だいちょうがん
大腸がん
大腸の粘膜にできるがん。国内のがん患者数がもっと多く、死亡者数も女性において原因の1位
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大腸がんの抗がん剤治療:抗がん剤の種類、目的、費用

大腸がんの手術後の再発防止や手術できない場合の治療で抗がん剤化学療法)が使われます。時には手術の前にがんを小さくする目的で抗がん剤を使うこともあります。大腸がんの抗がん剤について説明します。

1. 大腸がんの抗がん剤治療の目的は?

現代医療のレベルでは、抗がん剤は大腸がんを根治する治療とは言い難いですが、延命効果はあります。そのため、抗がん剤を適したタイミングで用いることが一般に勧められます。

大腸がんは手術が最も成績の良い治療とされていますが、転移や再発によって手術することが難しい場合や、手術後のがん再発を予防するための補助療法として、化学療法が行われています。

また、術前化学療法という治療法があります。これもがんを根治するための治療ではないのですが、手術の前にがんの増殖を抑え、がんを小さくし手術をしやすくする目的で行われています。

大腸がんの抗がん剤治療はどんなもの?

抗がん剤の使い方が進歩したことにより、がんの縮小、症状のコントロール、再発予防、延命、生活の質(QOL)向上などへの効果が確認されてきています。

大腸がんではフルオロウラシル(5-FU、ファイブエフユー)という抗がん剤に加えてレボホリナートカルシウム(ホリナートカルシウム)という薬を組み合わせる治療が行われていました。この組み合わせにオキサリプラチン(商品名:エルプラット®など)という薬を加えた「FOLFOX(フォルフォックス)」という治療法や、イリノテカン(商品名:カンプト®、トポテシン®など)という薬を加えた「FOLFIRI(フォルフィリ)」という治療法などが主に用いられてきました。

近年、がん治療薬に分子標的薬という種類の薬が登場し、がん治療に進展をもたらしています。分子標的薬とはがん細胞の増殖などに関わる特定の分子を狙い撃ちにすることで、その働きを阻害する薬です。大腸がんではベバシズマブ(商品名:アバスチン®)、セツキシマブ(商品名:アービタックス®)、パニツムマブ(商品名:ベクティビックス®)といった薬剤をFOLFOX療法やFOLFIRI療法などに加える治療が行われています。またイリノテカンとテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(商品名:ティーエスワン®など)を併用した治療法を「IRIS」と呼びますが、これにベバシズマブを合わせた治療が転移性の大腸がんに高い有効性を示した例も報告されています。

最近では、レゴラフェニブ(商品名:スチバーガ®)、ラムシルマブ(商品名:サイラムザ®)、アフリベルセプトベータ(商品名:ザルトラップ®)といった新しい分子標的薬も登場し、またHER2陽性大腸がんに対するトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)とペルツズマブ(商品名:パージェタ)の併用療法など、治療の選択肢が広がってきています。

さらに、がん細胞の遺伝子変異を調べることで新たな治療薬が使用できるようになりました。がん細胞のDNAミスマッチ修復機能が欠損している患者さんではペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)、イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)といった「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬が使用できます。また、BRAF遺伝子変異がある場合にはエンコラフェニブ(商品名:ビラフトビ)、ビニメチニブ(商品名:メクトビ)が、NTRK遺伝子変異がある場合にはエヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)、ラロトレクチニブ(商品名:ヴァイトラックビ)が選択肢になります。注意しなければならないのは、これらの遺伝子変異を有する確率は数%程度であり、全ての患者さんにこれらの薬剤を使用できるわけではないということです。

2. 大腸がんの化学療法で使われる抗がん剤

大腸がんに対して使われている抗がん剤で基本となるのはフルオロウラシル(略号:5-FU)という薬です。この薬は無秩序な分裂を繰り返すがん細胞の代謝を阻害し、がん細胞を死滅させることから代謝拮抗薬という種類に分類されます。

テガフールという薬は5-FUのプロドラッグと呼ばれます。プロドラッグというのは、テガフールが体内で代謝されて5-FUになり作用するという意味です。テガフールのほかにも、植物成分を由来とするトポイソメラーゼ阻害薬のイリノテカン、プラチナ製剤のオキサリプラチンといった薬が大腸がんの薬物治療における中心となっています。そしてこれらの薬の効果を高める成分や副作用を軽減させる成分を併用する治療法、またFOLFOX療法やFOLFIRI療法といった複数の薬剤を併用する治療法が行われています。近年ではがん細胞の増殖に関わる特定の分子を狙い撃ちにする分子標的薬という種類の抗がん剤が登場し、治療の選択肢が広がってきています。

ここでは大腸がんに使われる代表的な薬剤に関して、作用の仕組みやレジメン(がん治療における薬剤の種類や量、期間、手順などの計画書)、注意すべき副作用などを説明します。

フルオロウラシル(略号・商品名:5-FU)

大腸がんに使う抗がん剤の中でも基本となる薬剤です。

がん細胞の代謝を阻害しがん細胞を死滅させる代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)という種類に分類されます。

もう少し詳しく作用の仕組みをみていきます。5-FUは、細胞増殖に必要なDNAの合成を障害したりRNAの機能障害を引き起こすことでがん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導させます。

