ちょうへいそく(いれうす)
腸閉塞(イレウス)
腸の中の食べ物の流れが途中で詰まってしまう病気。腸がねじれたり、動きが鈍かったり、大腸がんなどが原因で起こる
11人の医師がチェック 134回の改訂 最終更新: 2018.03.02

腸閉塞やイレウスはどんな検査で診断する?レントゲン・CTの役割

0. このページのまとめ

このページでは主に以下のことをまとめています。

  • 腸閉塞とイレウスの違いについて
  • 腸閉塞やイレウスの検査の目的
  • 腸閉塞やイレウスが疑われる場合に用いる検査

腸閉塞とイレウスは同じ意味で用いられることもありますが、原因が異なるのでそれぞれを分けるという意見があります。このページでは腸閉塞とイレウスを分けて解説しています。腸閉塞とイレウスの違いは、簡単にいうと腸閉塞は腸閉塞は腸の中にものが詰ったり腸が外から圧迫を受けたりすることで、イレウスは腸の動きが麻痺することです。

検査はレントゲン検査やCT検査、血液検査などいくつか種類がありますが、それぞれで調べられる内容が違うので状況に応じて使い分けます。

症状から腸閉塞やイレウスが疑われる場合にはいくつかの検査を用いて腸閉塞やイレウスが起こっているかを調べたり原因について調べます。

以下ではまとめの内容を中心にして詳細な解説を加えているので是非読んでいただければと思います。

1. 腸閉塞とイレウスの違いとは?

まず腸閉塞とイレウスの違いについて説明します。

腸閉塞とイレウスという言葉は同じ意味で使われることもあります。一方で腸閉塞とイレウスは違うものとして両者を区別する立場もあります。

腸閉塞とイレウスはともに腸の中の流れが止まることで症状が現れます。腸閉塞とイレウスを分ける考え方では腸閉塞とイレウスの原因の違いは以下になります。

【腸の中の流れが止まる原因:腸閉塞とイレウスの違い】

  • 腸閉塞:腸にものが詰まったり外からの圧迫などの物理的な原因がある
  • イレウス:腸が内や外からの刺激などで動かなくなるが物理的な原因はない

『急性腹症診療ガイドライン 2015年』でも腸閉塞とイレウスを区別して説明が行われています。このページでも腸閉塞とイレウスを区別して説明していきます。

従来の分類と『急性腹症診療ガイドライン 2015年』に準じたこのページの分類を比較します。

【従来の分類】

  • 機械性腸閉塞
    • 単純性腸閉塞(閉塞性腸閉塞、閉塞性イレウス)
    • 複雑性腸閉塞(絞扼性腸閉塞、絞扼性イレウス)
  • 機能性腸閉塞
    • 麻痺性腸閉塞(麻痺性イレウス)
    • 痙攣性腸閉塞(痙攣性イレウス)

【急性腹症診療ガイドライン 2015年に準じた分類】

  • 腸閉塞
    • 単純性腸閉塞
    • 複雑性腸閉塞
  • イレウス

このページの解説では、従来機能性腸閉塞と呼んでいたものをイレウスとし、他の腸閉塞にはイレウスという呼び方をしません。

ただし医療機関によっては腸閉塞とイレウスを区別せずに説明が行われることもあります。その場合は腸が動かない原因について尋ねることで腸閉塞とイレウスのどちらが起きているかが理解できると思います。

2. 腸閉塞やイレウスの診断にはどんな検査がある?:よく使う検査一覧

腸閉塞とイレウスは原因が違っても腸の中の流れがとまる点で共通しています。このため腸閉塞とイレウスの症状は似ており検査を行わないと区別が難しいです。また腹痛などの原因になる病気は他にも多くありそれらの可能性がないかを検査で確認します。

腸閉塞やイレウスが疑われるときの検査などには主に以下のものを用います。

  • 問診
  • 身体診察 
  • 血液検査
  • 超音波検査
  • レントゲン検査
  • CT検査

全ての検査が必要なわけではありません。状況によって適した検査を組み合わせて診断を行います。以下では腸閉塞やイレウスの診断に用いられる検査を紹介します。

3. 腸閉塞やイレウスの問診では何を聞かれるのか?

