ちょうへいそく(いれうす)
腸閉塞(イレウス)
腸の中の食べ物の流れが途中で詰まってしまう病気。腸がねじれたり、動きが鈍かったり、大腸がんなどが原因で起こる
11人の医師がチェック 134回の改訂 最終更新: 2018.03.02

腸閉塞やイレウスの原因は?大腸がん・脱腸・癒着など

0. このページのまとめ

このページでは主に以下のことをまとめています。

  • 腸閉塞とイレウスの違い
  • 腸閉塞とイレウスの原因についての詳細
  • 新生児・子供・高齢者の腸閉塞とイレウスの原因について

腸閉塞とイレウスは同じ意味で用いられることもありますが、原因が異なるのでそれぞれを分けて使う意見もあります。今回の詳細記事では腸閉塞とイレウスを分けて解説しています。腸閉塞とイレウスの違いは、簡単にいうと腸閉塞は腸の中にものが詰ったり腸が外から圧迫を受けたりすることで、イレウスは腸の動きが麻痺することです。

腸閉塞やイレウスには背景に原因となる病気があることが多いです。腸閉塞やイレウスの原因にどんなものがあるかを知ることは、腸閉塞やイレウスの予防にも役立ちます。

新生児や小児は大人とは違う理由で腸閉塞やイレウスになります。高齢者は病気にかかりやすくなったり体の機能が低下したりすることが腸閉塞やイレウスの原因になりえます。

以下ではまとめの内容を中心にして詳細な解説を加えているので是非読んでいただければと思います。

1. 腸閉塞とイレウスは違う病気なの?:腸閉塞の種類とイレウスの説明

腸閉塞(ちょうへいそく)とイレウスは腸の中の流れが悪くなる病気です。腸閉塞とイレウスという言葉は同じ意味で使われることもありますが厳密な意味では腸閉塞とイレウスを区別する立場もあります。ここでは腸閉塞とイレウスを区別して説明をします。

【腸の中の流れが止まる原因:腸閉塞とイレウスの違い】

  • 腸閉塞:腸にものが詰まったり外側からの圧迫などの物理的な閉塞の原因がある
  • イレウス:腸の内側や外側からの刺激などで腸が動かなくなる、物理的な原因はない

日本で参照される『急性腹症診療ガイドライン 2015年』でも腸閉塞とイレウスを区別して説明が行われています。以下が従来の分類と『急性腹症診療ガイドライン 2015年』に準じたこのページの分類の対比です。

【従来の分類】

  • 機械性腸閉塞
    • 単純性腸閉塞(閉塞性腸閉塞、閉塞性イレウス) 
    • 複雑性腸閉塞(絞扼性腸閉塞、絞扼性イレウス)
  • 機能性腸閉塞
    • 麻痺性腸閉塞(麻痺性イレウス) 
    • 痙攣性腸閉塞(痙攣性イレウス)

【急性腹症診療ガイドライン 2015年に準じた分類】

  • 腸閉塞
    • 単純性腸閉塞
    • 複雑性腸閉塞
  • イレウス

このページの解説では、従来機能性腸閉塞と呼んでいたものをイレウスとし、機械性腸閉塞にはイレウスという呼び方をしません。

ただし医療機関によっては腸閉塞とイレウスを区別せずに説明が行われることもあります。その場合は腸が動かない原因について尋ねることで腸閉塞とイレウスのどちらが起きているかを区別して理解できると思います。

2. 腸閉塞は起きる部位によって原因が違う?:小腸と大腸で起こる腸閉塞の違い

腸閉塞は小腸と大腸の両方で起こりえますがそれぞれで原因が異なります。腸が閉塞するメカニズムは大きく分けて3種類です。

  • 腸の中にものが詰まる
  • 腸が外側から圧迫される
  • 腸が捻(ねじ)れたり曲がったりする

小腸と大腸で閉塞の原因が異なります。

大腸の腸閉塞の原因になりやすいものは大腸がんなどです。小腸に腸閉塞がおきた場合には手術後の癒着ヘルニアなどが考えられます。

小腸におきる腸閉塞

小腸に起きる腸閉塞の原因はメカニズムによって分類できます。

一つは腸の中にものが詰まることです。腸を詰まらせる原因は胆石異物などです。

腸と腸の癒着(ゆちゃく)が腸閉塞の原因になることもあります。以前に手術や放射線治療をしたことがある人では、炎症が原因で腸が癒着することがあります。癒着ができると腸が不自然に曲がったり捻れたりします。腸が曲がったり捻れたりすると腸の中の流れが悪くなります。

