レビー小体型認知症の基礎知識
POINT レビー小体型認知症とは
進行性の認知症の一種で、認知症症状に加えてパーキンソン症候群の症状を示す病気です。脳の細胞に異常な物質ができてしまうことが原因と考えられています。診断を確定するために、頭部CT検査・頭部MRI検査・SPECT・心筋シンチグラフィーなどを行います。現在、根本的な治療はありませんが、パーキンソン病の治療とアルツハイマー病の治療を組み合わせて行うことが多いです。「新しいことを覚えられない」「同じことを何度も繰り返す」「年月日などの時間感覚があやふやになる」といった症状がある場合は医療機関にかかってください。その際は脳神経内科・認知症専門外来を設けている医療機関にかかることをおすすめします。
レビー小体型認知症について
レビー小体型認知症の症状
- 進行する認知症の
症状 - パーキンソン症候群の症状
- 手足が震える(振戦)
- 動きが遅くなる(無動)
- 筋肉が硬くなる(固縮)
- 体のバランスが悪くなる(姿勢反射障害)
- 無表情
抑うつ - 不眠 など
- その他に、以下のような症状が起こる
- 認知機能が変化する(日から週の単位で、調子の良いときと悪いときがある)
幻視 の例- いないはずの人が見える
- 小人や動物が見える
- 妄想の例
- 自宅にいるのに、夕方になると「家に帰る」という
- 引退したのにまだ働いていると思っている
- まだ戦争が続いていると思っている など
- 睡眠中の異常行動
- 大声で寝言を言ったり、叫び声をあげる
- 眠ったまま起き上がって歩きまわる
自律神経 症状- 便秘
- 尿失禁
- 立ちくらみ
失神
レビー小体型認知症の検査・診断
頭部CT 、頭部MRI 検査- 基本的に異常が見つからない
- 脳に他の病気が起こっていないか調べる
SPECT 、PET検査 - 脳の血流や
代謝 を調べる - 脳の後方の血流や代謝が落ちていることがある
- 脳の血流や
- SPECT(DAT-scan):脳の血流や代謝の状態を調べる
心筋シンチグラフィ (MIBG心筋シンチグラフィ)- アルツハイマー型認知症と区別するために行われるが、どこの医療機関でも行える検査ではない
レビー小体型認知症の治療法
レビー小体型認知症の経過と病院探しのポイント
レビー小体型認知症が心配な方
認知症は、一定の年齢になると多くの方が心配される疾患の一つでしょう。「どのような基準を満たしたら認知症」という明確な(唯一の)基準があるわけではありません。また、加齢に伴う体の機能の変化という意味では、筋力が衰えたり骨が弱くなったりするのと同様に、脳の機能が変化していくことにも、病気ではなく自然現象と呼べる範囲があります。
「認知症」は病気の名前ではなく、ある程度以上に脳の機能が低下した状態を指すというだけの用語です。病気が原因で認知症になる方もいれば、正常の老化現象の一環として認知症に至る方もいます。したがって、ここで大切なのはその方の認知力の低下が病気なのかどうかということではなく、いずれの場合であっても、そのような方が生活しやすい環境を整える必要があるということと、例えばレビー小体型認知症のようなものであれば、進行のスピードを緩める目的で治療薬を内服するということです。
認知症らしさは周囲の方が気付くことができても、それがレビー小体型の認知症かどうかの判断は慣れない方には難しいことがあります。手足の震えや幻視(見えないはずのものが見える)といった症状が特徴的ですが、原因が何であれ、認知症かなと思ったら、まずはお近くの神経内科クリニックを受診されることをお勧めします。認知症専門外来を設けている医療機関も中にはあり、そのようなところも良いでしょう。そのような医療機関では、長谷川式認知症スケールと呼ばれるような一定の質問を行って認知力の程度を確認したり、日常生活にどのような支障が出ているかをご家族から確認したりします。それと同時に、認知症を引き起こしている病気(甲状腺機能低下症や慢性硬膜下血腫など)がないかの確認も行います。これらが原因の認知症だとすると、内服薬や手術で認知力が大幅に改善する可能性があるためです。こういった病気を除外するためと、そしてレビー小体型のものかどうかを判断するために頭部CTやMRI、血液検査を行います。
レビー小体型認知症でお困りの方
レビー小体型認知症と診断がついた場合の治療なのですが、残念ながら低下した認知力を改善させる、または根治させる治療は現時点ではありません。
レビー小体型認知症の方でも、他の種類の認知症(脳血管性認知症など)を併発している場合があり、認知症の種類によって治療法が少しずつ変わってきます。典型的なものであれば一般内科で診断が十分可能なこともあります。しかしながら、このように複数種類の認知症が重なっている場合などは特にどの種類の認知症か判断が難しい場合というのが少なからずあり、そのようなときには先述の認知症専門外来であったり、神経内科専門医であったりの診察を検討されるのも良いでしょう。特に診断が難しい場合には、脳血流SPECTと呼ばれる特殊な検査を行うこともあります。認知症の型・原因が判明すれば、その後の治療は専門外来である必要は必ずしもなく、高血圧など他の目的で通っている外来で一緒に処方を出してもらうという形が一般的です。
現在の日本の医療体制では、「普段の通院は近所のかかりつけ医、入院や専門の診察は地域の総合病院」といった分業と、医療機関同士の連携が重視されています。重症の患者さんや一時的に専門医の診察が必要な方が安心していつでも総合病院にかかれるように、総合病院でなくとも診療が行える病状の方は、できるだけ地域のクリニックを受診してもらうことで、住み分けを行うという形です。これには、地元に自分のかかりつけ医(主治医)を作ることで、その人の病状全体が把握できるというメリットもあり、必要あればその都度、病気ごとに専門の医師や医療機関と連携して診療を行います。