腹痛には様々な原因があります。腸閉塞やイレウスだけではありません。原因を特定するには問診が大きなヒントになることがあります。ここでは腸閉塞に限らず腹痛の問診の例をあげてみます。

  • 腹痛が起きはじめた時間
    • 腹痛が急に起きたのか徐々に起きたのかが重要です。
  • 最も痛む場所
    • 腸閉塞では腹部の中央が痛くなることがあります。
  • 痛みが軽くなったりひどくなったりするか
    • 腸閉塞では腹痛が強くなったり弱くなったりするという特徴的な痛みが現れることがあります。
  • 下痢や便秘、吐き気・嘔吐の有無
    • 腸閉塞では便秘になることが多いですが、下痢などの症状が現れることもあります。普段からの便通の状態も伝えることが大事です。
    • 吐き気や嘔吐は腸閉塞以外の病気でも現れる症状です。腸閉塞の場合は吐物が胆汁の色である緑がかったものだったり、便のような臭いがするものがでることがあります。
  • 食事の内容
    • 食事が腸閉塞の原因になることがあります。例えば餅(もち)などはまれに腸閉塞の原因となります。数日前まで振り返って伝える方が望ましいです。
  • 今までにかかった病気や治療中の病気
    • 腸閉塞は手術の影響で起きることがあります。かなり前の手術でも時間を経て腸閉塞の原因になりえます。腹部以外の病気が原因で腸閉塞が起こることもあります。治療中の病気を含めて問診では伝えて下さい。
  • 定期的に飲んでいる薬の有無
    • 定期的に飲んでいる薬が原因で腸閉塞が起こることもまれですがありえます。またサプリメントを含めて飲み薬は漏らさず伝えることが大事です。複数の薬を飲んでいる場合にはお薬手帳などを持参すると漏れをなくす役に立ちます。

実際には腸閉塞やイレウスが起こっている人でもすべて上のとおりの答えになるとは限りません。自分で腸閉塞に当てはめたり、逆に違う点を強調したりする必要はありません。事実をありのままに、なるべく詳しく答えてください。

腹痛の原因になる病気を特定するのに役立つ問診について解説しました。腸閉塞やイレウスを診断したりその原因を推定するには問診が重要です。

お腹が痛くて苦しいのに様々な質問に答えるのはつらいものがあります。質問の意味がわかりにくいこともあるかもしれませんが、ここで挙げたことを参考にして診察を受けてもらえればと思います。

4. 腸閉塞やイレウスの診察では何を観察しているのか?

腸閉塞やイレウスの診察では聴診や打診、触診などが重視されます。これらの診察では何がわかるのでしょうか。診察について医師の立場から解説します。

聴診

聴診では腸が動く音などを聞いています。お腹の中で起きている状況によって聴診で聞くことができる音が異なります。

  • 腸閉塞
    • 単純性腸閉塞:金属音と呼ばれる「キンキン」という高い音が聞こえることがある
    • 複雑性腸閉塞:腸の動く音が弱いまたは聞こえない
  • イレウス:腸の動く音がしない

腸閉塞やイレウス以外の病気でも同じような音を聴診で聞くことがあります。聴診だけでは診断はできませんが聴診は診断において重要な手がかりになることがあります。

打診

腸の中の流れが悪くなるとガスが腸の中にたまります。腸の中にガスがたまると腹部が張ってきます。腸の中にガスが充満しているお腹を指で軽く叩くと太鼓の様な感触や音を得ることができます。

触診

触診では腹痛のある場所や特徴を観察できます。腸閉塞の中でも複雑性腸閉塞は決まった範囲で激しい腹痛が起きることがあります。その他の病気が隠れていないかの判断材料としても触診は重要です。

5. 腸閉塞やイレウスの血液検査を行う目的は?何がわかる?