腸のまわりにあるものの変化によって、腸が外から圧迫されて腸閉塞が起こることがあります。腸などの腹部の臓器の周りには腹腔(ふくくう)という隙間があります。

腹腔のイメージ。腸のまわりには腹腔というスペースがある

がんが腹腔の中で広がることを腹膜播種(ふくまくはしゅ)といいます。腹膜播種が起きると腸の外側に生着したがんが小腸に浸潤し小腸を狭くしたり閉塞したりします。

大腸におきる腸閉塞

大腸の腸閉塞は大腸がんによる閉塞が多いとされています。他にも大腸の閉塞を来す病気として大腸憩室炎(けいしつえん)や虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん)という病気があります。身近なところでは便秘も大腸閉塞の原因になります。

他には小腸と同様にがんの腹膜播種(腹腔内にがんが広がること)や手術などの影響による癒着なども大腸の腸閉塞の原因になります。

3. 腸閉塞の主な原因の解説:脱腸・大腸がんなど

腸閉塞の原因となる病気は多くあります。腸を外側から締め付けるものや腸の中に詰まるものが腸閉塞を起こします。

虚血性大腸炎

虚血性大腸炎大腸の血液の流れが悪くなることで炎症が起こる病気です。60歳以上で発症することが多いとされています。

虚血性大腸炎の症状は腹痛・下痢・鮮血便などが特徴的です。虚血性大腸炎はほとんどの場合食事を中止して腸を休めることで改善し、その後もとの腸の状態にもどります。

しかし一部に炎症の後遺症で大腸が狭窄(きょうさく;狭くなること)し、腸閉塞の原因になることがあります。虚血性大腸炎による狭窄が原因で腸閉塞が起こった場合は狭窄した部分の腸を切除することを検討します。

大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)

図:大腸憩室のイメージ。大腸の壁が飛び出したもの

大腸憩室炎は大腸にできた憩室という場所に感染が起きる病気です。憩室は大腸の壁が飛び出してできたくぼみです。大腸の壁は本来は滑らかでくぼみはありません。くぼみがあると便がそこにたまり細菌感染がおきやすくなります。

大腸憩室炎が起きると腸が炎症により腫れ上がります。腫れは腸の内側に出てくることがあり、腫れ上がり方が激しいと腸の中身が流れなくなり腸閉塞を起こします。腸閉塞が長く続くと大腸に穴が開いて重い症状が現れることもあります。

大腸憩室炎の治療は食事を一時中止して腸を休めたうえ、適切な抗菌薬抗生物質)を投与します。

手術後の癒着など

癒着が原因の腸閉塞は手術後しばらく日数がたってから起きることが多いです。まれに手術後の短期間で起きることもあります。

腹部の手術では臓器に細かい傷を付けたり小さい出血を起こしたりすることがあります。すると炎症が起きて腸が癒着すると考えられています。腸に癒着が起きると腸が不自然に曲がったり狭くなったりして腸閉塞が起きる原因になります。

癒着による腸閉塞は食事をしばらくの間中止して腸を休めることがあります。このように体を傷付けない治療を保存的治療と言います。保存的治療の効果が低いときには、手術をして癒着している部分を剥がしたりすることを検討します。

手術後に起こる腸閉塞で緊急性が高いのは複雑性腸閉塞です。複雑性腸閉塞は腸が捻れたり腸が締め付けられたりして腸に流れ込む血流が途絶えるタイプの腸閉塞です。

大きな臓器を取り除く手術の後には取り除いた臓器がもともとあった場所に空間ができます。その空間に腸が落ち込むとまれに腸が捻れたり狭い隙間に入り込み血流がなくなります。血の巡りが悪くなった腸は時間が経過すると壊死(えし;細胞の死)します。腸が壊死すると腸に穴があき、腹膜炎という命に危険を及ぼす状態になります。

悪性腫瘍(がん)の腹膜播種

がんの腹膜播種のイメージ

胃がんや膵臓(すいぞう)がん、大腸がんが進行するとがん細胞が腹腔内に広がることがあります。これを腹膜播種と呼びます。腹腔は腹部の臓器同士の間にある隙間のことです。

