大腸がん検診は何歳からどの検査をする?米政府機関が実績をもとに推奨

大腸がんは検診で早期発見し治療することで死亡を防げます。検診の方法には新しい検査も出てきました。アメリカの政府機関が、最新のデータをもとに検査方法の推奨をまとめました。
2008年の推奨を更新
米国予防医学作業部会(USPSTF)がまとめた2016年版の推奨を紹介します。学術誌『JAMA』に掲載されたものです。
USPSTFは2008年にも大腸がん検診の推奨を出していましたが、新しく普及した検査などについての情報を加味して、推奨の内容を新しくしました。
推奨を決めるため、これまでに報告された大腸がん検診についての研究結果を調査し、見つかった実績に基づいて評価がなされました。
50歳から75歳まで、便潜血は毎年
USPSTFは50歳から75歳までの人に、
- 便潜血検査(グアヤック法または
免疫 法):毎年 - 便潜血検査(免疫法)と便DNA検査の組み合わせ:1年から3年ごと
- 全
大腸内視鏡検査 :10年ごと CT コロノグラフィー:5年ごと- 便潜血検査(免疫法)とS状結腸鏡検査の組み合わせ:毎年便潜血検査を行ったうえ、S状結腸鏡検査は10年ごと
全大腸内視鏡、S状結腸鏡、CTコロノグラフィーとは?
全
全大腸内視鏡は、肛門から盲腸まで大腸のすべての範囲を観察します。S状結腸鏡は、大腸の中でも肛門に近い側の1/3ほどを観察します。
大腸がんが最もできやすい場所は肛門に近い部分です。一方、大腸内視鏡検査はごくまれに
S状結腸鏡では、大腸がんができやすい部分を観察できる一方、観察範囲が狭いことで、穿孔などの危険性は比較的少ないことが期待されます。
CTコロノグラフィーは、CTを使って大腸を撮影し、
76歳から85歳以下の人は任意で
USPSTFは、76歳以上85歳以下の人に対しては、次の理由で検診は個人の判断によるべきとしています。
- 以前に検診を受けたことがある76歳から85歳の人に対して、さらに検診をすることの利益は比較的小さい
- ほかに余命を決めるような持病がなく、健康状態が大腸がんの治療を受けるのに問題ない範囲の人にだけ検診が適している
その他の推奨
86歳以上の人に対しては、症状や病歴と無関係に検査をすることを勧めないとしています。
さらに別の報告で、USPSTFは大腸がんの発生を予防するためにアスピリンの使用を勧めています。
推奨の根拠は?
2016年の推奨を決めるために、研究班が最近の研究を含めた研究結果の調査を行いました。
見つかったデータから以下の結果が得られました。
- S状結腸鏡検査によって大腸がんによる死亡が減少する。
- 便潜血検査(グアヤック法)によって大腸がんによる死亡が減少する。
- CTコロノグラフィーは6mm以上の腺腫を大腸内視鏡検査に比べて
感度 73%から98%、特異度 89%から91%で発見する。 - 全大腸内視鏡検査が6mm以上の腺腫を発見する感度は75%から93%。
- 便潜血検査(免疫法)は1個の
検体 で感度73%から88%、特異度90%から96%。 - 便潜血検査(免疫法)と便DNA検査の組み合わせにより、感度92%、特異度84%。
- 全大腸内視鏡による深刻な有害事象の頻度は以下。
- 穿孔:検査1万回あたり4回
- 大出血:検査1万回あたり8回
- S状結腸鏡検査による有害事象の頻度は以下。
- 穿孔:検査1万回あたり1回
- 大出血:検査1万回あたり2回
感度、特異度とは?
感度とは、実際に病気がある人のうち、検査で見つかる割合です。大腸内視鏡検査の感度が仮に80%とすると、検査をしても6mm以上の腺腫のうち20%が見逃されることになります。
特異度とは、実際には病気がない人のうち、検査で正しく病気ではないと判断できる割合です。便潜血検査の特異度が仮に95%として、大腸がんがない人20人が便潜血検査を受けると、1人は間違って陽性の結果が出てしまうことになります。
解釈
一方、検査はやればやるほどよいものではありません。複数の検査の結果が違う場合、かえって判断が難しくなることもあります。また、高齢の人では早期発見・早期治療によって余命を伸ばせる可能性が相対的に小さくなり、検診の意義が弱くなってきます。
自分に適したタイミングで検査を受けることが大切です。ここで紹介した推奨は世界的に重要なものですが、ほかにも意見はあります。検診の目的と効果をよく知るための材料として役立ててください。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。