に作用する薬で認知症患者の多くは高齢者ということもあり副作用が出やすいと考えられています。このため薬の用量(服用量)は比較的少ない量で使用されたり、初回は低用量から開始される(薬剤や治療内容などによってはあえて用量を増やして使う場合も考えられます)などの配慮がされます。周辺症状に対して薬物療法を行うときには周囲の人は副作用の危険性などについても十分に把握しておいた上で患者さんの生活を支えていく必要があります。
7. 認知症の予防
認知症は予防が可能なのでしょうか。認知症の予防に関して認知症に関係のある病気や生活習慣などについて解説します。
認知症と関係のある病気の治療
認知症の発症にはいくつか原因となる病気が示唆されています。原因となる病気をしっかりと治療することやその病気にならないようにすることが認知症の予防につながると考えられます。高血圧と糖尿病が認知症に関係します。
高血圧と糖尿病は認知症の発症にどのような影響を与えているのでしょうか。この2つの病気に共通しているのは血管に対してダメージを与えるという点です。
■高血圧
高血圧は血圧の高い状態が続くことで医学的には「
脳血管性認知症は脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後に起こるタイプの認知症です。高血圧は脳梗塞や脳出血の危険性を高めます。したがって脳梗塞や脳出血の後に引き続いて起こる脳血管性認知症の危険性も大きくなります。脳血管性認知症を避けるにはその原因となる脳梗塞や脳出血を起こさないことが予防につながります。
アルツハイマー型認知症は、大脳皮質などにリン酸化タウ蛋白やアミロイドβ蛋白質が現れることを原因とする病気で、平たく言うと脳の細胞が変化して認知症が現れます。脳血管性認知症と違って血管の病気ではないのですが、中年期の高血圧がアルツハイマー型認知症を発症するリスクを上昇させる可能性が指摘されています。アルツハイマー型認知症の発症のメカニズムは完全には分かっていないのですが、高血圧が何らかの影響を及ぼしている可能性があります。
高血圧は無症状なことが多いので治療をしていない人もいるかもしれません。高血圧は治療しないで放置しておくと認知症だけではなく心臓や腎臓の病気を起こす可能性が高まることが知られています。高血圧をきちんと治療することは多くの病気に対する予防につながることが期待できます。
■糖尿病
糖尿病は
糖尿病になり
アルツハイマー型認知症は2型糖尿病との関連があると考えられています。糖尿病は2つのタイプがあり、2型糖尿病は肥満などの生活習慣が主な原因です。2型糖尿病はインスリンが効きにくくなること(インスリン抵抗性)や相対的に量が減ることなどが原因で起こります。脳は糖分を栄養にしその取り込みにはインスリンが必要です。インスリンが効きにくくなったりその量が不足すると、βアミロイドという物質が増加してしまいアルツハイマー型認知症の発症を促してしまうなどの仮説が立てられています。
糖尿病は、認知症の発症と関わりがあると考えられています。もし持病に糖尿病があるのであればしっかりと治療することで認知症を発症する危険性を下げることができるかも知れません。
参考:認知症
認知症に予防効果がある生活習慣はある?
認知症の予防効果のある生活習慣はあるのでしょうか。ここではいくつかの生活習慣と認知症の予防について考えてみたいと思います。
参考:
認知症診療ガイドライン
UpToDate Prevention of dementia
■運動
定期的な身体活動をする人には認知症の発症が少なかったとする結果がいくつかの研究から報告されており、特にアルツハイマー型認知症の発症に効果があるのではないかと推測されています。一方で運動と認知症の発症には関連が見いだせなかったものもあり運動がどの程度認知症の発症を抑えるかについては決まった見解が得られていません。
とはいえ一定の見解がないからといって運動に効果がないという訳ではありません。定期的に運動をすることは認知症の
いきなり激しい運動を生活の中に取り入れることは難しいものです。できる範囲の運動から始めて少しずつ負荷を強くするなどの工夫をして継続することを意識すると良いかもしれません。
■禁煙
喫煙は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症を起こす危険性を上昇させると考えられています。一方で禁煙をした人は喫煙者と比べても認知症になる可能性は低くなるという報告もあり禁煙による効果にも一定の期待はできるかもしれません。
喫煙は心臓や肺の病気を起こす危険因子です。禁煙をすることは認知症だけではなく他の病気に対しても予防効果が期待できます。禁煙を考えているのであれば実行に移すことによって得られる利益は大きいので禁煙に取り組んでみてください。
禁煙には禁煙外来を活用するのもよいでしょう。禁煙外来を行っている医療機関などを参考にしてみて下さい。
■余暇活動
余暇活動は、労働以外の時間を使って楽しみなどを追求する行為のことです。余暇活動には知的なもの(ゲーム、映画鑑賞など)や身体的なもの(スポーツ、散歩、エアロビクスなど)、社会的なもの(友人と会う、ボランティア、旅行など)などがあります。
余暇活動は、認知症の発症によく効果があるという報告があり中年期から老年期の余暇活動の効果が期待されています。余暇活動は多様でありその定義も難しいためにどの程度認知症の予防に効果があるかははっきりとはしていません。
とはいえ余暇活動は日々の生活に楽しみを与える不可欠なものです。忙しい中でも余暇活動をすることは認知症のみならず様々なよい効果をもたらしてくれるでしょう。