腹膜播種が起きると腸の外側にがん細胞が付着してそこで増殖することがあります。がん細胞の増殖が進むと腸を巻き込み腸閉塞が起きます。

腹膜播種が原因で腸閉塞が起きた場合は手術が必要となることがあります。消化管バイパス術で腸の流れを良くしたり肛門の代わりに便を出す人工肛門を造ったりする方法があります。

ただしがんを治療している最中の人や治療後の人に腸閉塞が起きたからといって必ずしも腹膜播種が起きているとは限りません。手術を受けた後であれば手術の影響かもしれません。原因についてしっかりと調べて対応について医師と相談することが大事です。

胃がんや膵臓がん、胆道がんの腸への浸潤

胃がん膵臓がん胆道がんは十二指腸やその近くの場所にできるがんです。がんは周りの組織に浸潤(しんじゅん)する性質があります。浸潤とは隣り合った組織に入り込むようにしてがん細胞が広がっていくことです。十二指腸の近くの臓器のがんが進行すると十二指腸へ浸潤して腸閉塞の原因になります。十二指腸の閉塞は消化管バイパス消化管ステントなどを使って治療することがあります。

大腸がん

大腸の腸閉塞がきっかけで大腸がんが発見されることがあります大腸がんが大きくなると筒状の大腸を塞ぐことがあり、腸閉塞の原因になります。

大腸がんが原因で腸閉塞が起きている場合には大腸がんを大腸とともに切除して残った腸をつなぎ直す手術などをします。

そのときの体の状況や大腸がんの状態に応じて、すぐに手術をするか一度腸閉塞の状態を安定させた後に手術をするかを判断します。

アナフィラクトイド紫斑病は腸閉塞の原因?

アナフィラクトイド紫斑病(しはんびょう)は全身の細かい血管に炎症が起こることを原因とした病気です。アレルギー性紫斑病シェーンライン・へノッホ紫斑病(Schönlein–Henoch紫斑病)とも呼ばれます。全身の血管に炎症が起きうるので様々な場所で症状が現れます。

腸の壁の血管に炎症が起きると腸の壁が腫れあがります。ひどい場合には腸の中の流れを妨げるので腸閉塞の原因になります。

また腸重積(ちょうじゅうせき)という病気が続いて起こることがあります。腸重積は腸が肛側の腸に入りこんだ状態です。腸重積は複雑性腸閉塞の原因になります。

腸結核は腸閉塞の原因?

腸結核結核菌が腸に感染した病気です。肺などに感染を起こした結核菌が血流に乗って腸に至る場合と、結核菌を口から飲み込んで腸に感染する場合があります。腸結核は小腸・大腸の両方に起こりえますが大腸(盲腸・上行結腸)に感染しやすいことがわかっています。腸結核が起きると腸閉塞や腸穿孔(腸に穴が開く)を起こすことがあります。治療は抗結核薬による治療が中心ですが腸閉塞や腸穿孔が起きている場合には手術が検討されることがあります。

脱腸(ヘルニア)

脱腸は腸のヘルニアのことです。

ヘルニアは臓器が本来の位置とは違った場所に飛び出した状態のことをさします。ヘルニアの原因は臓器を支えている筋肉などが弱くなることです。腸閉塞の原因となる主なヘルニアは以下の3つです。

  • 鼠径(そけい)ヘルニア 
  • 大腿(だいたい)ヘルニア
  • 腹壁(ふくへき)ヘルニア 

腸のヘルニアは不自然な膨らみなどから発見されることが多く、できた場所によっていくつかの種類に分類されます。

鼠径ヘルニアは足の付根に近い場所、大腿ヘルニア鼠径ヘルニアよりさらに太ももに近い場所にできます。

腹壁ヘルニアはお腹に現れます。腹壁を構成する腹直筋などが弱くなることが原因です。腹壁ヘルニアは手術後などの後遺症としても知られています。

ヘルニアが現れるとすぐに腸閉塞が起こるわけではありません。しかし、腸閉塞などを予防するためにもヘルニアが現れた場合は治療の必要性について医師に相談することが大事です。

腸軸捻転(ちょうじくねんてん)

腸軸捻転は腸が捻れることです。複雑性腸閉塞の原因になります。

腸軸捻転が起こると捻れにより腸の中が閉塞してしまいます。また腸が捻れると腸の血流も悪くなり腸が壊死(細胞の死)します。これが複雑性腸閉塞です。

腸軸捻転は小腸やS状結腸などに起こります。

腸重積(ちょうじゅうせき)

