腸閉塞やイレウスの注意点:受診するタイミング、再発予防のための食事など
腸閉塞とイレウスは腸の流れに滞りが生じるという点で共通しています。腸閉塞やイレウスを予防するにはできるだけ腸に優しい食事などをすることが大事です。またその他の注意点などについても解説します。
目次
0. このページのまとめ
このページでは主に以下のことをまとめています。
- 腸閉塞やイレウスと思うタイミングやそのときの対応
- 腸閉塞やイレウスの再発を防ぐ方法
腸閉塞やイレウスは腹痛や嘔吐、腹部の強い張りなどが初期に現れることが多いです。腸閉塞やイレウスを経験したことがある人は、前と似た症状を感じたら受診をしてみてもよいと思います。今まで腸閉塞やイレウスなどになったことがない人でも腹痛や嘔吐などの症状が強くなってきたり長い時間続いたりする場合には受診して原因を調べてもらった方がよいと思います。
腸閉塞やイレウスは繰り返して起こす人がいます。腸閉塞やイレウスの予防には食事や生活習慣の見直しが有利に働きます。具体的には食事で消化の悪いものを避けることや適度な運動を行うこと、便秘にならないことなどです。以下ではまとめの内容を中心にして詳細な解説をしているので是非読んでいただければと思います。
1. 腸閉塞やイレウスの予兆はある? 気をつけるべき症状は?
腸閉塞とイレウスは腸の動きが悪くなる共通点がありますが、原因がことなります。腸閉塞は腸が塞がることが原因で、イレウスは腸の動きが
腸閉塞の初期症状
腸閉塞の症状は徐々に現れる訳ではなく突発的な腹痛から始まることが多いです。腹痛の特徴は原因によってことなります。単純性腸閉塞の場合には痛みが強くなったり和らいだり(間欠的)します。複雑性腸閉塞では痛みは持続することが特徴です。腹痛と同時か少し時間がたって吐き気・嘔吐(おうと)や腹部の強い張り(
イレウスの初期症状
イレウスは腸閉塞と異なり腹痛は軽度か感じないこともあります。イレウスの場合は腸の動きが止まるので嘔吐や腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)の症状が目立ちます。
予兆を感じたらどうしたらいいか?
腹痛や嘔吐、腹部膨満感などは腸閉塞やイレウス以外の病気でも現れる症状です。症状が当てはまったからといって腸閉塞やイレウスを起こしているとは限りませんし、他の原因のほうが多いかもしれません。症状から病気を完全に予測することは難しいです。
心配が募るときには医療機関を受診して診察や検査を受けるといいでしょう。腸閉塞やイレウスではないと言われたとしても診察や検査を受けることで原因の発見にもつながり、気持ちも軽くなると思います。
2. 腸閉塞やイレウスは自然治癒する?
腸閉塞やイレウスが起きてしまうと自然
腹痛や嘔吐があり腸閉塞やイレウスが頭をよぎったら自然治癒を期待して我慢することは得策ではありません。
なぜなら、腸閉塞やイレウスはできるだけ早く治療を開始した方がよく、緊急で手術が必要な場合もあります。
以前に腸閉塞やイレウスを患ったことがある人はもとより、少しでも不安があるならば医療機関を受診する方が後によい結果を導くでしょう。
3. 腸閉塞やイレウスが心配なときには何科を受診すればいい?
腸の病気を専門とする診療科は消化器内科や消化器外科です。腹痛や嘔吐などの症状があり腸の異常が心配な場合は相談するのに消化器内科や消化器外科が適した診療科です。
ただし腸閉塞やイレウスが起きるのは様々な状況が考えられるので、場面ごとに受診するのに適した診療科を考えていきたいと思います。
腹痛や嘔吐があらわれ腸閉塞が心配な人へ
腹痛や嘔吐がありおならや便もでない。症状を照らし合わせてみるとどうも「腸閉塞やイレウスの可能性があるかもしれない」という状況を想像してください。
腹痛や嘔吐は食中毒などが原因でも現れる症状なので少し我慢してみようかと思うかしれません。しかし腸閉塞やイレウスに自然治癒は期待できません。特に嘔吐物から便のような匂いがしたり腹痛が突然起きたりした場合などは腸閉塞やイレウスの可能性が高まります。
腸閉塞やイレウスは早期に治療を開始することが大事です。少しでも心配があるならば早めに医療機関を受診することが大事です。
腹部の手術を受けたことがある人へ
お腹の手術が原因で腸閉塞やイレウスが起こることがあります。消化器外科以外にも泌尿器科や産婦人科などでも開腹手術をします。腹部の手術を経験したことがあるならばまずは手術を受けた医療機関に受診することをお勧めします。手術を担当した医師や診療科であれば手術をした状況を把握しているので適切な判断が下せるからです。消化器内科や消化器外科の協力が必要な場合は担当医から相談してもらえるでしょう。
夜間や休日にお腹が痛い! どこに行けば診察を受けられる?
