2018.07.16 | ニュース

大腸がん検診は45歳から75歳、アメリカがん協会が推奨を更新

最新の研究データを元に

from CA: a cancer journal for clinicians

大腸がん検診は45歳から75歳、アメリカがん協会が推奨を更新の写真

大腸がんは早期発見により効果的に治療できることが知られ、健康な人を対象とした検診が広く行われていますが、対象年齢などの詳細には意見が分かれている点もあります。アメリカがん協会(ACS)が、大腸がん検診についてのガイドラインを更新しました。

大腸がんのスクリーニングとは?

大腸がんはがんの中でも特に多くの人が経験するものです。このため、明らかな異常などが見つかっていない人に対しても検査を行われます。大腸がんやその手前の状態を早期発見して治療することで、大腸がんによる死亡を減らすことが期待されています。

このように明らかな異常がない人も対象に含める検診をスクリーニングと言います。大腸がんのスクリーニングによる予防効果はすでに多くの研究から示されていますが、対象とされるべき年齢は何歳から何歳までかといった詳細については複数の学術団体などが違った意見を出しています。

 

アメリカがん協会が大腸がんスクリーニングのガイドラインを更新

アメリカがん協会は、2008年に作成したガイドラインを更新し、大腸がんのスクリーニングについて新しく推奨をまとめました。

このガイドラインは、大腸がんのリスクが平均的と考えられる人を対象としています。更新前の2008年版ではスクリーニングを勧める対象年齢が50歳以上とされ、上限は明記されていませんでした。

更新にあたって、最近の研究結果も反映させるよう新たに調査が行われました。調査の結果に基づいて、更新後の2018年版ではスクリーニングを勧める対象年齢が45歳以上とされました。また、対象年齢の上限について、更新後は75歳を超えた人には個別判断を勧め、85歳を超える人にはスクリーニングを行わないよう勧めるとされました

以下では更新にあたって検討された内容をおおまかに説明します。

 

大腸がんスクリーニングを始める年齢の検討

スクリーニングを始める年齢については、近年アメリカで50歳未満の人に大腸がんが増えていることが考慮されました。アメリカでは、50歳未満で大腸がんが見つかる人は(50歳未満のスクリーニングは一般的ではないにもかかわらず)1994年ごろから増加傾向にあり、2014年には45歳から49歳で10万人あたり31.4人でした。対して50歳から54歳の人では10万人あたり58.4人であり、50歳以上ではスクリーニングが多く行われていることを加味すると、45歳から49歳で大腸がんが発生している人の割合は50歳から54歳にかなり近いと推定されました。

45歳からスクリーニングを開始した場合の予防効果を直接調べた研究は少ないため、有効性に基づいて判断することはできませんでしたが、従来大腸がんは50歳以上で多く診断されることを根拠としてスクリーニングが行われてきたことから、45歳以上の大腸がんが増えていることを受けて、スクリーニングを始める年齢の推奨が変更されました。

 

大腸がんスクリーニングを終える年齢の検討

スクリーニングを終える年齢については、スクリーニングによる予防効果が現れ始めるまでに10年程度かかることがわかっているため、余命が10年以上ある人は受けたほうが良いと考えられました。

年齢ごとのスクリーニングの効果を調べた1件の研究によると、70歳から74歳の人では全大腸内視鏡検査のあと8年間の大腸がんによる死亡の割合が2.62%から2.19%に減少しましたが、75歳から79歳の人では2.97%から2.84%とわずかな減少にとどまりました。対して全大腸内視鏡による出血や穿孔(腸に穴が開くこと)などの害は、70歳から74歳では検査1,000回あたり5.6件、75歳から79歳では1,000回あたり10.3件発生していました。
これらの割合から、76歳以上85歳以下の人の中でも、健康状態が良くほかの持病が全然ないかわずかしかなく、余命が10年以上と予想される人だけがスクリーニングを検討するべきと考えられました。また、85歳を超える人については、スクリーニングによる害が利益を上回ると推定されました。

 

スクリーニングに使う検査の検討

スクリーニングとして行う検査の種類については、検査の性能などのデータを比較して、以下のいずれかが推奨とされました。

  • 免疫化学法による便検査を年1回
  • 高感度グアヤック法による便潜血検査を年1回
  • 多標的便DNA検査を3年ごと
  • 全大腸内視鏡検査を10年ごと
  • CTコロノグラフィを5年ごと
  • 軟性S状結腸鏡検査を5年ごと

 

より有益ながん検診を目指す試み

以上で紹介したように、詳細な検討に基づいて、大腸がんのスクリーニングをできるだけ有益に使うための推奨が作られ更新されています。

同様の推奨はほかの学術団体などからも出されていて、アメリカがん学会の推奨はあくまで一例です。特に、上の説明でも触れたように、アメリカでの統計を元に作られている点には注意が必要です。

最新のガイドラインを参考にすることで、検診の目的と効果について理解を深めることができます。

執筆者

MEDLEY編集部

参考文献

Colorectal cancer screening for average-risk adults: 2018 guideline update from the American Cancer Society.

CA Cancer J Clin. 2018 May 30. [Epub ahead of print]

[PMID: 29846947]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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