図:腸重積のイメージ。回腸(小腸)が上行結腸(大腸)の中に入り込んでいる

腸の一部が腸の中に入り込んでしまう病気が腸重積です。腸重積は1歳までに多い病気で、腸のリンパ節が腫れることなどが原因です。腸重積の症状は腹痛が強くなったり弱くなったりすることや血便を特徴とします。

腸重積は腸に壊死が起こる複雑性腸閉塞の原因になります

4. 日常生活の中にある腸閉塞の原因

腸閉塞は病気によって引き起こされることもあれば日常生活の中のちょっとしたことから起こることもあります。ここでは日常生活の中で腸閉塞の原因となるものについて解説します。

腸閉塞の原因となる食べ物がある?

食べたものが原因でおきる腸閉塞を食餌性腸閉塞(しょくじせいちょうへいそく)といいます。食餌性腸閉塞の原因となる食品は餅(もち)やごぼう、昆布、コンニャクなどが知られています。

食べ物の中には腸閉塞の原因になるものがありますが、それらを全く食べてはいけない訳ではありません。適正な量をしっかりと口の中で小さく噛み砕いて飲み込みこむことが腸閉塞を避けてかつ食事も楽しめる有効な方法です。

腸閉塞と食べ物の関係については「腸閉塞やイレウスの注意点:受診するタイミング、再発予防のための食事など」で解説しています。あわせて参考にしてみてください。

参照:Intern Med. 2011;50:2737-9

便秘は腸閉塞の原因?

それほど多くはないものの便秘が腸閉塞の原因になることがあります。特に硬い便で腸閉塞が起こります。便秘を解消するにはどうすればいいでしょうか。便秘の解消に良いと考えられることがあります。

  • 生活リズムを整える(食事の時間、就寝時間)
  • 食物繊維を適度に摂取する
  • 水分を多めに摂取する
  • 適度な運動を生活に取り入れる

まず日常生活で便秘の解消によい習慣を取り入れることから始めましょう。食物繊維は便秘などの排便習慣を改善する可能性があります。適度な量の食物繊維を食生活に取り入れることが大事です。
食物繊維は適量を超えると腸の中の流れを妨げるので、腸閉塞の原因になりえます。しかし、自分にとって適度な量を知るのは簡単ではありません。医師や栄養士などに食事について相談してみると、適度な量の目安を知ることができるので利用してみてください。

異物を飲み込むと腸閉塞が起きる?

高齢者や小児(子供)が誤って異物を飲み込んだことで腸閉塞になることがあります。

よく飲み込まれる異物は入れ歯やPTPシート(薬の包装)、つまようじ、おもちゃなどです。異物を飲み込んでも腸閉塞になるとは限りません。もし異物を飲み込んでしまった場合には無理に吐かせたりはせずに医療機関を受診して相談してみてください。

5. イレウスの主な原因の解説:腹膜炎・急性膵炎・薬剤・手術

イレウスは、腸の麻痺や痙攣(けいれん)によって腸管の中の流れが滞っている状態です。イレウスでは腸が詰まったり狭くなったりしていない点が腸閉塞との違いです。腸の動きが止まる原因は腸管が麻痺したり(麻痺性イレウス)、痙攣したりする(痙攣性イレウス)ことです。腸を麻痺させる原因には以下のものがあります。

  • 腹部の手術の既往(過去に腹部の手術を行ったことがある)
  • 腹膜炎(腹部の臓器を包んでいる腹膜の炎症)
  • 脊髄損傷
  • 頭蓋内血管障害(脳出血脳梗塞など)
  • 薬剤
  • 腸間膜領域の血流障害(腸の血流が悪くなった)

イレウスの原因のほとんどは腸管の麻痺です。痙攣性イレウスは非常にまれです。鉛中毒や精神疾患などが痙攣性イレウスの原因となることがあります。

腹部手術の既往:過去に腹部の手術経験がある

手術の影響で腸が麻痺することがあり、イレウスの原因になります。

手術後のイレウスは、手術中の操作や手術中の点滴による腸の浮腫むくみなどの様々な要因が重なり発生します。イレウスは手術後数日から数週間で起こることが多いです。

イレウスはしばらく食事を中止して腸を休めることが治療になります。腸の動きを活発にするために漢方薬を飲んだり、腸の負担を軽くするために鼻から胃や腸に管(胃管・イレウス管)を入れることもあります。