腸閉塞やイレウスを疑わせる腹痛は常に昼間に起きるわけではありません。夜間や休日に起きることも当然あります。そんなときにはどこへ行けば診察をしてもらえるのでしょうか。
夜間や休日は救急外来などで診察を受けることができます。
腹痛は腸閉塞やイレウス以外の病気が原因になることがあります。原因を特定するには診察だけでは難しく検査で判断しなければならないことの方が多いです。また仮に腸閉塞やイレウスであった場合は緊急で手術や処置が必要な場合があります。したがってできるだけ夜間や休日に医療機関を受診するときには受診を考えている医療機関で検査などができるかを確認した方がよいと思います。受診したはいいものの検査ができずに他の病院を紹介されることもありうる話です。もし腸閉塞やイレウスであった場合にはすみやかに治療を開始するためにも事前に医療機関についてインターネットや電話を使って少しでも調べておくことが大事です。
4. 腸閉塞やイレウスの再発を防ぐには?
腸閉塞やイレウスになると治療中は食事を食べられなかったり、鼻から管を入れたりすることがあり心理的にもつらいものがあります。腸閉塞やイレウスはできれば再発しないでほしいものです。腸閉塞やイレウスを再発しないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
食生活の見直し
食事は腸閉塞やイレウスを予防する上で重要です。腸閉塞やイレウスになったことがある場合は食生活を一度見直すことをお勧めします。
- 食事の量は多くはないか?
- 食べる速度は適切か?
- 食事は消化しやすいものを選べているか?
まず、食事の量と内容について確認することをお勧めします。腸閉塞やイレウスを繰り返している人は一回の食事量を控えめにして回数を分けるほうがよいです。もともと腸の動きが弱くなりやすくなっているところに多くの食べ物が腸に流れ込むと腸閉塞やイレウスがおきる可能性は高くなります。
食事はゆっくりとしっかり噛み砕いて飲みこむことも大事です。特に消化が悪いと考えられている食品を飲み込む際には気をつけてください。
食事の内容も大事です。消化の悪いものを多く摂取するとやはり腸閉塞やイレウスが起きる可能性が高くなります。下の章で消化のよい食事についての解説をしているので参考にしてもらえればと思います。また栄養士に食事について相談することも有効な手段です。
適度な運動ができているかを確認
腸の動きは適度な運動により活性化します。腸閉塞やイレウスを繰り返している人は運動不足がないかを確認してみてください。激しい運動は必要ありません。ウォーキングなどの軽い運動で十分です。
便秘の解消・予防
便秘は腸閉塞の原因になります。できれば便秘にならないようにする、また便秘を解消することが腸閉塞の再発予防になります。
便秘の解消・予防には以下のような方法があります。
- 生活リズムを整える(食事の時間、就寝時間)
- 食物繊維を適度に摂取する
- 水分を摂取する
- 適度な運動を生活に取り入れる
まず便秘の解消・予防によい習慣を日常生活に取り入れることから始めてください。
食物繊維や水分の摂取は便秘の改善・予防に効果的です。ただし、食物繊維は消化されにくいので摂取する量が多すぎると腸の流れのさまたげになり、腸閉塞を起こしてしまうことがあります。たくさんの量をいきなり摂取するのではなく、少量から開始して、便通などとの関係をみながら適量を見定めるようにしてください。便通と食事の内容を記録して振り返ると適量の目安がわかりやすいです。また、食物繊維を多く摂れば、腸閉塞を起こしにくくなるわけではありません。自分にとって必要な量を守ることが大切です。
医師や栄養士に相談して、食事に取り入れるようにしてください。
適度な運動をすることで腸に刺激を与えることができ腸の動きを活発化することができます。できる範囲で散歩などを生活に取り入れてみてください。
これらの方法でも便秘を解消できない場合は医師に相談して便を柔らかくする薬などを検討してもらうこともよいでしょう。
普段飲んでいる薬の確認を! 腸閉塞やイレウスの原因になる薬
- ムスカリン受容体の遮断作用(抗コリン作用)を有する薬
- 硫酸アトロピン
- 鎮痙薬(ロートエキスなど)
頻尿 ・尿失禁治療薬- 三環系抗うつ薬
抗精神病薬 (クロルプロマジンなど)
抗がん剤 ・免疫 抑制剤- ビンクリスチン
- イリノテカン