現在では単剤(抗がん剤として単独)で使うことは少なく、他の抗がん剤もしくは5-FUの効果を増強する薬剤(主に活性型葉酸製剤)との併用により使われます。

大腸がんの化学療法では、5-FUにレボホリナート(l-ロイコボリン)とオキサリプラチンを併用した治療法をFOLFOX療法、5-FUにレボホリナートとイリノテカンを併用した治療法をFOLFIRI療法と呼び、切除不能の進行再発大腸がんの標準治療の一つになっています。

また5-FUは大腸がん以外にも、乳がんのCEF療法、食道がんのFP療法など多くのがん化学療法のレジメンで使われている薬剤の一つです。

5-FUで注意すべき副作用は吐き気や下痢、食欲不振などの消化器症状、骨髄抑制、うっ血性心不全、口腔粘膜障害、手足症候群などです。FOLFOX療法やFOLFIRI療法などではこれら5-FU自体の副作用に加えて併用する他の抗がん剤の副作用が加わることが考えられます。また5−FUは亜鉛の吸収を悪くするため副作用として味覚障害があらわれる場合があります。味覚障害と食欲不振は合わせて注意したい副作用です。

テガフール・ウラシル(略号:UFT)(商品名:ユーエフティ®)

テガフール・ウラシル(UFT)はテガフールとウラシルの2種類の薬を配合した製剤です。

テガフールはフルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグです。テガフールが体内で徐々に5−FUに変換され抗腫瘍効果をあらわします。

一方、ウラシルは5-FUを分解するDPD(ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ)という酵素の活性を阻害することで5-FUの血中濃度を高め、抗腫瘍効果を増強する役割を果たします。テガフール単独の製剤(フトラフール®)もありますが、UFTはウラシルを配合していることで腫瘍内で5-FU(及びその活性代謝物)の高濃度維持を可能にしています。

がんの種類によってはUFT単剤で使われることもありますが、大腸がんではUFTとホリナート(商品名:ユーゼル®など)を併用した治療法が一般的です。

UFT・ホリナート療法は通常、内服(飲み薬)での治療となります。がんの影響や薬の影響により口腔粘膜障害があらわれている場合には飲みにくさが生じることが想定されます。また食事の影響を受けるため、通常食事の前後1時間(場合によっては食事の前後2時間)を避けて服用します。また「28日服用した後、7日間休薬」などの休薬期間が指示されることが多いため、事前に処方医や薬剤師から服薬に関する注意事項などをしっかりと聞いておくことも大切です。

UFTで注意すべき副作用は5-FUと類似していて、下痢や食欲不振などの消化器症状、骨髄抑制、肝機能障害、口腔粘膜障害などです。

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(略号:S-1)(商品名:ティーエスワン®など)

S-1はテガフール、ギメラシル、オテラシルカリウムという3種類の成分からできている配合剤です。

中心となるのはテガフールです。テガフールが体内で5-FUに徐々に変換され抗腫瘍効果をあらわす一方、他の2種類の成分はテガフールを補助する役割を果たします。

ギメラシルはUFTにおけるウラシル同様、5-FUを分解するDPDという酵素の活性を阻害することで5−FUの血中濃度を高めて抗腫瘍効果を増強する役割を果たします。オテラシルカリウムは5-FUの主な副作用である消化器症状(消化管粘膜障害)を軽減する作用をあらわします。

S-1は元々、胃がんの抗がん剤として承認を受けました。のちに頭頸部がん、大腸がん、肺がん(非小細胞肺がん)、乳がん膵がんといったがんに対しても追加承認されました。

大腸がんではS-1単剤での治療の他、イリノテカン(IRI)との併用によるIRIS療法、オキサリプラチン(OX)との併用によるSOX療法などが選択肢となっています。

休薬期間を設ける場合も多く「28日間服用後、14日間休薬」とする場合や、IRIS療法における「(S-1を)14日間服用後、14日間休薬」などの服薬スケジュールが指示される場合があります。処方医や薬剤師から服薬方法などをしっかりと聞いておくことも大切です。

S-1の副作用として、オテラシルカリウムによって負担が軽減されているとはいえ食欲不振、吐き気、下痢、口内炎などの消化器症状には注意が必要です。他に骨髄抑制、肝機能障害、間質性肺炎などにも注意が必要です。

また、皮膚や爪などが黒くなる色素沈着や流涙(涙管が狭まり涙があふれ出る)といった症状があらわれる場合もあります。

S-1は内服薬(飲み薬)ですが、嚥下機能の状態などによりカプセル(ティーエスワン®配合カプセルなど)が飲み込みにくい場合には口腔内崩壊錠(ティーエスワン®配合OD錠)や顆粒剤(ティーエスワン®配合顆粒)といった剤形の変更も可能です。

ホリナート及びレボホリナート(略号:LV)

ホリナート(dl-ロイコボリン:dl-LV)及びレボホリナ−ト(l-ロイコボリン:l-LV)は活性型葉酸製剤と呼ばれます。LV自体は抗がん剤ではありませんが、大腸がんの化学療法で中心となる5-FUの抗腫瘍効果を高める作用などをあらわします。

レボホリナートはホリナート(dl体)と異なり、生物活性を有するl体のみからなる製剤です。ホリナートが免疫抑制薬のメトトレキサートの解毒剤としても使われるのに対して、レボホリナートは5-FUの効果増強のための専用製剤となっています。

