2017.07.17 | ニュース

転移のある大腸がんに、ベクティビックス・アービタックスは効く?

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

転移のある大腸がんに、ベクティビックス・アービタックスは効く?の写真

転移がある大腸がんの治療では抗がん剤が重要です。抗EGFR薬に分類される薬剤の効果について、すでに報告されているデータの調査が行われました。

オーストラリアの研究班が、文献の調査により転移がん細胞がリンパ液や血流にのって、リンパ節や他の臓器にまで広がること。転移がある場合は進行がんに分類されることが多いのある大腸がんに対する抗EGFR薬の効果を検討し、『Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。

抗EGFR薬は大きくEGFRチロシンキナーゼ阻害薬と抗EGFRモノクローナル抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりするに分けられます。

EGFRチロシンキナーゼ阻害薬には日本で大腸がんに対して承認されているものはありません(2017年7月時点)。

抗EGFRモノクローナル抗体として、パニツムマブ(商品名ベクティビックス®)セツキシマブ(商品名:アービタックス®)が日本でも承認され使用されています。

この研究では、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬または抗EGFRモノクローナル抗体が単独またはほかの薬剤と組み合わせて使用された場合に、がん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあるの進行なく生存する期間を長くする効果があるかを調べています。

 

調査により、関係する33件の研究結果が見つかりました。

データの解析から、抗EGFRモノクローナル抗体については次の結果が得られました。

  • KRASエクソン2に変異がない人で、標準治療に抗EGFRモノクローナル抗体を加えることで、がんの進行がなく生存する期間、全体として生存する期間のいずれも長くなる(高い質の証拠)
    • グレード3または4の毒性(全体として)、下痢、皮疹皮膚に起こる、何かしらの目に見える変化の総称が増加する
  • KRAS・NRASのどちらにも変異がない人で、治療に抗EGFRモノクローナル抗体を加えることで、がんの進行がなく生存する期間(中等度の質の証拠)、全体として生存する期間(高い質の証拠)が長くなる
  • 抗EGFRモノクローナル抗体とベバシズマブには進行なく生存する期間(高い質の証拠)・全体としての生存期間に差がない(中等度の質の証拠)

KRAS、NRASはがん細胞の増殖などに関わる遺伝子です。一般にこれらの遺伝子の変異がある人では抗EGFRモノクローナル抗体の効果は期待しにくいとされ、上記のとおり変異がない人を対象とした研究が行われています。

グレード3とは副作用などによる症状などの重症度を示す言葉です。入院が必要になる程度の副作用はグレード3または4に分類されます。

一方、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬については、標準治療に加える(対象者の遺伝子検査の結果は問わない)ことによる利益は確認できませんでした。

 

転移のある大腸がんに対して、標準治療に抗EGFRモノクローナル抗体を加えることで進行なく生存する期間が長くなるとした報告を紹介しました。

ただし、対象者は特定の遺伝子変異がない人に限られます。

また、効果とともに重い副作用が出る可能性も報告されています。効果とのバランスを考えて使うべきと考えられます。

大腸癌治療ガイドライン治療や検査の場面において、医療従事者や患者が、適切な判断や決断を下せるように支援する目的で体系的に作られた文章のこと』でも、身体状態が良好で負担の強い薬を考慮できる人に対して、ほかの抗がん剤悪性腫瘍(がん)に効果を発揮する薬剤。ただし、がん以外の良性疾患に用いられることもある(FOLFOX療法など)と併用で、KRAS変異がないことを確かめたうえでパニツムマブまたはセツキシマブを使用する選択肢が挙げられています。

大腸がんに対する抗がん剤治療がんの治療の一種で、抗がん剤を使った治療の総称にはたくさんの選択肢があります。どの薬を選ぶかは複雑な判断になりますが、このように比較して効果が検証されていることで、順序立てて考えることができます。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Epidermal growth factor receptor (EGFR) inhibitors for metastatic colorectal cancer.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jun 27.

[PMID: 28654140]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]