腹膜炎:腹腔内や腹膜の炎症

腹膜炎は腹膜や腹腔内に起こる急性炎症のことです。腹腔(ふくくう)は腸などのお腹にある臓器同士の隙間です。腹腔に隣り合う臓器の表面は腹膜(ふくまく)で覆われています。つまり腹膜に囲まれた空間が腹腔だとも言えます。

腹膜炎細菌感染やがんなどで起こります。腹腔内や腹膜に炎症が起きると腸に影響が及び腸が動かなくなりイレウスの状態に陥ります。腹膜炎の原因になっている病気を治療することでイレウスの改善が期待できます。

急性膵炎

急性膵炎は膵臓で分泌される膵液が何らかの原因で活性化して膵臓と周囲の組織を溶かしてしまう病気です。膵液は活性化するとタンパク質などを溶かす働きがあり、その働きは強力です。急性膵炎はその激しさからお腹の火傷と呼ばれることもあります。

急性膵炎の激しい炎症は腸にも影響を及ぼします。激しい炎症が起きると腸は動きを止めてしまいイレウスが起こります。

急性膵炎をしっかりと治療することでイレウスの改善が期待できます。

脊髄損傷・頭蓋内血管障害

脊髄(せきずい)は脳とつながっている大きな神経の塊です。背骨の中には筒状の空間があり、脊髄は背骨の中に納まっています。脊髄は背骨によってけがから守られているのですが、大きなけがで脊髄が損傷されることがあります。

頭蓋内脳血管障害(とうがいないけっかんしょうがい)は脳梗塞(のうこうそく)や脳出血のことです。

脊髄損傷や頭蓋内血管障害を患った人は、神経の障害が後遺症として残ることがあります。腸の動きをコントロールする神経が上手く働かなくなるとイレウスが起きます。また便秘がちになることも多いので便秘がひどくなることで腸閉塞にもなりえます。

薬剤性

ほかの病気の治療で使用する薬剤がイレウスの原因になることがあります。少し難しい用語が並びますが以下はイレウスの原因になる主な薬です。

  • ムスカリン受容体の遮断作用(抗コリン作用)を有する薬
    • 硫酸アトロピン
    • 鎮痙薬(ロートエキスなど)
    • 頻尿・尿失禁治療薬
    • 三環系抗うつ薬
    • 抗精神病薬(クロルプロマジンなど)
  • 抗がん剤免疫抑制剤
    • ビンクリスチン
    • イリノテカン
    • ボルテゾミブ
    • シスプラチン
    • フルオロウラシル
    • タクロリムス
  • オピオイド(モルヒネ、オキシコドンなど)
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(糖尿病治療薬)

これらの多くは薬の影響で腸の動きが悪くなりイレウスが起きる場合があります。また抗がん剤のように腸管に障害を起こしたり、α-グルコシダーゼ阻害薬のように消化吸収を遅らせることから腸内容が増加・停滞しイレウスのような症状が現れるケースもあります。

イレウスの可能性があっても薬を使うことがどうしても必要になることがあります。薬剤性のイレウスを避けるには次の点に注意してください。

もしイレウスを経験したことがある場合は新しい薬を開始する前にイレウスになったことを医師に伝えてください。イレウスを起こしにくい薬への変更が可能かもしれません。

イレウスになったことがない人も、新しい薬が始まる時は医師や薬剤師から副作用の説明があると思います。副作用などの説明をしっかりと聞いておくことが速やかな対応を可能にします。そして万が一イレウスを疑う症状が現れたときには速やかに医療機関を受診することが大事です。

腸間膜領域の血流障害:腸の血流が悪くなる

腸の血流に障害が起きると腸は動きを止めてしまいイレウスを起こします

腸に血液を送ってくる血管のうち、心臓に近い上流の血管である上腸間膜動脈(じょうちょうかんまくどうみゃく)や下腸間膜動脈(かちょうかんまくどうみゃく)に血流障害が起きると広範囲の腸に影響を与えて重い症状が現れることがあります。

イレウスの多くは手術を必要とはしませんが、腸間膜領域の血流障害が起きた場合には手術が必要になります。

6. 新生児に腸閉塞やイレウスを起こす原因は?

