たけいとういしゅくしょう
多系統萎縮症(MSA)
脳の神経細胞が変性することで運動失調症状やパーキンソニズムが発症する、非遺伝性の病気
12人の医師がチェック 108回の改訂 最終更新: 2017.07.21

Beta 多系統萎縮症(MSA)のQ&A

    多系統萎縮症とはどのような病気ですか?

    神経細胞が変性・脱落する、いわゆる「神経変性疾患」と呼ばれる病気の一つです。脳幹、小脳、自律神経に障害が起きて、徐々に進行していきます。神経細胞は徐々に脱落していき、脱落した神経細胞が元に戻ることはありません。

    30-70代以降の方に発症する病気で、小脳症状(運動失調:歩行障害やふらつき)、パーキンソン病に似た症状(ただし震え以外)、自律神経症状(立ちくらみや排尿困難、尿失禁など)が症状として目立ちます。

    多系統萎縮症のことを英語でmultiple system atrophy (MSA)と呼びますが、その中で小脳症状が目立つものをMSA-C、パーキンソン症状が目立つものをMSA-Pと呼びます。

    多系統萎縮症ではどのような症状がみられますか?

    多系統萎縮症でみられる症状は多岐にわたりますが、その原因によって小脳症状やパーキンソン症状、自律神経症状などに分類されます。以下でそれぞれについてもう少し詳しく紹介します。

    1. 自律神経障害:排尿障害、起立性低血圧(立ちくらみ)、発汗低下、勃起不全(男性の場合)などがあります。
    2. 小脳性運動失調:失調性歩行(酔っ払ったような歩き方)としゃべりづらさ、手足の運動失調、もしくは小脳性眼球運動障害(スムーズに眼が動かずカクカクとした動きになる)などがあります。
    3. パーキンソニズム:動作緩慢(動きがゆっくりとする)、筋肉のかたさ、姿勢保持障害など。ふるえもいわゆる「パーキンソニズム」の一種ですが、多系統萎縮症ではめったにみられません。パーキンソン病と比較して、抗パーキンソン病薬(レボドパ製剤)の効果が乏しく、進行が早いのが特徴です。
    4. 錐体路徴候:腱反射亢進といって、例えば診察で膝を叩いたときに、足が伸びる「反射」が強く出るようになります。

    多系統萎縮症はどのように診断するのですか?

    多系統萎縮症の診断は、画像検査や症状から総合的に行われます。「血液検査でこの数値が高いからこの病気です」といえるような、確実な検査法は未だありません。

    多系統萎縮症の治療について教えてください。

    パーキンソン病に似た症状がある場合は抗パーキンソン病薬(レボドパ製剤)から治療を開始することが多いです。しかし、多系統萎縮症の場合には効果が見られないことがあり、効果があったとしても軽度であることが多いです。

    その他に、個別の症状の程度に応じて、それらを軽減させるような薬を服用します。

    • 起立性低血圧(立ちくらみ):血圧を安定させるような薬(ドロキシドパ、フルドロコルチゾンなど)を内服することがあります。
    • 歩行障害や動きづらさ、しゃべりづらさや飲み込みづらさ:それぞれの症状に対してリハビリテーションを行いますが、症状の進行を食い止めることは難しい場合が多いです。
    • 飲み込みづらさが進行して経口摂取が難しくなると、鼻から胃へ栄養を通す管を入れることや、胃瘻をつくることを含めて治療法を相談します。

    基本的には、上記のような対症療法を行います。

    「多系統萎縮症を治すことは出来ますか?」というのは多くの方が気にされる点かと思いますが、残念ながら現在も治癒の手立てはありません。ただしこれは、打つ手が全くないということではなく、上で述べたようにそれぞれの症状に対応した治療を行い、生活に出る支障を最小限に食い止めることを目指していくことになります。

    多系統萎縮症(MSA-P)とは?

    パーキンソン病以外の神経変性疾患でパーキンソン病と似た症状(パーキンソニズム)を呈するものを二次性パーキンソン症候群と呼びます。その代表的な病気のひとつが多系統萎縮症(MSA-P)です。以下で多系統萎縮症(MSA-P)の症状の特徴とパーキンソン病との違いを説明します。

    まず、多系統萎縮症(MSA)には、パーキンソニズムで発症するMSA-Pと、小脳症状で発症するMSA-Cの2つがあります。いずれも、自律神経症状を必ず伴います。自律神経症状として代表的なものは、起立性低血圧(立ちくらみ)、排尿障害(おしっこの回数が多い、おしっこが出にくいなど)、便秘、インポテンツなどです。

    ここではMSA-Pについて述べます。MSA-Pにみられるパーキンソニズムとしては、筋肉のこわばり、かたさや、動作がゆっくりである、小刻み歩行がみられるなどが挙げられます。上でも述べたように、自律神経症状が目立つのが特徴です。また、パーキンソン病では頭部MRIに異常がないことが多いですが、この病気ではいくつかの特徴的な異常がみられます。パーキンソン病の治療薬をこの病気でも使ってみることが多いですが、パーキンソン病と違ってあまり効果がないことが多いです。

    多系統萎縮症はどのくらいの頻度で起きる病気ですか?

    10万人に5人程度と、非常に珍しい病気です。

    多系統萎縮症で特に気をつけるべき症状は何ですか?

    前項にある小脳症状、パーキンソニズムなどの症状は、どれも日常生活に制限を生じさせる困ったものです。

    これら以外で気をつけるべきものとしては、のどの声門が開きづらくなって呼吸障害がみられることがあります。いびきや睡眠障害がみられ、最悪の場合、声門が閉じてしまい窒息によって突然死に至ることもあるため注意が必要です。

    多系統萎縮症ではどのような画像検査をするのですか?

    多系統萎縮症の画像検査は、頭部MRIが基本です。脳幹や小脳がやせてきていることを確かめます。

    また、脳血流SPECTで小脳や脳幹、基底核といった脳の部位の血流量が低下していないか、そして、パーキンソン病と似た症状がある場合にはドパミンSPECTと呼ばれる検査でドパミン作動性神経細胞の脱落があるかどうかを調べます。

    多系統萎縮症は遺伝する病気ですか?

    基本的には遺伝しない病気と考えて大きな間違いはありません。ただしごくまれに、同一家系内で多くの方がこの病気を発症することがあります。

    多系統萎縮症では認知症がみられますか?

    多系統萎縮症は脳神経細胞に異常の生じる病気の一種ではありますが、通常認知症症状は出現しません。

    多系統萎縮症はどのような経過をたどるのですか。

    経過については人それぞれで、一概にどのようである、と言うことはできません。平均的な経過としては、発症して約5年で、車いすが必要となり、約8年で寝たきりとなると言われています。

    ただしこれはあくまでも一般論かつ平均値であり、実際にどのような経過をたどるかは患者さんによって異なるという点にご留意下さい。

    多系統萎縮症に有効な治療法が開発される見込みはありますか。

    今のところ有効な治療法はありませんが、治療法の開発に向けて多くの研究者が日夜取り組んでいます。例えば国内の研究では、MSAの発症に特定の遺伝子(COQ2遺伝子)が関与していることが報告され、治療法の開発につながるかもしれないと期待されています。

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