だいちょうがん
大腸がん
大腸の粘膜にできるがん。国内のがん患者数がもっと多く、死亡者数も女性において原因の1位
20人の医師がチェック 305回の改訂 最終更新: 2024.01.10

大腸がんの初期症状:腹痛・血便・腰痛・おならは関係ある?

大腸がんを初期症状で発見できるでしょうか?実は早期大腸がんにはほとんど症状がありません。進行して下痢・便秘などが出ることもありますが、似た症状はほかの病気で出ることもあり、症状だけで大腸がんを確実に見分けることはできません。大腸がんの早期発見には便潜血検査が役に立ちます。

1. 大腸がんに初期症状はある?

大腸がんに初期症状と言えるものはほとんどなく、自覚できる症状が出たときにはある程度進行している場合が多いです。

初期と言わないまでも大腸がんで現れやすい症状に以下のものがあります。

  • 下痢・便秘
    • 便が出そうに感じるが出ない症状(しぶり腹、テネスムス)をともなうことがある
  • 細い便
  • 血液が混じった便(血便
  • 腹痛

早期大腸がんにはほとんど症状がありませんが、少し進行してくると上の症状を自覚することがあります。進行してから出る症状なので、症状をチェックしても大腸がんの早期発見につなげるのは難しいと言わざるをえません。

20代で大腸がんの症状を感じることはあるのか?

大腸がんは20代の人にできることはほとんどありません。遺伝性の大腸がん(家族性大腸腺腫症やリンチ症候群)の場合は例外ですが、何らかの症状が持続するからといって20代の方が大腸がんを心配する必要性は非常に低いと考えて良いです。

遺伝性の大腸がんを疑うべき状況については「大腸がんの年齢別罹患率と死亡率とは?」で説明しています。

高齢者の大腸がんで出やすい症状はあるのか?

高齢者であっても早期大腸がんは症状が出にくいです。しかし、進行していけば症状は出やすくなります。下痢や血便、便秘などが出やすい症状になりますが、特に高齢者で気を付けなければならないのは腸閉塞です。

いつもはホースのような構造をしている腸管の中を流れている食べ物や飲み物が、何らかの影響を受けてうまく流れなくなることを腸閉塞と言います。高齢者は腸閉塞になりやすいので注意が必要です。急に以下の症状が出てきたら注意してください。

  • お腹が張る
  • 腹痛
  • 悪心
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 下血
  • 意識朦朧

いつも下痢がちの人が下痢をしてもさほど心配は必要ありませんが、突然上の症状が現れて持続する場合は、大腸がんも考慮して検査を受けることになります。

痛みの場所と大腸がんの場所は関係ある?

大腸がんで腹痛が出た場合、必ずしも痛い場所にがんがあるとは言えません

がんができる場所によって出やすい症状は下の図のように対応します。

大腸がんで出やすい症状

(「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版」をもとに作成)

便が細くなる、下痢・便秘といった症状は、主に直腸がん、下行結腸がんで見られる症状です。

大腸がんと間違いやすい病気とは?

大腸がんによる血便や下血(げけつ)は、痔(内痔核外痔核裂肛など)と間違えられることもあります。自分で見分けるのは難しいので、痔の出血と思っても一度は専門家に相談する必要があります。

2. 大腸がんのその他の症状は?

大腸がんでは他に次の症状が現れることもあります。

  • 残便感:便が残っているような感じがする
  • 腹部膨満感:お腹が張る
  • 腹部腫瘤:お腹を触ると硬いしこりがある
  • 嘔吐
  • 原因不明の体重減少

がんのできる部位や進行度合いによって、現れる症状は異なります。硬いしこりに触れるのは上行結腸がんや横行結腸がんで現れやすい症状です。

3. おならは大腸がんの前兆か?

おならを症状として大腸がんやほかの病気が見つかることはあまりありません。

便秘や下痢が大腸がんの症状として現れることはあります。しかし、便通の異常を症状とする病気としては、大腸がんではなく次の可能性もあります。

これらはあくまで一部の例です。便通の異常があっても大腸がんとは限らず、ましておならが出るだけで「大腸がんかもしれない」と考えるのは合理的とは言いにくいです。

4. 腰痛は大腸がんの症状か?