大腸がんの化学療法ではLVを含むFOLFOX(5ーFU+LV+OX)療法やFOLFIRI(5-FU+LV+IRI)療法などが標準治療となっています。LVは大腸がんの治療のために重要な薬剤の一つと言えます。

LV自体はビタミンの一種である葉酸ですので副作用はかなり少ないと言えます。ただし。LVは5-FUなどの抗がん剤との併用療法において使われるため、併用する抗がん剤に基づく副作用に注意が必要です。

カペシタビン(略号:Cape、CAP)(商品名:ゼローダ®)

カペシタビンは5-FUなどと同じピリミジン拮抗薬に分類される抗がん剤です。

体内に吸収された後、肝臓や腫瘍組織で代謝され5−FUに変換され抗腫瘍効果をあらわします。5-FUの腫瘍内での濃度を高め、腫瘍組織以外での副作用を最小限に抑える目的で開発された経緯を持ちます。元々は乳がんの抗がん剤として承認され、その後大腸がんの抗がん剤としても承認されました。

カペシタビン単剤で使う他、オキサリプラチンとの併用によるXELOX(CAPOX:CapeOX)療法などが行われています。カペシタビンも「14日間服用後、7日間休薬」など、休薬期間を設ける場合が多い抗がん剤ですので、服用方法などに関して処方医からしっかりと説明を聞いておくことも大切です。

カペシタビンは骨髄や消化管で活性体になりにくいため副作用は比較的軽減されているとも考えられますが、下痢などの消化器症状、手足症候群、肝機能障害、骨髄抑制などには注意が必要です。またXELOX療法においてはカペシタビンと併用するオキサリプラチンによる末梢神経障害が比較的高頻度であらわれるとされ注意が必要です。

オキサリプラチン(略号:OX、L-OHP)(商品名:エルプラット®など)

オキサリプラチンは細胞増殖に必要な遺伝情報を持つDNAに結合し、DNAの複製及び転写を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす抗がん剤です。オキサリプラチンは化学構造の中にプラチナ(Pt、白金)を含むことからプラチナ製剤と呼ばれる種類の薬に分類されます。

オキサリプラチンは他のプラチナ製剤(シスプラチンなど)とは異なる化学構造を持っていることなどから、特に大腸がんの細胞に対して高い抗腫瘍活性を示します。

オキサリプラチンはFOLFOX療法(5-FU+LV+OX)やFOLFOXIRI(5-FU+LV+OX+IRI)、XELOX療法(Cape+OX)など、大腸がん化学療法における多くのレジメンで使われています。

オキサリプラチンの注意すべき副作用は過敏症、骨髄抑制、間質性肺炎、視覚障害、消化器症状などです。また手足や口(口唇)周囲の感覚異常、咽頭絞扼感(喉がしめつけられる感覚)などの末梢神経障害があらわれる場合があります。冷たいものに手で触らないようにするなど日常生活の中での予防も大切です。

イリノテカン(略号:IRI、CPT-11)(商品名:カンプト®、トポテシン®など)

イリノテカンは植物(喜樹:Camptotheca acuminata)由来の抗がん剤です。細胞分裂が進まないようにする作用により、がん細胞の増殖を阻止することで抗腫瘍効果をあらわすトポイソメラーゼ阻害薬という種類に分類される薬です。

がんを含めた細胞の増殖は細胞分裂によっておこります。細胞分裂に必要な酵素にトポイソメラーゼがあり、イリノテカンは主に「トポイソメラーゼI」のタイプを阻害する作用をあらわします。

多くのがんに対する抗がん剤として使われますが、大腸がんにおける化学療法ではイリノテカンに5-FUとレボホリナート(l-ロイコボリン)を併用したFOLFIRI療法が標準治療の一つになっています。その他、S-1との併用によるIRIS療法、FOLFOXIRI療法(5-FU+LV+OX+IRI)など、切除不能進行再発大腸がんの化学療法のレジメンに使われる薬剤の一つとなっています。

イリノテカンは骨髄抑制、間質性肺炎などの他、特に下痢に対しての注意が必要です。イリノテカンの下痢は薬剤の投与中から直後にあらわれる早発性の下痢と投与から数日経ってあらわれる遅発性の下痢の2種類があります。それぞれ下痢に合わせた対処が必要となります。イリノテカンによる下痢は「抗がん剤治療を行う時に使う補助薬」でも解説しています。

ベバシズマブ(抗VEGF〔血管内皮増殖因子〕ヒト化モノクロナール抗体)(分子標的薬)

がん細胞が増殖するには、がんに栄養や酸素を送るため新しく血管をつくる必要があります。これを血管新生と言います。血管新生や血管内皮の増殖に関わる物質が血管内皮増殖因子(VEGF)です。

ベバシズマブ(商品名:アバスチン®)はVEGFと結合することでがん細胞増殖に必要な血管新生を抑制することなどにより、抗腫瘍効果をあらわします。またベバシズマブは分子標的薬の中でも特定分子に結合するモノクロナール抗体という種類の薬です。大腸がん以外にも肺がん(非小細胞肺がん)、乳がん卵巣がん子宮頸がん悪性神経膠腫などの治療の選択肢となっています。