腸閉塞やイレウスの血液検査は全身状態を推定するのに役立ちます。

腸閉塞やイレウスが起こると嘔吐のため、また腸での水分の吸収が低下するため脱水の状態に陥ります。脱水が起こると体の中の電解質にくるいが生じて全身倦怠感などの症状が現れます。

血液検査は脱水の状態や電解質などを把握することができます。血液検査を参考にして適切な点滴の量や種類を決めていきます。

6. 腸閉塞やイレウスの画像検査

腸閉塞やイレウスの診断には超音波検査とレントゲン検査、CT検査の3つが特に大事な検査です。それぞれに特徴があり同時に全てを用いる訳ではありません。それぞれの検査について解説します。

超音波検査

超音波検査はエコー検査とも呼ばれる検査です。超音波を体に当てると、超音波の跳ね返りから体の中の様子を画像で観察できます。超音波検査は放射線を使わないので放射線による影響がありません。

超音波検査は液体のたまりなどを観察するのに向いています。苦手とするのは空気が多く含まれている場所の観察などです。腸閉塞やイレウスでは腸管の中に空気がたまっていることが多いので超音波検査だけでは診断が難しいことがあります。

超音波検査は他の病気を除外したりすることには有用ですが手術の必要性などはCT検査を用いて判断することが多いです。

レントゲン検査

レントゲン検査ではX線という放射線を使って写真を撮ります。レントゲン検査で使う放射線は微量です。レントゲン検査を使うと以下のポイントを調べることができます。

  • 病気の原因になっている場所:大腸と小腸のどちらに原因がありそうか 
  • 緊急性の判断:腸が破れて腹腔(ふくくう)に空気が漏れ出ていないか

レントゲン検査では腸が拡張した様子を観察することができます。一見すると同じように見える小腸と大腸ですが小腸では腸のしわが細かく大腸ではしわが太いという違いがあります。これらの特徴を観察して小腸と大腸のどちらに原因があるかを推定します。

またレントゲン検査は腸閉塞の緊急性を判断することにも使います。緊急度が高い複雑性腸閉塞は腸が捻(ねじ)れたりして腸への血流が途絶える腸閉塞です。複雑性腸閉塞では時間が経つと腸に穴が開きます。穴が開くことを穿孔(せんこう)とも言います。腸に穴が開くと腹腔内に空気が漏れ出ます。レントゲン検査では腹腔に空気が漏れ出ていないかを調べることができます。

腹腔のイメージ

レントゲン検査では腸閉塞からの回復具合を確かめることができるので腸閉塞の治療中は何回かレントゲン検査をすることになります。

CT検査

CT検査は放射線を使った画像検査です。レントゲン検査よりも多くの放射線を使います。CT検査では体の断面を撮影することができます。

CT検査は腸閉塞の診断には最も重要です。レントゲン検査より多くの情報を得ることができます。腸閉塞が起きている場所や原因などの推定にもCT検査は役立ちます。

CT検査の方法の一つに造影剤を使用する造影CT検査があります。複雑性腸閉塞を見分けるために大事な検査です。造影CT検査は造影剤を注射で体の中に入れてCT検査をします。造影剤は血管の形をくっきりさせる効果があります。血流が多い臓器は造影剤により白く色づいて写ります。複雑性腸閉塞では血流が途絶えているので腸が色づかなくなります。CT検査で複雑性腸閉塞と診断された場合はすみやかな対応が必要です。

イレウス管造影検査

イレウス管は鼻から腸にまで通す管のことです。イレウス管を挿入すると腸液を体の外に出すことができます。腸液を体の外に出すと腸を安静にすることができます。イレウス管という名前がついていますがイレウスだけではなく腸閉塞の治療にも使います。

イレウス管は検査にも利用することができます。イレウス管から造影剤を注入することで腸の動きや狭くなっている部位を観察することができます。イレウス管造影で腸の動きが良くなっていたり狭くなっていた腸が広がっていることを確認できれば腸閉塞やイレウスがよくなっていると判断します。

7. 腸閉塞やイレウスで内視鏡検査をする?

腸閉塞やイレウスで用いられる内視鏡検査はいわゆる大腸カメラです。大腸に腸閉塞が起きている場合、その原因の検索を目的として行われることがあります。ただしほとんどの場合は腸閉塞の状態が落ち着いてから行われる検査です。主に大腸がんなどが原因で腸閉塞が起きていると考えられる場合に用いられます。

イレウスの場合に内視鏡検査が用いられることはまれです。