だいちょうがん
大腸がん
大腸の粘膜にできるがん。国内のがん患者数がもっと多く、死亡者数も女性において原因の1位
20人の医師がチェック 306回の改訂 最終更新: 2024.09.04

大腸がん手術後の食事:おすすめの食べ物や避けたほうが良い食べ物

大腸がんの手術後に食べてはいけないものはほとんどありません。ただし手術後3ヶ月ほどは少し気を付けたほうがよく、食物繊維や脂肪分が多いものは避けるか少しずつ増やしてください。大腸がん手術後におすすめの食事を紹介します。

1. 大腸がん手術後の食事に制限は必要?

大腸がん治療を終えて退院した後の食事をどうしたら良いのか不安になる方も多いことでしょう。基本的に予防の時と変わらずバランスのとれた食事を心掛けると良いです。手術で体力の低下を感じて必要以上に食事量を増やしてしまう人がいますが、過度の栄養摂取は体重増加の危険性もありますので、適正なエネルギー摂取をする必要があります。

また、大腸がんの手術後は便秘が問題になるため、水分と食物繊維は十分な量を摂ることが大切です。香辛料については、刺激物なので手術後の身体には気になるかもしれませんが、多すぎなければあまり問題ありません。

大腸がんの手術後に食べられなくなってしまうものはほとんどありません。もちろん、暴飲暴食は大腸がんにかかわらず体に良くありませんので気をつける必要があります。

手術後3ヶ月ほどは、腸の運動が回復していないことも多く、食べ過ぎは禁物です。また、腸が回復するまでは避ける、または少しずつ量を増やすほうが良い食品もあります。具体的には、食物繊維が多いものや脂肪分の多い肉、天ぷら・唐揚げなどの揚げ物です。消化に悪い食事では、腸閉塞を起こす可能性があるという報告も見られます。

以下に手術後にお勧めの食べ物と、食べ過ぎないほうが良い食べ物を紹介します。

2. お勧めの食べ物

<タンパク質>

  肉  

 皮なし鶏肉、ささみ、脂肪の少ない牛・豚肉、レバーなど

  魚

 あじ、かれい、すずき、さけ、たら、ひらめ、かき、はんぺんなど 

  卵

 鶏卵、うずら卵など

  豆

 豆腐、やわらかい煮豆、ひきわり納豆、きなこなど

  乳

 牛乳、ヨーグルト、乳酸飲料、チーズなど

<糖質>

 穀類 

 粥、軟飯、うどん、パン、マカロニなど

 いも

 じゃがいも、さといも、長いも、大和いもなど 

 果物

 缶詰、りんご、熟したバナナ、桃、洋梨など

 菓子

 ビスケット、カステラ、ゼリーなど

<脂質>

 油脂 

 植物油、バター、マーガリン、生クリームなど 

ビタミンミネラル

 野菜 

 やわらかく煮た野菜(かぶ、かぼちゃ、カリフラワー、キャベツ、大根、トマト、なす、

 白菜、ブロッコリーなど)、梅干しなど

<その他>

 飲み物 

 番茶、麦茶、ジュース、薄いお茶・紅茶・コーヒーなど 

<調理法>

 煮る、蒸す、焼く、細かくきざむ 

3. 控えたほうがよい食べもの

<タンパク質>

  肉

 油の多い料理(カツ、ビーフステーキなど)

 脂肪の多い肉(バラ肉、ハム、ベーコンなど)

 魚介 

 貝類、いか、たこ、すじこ、かまぼこ、干物、佃煮、塩辛など

  豆

 大豆、枝豆など

(大豆は加熱により消化率は向上しますが、炒り大豆は60%、煮豆でも70%です。

 一方、豆腐は95%、納豆は80%強と消化率が高くなります。)

<糖質>

 穀類 

 玄米、赤飯、玄米パン、胚芽入りパンなど

 油を多く使用した料理(ラーメン、チャーハン、焼きそばなど)

 いも 

 繊維の多いさつまいも、こんにゃく、しらたきなど

 果物

 繊維が多く酸味の強い果物(パイナップル、柑橘(かんきつ)類など)、干し果物など 

 菓子

 揚げ菓子、辛いせんべい、豆菓子など

<脂質>

 油脂 

 ラード、ヘッド

 油を多く使う料理(天ぷら、フライなど)

<ビタミン・ミネラル>

 野菜 

 繊維の多い野菜(ごぼう、たけのこ、ねぎ、れんこん、ふき、ぜんまい、わらび、きのこなど)

 香りの強い野菜(うど、にら、にんにく、みょうがなど)

 かたい漬け物(たくあん、つぼ漬けなど)

 海藻

 こんぶ、のり、ひじき、わかめなど

<その他>

 調味料 

 辛子、カレー粉、わさびなどの香辛料の使い過ぎ 

 飲み物

 炭酸飲料、アルコール、濃いお茶・コーヒーなど 

(国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス「手術後の食事(胃、大腸)」より引用)

4. 人工肛門(ストマ)造設術後の食事

大腸がんの外科的治療(手術)では人工肛門造設術も行うことが多いです。ここでは人工肛門増設術後の食事で気をつけるべき点を述べていきます。

排便を上手に行えるようなコントロールが必要になります。適度に水分を摂取し、脱水や電解質バランスの崩れがないように注意することが大切です。

たとえば不溶性食物繊維は、皮をむく・刻む・柔らかく煮るなど調理を工夫すると消化しやすくなります。また、わかめ・ごぼう・昆布・こんにゃく・たけのこなどは、工夫してもなかなか消化しづらいので控えます。

食品によっては排泄物の臭いやガスの量に影響があるので、下記の食品の摂り過ぎには要注意です。

  • 便の臭いを強くする可能性のある食品:ねぎ類、にんにく、豆類、アルコール類、香辛料など
  • ガスが発生しやすくなる可能性のある食品:炭酸飲料、ビール、さつまいも、豆類、ごぼう、やまいもなど

また、ガスの臭いを抑える可能性のある食品として、パセリ、レモン、ヨーグルトなどが考えられています。

回腸ストマの場合は、刺激物(唐辛子、タバスコなど)は排泄部位が傷む場合があるので控えます。

以上の情報を参考にしながら、身体やストマの不調を感じた場合は、その都度医療者に相談するようにしてください。

5. 大腸がん手術後で食事を摂るときに気をつけたほうが良いこと

いくら腸に優しい食べ物と言っても、食べ方次第ではやはりお腹を壊す原因にもなりえます。食べる時は以下のことに注意しましょう。

  • 規則的にゆっくりよく噛みながら食べる
  • 食べ過ぎない、飲み過ぎない
  • 食事する時間を決める(規則的に)
  • 手術後数ヶ月は食事量を適宜調整して、一回に食べる量は多くなりすぎないようにする
  • 控えた方が良い食事は少量ずつ慣らしていく
  • バランスの良い食事を心がける

大腸がんの手術後は、「これを食べて良いのだろうか」「きっとこれは食べちゃダメだろう」というように、食事に関して疑問に思うことも多いと思います。厳しい制限をする必要はないですが、規則正しいバランスの取れた食事を摂ることが大事です。