たけいとういしゅくしょう
多系統萎縮症(MSA)
脳の神経細胞が変性することで運動失調症状やパーキンソニズムが発症する非遺伝性の病気
12人の医師がチェック 109回の改訂 最終更新: 2022.03.01

多系統萎縮症(MSA)の基礎知識

POINT 多系統萎縮症(MSA)とは

脳の神経細胞が変性し脱落する非遺伝性の病気です。神経細胞が脱落した部位によって症状が異なります。例えば、小脳に病変の起こるタイプは運動失調(歩行障害、ふらつきなど)が出やすく、線条体黒質に病変の起こるタイプはパーキンソニズム(パーキンソンの様な症状)が出やすく、自律神経に病変が起こるタイプは自律神経障害(起立性低血圧、排尿障害な)どが出やすいです。診断のために身体診察・頭部MRI検査・脳血流SPECT検査などが行われます。根本的な治療がないため、それぞれの症状に対して治療が行われます。パーキンソニズム(筋肉のこわばり・動きの鈍さなど)がある人には抗パーキンソン病薬が用いられます。「歩行障害」「筋肉のこわばり」「動きの鈍さ」「起立性低血圧」などの多系統萎縮症を疑わせる症状がある人は脳神経内科にかかることをおすすめします。

多系統萎縮症(MSA)について

  • 脳の神経細胞が変性し脱落することで症状が出る非遺伝性の病気
    • グリア細胞にαシヌクレイン陽性のタンパク質が沈着する
    • 原因は十分には解明されていない
    • 治療が難しい病気である
  • 以下の3つの病気の解明が進むにつれその原因や症状に共通点が多いことが判明しまとめて多系統萎縮症と呼ぶようになった
    • オリーブ・橋・小脳萎縮症(MSA-C):運動失調(歩行障害、ふらつきなど)が症状の中心
    • 線条体黒質変性症(MSA-P):パーキンソニズム(パーキンソンの様な症状)が症状の中心
    • シャイ・ドレーガー症候群:自律神経障害(起立性低血圧排尿障害など)が症状の中心

多系統萎縮症(MSA)の症状

  • 以下のような神経症状が起こるが、主な症状は脳のどの部分が中心に障害を受けたかによって異なる
  • 進行性の病気で、病状が進むと運動失調、パーキンソニズム、自律神経症状のいずれもがみられるようになる
  • 呼吸障害による突然死の危険がある
    • 中枢性呼吸障害:脳幹と呼ばれる部分から呼吸をする指令が上手く出なくなった状態
    • 末梢性呼吸障害:空気の通り道に何らかの異常起こった状態 
      • 両側声帯運動障害による呼吸障害が有名
      • 通常より高い音のいびきが特徴とされている
      • 嚥下障害による窒息も注意する必要がある
      • しゃべりにくさや飲み込みにくさが出ることがある

多系統萎縮症(MSA)の検査・診断

  • 身体診察で出ている症状を把握する
  • 頭部MRI検査
    • 小脳・小脳脚の萎縮脳幹の萎縮(クロスサイン)、基底核の萎縮
    • 症状と頭部MRI検査の画像所見で診断し、治療を開始することが多い
  • 脳血流SPECT(スペクト)検査
    • 脳血流の分布を調べ、脳血流の低下がどこで起こっているかを見る
  • 自律神経機能の障害を確認する検査を行う
    • 横になった状態と立ち上がった後の血圧を比較し、起立性低血圧がないかを確認する
    • 排尿障害の有無を確認する
  • 多系統萎縮症と診断がついたら、嚥下機能や声帯の動き(発生や呼吸に関わる)を検査する

多系統萎縮症(MSA)の治療法

  • 基本的に症状に対する治療を行う
    • パーキンソニズムに対しては抗パーキンソン病薬を用いることが多い
      • パーキンソン病に対してこの薬剤を使用した時よりも効果が出にくいことが多い
    • 運動失調症状に対しては、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン製剤を用いることがある
    • 起立性低血圧に対しては以下のような薬剤を用いて治療する
      • ドロキシドパ
      • ミドドリン塩酸
      • フルドロコルチゾン酢酸
      • アメジニウムメチル硫酸 など
  • 呼吸障害あれば、夜間に持続的陽圧呼吸(CPAP)という人工呼吸器マスクを使用する

多系統萎縮症(MSA)が含まれる病気

多系統萎縮症(MSA)のタグ

多系統萎縮症(MSA)に関わるからだの部位