だいちょうがん
大腸がん
大腸の粘膜にできるがん。国内のがん患者数がもっと多く、死亡者数も女性において原因の1位
20人の医師がチェック 305回の改訂 最終更新: 2024.01.10

大腸がんの治療の概要: 内視鏡治療、手術、抗がん剤、放射線治療と、ステージ別の治療法

大腸がんの治療には内視鏡治療、手術、抗がん剤による化学療法放射線治療があります。内視鏡治療は小さいがんに適しています。化学療法と放射線治療は主に手術と組み合わせます。このページでは大腸がんの治療の特徴を説明します。

1. 大腸がんの治療法とは?

大腸がんの治療法として、主なものは大きく4つに分けられます。

  • 内視鏡治療
  • 外科的治療(手術)
  • 化学療法(抗がん剤治療
  • 放射線治療

これらのうち、どの治療法を選択するかは進行度、全身の状態、治療を受ける個人の価値観などでも異なります。まず、上記の4つの治療法について簡単に説明します。

2. 大腸がんの内視鏡治療

下部消化管内視鏡は、大腸がんの検査を行うときに使うものですが、治療を行うこともできます。内視鏡は先端のカメラの位置までさまざまな道具を送り込んで操作できるので、内視鏡でがんやポリープを切除することもできます。それが内視鏡治療です。基本的には、リンパ節やほかの臓器への転移の可能性がなく、浸潤(どのくらい広がっているか)の程度が少ない場合が内視鏡治療に適しています。

内視鏡治療には以下の種類があります。

  • ポリペクトミー
  • 内視鏡的粘膜切除術
  • 内視鏡的粘膜下層剥離術

これらの内視鏡治療のうちどの方法を行うかは、ポリープやがんの大きさ・形によって異なります。

詳しくは「大腸がんの内視鏡治療のページ」で説明します。

3. 大腸がんの手術

大腸がんの手術では、「がんがある部分とその周辺でがんが広がっている可能性のある部分」を切除します。切除する場所の中には、大腸の周りのリンパ節や隣り合った臓器も含まれることがあります。

大腸の一部を切りとったあとは、その前後をつなぎ合わせるなどの方法で、肛門まで食べ物が通る道筋を作る必要があります。大腸がんの中でも直腸がんを手術で取り除こうとする場合、がんの場所によっては肛門を温存して切り取ることができないため、人工肛門が必要になります。

詳しくは「大腸がんの手術法のページ」で説明します。

4. 大腸がんの抗がん剤治療

大腸がんの抗がん剤治療では、様々な薬が使われますが、基本となるのはフルオロウラシル(5-FU)という薬です。この薬は、静脈注射、点滴、内服といった方法で使うことができます。他にも、分子標的治療薬が使われることもあります。分子標的治療薬は、がん細胞を正常な細胞と区別して作用するタイプの抗がん剤です。このタイプには、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブなどの薬があります。より詳しくは「大腸がんの抗がん剤治療のページ」で説明します。

5. 大腸がんの放射線治療

大腸がんの放射線治療は、単独で根治目的に行われることは通常ありません。手術や抗がん剤治療と組み合わせて使うことはあり、ほかにも手術ができない場合に痛みなどの症状を軽くする目的で使われます。また、再発をしたがんに対して手術のできない場合に用いられることもあります。

6. 大腸がんステージ別治療を解説する前に

大腸がんの治療は大きく分けると、上記のように、内視鏡治療、手術(外科的治療)、抗がん剤を用いた化学療法、放射線治療の4つがあります。これらの治療法はどれを使ってもいいわけではなく、大腸がんの進行度によって適するものが違います。

もし、大腸がんを完全に治すことを目的にするのであれば、主な方法は手術または内視鏡治療です。進行度によって適した治療法が使い分けられます。

大腸がんが粘膜や粘膜下層の浅い部分までにとどまっている場合では、お腹を切らないで内視鏡を使って治療する方法があります。一方、リンパ節やその他の臓器へ転移している場合は、手術でリンパ節を切除することや、その他の臓器についても治療を行うことが必要になります。

治療法を選ぶ基準になる進行度は、ステージという言葉で分類されます。ステージをどうやって判定するかは「大腸がんのステージのページ」で解説しています。

以下では大腸がんのステージ別に代表的な治療法は何があるかを説明していきます。

7. 大腸がんのステージ別治療選択フローチャート

大腸がんがステージ0(0期)からステージ4(IV期)のどれに当たるかに応じて、主に下の図の順序に沿って治療が行われます。

大腸がんの治療のフローチャート

(「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2019年版」をもとに作成)
 

8. ステージ0からステージ3の場合の治療法

内視鏡で治療を行える大腸がんは、ステージ0またはステージ1で粘膜下層へ軽度浸潤するものです(浸潤:大腸の壁の中にがんが入り込むように広がること)。内視鏡でがんを完全に切除できれば治療は終了です。ただし、ステージ0またはステージ1の軽度浸潤であっても、場所や状態によっては外科的手術を行う場合があります。

ステージ1でがん細胞の浸潤が高度の場合、お腹を開けて大腸の一部を切り取る手術をするのが普通です。

ステージ1はリンパ節転移がない状態を指しますが、検査でステージ1と判定されても実はリンパ節への転移が隠れている可能性が10%程度はあると言われています。転移が取り残されてしまうと、そこからがんが再発する原因になります。このため、がんがある部分の大腸だけでなく、その周りにあるリンパ節をまとめて切除すること(郭清)も含めて検討されることになります。

ステージ2、ステージ3でも同様に手術が主な治療になります。

ステージ3や、ステージ2でも特に再発の可能性が大きいと見られる場合では、手術後の再発をできるだけ防ぐことを目的に術後補助化学療法(術後に行う化学療法)を行うことがすすめられます。化学療法の詳細については、「大腸がんの抗がん剤治療とは?」をご覧ください。

9. ステージ4の場合の治療法

大腸がんを発症した後、もしそのがんが離れた場所の臓器に転移していれば、それはステージ4に分類されます。ステージ4の大腸がんでは、元の大腸がん(原発巣と言います)と転移によってほかの臓器にできたがん(転移巣と言います)が両方とも切除可能な場合は手術で切除します。離れた臓器に転移があっても切除する場合があるのは大腸がんの特徴とも言えます。切除ができない場合は、放射線治療や化学療法を行うことになります。

ほかの治療として緩和ケアも大切です。放射線治療や化学療法を行っても効果があまり見られなかった場合、治療に耐えられないほど体が弱っている場合、重症で治療による延命効果が期待できない場合、本人や家族の希望があった場合などでは、痛みなどの症状を軽くする緩和ケアが主となります。