大腸がんでは主に標準治療のFOLFOX、FOLFIRI療法、XELOX療法などに加える(上乗せする)形でベバシズマブが使われます。切除不能進行再発大腸がんの一次治療や二次治療において強力な治療が必要である場合のレジメンに使われます。また一次治療における強力な治療が適応とならない場合においても、5-FUとレボホリナートとの併用(静注5-FU+LV+ベバシズマブ)やカペシタビンとの併用(Cape+ベバシズマブ)などが治療の選択肢になっています。


ベバシズマブの副作用として血栓塞栓症、高血圧、出血(血痰、粘膜からの出血など)、消化器障害(消化管穿孔など)、タンパク尿、創傷治癒遅延(傷が治りにくくなること)、骨髄抑制などに注意が必要です。骨髄抑制は特に他の抗がん剤との併用時などで問題になる場合があります。

またベバシズマブなどのモノクロナール抗体では、インフュージョンリアクションという過敏症が現れることがあります。インフュージョンリアクションとは薬剤投与による免疫反応などにより起こる有害事象で、薬剤の投与中及び投与後24時間以内に現れる症状の総称です。

ベバシズマブは体内で薬物が代謝される時間が比較的長い(治療内容などによっても異なる可能性があるが血中半減期が約2〜3週間と考えられる)こともあり、一度の投与によって現れた有害事象が1ヶ月あまり続く場合も考えられます。日々の血圧測定喀血吐血の有無、腹痛や胸痛の有無、呼吸の状態など日常生活の中での変化を見逃さないようにすることも大切です。

ラムシルマブ(ヒト型抗VEGFR-2モノクロナール抗体)(分子標的薬)

ラムシルマブ(商品名:サイラムザ®)は、ベバシズマブと同様、がんの増殖因子となる血管内皮増殖因子(VEGF)に関わることで抗腫瘍効果を現す分子標的薬です。

またラムシルマブも特定物質に結合するモノクロナール抗体です。ベバシズマブがVEGFそのものに結合するのに対して、ラムシルマブは本来VEGFが結合する血管内皮増殖因子受容体(VEGFR-2)に結合することでVEGFR-2の活性化を阻害し、腫瘍組織の血管新生などを阻害します。

ラムシルマブ(商品名サイラムザ®)は最初2014年に胃がんの抗がん剤として承認され、2016年の5月に大腸がんの抗がん剤として承認されました。2016年の6月には非小細胞肺がんの抗がん剤としても承認されています。

大腸がんの抗がん剤として承認されて比較的まだ日も浅いですが、切除不能の進行再発の大腸がんに対する一次治療でFOLFOX(またはXELOX)とベバシズマブを併用した治療に対して不応・不耐となった場合、その後の二次療法においてFOLFIRIとラムシルマブを併用する治療法が選択肢の一つとして考えられています。

ラムシルマブはモノクロナール抗体ですので、インフュージョンリアクションという過敏症が現れることがあります。インフュージョンリアクションとは薬剤投与による免疫反応などにより起こる有害事象で、薬剤の投与中及び投与後24時間以内に現れる症状の総称です。

ラムシルマブの投与前にはインフュージョンリアクションの軽減目的のため、ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン薬などの投与が考慮されます。

その他、好中球減少症、消化管穿孔、下痢、口内炎などの消化器障害、血栓塞栓症、高血圧、出血などに注意が必要です。

セツキシマブ(抗ヒトEGFRモノクロナール抗体)(分子標的薬)

細胞の増殖などに深く関わる上皮細胞増殖因子受容体(EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor)という物質に結合することで抗腫瘍効果をあらわす薬です。EGFRは正常組織以外にも、大腸がんなど多くのがんで発現が確認されています。EGFRの発現は予後の不良、生存率低下、転移率の上昇などと相関関係にあると考えられています。

セツキシマブ(商品名:アービタックス®)は細胞表面のEGFRに結合し腫瘍の増殖を抑えることで抗腫瘍効果をあらわすモノクロナール抗体の製剤です。

セツキシマブ単剤で(ほかの抗がん剤を同時に使うことなく)使う他、FOLFOXやFOLFIRIなどの標準治療に併用してセツキシマブが使われています。

セツキシマブの有効性に関してはKRASという物質の遺伝子変異の有無が重要となってきます。詳しくは割愛しますが、KRASはEGFRのシグナル伝達物質の一つでEGFRより下流の位置からがん細胞の増殖、浸潤・転移、血管新生などを亢進させるため、がん細胞にKRASの遺伝子変異がある場合にはセツキシマブによる抗腫瘍効果があまり期待できません。そのためセツキシマブは一般的にKRAS遺伝子変異のないタイプ(KRAS野生型)の切除不能再発進行大腸がんに対して使われます。

セツキシマブはモノクロナール抗体であり、インフュージョンリアクションという過敏症があらわれることがあります。インフュージョンリアクションとは薬剤投与による免疫反応などにより起こる有害事象で、薬剤の投与中及び投与後24時間以内に現れる症状の総称です。

インフュージョンリアクションに対するリスクなどを考慮して、症状軽減のためにセツキシマブの投与前にクロルフェニラミンマレイン酸塩などの抗ヒスタミン薬を前投与します。また症状などから必要に応じて副腎皮質ホルモンなどの前投与が考慮されます。