新生児とは生後28日以内の赤ちゃんのことです。

生まれて間もない赤ちゃんにも腸閉塞やイレウスが起きることがあります。その多くは先天異常から起こるもので、生まれてから早い段階で治療をする必要があります。

【新生児の腸閉塞の主な原因】

  • 先天性腸閉鎖・狭窄 

【新生児のイレウスの主な原因】

新生児の腸閉塞やイレウスは生まれてすぐの診察や、母乳やミルクの嘔吐を繰りかえすことなどから発見されます。新生児は授乳にまだ慣れていなので嘔吐をすることはよくあります。嘔吐をしたからといって腸閉塞やイレウスが必ず起きている訳ではありません。嘔吐の回数が多い場合や嘔吐物から酸っぱい匂いがするなどの場合は医療機関を受診して診察や検査を受けて調べてみてください。

7. 子供に腸閉塞やイレウスを起こす原因は?

子供の腸閉塞は成人とは違う原因で起きることがあります。治療法は成人と同様に保存的な治療と手術の2つから選ぶことになります。

一方でイレウスは大人と同じく腹膜炎や過去に受けた手術が原因となることがあります。

【子供の腸閉塞の主な原因】

【子供のイレウスの主な原因】

小児の腸閉塞やイレウスは嘔吐や腹部膨満感などの症状で発見されることがあります。小児は言葉が発達段階にあるので症状を上手く伝えられなくて病気が発症してから時間が経った状態で見つかることもあります。

腸閉塞やイレウスはできるだけ早く発見して治療することが望ましいです。早期発見のためには保護者などがいつもと違うようすなどを感じ取ることが大事です。いつもより少し元気がなかったり機嫌不良が続くときには詳しく質問をしたり体に触れて症状がないかを聞いてあげることも良い方法だと思います。

8. 高齢者に腸閉塞やイレウスが多いのはなぜ?

腸閉塞は若くてもなりますが、腸閉塞は高齢者ほど多い傾向にあります。なぜでしょうか。腸閉塞の原因として多いものはがん(大腸がんなど)や脱腸(ヘルニア)、便秘などです。これらの原因は年齢を重ねるほどに現れる割合が上がります。他にも様々な要因によって高齢者は腸閉塞になる危険性も高まると考えられます。

がん

がんは腸閉塞の原因になります。そしてがんは年齢とともに発生する危険性が高まります。腸閉塞を起こすがんは大腸がんが最も多く、他には胃がん膵臓がん胆道がんなども腸閉塞の原因になります。

転移がない場合はがんを切除する手術で治療します。がんの広がりが大きい場合や周りへの浸潤が激しいときには腸の流れを改善する消化管バイパス術や人工肛門造設術を行い治療します。

脱腸(ヘルニア)

ヘルニアは体の壁の構造に異常が起きて本来中に収まっているものが脱出してくる状態のことを指します。腸が脱出するヘルニアは主なものとして3種類あります。

  • 鼠径(そけい)ヘルニア
  • 腹壁(ふくへき)ヘルニア
  • 大腿(だいたい)ヘルニア

ヘルニアは高齢者ほど多くなります。ヘルニアの原因のひとつはお腹などの筋肉が弱くなることです。筋肉は青年期に最も発達してその後衰えていきます。高齢者になると筋力が低下することでヘルニアが発症しやすくなります。

ヘルニアが現れた場合は治療の必要性について医師に相談することが大事です。

便秘

便秘でもヘルニアになることがあります。高齢者は腸の動きが弱くなっており便秘にもなりがちです。また高齢者では活動量も低下しがちです。1日の運動量が低下すると腸の動きはよくならないのでさらに便秘が助長されます。便秘を解消するには無理のない範囲での運動と適量の食物繊維の摂取などが効果的です。
食物繊維は摂取量が多くなると腸の中の流れを妨げて腸閉塞の原因になることがあります。このため、過料な摂取は禁物です。しかし、どの程度の量が自分にとって適量なのかを知ることは簡単ではありません。医師や栄養士に相談してみると自分にあった量を知ることができます。

薬の影響

高齢者になると慢性的な病気を抱えることが多くなり毎日薬を飲む人も増えます。薬の副作用で腸の動きが弱くなることがあります。高齢者は腸の動きが弱くなることが多くその影響により腸閉塞やイレウスが起こることも懸念されます。特に注意が必要な人は以前に腸閉塞やイレウスを経験したことがあるひとや便秘がちな人などです。

医療機関で新しい薬が開始される場合は副作用についても質問して聞いておくことと、過去にかかった病気などを医師や薬剤師に伝えておくことが腸閉塞やイレウスの対策にもつながります。