大腸がんによる痛みを「腰痛」と感じることは多くはありません。腰の骨や筋肉が原因の腰痛を除き、腰のあたりが痛くなることがある病気と、それぞれで出やすい症状の例をいくつか挙げます。

これらはあくまで一部の例で、実際に腰のあたりの痛みの原因を見分けるには多くの病気を考える必要があります。

5. 発熱は大腸がんの症状か?

通常は初期の大腸がんで発熱することはありません。がんが進行すると全身をむしばむこととなり、発熱が起こる場合もあります。

しかし、発熱は大腸がん以外でも起こります。風邪でも発熱しますし、骨折でも発熱は起こります。そのため、発熱したから大腸がんを疑うということはありません。症状や生活の状況から総合的に大腸がんを疑います。

6. 貧血は大腸がんの症状か?

大腸がんが進行すると貧血が起こります。理由は以下の2点になります。

  • 下血で血を失う
  • 全身に炎症が起こってうまく赤血球を作れなくなる

しかし、貧血が起こったら大腸がんがあるということは決して多くありません。貧血はその他の多くの病気によって起こりうるのです。貧血を起こす主な原因は以下になります。

これ以外にも貧血の原因となる病気はいろいろ考えられます。貧血が見られた場合は、大腸がんのことも頭に入れつつ、むしろほかの病気を考えたほうが良いかもしれません。

なお、ここで言う「貧血」とは、血液の中で酸素を運ぶ物質(ヘモグロビン)が少なくなっている状態を指します。めまい・ふらつきの症状は、貧血が原因になっていることもありますが、貧血とは関係ない場合もあります。

7. 大腸がんのステージが進むと症状はどうなる?

大腸がんの症状とステージ(進行度)は正確に対応しません

大腸がんが進行して大きくなると、上に挙げた腸閉塞などによる症状が出やすくなります。悪液質と呼ばれる食欲不振や体重減少などの症状が出る人もいます。しかしかなり進行していてもほとんど症状がない場合もあります。大腸がんと診断されたあとでも、「これまでなかった症状が出たから末期がんではないか」と考えるのは必ずしも正しくありません。

ステージとはがんが進行している度合いのことです。進行度が低いステージ0から進行度が高いステージIVまでに分類されます。

大腸がんが進行していくと、大きく分けて3種類の経路で周りに広がります。

  • 発生した場所から周りの大腸の壁に、さらには隣り合った臓器に食い込んでいく(浸潤)
  • リンパ管を通ってリンパ節に流れていく(リンパ節転移
  • 離れた臓器に流れ着く(遠隔転移
    • 血管を通って離れた臓器に流れ着く(血行性転移
    • 臓器の隙間に飛び散る(腹膜播種)

大腸がんのステージは、浸潤の度合い(T因子)、リンパ節転移の数(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)によって決めます。詳しくは大腸がんのステージ分類についてのページで説明しています。

8. 大腸がんを早期発見するには?

40歳以上で大腸がんが心配な人には、検診を受けることをおすすめします。40歳未満であれば大腸がんが発生する確率は非常に低いので、あまり心配は要りません。

「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」では、「40歳以上に死亡率減少効果を認める」として、便潜血検査(免疫法)を推奨しています。

便潜血検査とは?

便潜血検査は手軽にできて、かつ性能の高い検査です。便潜血検査によって大腸がんを早期に発見できることがあります。

便潜血検査は、便の中に含まれる血液の成分に反応します。大腸がんの表面はもろいため、便が通るときに簡単に出血します。目で見てもわからない量ですが、検査で検出できます。血液の成分が便に混ざっていれば大腸がんの可能性あり(陽性)と判定します。

検査には専用の検査キットを使います。便の表面をこすってキットに含まれている容器に取り出し、検査に提出します。

検診を受ける人の大半は、実際には大腸がんがありません。そのため、たとえ便潜血検査で陽性の結果が出ても、さらに検査をすると「大腸がんはない」と判断されることが多いです。しかし、便潜血検査の結果が陰性だった人に比べると大腸がんがある確率は高いと言えます。このようにさらに検査を進めるべきかどうかを判断するために、簡単にできる便潜血検査は役に立ちます。

詳しくは大腸がんの検診についてのページで説明しています。