この他、皮膚障害、下痢などの消化器症状、間質性肺炎、心・血管系障害、低マグネシウム血症などに注意が必要となります。

パニツムマブ(ヒト型抗EFGRモノクロナール抗体)(分子標的薬)

パニツムマブ(商品名:ベクティビックス®)はがん細胞増殖に深く関わり、がんの悪性転化に伴って高頻度に出現する上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に作用する分子標的薬です。

細胞表面にあるEGFRに結合することで細胞増殖のシグナル伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわします。

パニツムマブ単剤(抗がん剤として単独)での使用の他、FOLFOX療法やFOLFIRI療法にパニツムマブを加えたレジメンでも使われる場合があります。

セツキシマブ同様、パニツムマブもがん細胞の増殖などに関わるシグナルであるKRASの遺伝子変異がある場合にはあまり効果が期待できないため、一般的にKRAS遺伝子変異のないタイプ(KRAS野生型)の切除不能再発進行大腸がんに対して使われます。

パニツムマブもセツキシマブと同様にモノクロナール抗体で作用の仕組みも類似していますが、パニツムマブは「ヒト型」のモノクロナール抗体になっています(セツキシマブは「ヒト/マウスキメラ型」)。一般的にはヒト型モノクロナール抗体ではインフュージョンリアクションがあらわれにくいと考えられていますが、注意は必要です。

他に皮膚障害、口内炎や下痢などの消化器症状、間質性肺炎、低マグネシウム血症などに注意が必要となります。

レゴラフェニブ(商品名:スチバーガ®)

レゴラフェニブは腫瘍や血管新生に関わる複数の酵素(プロテインキナーゼ)を阻害するキナーゼ阻害薬(マルチキナーゼ阻害薬とも呼ばれる)です。

具体的には、血管新生に関わるキナーゼであるVEGFR1〜3やTIE2、がん細胞が増殖する上で重要な腫瘍微小環境に関わるキナーゼであるPDGFRβやFGFR、腫瘍の形成に関わるキナーゼであるKIT、RET、RAF-1、BRAFといった多くのキナーゼを阻害する作用により抗腫瘍効果をあらわします。

レゴラフェニブは大腸がんの標準的な治療を行っても病勢が進んでしまった患者に対しての有効性などが確認されています。主に切除不能の進行再発大腸がんに対する三次治療以降の選択肢の一つとなっています。

経口薬(飲み薬)であるため一見すると服用がしやすいイメージもありますが、空腹時や高脂肪食(約945kcalで脂肪含量54.6g)の食後に服用した場合に血液中の薬物濃度などが低下することが確認されています。また飲み合わせに注意が必要な薬(リファンピシンなど)がある他、グレープフルーツジュースやセイヨウオトギリソウ(セント・ジョンズ・ワート)を含む飲食物がレゴラフェニブの血中濃度に影響を及ぼす可能性もあるため、これらの飲食物を控えるなどの注意も必要です。

レゴラフェニブはこれらの事項に注意しつつ、通常「1日1回の服用を3週間継続、その後1週間休薬」を1サイクルとして投与を繰り返していきます。

レゴラフェニブの注意すべき副作用の一つが手足症候群などの皮膚障害です。特に荷重がかかる部位に強く出現する傾向にあり、例えば足へのケアとして投与開始の最初の内は散歩などを控える、あるいは締め付けが強い靴を履くのを避けるなどの対処が考えられます。他にスキンケアとして保湿剤(尿素含有製剤やヘパリン類似物質含有製剤など)により皮膚の保護・乾燥防止をしたり、手足への過剰な刺激を避けたり、日焼けを防いだりすることなどが大切です。

他に肝機能障害、下痢などの消化器症状、高血圧、疲労や倦怠感などにも注意が必要です。

トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤(商品名:ロンサーフ®)

トリフルリジンとチピラシル塩酸塩の2種類の薬剤による化学療法です。トリフルリジン・チピラシル塩酸塩の開発コードからTAS-102療法と呼ばれることもあります。

トリフルリジンはDNAの合成に必要な酵素(チミジル酸合成酵素)の働きを阻害しDNA合成を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬です。チピラシルはトリフルリジンを分解する酵素(チミジンホスホリラーゼ)を阻害することで、トリフルリジンの働きを補助する効果を現します。

現在、日本における効能・効果は「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」となっていて、主に切除不能の進行再発大腸がんにおける三次治療以降の選択肢の一つとされています。また海外(米国)では「フルオロピリミジン(フルオロウラシルなど)、オキサリプラチン、イリノテカンによる治療やベバシズマブなどの抗VEGF抗体療法、セツキシマブなどの抗EGFR抗体療法による治療歴があり、遠隔転移を有する大腸がん」に対して承認されている薬です。

本剤による治療で注意すべき副作用は骨髄抑制、感染症間質性肺炎などです。

また本剤の服薬スケジュールは個々の患者の体表面積に合わせた投与量を通常「1日2回(朝・夕食後)、5日間服用し、2日間休薬。これを2回繰り返したら、その後14日間休薬」とし、これを1サイクルとして繰り返していく…という比較的複雑なスケジュールによって行われます。適切な治療を行うため、処方医や薬剤師から服薬方法などをしっかりと聞いて確認しておくことも大切です。