- ボルテゾミブ
- シスプラチン
- フルオロウラシル
- タクロリムス
- オピオイド(モルヒネ、オキシコドンなど)
- α-グルコシダーゼ阻害薬(糖尿病治療薬)
腸閉塞やイレウスを一度経験したことがある人は新しい薬を開始する前に腸閉塞やイレウスになったことがある旨を医師に伝えてください。腸の動きに影響が少ないような薬への変更が可能かもしれません。
5. 腸閉塞やイレウスになりにくい食事は? 献立など
腸閉塞やイレウスになりにくい食事は消化がよく腸の流れを妨げない食べ物です。消化がよく腸閉塞やイレウスによいと考えられる食べ物を下に挙げます。消化のよいものは脂分が少ないものや柔らかいものです。
油分が多いものや繊維質が多いものは消化しづらく腸閉塞やイレウスには不利に働きます。繊維質に関しては便秘の解消には良いのですが、摂りすぎると腸の流れを妨げて腸閉塞を起こす危険性を高めてしまいます。このため、多すぎないよう適度な量をとることが大切です。特に、腸閉塞が治ったばかりの時期には少量から開始するようにしてください。腸閉塞を予防しようとたくさんの量をとると、腸閉塞が再発してしまうことも有りうるからです。
食べ物を消化する力や腸の状態には個人差があるので、適量も一人ひとりで違います。便通と食事の内容を記録するなどして自分にあった食事の種類や量などを探してみて下さい。
以下では分類ごとの食品や食事について「消化のよいもの」と「消化の悪いもの」を紹介していきます。
【穀類】
消化のよいもの | 消化の悪いもの |
おかゆ・うどん・食パンなど | ラーメン・そば・コーンフレーク・とうもろこしなど |
穀類はできるだけ小麦粉やお米を使ったものが消化によいです。それもできるだけ火を通して柔らかくしたもののほうが消化はよくなります。
【イモ類】
消化のよいもの | 消化の悪いもの |
じゃがいも・長いも | さつまいも・こんにゃく・しらたき |
イモ類にも消化の良い物と悪いものがあります。こんにゃくやしらたきは消化が悪く腸閉塞の原因にもなるので食べるときには量を少なめにするなどの工夫をおすすめします。じゃがいもなどはさらにすりつぶしてポテトサラダにするなどの工夫があるとさらに消化がよくなります。
【豆類】
消化のよいもの | 消化の悪いもの |
豆腐・みそ・高野豆腐 | 納豆・おから・ |
タンパク質などが多く含まれ栄養価が高い豆類ですが、納豆やがんも、油揚げなどは消化がよくはありません。
【卵】
消化のよい食べ方 | 消化の悪い食べ方 |
半熟卵・卵豆腐 | 生卵・固茹でにした卵・目玉焼き |
卵は食生活に欠かせません。卵一つとっても調理の方法で消化の良し悪しがでます。できるだけ柔らかい触感を残した調理法が消化にはよいです。
【魚介類】
消化のよいもの | 消化の悪いもの |
白身魚(たい・ひらめ・かれい・あじ) | イカ・タコ・青魚・かまぼこ・貝類 |
魚介類の中では白身魚が消化のよい食べ物です。調理法は刺し身などよりはクリーム煮やシチューの中に入れるなど火を通した方法がさらに消化によいです。
【肉類】
消化のよいもの | 消化の悪いもの |
赤身(牛・豚)、ささみ肉 | 霜降り肉・ハム・ソーセージ・とんかつ・唐揚げ |
肉類の食品を選ぶには油分が少ない部位のものを選ぶことが大事です。加工肉にも油分が多く含まれているので注意が必要です。調理法としては煮込み料理にすると油が落ちて胃や腸にも優しいです。
【野菜】
消化のよいもの | 消化の悪いもの |
カブ・大根・キャベツ・かぼちゃ・人参 | ごぼう・れんこん・たけのこ・おくら |
食物繊維の多い食べ物は消化が悪く、食物繊維が少ないものの方が消化はよいです。ただし食物線維が少ない食事は便秘の原因になり便秘は腸閉塞やイレウスの
腸閉塞からは回復したばかりのときは、医師や栄養士に相談してみるのみ良いでしょう。
極力偏りは少ないようにすることがポイントです。
【きのこ・海藻】
消化のよいもの | 消化の悪いもの |
のりの佃煮 | きのこ類・わかめ・昆布・ひじき |
きのこや海藻には
【果物】
消化のよいもの | 消化の悪いもの |
りんご・バナナ | キウイ・スイカ・梨・パイナップル・ドライフルーツ |
果物は間食としても食後のデザートとしても口にする機会が多く体にも優しいイメージがあるかもしれません。果物にも消化の良し悪しがあります。消化の悪いものは食べ過ぎないほうが安心です。