3. 大腸がんの化学療法〜多剤併用療法〜

大腸がんの化学療法では、複数の抗がん剤を併用してコンビネーションで治療していきます。これを多剤併用療法と呼びます。コンビネーションにすることで治療効果は上昇しますが、副作用の出現する可能性も上昇しますので、治療法の特徴を押さえて使うことが大切です。

フルオロウラシル(5-FU)などの欄で解説したように、大腸がん(特に切除不能の進行再発大腸がん)の化学療法では抗がん剤や抗がん剤を補助する薬を複数併用した治療法が標準治療となっています。ここでは標準治療の中でも主にFOLFOX(フォルフォックス)療法、FOLFIRI(フォルフィリ)療法、XELOX(ゼロックス)療法に関して解説します。

FOLFOX療法について

FOLFOX療法は「5-FU+レボホリナート(LV)+オキサリプラチン(OX)」の組み合わせの化学療法です。術後補助化学療法として使われるほか、切除不能の進行再発大腸がんの標準治療の一つになっています。日本においては薬剤の承認された用量などの理由から、mFOLFOX6(modified FOLFOX6)とFOLFOX4が標準治療となっています。mFOLFOX6とFOLFOX4との主な違いはLVと5-FUの投与量・投与時間(期間)などです。

例として、mFOLFOX6の一般的な投薬スケジュールを示します。

吐き気止め(5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン)を約15分静注後、
①レボホリナート(200mg/m2)+オキサリプラチン(85mg/m2)を約2時間かけて静注
②フルオロウラシル(400mg/m2)を約5分で急速静注(ボーラス静注)
③フルオロウラシル(2400mg/m2)を約46時間かけて持続点滴静注
点滴翌日(朝)より、デキサメタゾン(8mg)を1日2回に分けて、2日間服用(内服)

 ※①〜③がmFOLFOX6療法における中心の薬剤の投与になります

このようなスケジュールを1サイクルとし、これを2週ごとに繰り返していきます。

切除不能の進行再発大腸がんではFOLFOXにベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブといった分子標的薬(モノクロナール抗体)を併用した治療やイリノテカンを加えた治療(FOLFOXIRI)などが選択肢となっています。

FOLFIRI療法について

FOLFIRI療法は「5-FU+LV+イリノテカン(IRI)」の組み合わせの化学療法です。

投薬スケジュールなどに違いはありますが、薬剤的にはFOLFOXにおけるオキサリプラチン(OX)の代わりにイリノテカンを用いた治療法です。

切除不能の進行再発大腸がんの治療においてFOLFOX療法とFOLFIRI療法はどちらの治療を先に行っても治療成績はほぼ同様であると考えられています。

またFOLFOX療法と同様、FOLFIRIにベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブといった分子標的薬(モノクロナール抗体)を加えたレジメンなどが治療の選択肢となっています。

XELOX療法(CapeOX療法)

XELOX療法は「カペシタビン(Cape)+オキサリプラチン(OX)」の組み合わせの化学療法です。ピリミジン代謝拮抗薬として5-FUの代わりにカペシタビンを用いています。

カペシタビン単剤による治療も術後補助化学療法における選択肢の一つですが、ほかの薬とカペシタビンを組み合わせたXELOX療法も術後補助化学療法の選択肢の一つとなっています。また切除不能の進行再発大腸がんではベバシズマブ(抗VEGFヒト化モノクロナール抗体)を加えた治療法(XELOX+ベバシズマブ)が選択肢の一つになっています。

4. 抗がん剤はどうやって選択されるのか?

抗がん剤には腫瘍を抑える効果がある一方で副作用というデメリットもあります。そこで、化学療法を行う場合には、得られる効果を最大にして副作用を最小にすることを考えなければなりません。そのためには、身体の状態と腫瘍の状態を考えて最適な治療を狙いオーダーメイドのものにします。

実際にどうやって治療薬を選んでいくのか説明します。

化学療法を受けられる人はどんな人か?

化学療法は大腸がんと診断されたら全員が受けるべき治療ではありません。

手術が受けられるぐらい全身が元気な状態でしたら化学療法を行わずに手術だけで治療できる場合も多いです。反対に全身状態が悪ければ化学療法を受けることで寿命を縮めかねないため、化学療法は勧められません。

『大腸がん治療ガイドライン2019』では化学療法が合っている人の適応基準を以下のように定めています。

  • 病理組織診断で大腸(結腸、直腸)の腺がんであることが分かっている
  • 画像検査で手術ができない状態と判断されている
  • パフォーマンスステータス(PS)が2以下である
  • 主要臓器機能が保たれている
    1. 骨髄:好中球≧1,500/mm3かつ血小板≧10,000/mm3
    2. 肝機能:総ビリルリン値<2.0mg/dlかつASTとALT<100IU/l
    3. 腎機能:基準値上限以下
  • 適切なインフォームドコンセントがなされて患者が文書による同意を示している
  • 大腸がんによる深刻な合併症腸閉塞、下痢、発熱など)がない

この基準には例外もあります。たとえばひどい腸閉塞があっても手術をすることで状態が回復することが分かっている場合は手術を行うこともあります。臨機応変に対応するべき場面は少なくありません。そのため、ご自身の治療法に関しては、よくよく主治医と相談してみてください。

基準にある「パフォーマンスステータス」は全身状態を分類するスコアです。下記のように分類されています。

【パフォーマンスステータス:PS】

0:全く問題なく日常生活ができる

1:激しい活動は難しいが、歩行可能で、軽作業や座って行う作業はできる

2:歩行可能で自分の身のまわりのことは全て行える。日中の50%以上はベッド外で過ごす

3:自分の身のまわりのことは限られた範囲しか行えず、日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす

4:自分の身のまわりのことは全くできず、完全にベッドか椅子で過ごす

パフォーマンスステータスの値が低ければ低いほど全身状態が良いことを示します。

初回治療(一次治療)

上の化学療法の適応基準を満たした場合に化学療法を行います。大腸がんの治療に用いる抗がん剤の中には、身体への負担の大きいものから比較的軽いものまでいくつかの種類に分かれます。治療効果が高くかつ身体への負担が軽いものが最も望ましいですが、たいていの場合、治療効果が高ければ身体への負担も大きくなります。

身体の状態が良い人は身体の負担が大きい抗がん剤を使用できます。身体の状態の良くない人は抗がん剤の種類を慎重に選ぶ必要があります。ここでは『大腸がん治療ガイドライン2019』に基づいて、どういった治療薬が望ましいとされているかを紹介します。

■身体状態が良いため身体への負担の強い薬が使える方の治療(レジメン)

ここで用いる薬は身体への負担が強いものが多いです。

  • FOLFOX(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+オキサリプラチン(OX))+Bmab(ベバシズマブ)
  • CapeOX(カペシタビン(Cape)+オキサリプラチン(OX))+Bmab(ベバシズマブ)
  • SOX(S-1+オキサリプラチン(OX))+Bmab(ベバシズマブ)
  • FOLFIRI(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+イリノテカン(IRI))+Bmab(ベバシズマブ)
  • FOLFOX(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+オキサリプラチン(OX))+Cmab(セツキシマブ)あるいはPmab(パニツムマブ)
  • FOLFIRI(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+イリノテカン(IRI))+Cmab(セツキシマブ)あるいはPmab(パニツムマブ)
  • FOLFOXIRI(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+イリノテカン(IRI)+オキサリプラチン(OX))
  • FOLFOXIRI(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+イリノテカン(IRI)+オキサリプラチン(OX))+Bmab(ベバシズマブ)
  • フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+Bmab(ベバシズマブ)
  • カペシタビン(Cape)+Bmab(ベバシズマブ)
  • テガフール・ウラシル(UFT)+レボホリナート(LV)+Bmab(ベバシズマブ)
  • S-1+Bmab(ベバシズマブ)
  • Cmab(セツキシマブ)あるいはPmab(パニツムマブ)

■身体への負担の強い薬が使えない方の治療(レジメン)

身体への負担が比較的軽いものが選ばれます。

  • フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+Bmab(ベバシズマブ)
  • カペシタビン(Cape)+Bmab(ベバシズマブ)
  • テガフール・ウラシル(UFT)+レボホリナート(LV)+Bmab(ベバシズマブ)
  • S-1+Bmab(ベバシズマブ)
  • Cmab(セツキシマブ)あるいはPmab(パニツムマブ)

上にあるように初回治療を行う際には多くの選択肢があるため、どれを使うべきなのか悩ましい場面もあります。しかし、各々のレジメンの良い点と悪い点を把握してベストと思われる治療法を選択することが大事です。化学療法を行うことになった場合は、自分の体調を主治医に伝える一方で、予想される化学療法後の生活についてよくよく主治医に聞いてみてください。

初回治療が効かなくなった場合の治療(二次治療)

初回の化学療法が効かなくなっても次の治療がなくなるわけではありません。もちろん化学療法を受ける体力がなくなってしまった場合は化学療法を受けることはできませんが、体力があれば初回とは違うタイプの抗がん剤を用いて治療していくことになります。

以下が二次治療で行う化学療法の例になります。

  • 一次治療でオキサリプラチン(OX)を使った場合
    • FOLFIRI(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+イリノテカン(IRI))+Bmab(ベバシズマブ)
    • FOLFIRI(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+イリノテカン(IRI))+Rmab(ラムシルマブ)
    • FOLFIRI(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+イリノテカン(IRI))+Cmab(セツキシマブ)あるいはPmab(パニツムマブ)
    • IRIS(イリノテカン(IRI)+S-1)+Bmab(ベバシズマブ)
    • イリノテカン(IRI)+Bmab(ベバシズマブ)
    • イリノテカン(IRI)+Cmab(セツキシマブ)あるいはPmab(パニツムマブ)
  • 一次治療でイリノテカン(IRI)を使った場合
    • FOLFOX(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+オキサリプラチン(OX))+Bmab(ベバシズマブ)
    • FOLFOX(フルオロウラシル(5-FU)+レボホリナート(LV)+オキサリプラチン(OX))+Cmab(セツキシマブ)あるいはPmab(パニツムマブ)
    • CapeOX(カペシタビン(Cape)+オキサリプラチン(OX))+Bmab(ベバシズマブ)
    • SOX(S-1+オキサリプラチン(OX))+Bmab(ベバシズマブ)
  • 一次治療で5-FU+イリノテカン(IRI)+オキサリプラチン(OX)を使った場合
    • イリノテカン(IRI)+Cmab(セツキシマブ)あるいはPmab(パニツムマブ)
    • Cmab(セツキシマブ)あるいはPmab(パニツムマブ)
  • BRAF遺伝子変異を有する大腸がんの場合
    • エンコラフェニブ +ビニメチニブ +Cmab(セツキシマブ)
    • エンコラフェニブ +Cmab(セツキシマブ)
  • HER2陽性の大腸がんの場合
    • ペルツズマブ +トラスツズマブ

自分が化学療法が受けられるのかどうかに関しては、主治医に遠慮なく聞いてください。二次治療では特に体力を考慮して最も適した抗がん剤を使用する必要があります。使用する抗がん剤で予想される副作用を聞いてみて、自分の望ましいライフスタイルと照らし合わせてみることも大切です。

三次治療以降

二次治療の効果がなくなった場合、体力次第では三次治療を行えます。以降、体力次第では化学療法を繰り返し行うことができます。しかし、繰り返し行っていくことで、使える抗がん剤が限られてくることやがんの進行と抗がん剤の副作用の蓄積から体力が落ちてしまうことから、三次治療以降の効果は弱くなってきます。それを踏まえてご自身に適した抗がん剤を探していきましょう。

抗がん剤治療を行った後に手術を行うことがある?

化学療法は大腸がんを根治する治療ではありません。がんが大きくなることを遅らせて延命する効果とがんによる症状が出にくくする効果を期待した治療です。そのため、抗がん剤を行っていれば大腸がんが治ることを期待するのはあまり現実的ではありません。

しかし、化学療法で期待できる大きなことの1つは、腫瘍を抑える効果が発揮されて今まで手術ができなかった状態から手術ができる状態へ変化することです。こうして手術でがん細胞を取り去れれば根治が期待できます。これをサルベージ手術といいます。

5. 手術した後にも化学療法をやるの?

手術は大腸がんを根治できる唯一の治療です。しかし、手術を行った後に化学療法(抗がん剤治療)を行う場合があります。

ステージ3の大腸がん(一部ではステージ2でも検討される)では手術の後に化学療法を行います。また、病理検査で切り取った面(断端)にもがん細胞が見えた場合はがんを取り切れていない可能性が高いため、術後放射線療法も検討されます。

詳しくは「大腸がんの手術後に行う化学療法」で説明していますので参考にしてください。

6. 抗がん剤治療にかかる費用は?

大腸がんの抗がん剤治療では、使う薬によって費用が大きく違います。また、一定期間で終了する使い方なのか、長期にわたって続ける治療なのかも重要です。

薬剤料に対応する自己負担額の例を挙げます。保険診療の範囲内で、自己負担は3割とします。

  • テガフール・ウラシルとホリナートによる術後補助化学療法:5サイクル計およそ33万円
  • 転移・再発時のmFOLFOX6療法:2週間ごとにおよそ3万4千円
  • 転移・再発時のイリノテカンとセツキシマブ:7週間ごとにおよそ41万円

以上の計算は、薬の値段にあたる薬価だけをもとにしています。入院にかかる費用や、抗がん剤と同時に必要な検査やほかの治療は計算に入れていません。

抗がん剤の使い方(レジメン)は数多くあるので、どれを使うかによって費用は違います。また、薬の用法・用量は人によって変わる場合があるので、対応して費用も変わります。高い薬ほど効くとは言えません。一人一人に合った薬を選ぶ必要があります。

自己負担の割合によっても支払う金額は変わります。また、高額療養費制度によって、決まった限度額を超えた分は数か月後に払い戻しを受けられる場合があります。

ほかにも公的助成制度などを利用できる場合があるので、医療機関や保険の相談窓口で相談してください。

保険診療の自己負担とは?

保険によって行われる検査や治療を保険診療と言います。保険診療では、検査や治療などのひとつひとつに診療報酬点数が決められています。診療報酬点数をもとに、患者が払う自己負担額が計算されます。

自己負担の割合は年齢によって違います。

  • 小学校入学前:2割
  • 小学校入学後70歳未満:3割
  • 70歳以上:2割

※70歳以上でも現役並み所得者は3割負担です。

最初に示した費用目安は3割負担で計算しています。2割負担の人では3分の2程度の自己負担額となります。

高額療養費制度とは?

高額療養費制度は、月初めから月末までの1ヶ月に世帯で支払った医療費が高額になる場合、年齢や収入に応じた一定の負担額の上限を超えた医療費があとから払い戻される制度です。保険が適用される医療費であれば、通院・入院・在宅療養問わず制度の対象となります。入院時の差額ベッド代や食事代、先進医療にかかる費用などは対象外となります。

申請に必要な書類は、加入されている医療保険(お手持ちの健康保険証に保険者名称が記載されています)の窓口でご確認ください。申請の際に、病院の領収証などが必要となる場合もあるので、失くさないようにまとめておきましょう。請求から支給までに3ヶ月程度かかります。
高額療養費制度について詳しくは厚生労働省のウェブサイトやこちらの「コラム」による説明を参考にしてください。